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2006年度 有識者本部員会合(第1回)議事要旨


日 時:2006年4月5日(水)14:00〜16:00
場 所:知的財産戦略推進事務局大会議室
出席者:阿部本部員、角川本部員、川合本部員、久保利本部員、下坂本部員、中山本部員、野間口本部員、森下本部員、田中キヤノン専務取締役(御手洗本部員代理)


1.開会
事務局より、知的財産推進計画2006の策定スケジュールについて説明がなされ有識者本部会合を3回開催し、5月末までに草案を策定することが了承された。
事務局より、会合の議事概要の公開の方針について説明がなされ、議事概要を公開することが了承された。
2.知的財産推進計画2006の策定方針について
事務局より、知的財産推進計画2006の策定方針について説明がなされ、例年同様、5章構成とした上で、重点的に取り組む事項を明確にすることが了承された。
3.知的財産推進計画2006の策定に向けた検討項目について
事務局より、2006年3月8日から29日にかけて行われた意見募集に関し、寄せられた1,660件の意見の概要について説明がなされた。
事務局より、有識者本部員会合の検討事項について説明がなされた後、その一部である保護分野及びコンテンツ分野について自由討議を行った。討議の論点及び本部員等からの意見は次のとおり。
(1)保護分野(特許の出願構造改革)
事務局より、特許の出願構造改革として海外出願の促進及び質の高い特許出願の促進に係る論点が提示された。
例えば世界特許システムの構築に向けた取組の加速化の観点から、日本と米・欧共通の特許出願のうち、米・欧特許庁で特許された特許出願について、日本特許庁がサーチを重複的に行わずに補充審査だけで特許付与の諾否を決める制度を日本が率先して導入すべきではないか。
特許審査の効率化の為、日米欧三極の特許庁間で審査結果を相互利用することは良いこと。ただ、欧米で登録された特許出願について、日本特許庁が重複的なサーチを行わないとなると、欧米の特許審査では考慮されなかった日本の先行技術に基づき、裁判で特許が無効になる件数が多くなる。重複的なサーチを行わないことと、審査結果を利用するということは異なる。
大きな問題は、技術の地域偏重である。同じ技術分野でも国・地域によって先行技術文献の蓄積状況が異なるため、文献の蓄積が乏しい国・地域では特許になりやすいという事態が生じる。審査結果の相互利用を検討するには、この点も考慮する必要がある。
日本国内の出願は外国の審査では考慮されていないので、日本企業の出願が国内に偏っている現状では、外国の審査結果をそのまま持ち込まれるのは問題。まずは出願の偏りを無くすのが先決。
特許審査ハイウェイ構想を前倒しすれば、(出願の偏りの解消は)可能ではないか。また、重複的なサーチは行わない、という点について寄せられている懸念については、補充審査の内容次第でそれを払拭することも可能では。
特許審査の判断基準の統一が重要。日米で基準の差があると、米国で特許になってから日本に入ってきても、特許がとれない又はせまくなるという事態が生じる。審査結果の受入と基準の統一はセットでやる必要がある。
日本の海外出願比率が低いのは、国内の出願数が多いからと思われるが、質の低いものが多量に含まれているとの懸念がある。他方、質が低くてもどんどん出願すべきとの意見もある。
海外出願比率は変わりつつある。日本企業の知財活動は、自らの事業を守るという位置付けであったが、国際化、知財戦略の時代になり、今後海外出願比率は上がると考えている。
大学での知財活動は最近の国家的な取組により活発になっている。大学はもっと海外出願数を増やし、本当に良い特許はきちんと海外でも権利取得すべき。大学生まれの知財の海外出願戦略もこれから大いに工夫すべき。
大学における特許の問題の一つはコスト。米国で特許を取得し、維持するとなると一千万円近くの費用がかかる。国内の特許出願だけで精一杯というのが正直なところである。
また、大学に在籍している研究者の発明は減免の対象になるが、ポスドクの発明は対象にならない。ポスドクは増加しているので、問題となっている。
大学だけで、事業とリンクした海外の出願国の選択を含め出願戦略を立てるのは難しいのでは。産学連携で、企業がビジネスとあわせて判断し、費用を企業に負担させればコストの問題は軽減されると思う。
大学は機関帰属に向けて大きく舵を切った。その反面、以前から産学連携で成果を出していた教授には、機関帰属により共同研究の自由度が狭まり、不満の声もある。
米国の特許登録件数ランキングには日本企業がいつも5社程度、多い時は7社もランクインしている。件数としては日本企業が最も多く米国に出願しているとも言える。海外出願が少ないのではなく、要は国内特許が多いということ。
(2)コンテンツ分野
事務局より、ユーザー大国、クリエーター大国、ビジネス大国を目指した戦略の推進及び日本ブランド戦略の推進に係る論点が提示された。
IPマルチキャスト放送について、法改正しなくても、著作権法上の有線放送と解釈できるという考え方もあるが、文化審議会の議論では、臨時国会に改正著作権法案を提出し、12月施行も可能と聞いているので法改正も選択肢たりうる。スピードが大事。その際には、総務省の放送関係法制も併せて改正できるように検討する必要がある。文化庁、総務省リンクして進めて欲しい。
法解釈は、最高裁で判決が出るまで確定しないので、あいまいなままでビジネスや投資がしづらくなる。法的安定性を考えると法改正がいいと思う。
IPマルチキャスト放送の著作権法上の位置付けを明確化する際に、クリエーターに十分な報酬が支払われるよう配慮するということについては、賛成である。
著作権の許諾に関する紛争の処理の仕方を考える必要がある。放送番組をIP放送で二次利用する場合、脇役一人が認めないとなると、結局作品全体を放送できないということが起こる。人格権は重要な権利ではあるが、元のコンテンツを改変しないで流すことを拒否できるのはおかしい。あくまで経済的問題として処理すべきであり、ぜひ配慮してもらいたい。
2011年には、ブロードバンドや光ファイバーがユニバーサルスタンダードとなり、まさにIT国家となる時代が来る。そのときに、どんなコンテンツが作られるのかが重要。2011年の大変革に合わせて、知財推進計画2006を作っていく必要がある。それによって、これまでと違った色彩が出てくるだろう。
デジタル時代においては、オリジナリティをどう判断するのかについては、大きな問題である。そのような中で、クリエイティブコモンズの発想でひとつ風穴があいた。こういう取組があると警鐘を鳴らす意味でもクリエイティブコモンズの動きを取り上げた方がいい。
コンテンツポータルサイトの構築に向け、日本経団連でも努力している。このようなデータベースが構築されると、著作権における問題の多くは解決できると思う。うまく官民連携して作っていけばよいと思う。
 コンテンツ分野については、今後は5月中旬に予定されている第8回コンテンツ専門調査会で推進計画2006のたたき台を議論し、それを踏まえた案を第3回の有識者本部員会合で議論することが承認された。
4.閉会
以 上