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第7回知的財産戦略本部議事録

平成16年4月14日(水)17:15 〜18:15
於:官邸大会議室


○福田内閣官房長官 それでは、まだ小泉総理が到着いたしておりませんが、時間の関係で始めさせていただきます。
 ただいまから「知的財産戦略本部会合」の第7回会合を開催いたします。本日は、御多忙のところ御参集いただきまして、大変ありがとうございました。まず、本日は3月15日まで5回にわたります「コンテンツ専門調査会」での議論を経てまとめられました「コンテンツビジネス振興政策」につきまして、牛尾会長から御報告をいただきます。
 次に、知的財産推進計画については、知的財産基本法に基づき年1回見直すことになっておりますので、本日は同計画の実施状況について事務局から報告させた後に、新たに盛り込むべき政策課題などについて、皆様方で御意見の交換をしていただくことにしております。
 それでは「コンテンツ専門調査会」の牛尾会長から、御報告をお願いいたします。

○牛尾専門調査会会長 それでは、資料1を御参照願いたいと思います。今、官房長官からお話ありましたように、第5回「コンテンツ専門調査会」において、各委員からの基本的な了解を得まして、「コンテンツビジネス振興政策」についての報告書が完成しました。
 まず初めに、我が国のコンテンツビジネスの現状を見るときに、昨年度のアカデミー賞に『ラスト・サムライ』や『たそがれ清兵衛』等がノミネートされるなど、日本のコンテンツもかなりのレベルになってきたと思います。
 しかしながら、そうした魅力あるコンテンツをビジネスとして十分にまだ生かしきれていない部分が相当あって、我が国のコンテンツビジネスの事業規模はやや大きく見積っても11兆円、これは鉄鋼産業が5兆円ですからかなりのものだという見方もありますけれども、そのGDPに占める割合は世界と比較した場合、日本は2%で、アメリカは5%、世界平均は3%ということを考えれば、まだまだコンテンツの推進は重要であるということがわかるわけであります。
 諸外国においてコンテンツ分野の政策的な後押しを強力に推進している中で、我が国においてはまだ政策資源を総動員して、コンテンツの持てるポテンシャルを最大限に発揮させることが十分な可能性を持つように、これからのビジネスの成功モデルを構築する必要があります。
 3ページをご覧頂きたいんですが、こういうことを目標にしてこの委員会で、目標1、2、3と書いてありますが、3つの目標と10の改革を提案しました。お読みになるとそのとおりでありますけれども、その中で改革1は「業界の近代化・合理化の支援」を挙げておりまして、この業界は他の産業では当たり前で行われていることが、従来からの慣習もあってなかなか実現できないと言われておりまして、早急に業界全体の近代化・合理化、それからグローバル化を図る必要があるという提案であります。
 改革4、人材の育成に関しても相当遅れておりましたが、いわゆるアート系の人材育成に比べて、コンテンツ系は非常に十分とは言えない部分があります。幸いこういう流れの中で、本年秋から東京大学大学院においてメディアコンテンツの創造に関する、「コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム」が立ち上がりまして、担当教授も決まりました。そういう意味では、一つ大きな進歩であると思っております。
 改革5は、新技術の研究開発でありまして、まだ完成はしておりませんけれども、部分的には日本の技術開発というのはかなり目を見張るものがあって、最近の映画『マトリックス』のCG映像なんかは日本発の技術が応用されておりまして、こうした世界で高い評価を受ける作品は、今後より技術的に高度化・複雑化してまいりますので、そういう部分での先端技術の研究開発にも積極的に取り組む必要があるということであります。
 改革8というのが、海外展開の拡大でありまして、これは海外展開の拡大と海賊版対策の強化を挙げております。今後コンテンツビジネスが成長・発展していくためには、積極的に海外展開をコンテンツビジネスにおいても進めていく必要がありますが、そのために東京国際映画祭のさらなる充実などを通じた我が国のコンテンツの海外への紹介、また在外公館を含めて、官民一体となってしっかりとした海賊版の対策を講じていく必要があるわけであります。
 コンテンツ分野は、各方面でその重要性が認識されておりまして、国会においても議員立法として「コンテンツの創造・保護及び活用の促進に関する法律案」が提出されておりまして、その成立を期待しておりますが、今後政府の知的財産戦略本部においても、私どもの報告の内容を着実に実施するためのロードマップ、工程表を作成することとともに、この施策の内容を十分に勘案していただき、より具体的な形で知的財産推進計画に反映されることを願いまして、各委員を代表して報告いたします。
 以上であります。

○福田内閣官房長官 牛尾会長には、とりまとめ大変御苦労様でございました。これに対しまして、御意見などがあろうかと思いますが、後ほどの意見交換会の際にまとめてお願いしたいと思います。
 それでは、次に知的財産推進計画の実施状況などについて、荒井事務局長から報告願います。

○荒井知的財産戦略推進事務局長 資料2の「知的財産推進計画の実施状況」及び資料3の「推進計画見直しについての地方公共団体の要望・提言及び経済団体等の意見」について、事務局から説明いたします。
 スライドをごらんいただきたいと思います。

(スライド)
 知的財産関連法案につきましては、知的財産高等裁判所設置法案を始め、7つの法案が内閣から今国会に提出され御審議をいただいております。そのうち、関税定率法等改正法につきましては既に成立し、4月1日に施行済みでございます。このほかにも、コンテンツの創造・保護及び活用の促進に関する法律案などの2法案が、議員立法として今国会に提出されています。
 次に知的財産推進計画の実施状況の1例として、大学における知的財産活動を御紹介いたします。国立大学の法人化もございまして、大学においても知的財産への取り組みが活発化しており、43大学において知的財産本部が設置されております。今後大学において、知的財産を核とした産学連携が進むことが期待されています。
 更に、昨年の知的財産推進計画の策定後、地方公共団体においても地域に根差した独自の知的財産戦略の取り組みが活発化してきております。具体的には、北海道から九州まで、地域の知財戦略の策定を始め、特許や著作物、種苗などの知的財産を、地域の特色を生かした形で保護・振興する試みが行われております。このほかにも、多くの取り組みがございますが、スクリーン上はそのうち主なものを示しております。
 以上の実施状況に加え、模倣品・海賊版対策の強化や、医療関連行為の特許保護の在り方を始め、いろいろな項目について精力的な検討が進められております。
 なお、今回の知的財産推進計画の見直しに当たり、福岡県などの地方公共団体や日本経団連などの団体から、中小企業に対する支援、地域ブランド、コンテンツ産業の振興を始めとした知財戦略について資料3のとおり、さまざまな要望や提言をいただいております。
 以上でございます。

○福田内閣官房長官 それでは、意見交換をしていただきたいと思います。先ほど御説明をいただきました、コンテンツ振興政策や推進計画の実施状況を踏まえまして、知的財産推進計画を見直すに当たり盛り込むべき政策課題について、自由に御発言をいただきたいと思います。
 まず、民間有識者本部員からお願いいたします。私から指名をさせていただきます。「あいうえお」順で、阿部本部員からどうぞお願いします。

○阿部本部員 2つだけ申し上げたいと思います。いずれも大学に関わることであります。知的財産を生み出すということと大学改革は密接に連動しておりまして、今、国公私立大学それぞれが大学改革に邁進しているわけであります。その行方については我が国の中のみならず、各国が注視しているところでございます。勿論大学改革は、各大学がやらなければいけないことが山ほどあるんですが、政府がお手伝いすることも少なくありません。
 例えば、大学発ベンチャーの促進を今、一生懸命やっているところでありますけれども、大学発ベンチャーに大学の知的財産を移転したときに、その対価として、例えば、株式を大学が取得するということは、国立大学法人は今のところできないわけですが、これはアメリカ等と比べるとそこにハンディキャップがございますので、そういうことを何とか工夫できないかということが一点でございます。
 もう一つは、いい研究をどんどん特許として実用に結び付けたいというわけでありますが、その費用をどうするかということでありますけれども、私どもが今、考えております一案は、競争的研究費の中からそれが措置できないだろうか。と言いますのは、国公私立大学、大学の大小を問わず優れた研究者がおり、いい仕事が出てきたときには、それを特許に結び付けることができる合理的な方法だろうと考えているわけで、その他幾つかありますが、そういうことを推進計画の中に入れさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。それでは、安西本部員、お願いします。

○安西本部員 この知財活動、特に大学での知財活動はこの戦略本部のお陰で大変に活発に行われるようになりまして、慶応の例で申し上げますと、あのグラフにありますように相当な勢いで特許関係、技術移転のことは増えております。

(スライド)
 知財活動に対する教員の評価も非常に高いというのが、慶応の例でありますけれども、状況でございます。

(スライド)
 特にこれからは、やはりベンチャーの創出支援プログラム、技術移転促進プログラム、事業化促進プログラム、あるいは共同研究調整プログラム等々、知財から出発するいろいろな関係活動を活発にしていくということを総合的に行っていって、特にベンチャーの成功例をつくっていくことが非常に重要だと考えておりまして、慶応義塾はここにありますようなプログラムを既に進めております。

(スライド)
 特に重点課題から申します。先ほど牛尾会長が言われたデジタルコンテンツについて、国際的な専門人材を育成していくことが非常に重要になってきていると思います。それから、知財の問題につきましては、そこにありますように、日本版バイ・ドール法の充実と運用の定着の中で、特にソフトウェアの開発に関して、まだまだ日本版のバイ・ドールが適応されていない、そこのところをはっきりさせていくことが非常に重要だと思います。
 パテントソフト、特許費用に関する措置は今、阿部先生の言われたとおりでございます。
 ベンチャーの活発化する近況をつくっていくこと、特許情報の活用基盤を強化していくこと等々、特許を取る、あるいは申請するだけではなくて、それを更に展開していくための基盤強化が非常に重要だろうと思います。
 以上、よろしくお願いいたします。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。次に、角川本部員、お願いします。

○角川本部員 私からは3点申し上げたいと思います。1つは、先ほども御案内がありましたけれども、今国会で「コンテンツ促進法」(略称)が審議されております。是非成立させていただきたいと思っております。
 もう一つは、海賊版の話であります。日本のホラー映画『リング』というものが、ハリウッドで『ザ・リング』という映画になったんですけれども、この『ザ・リング』の海賊版が中国でこういう形で、ちょっと見ていただきたいと思います。

(映画上映)

○角川本部員 アメリカの高校生たちが、最近の怖い話をしているわけですけれども、下に中国語が出てまいります。中国版は一切黒くされておりますので、これは動きませんので、これはすべてにせものということになります。
 こういう形で、ほとんどにせものといっても質が非常に高くて、正規のものを出してもかなわないものが提供されてしまっているというのが、デジタル時代の怖さであると。画面が劣化しませんので、こういうものが横行してしまいますと、正規版が出ても全く売れないということになります。

○小泉内閣総理大臣 全然同じものですか。

○角川本部員 全く同じものです。これだけ精度が高いもので、デジタルですから全く劣化しないんです。

○牛尾専門調査会会長 全く同じものですね。

○小泉内閣総理大臣 値段は?

○角川本部員 値段は、10分の1です。
 3番目に申し上げたいのが、ロケーションの円滑化ということなんですけれども、これは日本で『ラスト・サムライ』などもそうなんですけれども、非常にロケーションがしにくいということで、是非日本でもロケーションがしやすくなるような推進を、各国も行政もしていただきたいということであります。
 それから、追加でもう一つ申しあげますが、「ジャパンブランド」そのものを商標化して、それで日本の知財力を上げていきたいということが、今回の知財のテーマでありますけれども、ジャパンブランドそのものを商標化して、ここに例えばジャパンブランドのマークをパッケージに入れてしまって、これがにせものであるかどうかについて、にせものである場合には国家が支援して排除していただきたいということなんです。
 ですから、民間は今まで自ら摘発するとともに、裁判の費用すべてを負ってきたわけですけれども、できることならば民間は摘発することに関しては努力いたしますけれども、裁判その他については国の支援をいただけるような、商標権によって管理していくという制度をつくっていきたいということを希望しております。
 以上です。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。次に、川合本部員、お願いします。

○川合本部員 資料6に基づきまして、3点ほど研究現場からの意見を申し上げたいと思います。是非次の政策に反映していただきたいと思います。
 その1は、人材活用に関わるものでございます。

(スライド)
 現在、科学技術の研究現場では、ポスドク1万人計画という、博士の学位を取得したプロフェッショナルの研究者がいろんな研究機関に所属いたしまして、現地で実地研究に着いておるわけです。これは任期付きの雇用の博士研究員と呼ばれておりますが、この人材というのが知財に対しても非常にいいプールでございます。質のいいプールでございます。なぜならば、ポスドク1万人計画では、第一線の研究現場で将来も活躍し続ける人材を輩出することを目的として居りますが、私の所属しております理化学研究所を例にとりますと、実際にこの左下の方に行くラインは全体のおよそ10%以下でございます。第一線の研究現場に優れた人材を取るシステムとしてつくられたもので、ここにある1万人は先端科学技術知り尽くしている非常にいい人材でございます。こういう人たちを知財のスタッフとして、研究現場で必要とされる才能とは違う才能発揮いただけると思います。知財キャリアとして有効に活用するためのフレキシブルなキャリアパスのフレームを是非つくっていただきたいと思います。
 2番目に申し上げたいのは、今後科学技術の研究をする現場では、研究者の流動性がますます進んでいくと点です。流動する研究者を抱えるシステムとして、知財のルールを少し考えていただく必要があるということで、2番目の提言を差し上げます。
 現状、我が国の研究者の流動性は高まりつつございますが、国研等、大学等では、大体3%〜5%が任期付きの研究者でありますが、他の機関より10年以上も前に任期制のシステムを逸早く取り入れた理化学研究所では既に80%を超えるものが任期制研究者であります。
 こういう条件下では、次へ移るためには業績を上げることが必須になってまいりますので、特許よりも先に論文を書くということが優先され、権利を確保する前に時間が経ってしまうという弊害がございます。せっかくのいい材料を埋もれさせることなく、きちっとした知財として登録するために、できれば新規性創出の例外適応の範疇を少し広げていただくといいのではないかと思います。
 3番目は、リスク回避に対する意識をもう一回喚起したいと思います。これまで日本では、特許法第69条に書かれていますように、試験研究は、特許発明の実施とは見なされず、特許権の効力が及ばないとされています。つまり、研究開発現場には実際には特許権が及んでなかったんですけれども、大学もベンチャーを興し、研究所からも商品を出していくという時代になってまいりますと、研究開発の展開の現場と、それからそれを実際商品化する現場というのが、非常に近くなってくるわけでして、ここをきちっと整理する必要があるんじゃないかと思います。
 実際に、アメリカのデューク大学事件では、フェデラルサーキットで大学での研究は基本的にはビジネスであるという判定をしておりまして、こういう形ですべての研究開発現場に権限が及ぶようになりますと、自由な研究開発、新しい人類の英知を生み出すための現場に足かせがはめられてしまいます。ここのリスクマネージメントをきちっと整理することが重要であろうと思います。
 以上3点です。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。次に、久保利本部員、お願いします。

○久保利本部員 私からは、1つの提言と、1つの御礼、そして2つの報告をさせていただきます。欲張っておりますが、申し訳ありません。
 意見・提言というのは、模倣品・海賊版の対策でございます。こういうものをやっているのは、原則世界的に見てもテロ組織、あるいは日本においては暴力団、こういうものの収益源ということで機能しておりまして、大変問題だと。これは、是非中国の問題についても、外務省を中心に政府の支援が必要だと思いますが、よそ様のことばかりではなくて、我が国そのものも、例えば原宿竹下通り辺り行かれますと、偽ブランド品とか、盗撮、要するに隠れ撮りをしたり、勝手に使ってしまっている肖像権のポスターとかプロマイド、こういうものがたくさん売られております。これは逆に韓国の人に売ろう、あるいは中国の方に売ろうということで、『冬のソナタ』の主演男優、女優、これの不正規商品、正式の許可を得ていない商品がはんらんしています。
 こういう、肖像権侵害の商品について日本では刑事罰がありません。そのために、暴力団組織が侵害行為をほしいままにやっているのが実態でありまして、警察が取り締まれるように不正競争防止法の改正等を視野に入れて、立法を是非お願いをしたいというふうに考えるところでございまして、これは水際における侵害品の差し止めと同様にお願いをしたいと思います。
 1つの御礼は、知財高裁でございまして、現在この知的財産高等裁判所をつくることが非常に意味を持ってきました。つい先週には富士通がサムソンに対して訴訟を起こすということで、日本の企業が裁判所を積極的に活用していかなければどうしようもないという状態だと思います。
 そういう意味では、この知財高裁ができたということは、非常に先見性のある判断、決断だと思いまして、総理の政治決断に厚く御礼申し上げたいと思います。
 2つの御報告というのは、1つはロースクールでございます。68のロースクールができ上がりまして、この4月から早速スタートいたしましたけれども、知財部門について非常に熱心に各大学が講座をつくって、実務と理論を架橋をやろうとしている。そういう中で、新司法試験において、知財的な科目というのが今、選択科目として認められるように動いています。あと一息だと思いますけれども、そういう点では多くの、先ほど川合先生おっしゃったような、ポスドクの人も含めて、ロースクールに来て、法律家になっていくということができるようになってきたと。これは大変すばらしいことだと思います。
 私が関与しております、大宮法科大学院大学では、弁理士さんが3名、お医者さんが11名、それから特許庁の審査官、審判官という方、昼間働きながら夜学に通うという方が3名、その他第一線の研究者がたくさんお見えになっております。そういう点で、ロースクールができたということはすばらしいことで、今後の日本の知財発展の礎になるのではないかと思います。
 もう一つは、弁護士も知財専門家の数が少ない、知識が浅いなどいろんな問題がございました。その中でも、昨日来報道されておりますけれども、エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワークの設立をいたしました。弁護士も自らの足で立ち上がり、実務の方々と力を合わせて、日本のコンテンツ産業が発展するためにリーガルの力を発揮したいということで動いておりますので、このことも併せて御報告をしたいと思います。とりわけ冒頭意見の段階で申し上げました、やはりテロリスト集団、あるいは暴力団、こういうものが世界的に見ても非常に問題になっている時代でございますので、是非今後の方針としても立法をよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。次に、下坂本部員、お願いします。

○下坂本部員 私の方は見直しに当たりまして、地域中小ベンチャー企業に対する支援というのを提案したいと思っております。まず、その前に最近の多忙な動きの中で、総理大臣始め全閣僚、お忙しいところお出かけいただきましたこと、ありがとうございます。一国民として強く支援しておりますので、頑張っていただきたいと思います。
 知的財産推進計画が、昨年の7月に発表されまして以後、大変な勢いで知的財産の普及、高揚と言いますか、各地域におきまして広がりを見せております。一部の地方自治体では、知的財産を使った地域振興、地域興しというものに積極的な取り組みが行われておりまして、先ほど荒井事務局長の方からお話のありましたように、地方公共団体における知的財産の取り組みという表にございますように、方々の地域でそれが行われております。
 一昨年、昨年と、弁理士会の仕事で、名古屋、大阪、高松、広島、福岡などの経産局を回らせていただきました。一昨年回りましたとき、そこでいろいろな、私どもこういう知的財産に関する支援をしておりますので、どうぞお使いくださいますようにというごあいさつをしてまいりましたとき、私ども割合に得意満面で回ったんでございますけれども、昨年同じ経産局、同じ場所を訪ねさせていただきましたとき大変驚きました。各経産局が知財に関する大変な取り組みをなさっておりまして、私どもの提案がもう既に古いものになっているという観さえ受けたものでございます。
 このように、日本全国で経産局を始めとしていろいろおやりいただいております現在のこのエネルギーを、もう一歩、見直しの中で前に押し出していただきたいということでございます。
 例えば、地方の活性化というのを全国的な動きへ広める1つの方策といたしましては、地域にとって非常に身近な、かつ人々にわかりやすいブランドという問題がございます。これは地域ブランドの保護でございますけれども、その保護を制度的に環境を整備していくのはどうだろうということでございます。
 私、九州の出身でございまして、九州のことを述べさせていただきますと、例えば大分県に関サバ、関アジとか、鹿児島県の黒ブタなどの、地域の特性を生かした特産品というものがございます。これらのブランドは、既にもうブランドとして確立しておりまして、日本全国でかなり有名になっております。これらは成功例ということが言えます。各地域にある農協や漁業組合というところは、誠に特産品の宝庫でございまして、各地域ブランドの宝庫でもございます。私どもは、この宝庫のいろんな地域ブランドを掘り起こしながら、地域の経済活性化につなぐことはできないだろうかと考えて動いているところでございます。
 他方、青森リンゴという商標が中国に取られまして、それで輸出ができないんじゃないかということで一時新聞をにぎわしたことがございます。あれは今、無効審判を中国で起こしておりまして、まだ結論が出ていないようでございますけれども、青森リンゴそれ自体は、日本の商標法では登録におそらくなり得ないだろうということがございます。これは団体商標ですが、それらも含めて検討が必要ではないかと考えております。
 次に、中小ベンチャー支援につきましては、企業の知的財産戦略というのは体力勝負でございまして、中小企業、ベンチャー企業には、とても十分な人材、費用というものを投入することはできないという状況がございます。特許の権利取得、特に外国出願とか、紛争処理に要する費用というのは、非常に多額な額に上りまして、東京都などは昨年そのための助成金をおつくりになっておられます。
 中小企業に対する融資、保証制度の充実や税制上の優遇措置などにつきましては、既に中小企業庁が行われておられますし、中小企業総合事業団というのも活発に動いていただいております。
 また、知的財産面におきましては、特許庁におきまして料金の減免措置など、精力的に動いていただいております。私ども弁理士会の方も、中小ベンチャー企業向けの相談会や手数料援助とかをしておりますけれども、なかなか十分手が回らないというところがございます。
 弁理士会近畿支部におきましては、大阪府や大阪市などと協力いたしまして、大阪府知的財産戦略指針、大阪市知的財産活用推進計画などに参画をいたしまして、産官学共同で頑張っているという状況ではございます。政府におかれましても、経営者の特許マインドの向上、人材育成の支援、未利用特許の活用支援など、中小ベンチャー企業への知的財産面における支援策の積極的な展開を是非お願いしたいと存じます。
 高額な訴訟費用や現地調査費用等の財政的な支援や、特別な相談窓口の設置、これは大変重要なんでございますが、相談窓口の設置など、改革が必要と考えております。これは個別企業の問題を超えまして、国の産業競争力にも関わる問題でございますので、見直しを機に是非取り上げていただきたいと存じます。
 ありがとうございました。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。では、中山本部員、お願いします。

○中山本部員 今日は、今までの知財改革の総括的な話と、今後の方針についての私の見解をごく簡単に申し上げたいと思います。
 総理の2002年の施政方針演説以来、知財制度に関する社会の目は著しく変化しております。法制度もかなり整備されておりますし、あるいは今国会においても幾つも法案が上程されております。そういう意味で、改革はおおむね順調に推移しているのではないかと私は考えております。
 知財改革というものは、これは情報化時代の必然であるというのが、私の前からの持論であります。総理が火を着けてくださいましたこの改革を、打ち上げ花火、あるいはお祭り的なものに終わらせてはいけないわけでありまして、今後とも知財立国を目指して、長期間にわたり懸命な努力をしていかなければいけないと思います。
 ただ、注意しなければいけないのは、息の長い改革でありますから、単に権利強化一本やりだけでいいというわけにはいかないという点です。2002年の知財戦略大綱にも書かれておりますとおり、創造戦略、保護戦略、活用戦略、それに人材育成と、このすべてが重要になってまいります。
 保護戦略につきましては、権利強化の問題はほぼ一巡していると思います。勿論十分ではない面はありますけれども、ほぼ一巡しているのではないかと思いますし、我が国の知的財産権のレベルというのは、世界的に見て非常に高いレベルにあると思います。世界中どこを見ましても、権利強化一本やりという国はないわけでありまして、要は調和の問題であります。
 活用戦略の点につきましは、おそらく残された問題は多数あるだろうと思います。ここで詳細に述べる時間ありませんので詳しくは申し上げられませんが、今後はこの活用戦略を中心として知財戦略を立てていくべきであると考えております。
 活用のポイントというのは、要は権利者の利益を擁護するという点と、社会全体から見てその知的資産を効率的に利用、流通させるという、この2つの要素に尽きるわけであります。
 前者、つまり権利者の利益の擁護の点につきましては、恐らくエンフォースメントが中心になり、後者、流通、活用につきましては、権利の制限の規定が中心になるだろうと思います。
 前者につきましては、かなり法律も整備されておりますし、今国会にも民訴法、裁判所法等々始め幾つか改正案が上程されておりますが、今後も整備してゆかなければならに点もあろうかと思います。
 後者につきましては、これはほんの例でありますけれども、例えば特許法の裁定実施権を活性化するだとか、あるいは現行の著作権法は人格権の問題はありますが、利用、流通という観点からは使いにくい面がありまして、権利制限規制の問題を再考する、見直す等々の必要もあろうかと思います。
 また、情報の独占化からの弊害、独占の弊害を防ぐという意味では、独禁法の適用の強化という点も忘れてはならないだろうと思うわけであります。
 いずれにいたしましても、私が言いたいことは、プロパテントというものはいろんな側面、種々の側面があるわけでありまして、どこにストレス、力点を置くかという点は時代によって変わってくるということです。
 現在、日本の置かれている状況、あるいは世界の流れというものを見失ってはいけないわけでありまして、現状を考えると私は先ほど申し上げましたように活用戦略、この点を中心に今後ますます知財改革を進めていくべきだと考えます。
 以上、総論的な話でございます。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。それでは、野間口本部員、お願いします。

○野間口本部員 既にいろんな意見が出ましたので、私は新しいポイントを2つだけ述べさせていただきたいと思います。
 特許審査の迅速化につきましては、特許審査迅速化法案を国会へ提出いただき、任期付き審査官の大量採用など、具体的な動きにつながっておりまして、大変素早い対応に感謝しております。大変高く評価できるのではないかと思っております。今後も引き続き審査の順番待ち期間の短縮とか、いろいろ具体的な目標を定めて、迅速に進めていくべきだと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 もう一点は、模倣品の件でございますが、先ほど角川本部員の方からコンテンツの海賊版の話が出ましたけれども、私は製品のことについてですが、先週私、仕事の都合で中国の大連、北京等に参りましたけれども、ちょうど北京で時間があきましたので、JETROの北京オフィスに行きました。10メートル四方ぐらいのスペースですけれども、我が国の製品に対する中国での模倣品がいっぱい陳列されておりまして、電気製品から自動車部品、それからここにありますような飲料水まで、これは本物だと思いますけれども、そういうものがいっぱいありました。「生茶」とか「十六茶」とか、名前もラベルも全く同じようなもので、あれを知らずにゴルフ場で悪い飲み物を飲んだら大変なことになるのではないかと思いながら見てまいりましたけれども、あれだけ多種多様、広い範囲にわたりますと、やはり一企業、一業界だけでやるよりも、国全体の問題として取り組んでいただく必要があると思います。
 それと感じましたのは、欧米先進国も同じような問題を抱えているなと。それから、中国の中で、やはりこれではまずいと、国としてもしっかりすべきだという方もおりまして、そういったところと連携して、啓蒙も含めて取り組むという形が大変重要ではないかと。我が国一国、あるいは一業界、一企業だけで、大変だ大変だと、けしからぬということで取組むのには限界があるということだと思います。勿論、私共も、摘発行為も含めて努力はしております。これはこれでやりながら、もっと上位概念での取り組みも非常に重要だなと、こういった活動を次の段階では是非強化、提案していきたいと思います。
 以上でございます。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。それでは、御手洗本部員、お願いします。

○御手洗本部員 私からは、先ほどからちょっと話が出ております模倣品について簡単にメーカーの立場としてお話し、それから知的財産高等裁判所についてお話をしたいと思います。
 模倣品につきましては、総理のリーダーシップの下に、関税定率法が改正されまして、輸出入業者の情報が開示していただけるようになりましたことは、本当にありがたく、心から御礼を申し上げます。

(スライド)
 スクリーンに映されておりますのは、簡単に言いますと、デジタルカメラのバッテリーの模倣品です。これは、充電した途端に爆発を起こしました。別の例では、充電後数日して発火した例もございます。したがいまして、こういったものは、ただ模倣品というだけでなく人命にも関わる重大な問題であるということの例であります。
 また、買った人は純正品だと思っていますから、こういうことが起こりますと我々のみならず、日本の製品に対するブランドを非常に毀損することになるという例であります。

(スライド)
 次のグラフは、中国におけるインクジェットカートリッジの模倣品と互換品の割合を示すものです。そこでわかりますとおり、模倣品は一番上の茶色で示されたグラフ、次の赤いグラフが互換品です。独自ブランドによる、日本製品に対する互換品がどんどん増えております。ここに示すカートリッジの互換品はほとんどが特許侵害品です。互換品の場合は、商標権・意匠権では対抗出来ず、特許権の侵害で対抗する以外ないわけです。この特許権の侵害については、今、外観からすぐわかるものについては、模倣品と同じように水際作戦で対応していただいておりますが、一見違っても、中身の構造が全く同じで特許侵害されているものがあります。こういった互換品につきましても、外見が同じ特許侵害品と同じように、権利者から事前に侵害品であると判定するに足る情報を税関に伝えておく等、何らかの情報交換をして、模倣品と同様に水際で対応していただくとありがたいということであります。これはお願いであります。
 もう一つは、製造国において特許侵害で裁判所に訴えようとしても、運用面等において先進国並みになっていなくて、諸々の問題があって司法解決が円滑に為されない状況にあります。是非こういう特許を侵害する互換品の製造国の政府に対して、日本の政府として先進国並みの適正な法的措置、対応ができるように要請していただきたいということです。特許の取得から活用に至るまで、先進国並みの法的環境の整備をしてもらうように是非話し合っていただきたいと思います。
 今回の知的財産高等裁判所につきましては、今国会で法案が通ることによって仕上がるわけでありまして、これも大変感謝いたしております。しかしながら、要は運営の内容でございまして、この知的財産の裁判は当然のことながらスピードと的確なジャッジが重要になってきておりますので、是非人材の確保をしていただきたいと思います。法律に精通していることは当たり前ですが、技術やビジネス感覚にも長けて、産業界の実態をよく理解している裁判官の配置を、是非お願いいたしたいと思います。
 なぜかと言いますと、例えば近ごろ社員が特許の対価のことで訴える裁判におきましては、発明に至る会社側の膨大な時間と負担、また発明を製品化するための会社のリスク負担というものに対して、どれだけ理解していただいているのかどうかということについて、はなはだ疑問に思わざるを得ないような判決が出されているように思います。是非そういう観点から、人的に充実した知的財産高等裁判所をつくっていただきたいというお願いでございます。
 以上でございます。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。最後になりましたけれども、森下本部員、お願いします。

○森下本部員 私の方から2つお願いをしたいと思います。1つは、政府のBT戦略会議、あるいは知財戦略本部のいろいろな施策のお陰で、バイオベンチャーに関しましては、非常に順調に育ってまいりまして、現時点で10社以上既に上場しておりまして、マザーズの時価総額で30%を超えるところまで成長してまいりました。ただ、余りに速度が早いために、先ほど川合本部員が言われましたように、ライフサイエンス専門の弁理士、弁護士の数が追い付いていないと、あるいは質も追い付いていないという現状が出てきております。
 特に大学の知財本部等の整備が進みました関係で、大学サイドとベンチャーとの取り合いのような状況も起きていまして、やはりその場合大学が非常に強いということもありまして、なかなか民間ベースでそうした専門の方との契約等が難しい状況に入りつつあります。その意味では、是非ポスドク1万人計画の活用等を通して、更にライフサイエンス専門の弁理士、弁護士を大量に育成していただきたいと思います。また、その情報が地区によって非常に偏りがありまして、例えば、大阪、東京はいいんですが、北海道辺りでは非常に少ないという声も聞いておりますので、そういうマップ等を含めた形での情報提供もしていかなければいけないと思っております。
 第2点目なんですが、これは中小企業ベンチャー支援ということで、先ほど下坂本部員も言われましたように、是非特許出願、外国出願、知財訴訟等に関する補助を更にしていかなければいけないと思います。これは大学におりますと、かなりその補助ができてまいりまして、余り不便を感じていなかったんですが、実は最近大阪で取り組んでいる試みとしまして、中小企業の第2創業を大学とのジョイントベンチャーでやろうということをやっております。これは従来の中小企業ですと、やはり融資が非常に受けにくいということがありますし、なかなか上場企業になるには、ふさわしい社歴がないと難しいということがありますので、むしろ新しい事業を切り離して、ジョイントベンチャーの形でやれないかということをやっております。
 そうしますと、そうした中小企業に対しては大学とは違ってかなり補助が少ないために、でき上がった会社そのものの企業に特許に関する費用の部分というのが大きく影響してしまうことが多々ありました。その意味では是非大学並みに中小企業に関して、あるいはベンチャーに関しても御支援をいただけないかというふうに思っております。
 大学サイドの関係もあるんですが、この4月から私どもも独法化いたしまして独立行政法人になりましたが、なかなか技術移転のガイドラインの提示というのが追い付いていません。やはり身分関係が先行しておりますので、なかなか特許の部分までまだ手が回っていないということがあります。大企業との連携の話のガイドラインはかなりできているんですが、そういうお金がない中小企業に対してどうやって特許を移転するのかというところで、これはなかなか大学サイドの大きいところへ売りたいという希望も確かにあるんですが、やはり中小企業等にもっと技術移転をしていって、地元の企業を育てるという観点から、より明確なガイドライン等の作成をしてあげないといけないかと思っております。
 以前述べましたように、アメリカのNIHのガイドラインポリシーというのは、セル・ローカル、セル・スモーラーということで、地域の中小企業というのを非常に重視しております。その意味では、是非日本におきましても、かなり質、量とも豊富になってまいりましたので、少し地域にも目を向けていただいた方がいいんじゃないかと思っております。
 最後に、医療関連行為の特許保護なんですが、よりよい医療を生み出すために現在医師の自由な診療や、患者との関係にも十分配慮した制度をつくろうということで進めております。残念ながらまだ結論というところに至っておりませんが、引き続き医療関連行為の特許保護に関しましても、是非お願いしたいというふうに思います。
 以上です。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。各本部員から貴重な御意見をいただきました。次に、茂木大臣、河村大臣、中川大臣、麻生大臣、野沢大臣から発言を求められておりますので、順に御発言をお願いいたします。
 茂木大臣、どうぞ。

○茂木科学技術政策担当大臣 本日は、コンテンツビジネスの振興政策につきまして、牛尾会長から専門調査会の検討の御報告をいただいたわけですが、これに関連して3点申し上げたいと思います。
 まず、コンテンツ産業については定義にもよりますが、世界全体の市場規模が1兆ドル、100 兆円を超え、我が国だけでも11兆円となっており、かつて産業の米と言われた鉄より市場規模も大きく、成長の可能性も高いと言われております。我が国では、かつて黒沢、溝口、そして小津といった巨匠の映画が専門家の非常な注目を集めましたし、最近でもアニメ、ゲームがかつてないほど世界で注目をされています。また、音楽もアジアで若手の人気が非常に上昇しています。
 ただ、その一方で、先ほど牛尾会長からもありましたように、その政策や流通基盤については、前近代性が指摘されます様に、産業としては必ずしも十分な展開がされてないのではないかと認識いたしております。
 今後、政府関係機関、そして官民が一層連携して、1つはコンテンツの流通の促進、もう一つは、コンテンツ産業の振興に取り組んでいくことが、国家戦略上も極めて重要と思っています。
 そこで、私の担当に関連する日程を申し上げますと、1つは総合科学技術会議において、大学及び公的研究機関の知的財産の活用方策についてとりまとめを進めているところです。
 具体的には、3点ほどやっております。1つ目が特許、研究マテリアル、デジタルコンテンツ等の研究成果を、今後は大学とか公的な研究機関が一元的に管理をしていくこと。
 2つ目が、大学等における知的財産の取得活用のための財源の確保の問題。
 3つ目が、弁理士、知財弁護士など、知的財産の専門人材の育成の問題。
 この3点を中心に議論しているところです。検討結果については、5月下旬にとりまとめを予定しておりまして、是非知的財産推進計画にしっかりと反映させていただくことが重要であると考えています。
 最後に、IT戦略本部に関してですが、今年2月にe−Japan戦略IIの加速化パッケージを決定いたしました。この中でも、コンテンツ政策の推進を重要な柱と位置づけており、1つは著作権法上の裁定制度の運用の改善によって既存のコンテンツの利用促進を行っていくことです。私がよくNHKアーカイブスが利用されてないという例を出す問題です。
 2つ目に、インターネットを利用した放送の著作権法上の位置づけの問題。
 3つ目に、人材育成であったりとか、資金調達環境の整備といった、コンテンツ政策基盤の強化の問題。これについては知的財産戦略本部で積極的に御検討いただくよう要請をしたところです。
 これらの事項を実現して、ブロードバンドインフラの整備とコンテンツの流通の拡大、この2つが好循環をつくっていくことが世界最先端のIT国家をつくっていく上でも、極めて重要であると考えており、是非これから改定される知的財産の推進計画においても、これらの項目を重要課題と位置づけて積極的に御検討いただくようお願い申し上げます。
 以上です。

○福田内閣官房長官 それでは、河村大臣、どうぞ。

○河村文部科学大臣 文部科学省の知的財産推進計画、この予算を見ておりましても、平成16年度だけで416 億、前年度比48%増ということになっておりまして、かなり積極的に取り組んでおるところでございますが、先ほど来お話しのように、コンテンツの振興、コンテンツの活用、この点特に映画の話が出ておりましたが、これにもっと力を入れようということで、これにかなりの予算を、25億注ぎ込んで今、振興プランをやっております。東京芸大辺りにきちっとした映画、アニメの本格的な人材養成機関をつくろうという声を今、上げておるところでございます。
 海賊版対策のお話等、いろいろ大変なことになっておりまして、それに対する対処の予算も持っておりますが、更に著作権法、先ほど説明にもありました、今回音楽レコードの還流防止施策ですとか、雑誌、書籍の貸与権、コミック漫画等が問題になっておりますが、これを内容とする著作権改正案が今国会に出ておりまして、これが通ればこの対応をきちっとできると思っております。
 大学知的財産本部、今、43大学でございますが、これを更に伸ばしたいと思っておりますし、国立大学の法人化に伴って、産学官の連携が更にできやすくなった環境でございますので、大いに進むと思っております。
 先ほど来大学発ベンチャー、これも現在600 社、この前まで500 社と言っておりましたが今は600 社でございます。これも予算的には43億入れておりますし、特にベンチャー企業の中でなかなか起業化できない、そういうものに対して支援をしようということで、この予算化もいたしております。特に中小企業に対してというお話がございました。
 更に知的財産戦略のための人材、先ほど来お話のようなロースクール、これにつきましてはお陰様でスタートいたしましたが、私学のロースクールに対する助成に25億円、奨学金の充実ということで68億円、また、国公私を通じた教育の充実のために15億円を用意しまして、きちっと対応するということをいたしておりますし、更にMOT、専門職大学院、これも今、積極的に推進を図っておるようなわけでございまして、特にこの問題は関係省庁、関係者、皆さん方の御協力が要るものでありますから、大学が持つこれまでの知財に対する思いと言いますか、そういうものを今回しっかり花開くように努力いたしたいと思っておるところでございます。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。次に、中川大臣、お願いします。

○中川経済産業大臣 私のところで、20年遅れのヤングレポートと言ったら、いい表現かどうかわかりませんけれども、そういうものを現在策定中でございまして、そういう中でコンテンツというものも重要なアウトプットというか、これからの日本の1つの柱として位置づけたいと思っておりますので、先ほどの牛尾会長の御報告は大変参考になりますし、おおむね我々もそういう同じ方向を向いているところでございます。
 まず、御報告申し上げますが、いかに特許、知的財産権を守るかということで、何回も御報告したと思いますが、特許出願、そして認められるまでの期間、コスト、これを大幅に、審査順番待ち期間をゼロにしようという壮大な計画です。
 それから、中小企業を特に重点にした特許出願のコストの軽減化というものをやって、スピード化というものをやっていきたいということで、法律として今、審議をいただいているところであります。
 特許法35条の職務発明につきましても、特に経済界、大学を含めて改正をしながら、これも皆さんの御意見をもう少し聞いてやっていかなければいけないと、そういうことを考えております。先ほどバイ・ドール法のお話も出ましたが、当然そういうものも参考にしていきたいと思っております。
 新規性喪失の例外適用というお話がございまして、これも考えていかなければいけないと。少なくとも、国際的に調和していかないと立ち後れるのかなと思っております。我々といたしましては、産学官の連携、企業においても単なる同業者ではなくて異業者間の交流というものが新しい附加価値を生んでいくというふうに考えております。
 それから、さっき地域ブランドのお話が出ました。主に農産物ですから、農林水産大臣がいらっしゃいますけれども、一般論としてはWTOでもFTAでも、地理的表示という問題が非常に大きな問題になっておりますし、FTA交渉メキシコとの間でもなっておりました。例えば、テキーラというのは、メキシコのテキーラ地方のサボテンを使った蒸留酒であって、あとメスカルとかいろんなものがありますけれども、テキーラはあくまでも地域限定のものであって、ほかの地域では使ってはいけないということで、随分と向こうからも強く言われたところであります。一般的には、メスカルというお酒や、テキーラというのはあくまでも、球磨焼酎とかですね。
 ちなみに、昔、但馬牛を山形県の最上川沿いで育てて、最上但馬牛と出したら問題なかったんですけれども、振り仮名を振らないとサイジョウ但馬牛になってしまうということで、実は裁判の一歩手前までいったということもございまして、こんなこともあるのでなかなかGIの問題というのは難しいんですけれども、とにかくこの地域ブランドも大きな1つの話になってきておるところであります。
 いずれにしても、私としては日本というのは、T×Eの3乗と、つまりジャパンというのは、テクノロジー、エコノミー、エコロジー、エデュケーションでジャパンがあると、J=T×Eの3乗、これは御承知のとおり、アインシュタインのE=mc2乗の模造でございまして、模造をやめろと言いながら模造をしているという自己矛盾であります。
 いずれにしても、特許というのは、あえてお話が出ましたので、最大の脅威というのは中国でございますから、これを一か国でやるのはとても無理、さっきオールジャパンでやってくれというお話がありましたが、勿論オールジャパンでやりますけれども、オールジャパンだけでも限界があります。ですから、アメリカ、EUの担当の大臣なんかと話すときは、必ずこの話が出てまいりますので、共同でやりましょうということ。それから、個々人の意識だけで、性善説だけでやっていてもだめなんでありますので、例えばアメリカにはエクソン・フロリオ法とか、経済スパイ法とか、かなり強烈な刑罰法規もあるということも少し研究する余地があるのかなと思っております。
 最後に、ちょっと水を差す話でありますけれども、日本のコンテンツは非常にいいんですけれども、ちょっと高いという話をコンテンツ関係の皆さんからときどき聞きます。いいんだけれども、韓国、中国はかなりキャッチアップをしてきておりますので、価格と中身とのかけ算のトータルにおいて、安い方がいいかなと、多少コンテンツが劣ってもということも私としてはときどき聞くこともございますということを、最後に何か言いがかりを付けたようで恐縮でございますが、以上でございます。

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。それでは、総務大臣、お願いします。

○麻生総務大臣 先ほどございましたように、ブロードバンドも含めましてコンテンツの業界全体で11兆円というお話でしたけれども、これはブロードバンド分野のコンテンツというのは多分300億ぐらいです。したがって、極めて限られたものしかないというのが現状です。300億ですから。そういった中にあって、インフラ整備というのはかなり進んだと思いますが、光ファイバーの中におけるダークファイバーの場合は、以前90%を超えておりますから、ほとんど9割方使われていない。だから、コンテンツがないんです。流すコンテンツがないんだから、だからそういった意味ではそこは大いに問題。
 しかし、本当にないかというと、いわゆる映画やら何やら結構流したいという、流せるものはあるんですが、いわゆるコンテンツホルダーというコンテンツを持っている人たちと、権利者、著作権を持っている作家とか音楽家とか編集者とかいう人たちの間のあれを全部一本でつなげてファックスや電話などでやっていますので、この中に大きなオンラインのシステムで真ん中に1つ機械をというのは、今回予算を付けていろいろやっているところなんですが、こういった話は牛尾さんのコンテンツ専門調査会のとりまとめで取り上げております施策として出ておりますけれども、これをやらぬと、いい映画をいっぱいつくっても、『おしん』を10万円で貸してくれと。ところが、出演者にもう年取っただれだれさんを尋ねて全員に行けば、探索経費だけで1,100万円かかりましたという話はいっぱいありますから、そういった話では基本的にはそこらのところの機械を機械化するという
 話は出ていますけれども、これはもう本当にすごく大事なことだと思います。何だいこれと、大体理解していただけないんですけれども、ここにいらっしゃる方々はおわかりだと思いますので、是非その点を申し上げたいと思います。
 それから、にせものの話がさっき出ていますけれども、これはいつこの間まで我々も一生懸命にせものをつくってやっておったわけですから、人様のことを言えたほど大したことはないんですが、中国人にこの話をしてこの間面白い話がありましたので、1つだけ。
 にせもの、お前らが払うべきだと、お前らが使っている漢字は俺たちがつくったと。漢字代払ったらお前らはどうだと言ったら、それを聞いていたアメリカ人の男性が、これはもともとイタリア系なんですが、だったら俺たちのローマ字代ももらいたいと言うんです。こういう世界で、この人たちはもう基本的にはみんなお前らソフトはただでやっておるではないかという、これは中国人の立派な官僚の偉い人の話ですけれども、まじめにお前らは漢字を使っていると、ノー、俺たちは今、平仮名と片仮名を発明したという話をして、全然そんなの知りませんから、返り点、送り仮名をつくって俺たちが教えてやったじゃないかと言って開き直らぬと意味がないと言い返して、つい3日ぐらい前の話なんですけれども、本当に漢字は俺たちが発明したものだと、それをただで使っておるお前らがまず金を払えと、その分で俺たちが払い返してやるというような話をするぐらい、もうソフトはただだと思っているのを、金払えというのは、ゼロからスタートさせる話で、一国ではとても無理なので、是非お願い申し上げます。

○福田内閣官房長官 よくわかりました。ありがとうございました。法務大臣、お願いします。

○野沢法務大臣 司法制度改革推進本部の副本部長として一言申し上げます。司法制度改革推進本部においては、知的財産戦略本部会合や専門調査会における議論も踏まえまして、知的財産に関する事件への総合的な対応強化に向けた検討を進め、本年3月に知的財産に関する事件についての裁判の一層の充実及び迅速化を図るために、知的財産高等裁判所設置法案と、裁判所法等の一部を改正する法律案の2つの法律案を提出いたしました。これらの法案は、お陰様で衆議院では全会一致で可決されております。現在、参議院での御審議をお願いしているところでございます。本部長、総理でございますので、私どもも力を入れまして、できるだけ早くこれを通したいと思っております。
 これらの法律案は、我が国の国際競争力を高め、社会経済全体を活性化するためには重要な意味を有するものと考えておりまして、これらの法律案の成立に全力を尽くしてまいる所存であります。本日の知的財産戦略本部会合における推進計画のさらなる改定に向けた議論により、なお一層知的財産立国の実現に近づくものと確信をいたしております。今後とも皆様の御理解と御協力、あるいは御教授のほどをよろしくお願いいたしたいと思います。

○福田内閣官房長官 どうもありがとうございました。ほかに、では簡潔に、石井財務副大臣、どうぞ。

○石井財務副大臣 コンテンツビジネスの振興につきましては、政府としても施策を推進していく必要がございますけれども、その際官民の役割分担、国と地方の役割分担ということで、民間や地方にゆだねられるものはゆだねていくと、また政策の費用対効果を検証していくことが重要だと思います。
 もう一つは、模倣品・海賊版の水際取り締りで、財務省のもとに税関が設置されておりますが、このたびの関税定率法の改正によりまして、税関から権利者への輸入者名等の通知もできるようになりました。今後知的財産推進計画の改訂作業が行われる際には、既存の行政組織や機構を最大限活用していただきたいと思います。あるいは、行政と司法といった制度間の整合性に配慮しつつ検討することが重要と考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○福田内閣官房長官 それでは、簡潔にどうぞ。

○亀井農林水産大臣 農産物の地域ブランドの問題、保護の在り方等につきまして、いろいろ国内でも意見がありまして、どのようなものにするか、制度的な対応と、これらの問題がいろいろありますので、慎重にいろいろ検討してまいりたいと考えております。

○福田内閣官房長官 皆様から大変多くの貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。今後の推進計画見直しのスケジュールにつきましては、資料4のとおり、まず有識者本部員の方々に集中的に検討を行っていただきまして、改訂版の草案をとりまとめていただきたいと思います。その上で、次回本部会合においてその草案を御審議いただき、推進計画改訂版を決定したいと思いますが、御了承いただけますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。それでは、併せて有識者本部員会合のとりまとめを阿部本部員にお願いしたいと思いますので、御了承いただけますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○福田内閣官房長官 ありがとうございました。それでは、最後に、知的財産戦略本部長の小泉総理から御発言をいただきまして、この会を閉めたいと思います。

(報道関係者入室)

○小泉内閣総理大臣 最上地域っていいな。何つくったって最上品だ。ブランドで、名前もいいな、なるほど。
 いろいろありがとうございます。お陰様で、今国会にも7法案提出して、随分進んできましたので、知財立国目指して更に努力をしていきたいと思います。今後ともよろしく御協力お願いいたします。
 さっきあった模倣品で、中国の方が多くて困るんだけれども、世界各国協力するのはいいんですが、中国自身に努力してもらう、中国の心ある人に、これは中国の信用を失うと、中国人自身が自分の国内の模倣品防止に立ち上がってもらえるような働きかけも必要だと思います。

○野間口本部員 そういう方も大分出てまいりました。

○小泉内閣総理大臣 これはまずいぞと、中国だって心ある人がいるわけですから、それが必要だと思います。よろしくお願いいたします。

○福田内閣官房長官 どうもありがとうございました。本日の会合内容は、事務局から記者会見をさせていただきます。次回会合は、5月27日午後5時30分開催ということでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。