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小泉内閣メールマガジン

「らいおんはーと〜小泉総理のメッセージ」


[2005/01/13] 第171号

● 民間の知恵とやる気と実行力

 小泉純一郎です。

 先週6日、インドネシアのジャカルタに世界各国と国際機関の指導者が集
まり、インド洋の津波で被害を受けた国々に対する援助を表明し、各国が力
を合わせ国連主導で支援していくことを決めました。

 日本は、以前から津波の被害がありました。皆さんご存知のように、英語
で津波のことを「Tsunami」といいます。

 今から百年以上前の1854年12月24日、安政南海地震が起こったと
き、今の和歌山県広川町の郷土の豪族浜口梧陵は、地震の直後、海岸からは
るか沖まで波が引いていくのを見て、「これはきっと津波が来る」と、夕闇
の中、取り入れるばかりになっていた大切な田んぼの稲むらに火をつけて村
人たちに知らせ、避難の道しるべにしたそうです。この話は、ラフカディオ
・ハーン(小泉八雲)が短編小説に書き、それを子供向けに書き改めたもの
が1930年代と1940年代の小学校5年生の国語の教科書に載せられて
いたそうです。ジャカルタの会議で会ったシンガポールの首相もこの話を知
っていました。

 モルディブ共和国では、日本からの経済協力資金によって、15年かかっ
て首都のあるマレ島の全周にわたって堤防の建設と護岸工事を完成させて、
今回の津波では、浸水はあったものの家屋の流出などの被害はまぬがれまし
た。

 今回の津波で被害を受けた方々の痛みは、アジアの一員として生きる日本
自身の痛みでもあります。日本政府は、物的、資金的支援、人的貢献、そし
て津波に関する日本の経験と知識の面の三つの分野で、できる限りの支援を
実施いたします。

 未曾有(みぞう)の大災害に国際社会がいち早く結束し、迅速に支援活動
を展開することができました。各国政府や国際機関による支援はもちろんで
すが、今回、子供たちを含めた世界中の人々やスポーツ選手、企業や団体な
どが、この災害を我がことのように受け止めて、支援を差し伸べていること
を大変心強く感じています。

 7日と8日は、関西方面に出張しました。「科学技術立国」日本の景気回
復の鍵をにぎる日本を代表する企業の最前線、製造現場を見せてもらいまし
た。

 三重県にある大型液晶テレビの工場では、大型の液晶画面の製造工程を視
察しました。一見何の変哲もない液晶画面が、実はとても精密な技術の結晶
であることを知り、先端技術のすばらしさを実感しました。しかもこの工場
では、生産の過程で出てくる廃棄物も工場排水も一切外に出さず循環利用す
るという環境に大変配慮した工場でした。

 最先端の技術で、鮮明できれいな製品をつくるだけでなく、環境保護にも
配慮する、まさに世界に誇れるものだと思います。

 京都では、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが研究開発している分
析計測機器などを見せてもらいました。むずかしい技術でしたが、目に見え
ないタンパク質の質量分析は、病気の早期診断や治療、新薬の開発に大いに
役立つそうです。

 出張の最後は大阪で桜の植樹式に出席しました。大阪の街は、「官」では
なく「民」の力でつくられました。現に、淀川にかかる市内の808の橋の
ほとんどは、市民の力でかけたのだそうです。その自立精神を活かして、市
民の力で桜並木をつくり、元気な大阪を取り戻そうという計画です。

 「楽しみは朝おきいでて昨日(きのう)まで無(なか)りし花の咲ける見
る時」

 先年、天皇皇后両陛下がアメリカをご訪問されたときに、当時のクリント
ン大統領が歓迎スピーチでこの歌を引用し、何気ない自然の美しさに感動す
る日本人の感性の豊かさを讃えました。

 朝起きて、昨日までなかった花が咲いているのを見つけること、これが楽
しみだ、という江戸時代の橘曙覧(たちばなのあけみ)の歌です。楽しみは
どこにでもある、自然を愛する気持ちは、いつの時代にあっても大事なこと
だと思います。

 大阪に日本一の、いや世界一の桜並木を作ろう、市民一人ひとりが自分の
街をきれいにしていこうという気持ちは、本当にすばらしいことだと思いま
す。感心させられるのは、このアイディアとそれを実行に移す行動力、実行
力です。

 行政の力に頼るのではなく、民間の力で街づくりをしようというのは、ま
さに「民間にできることは民間に」のモデルだと思います。子供たちと一緒
に苗木に土を入れながら、「改革の芽」と同じように、「大きな木」となっ
てきれいな桜を咲かせてくれるように祈りました。

 民間の知恵とやる気と実行力、これを存分に発揮できるような社会を作る
ことが政治の一番大切な役割だと思います。これからも、「官から民へ」
「国から地方へ」の方針で、改革に邁進してまいります。


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