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コンテンツ専門調査会

日本ブランド・ワーキンググループ(第3回)議事録


1.日 時:平成17年1月21日(金)14:00〜15:30
2.場 所:霞ヶ関東京會舘 シルバースタールーム
3.出席者:
【委 員】牛尾会長、阿久澤委員、阿久津委員、太田委員、小山委員、辻委員、浜野委員、三國委員、皆川委員、山田委員
【事務局】荒井事務局長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 食及び地域ブランド分野の課題と対応策について
(3) 閉会


○牛尾座長 では、定刻になりましたので、ただいまから「コンテンツ専門調査会 日本ブランド・ワーキンググループ(第3回)」を開催したいと思います。多数の御参加をいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、経済産業省経済産業政策局の薦田審議官、農林水産省総合食料局の山田次長にも出席をしていただいております。ありがとうございます。
 今回は、食と地域ブランド分野について、議論を進めてまいります。まず、事務局から、これに関する資料の説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○荒井局長 資料に沿って御説明いたします。
 資料1は、事前に、各委員に御確認いただいておりますが、第2回会合の議論の整理をしたものです。
 資料2は「『食』の課題と対応策(案)」です。これは本会合での御発言や各方面からいただいた意見を基に、事務局でとりまとめたものでございます。
 1ページは「問題」の整理です。
「人材育成の問題」では、学校における基礎的教育と料理業界のニーズのミスマッチ。
 「料理業界の問題」では、業界全体のまとまりが不足していること。
 「食文化の問題」では、栄養バランスの乱れ。
 「海外展開の問題」では、日本の食文化に対する理解不足。
 「食材の問題」では、輸出拡大に向けた取組み不足などを挙げています。
 2ページは「課題と対応策」の案を一覧表にまとめたものでございます。
 3ページは「人材育成」です。優れた料理人を育成するための実践的ビジネス教育の充実や、4ページにございますように、食を担う多様な人材を育成するため、大学等における教育の充実を挙げております。
 5ページの「料理業界」では、業界横断的な取組みの推進や食文化の研究について挙げております。
 6ページの「食文化」では、学校における食育の推進、伝統的な食文化の保存・活用、食文化の発展に貢献した者の顕彰などを挙げております。なお、本日より始まる通常国会では、議員立法で食育基本法が審議される予定となっております。
 7ページの「海外展開」では、在外公館などにおける情報発信の充実、留学生を対象とした実務研修の推進、8ページにございますように、海外展開におけるノウハウの提供や外国人観光客に対するサービスの向上などが挙げられております。
 9ページの「食材」では、正直さが伝わるブランドづくりや輸出促進のための販路創出、検疫条件の整備などが挙げられております。
 10ページには、フランスとイタリアの食に関する施策を参考として紹介しております。 続きまして、資料3に移ります。
 資料3は「『地域ブランド』の課題と対応策(案)」です。
 1ページ目は「問題」の整理です。
「地域ブランドのつくり手の問題」では、生産者・流通業者などの連携が不足していること、地方の小規模生産者が国内外でビジネスを進める環境が整備されていないこと、地域ブランド名を騙ったニセモノへの対策が十分でないことなどが挙げられています。
 「消費者から見た問題」では、地域ブランドの情報がわかりにくい、不正直なブランドの横行、「自治体の問題」では、生産者と一体になったブランド化の体制づくりが求められていること、「法制度の問題」では、地域ブランドのつくり手が十分保護されていないことが挙げられています。
 2ページ目は「課題と対応策」の一覧表です。
 3ページ目は「地域ブランドのつくり手の取組み」の問題です。地域ブランドの生成については、つくり手の意識の喚起などの支援。産学官連携体制の整備の支援。
 また、4ページには、地域ブランドと環境産業との連携の支援を挙げております。
 5ページの地域ブランドの展開については、販路開拓や情報発信の支援、国内各地に専門家を配置することによる海外展開支援、マーケッティングの専門家派遣などの人的支援。 6ページ目の「地域ブランドの価値を高める」では、知的財産活用マニュアルの作成など、意識の向上の支援や品種保護Gメン等のニセモノ対策が挙げられております。
 7ページでは、消費者が地域ブランドを選択しやすい環境づくりのため、基準の整備と情報公開、また景品表示法やJAS法の適正な運用など、消費者取引の一層の適正化が挙げられております。
 8ページ目は、自治体に期待する取組みとして、地域ぐるみの体制整備や見本市の開催など、つくり手への総合的な取組み、品質管理やニセモノ監視の支援など、消費者に向けた取組み、観光戦略と連携した地域ブランドつくりなどを挙げております。
 9ページの「法制度の整備」では、地域ブランドを適切に保護するため、育成者権の効力を加工品にまで拡大する種苗法改正の検討。また、地域ブランドのつくり手の権利を守り、消費者に誤解を与えることがないよう、地域名プラス商品名の商標登録を認めてほしいとの生産者の声に対し、商標法による対応により生産者が商標権を取りやすくすることが挙げられております。
 10ページには、諸外国の制度の例を紹介しております。
 また、資料4として、委員からの配布資料をお配りしています。
 資料の説明は、以上です。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 それでは、まず今日は食関係及び地域ブランド関係の委員に、それぞれ5分ぐらい御発言をちょうだいする予定であります。
 本日、麻生委員が欠席ですが、皆様のお手元に麻生委員から「地域ブランドの保護制度について」という紙が、資料4−6で入っておりますので、十分活用願いたいと思います。 では、初めに小山委員からお願いいたします。資料4−1であります。

○小山委員 新しい年が始まりましたので、いい年になるように、この会議がうまくいけばと思って、いろいろ考えてまいりました。
 私も実は、それこそ三代続いた日本料理店、料亭をやっておりますので、食に携わっているということでは随分DNA的には深いものがあるんだと思いますが、やはりいろんなことを考えれば考えるほど、なかなか難しい問題であるというのを認識したという次第でございます。
 今回、私たちの食のお話の回だということで、トップバッターでお話をさせていただきますが、幾つか思い付いたことを書いてまいりましたので、それを基にお話をさせていただきたいと思っております。
 御承知のように、幾つか問題点も挙げていただいておりますので、それを基に少し書いてみますと、日本という国は非常に中華思想が強い国でありまして、世界の三大料理と言うとフランス料理、中国料理、日本料理と、この国では言いますが、世界中どこの国に行っても前の2つは変わらないんですけれども、一番最後は自分の国の料理を入れるというようなところがあります。
 それはそれで、お国自慢というのはそれぞれいいんでしょうけれども、海外も踏まえて本当に地球的な世界の中で何かをするといったときに、いろんな問題点が出てくるというのが現状であると思います。
 幾つかの報告書にも、海外での日本料理の質の向上というようなことがいろいろうたわれておりますが、多分これは数十年前に諸外国が思ったんだと思います。今でもハンバークの横にスパゲッティーをトマトソースで和えたのがのって、それを洋食と言ったり、ドイツの料理か、イタリアの料理かというようなものを国の中に取り込んでいますけれども、最初に入ってきたときはそうだと思ったのでしょうし、今、本当にフランス料理というものがこの国に根づいている、すばらしいことだと思いますけれども、それはやはりかの国でそういうことを考えた人がいて、今日がある。
 それから言うと、今はすばらしい状態が起こっていると私は思っております。私は日本料理をやっておりますので、やがて、お伊勢さんかエルサレムかわかりませんけれども、世界中の人が日本料理のすばらしさをわかればわかるほど、最後は聖地日本に来て学んだり食べたりするしかないなと。そのためには、広くいろんなものが世界の中で、すしが愛されたり、焼き鳥が愛されたりするというところから始まるんだろうと思っています。
 いい例が、パリで向こうのテレビ局の人と対談をしたときに、その女性が、私は日本料理のことはよくわかっている、あれはすしだと。すしは日本料理の一部だと言ったら、いえ、そんなことはない、すしだと言うから、では、パスタはイタリア料理全部かと言うと、違うと言いましたけれども、でも、それだけすしが浸透していってくれていると。その次にそばが行ったり、うどんが行ったりして、やがて私たちがやるような伝統的な懐石にまで行きつくということから考えると、今、起こっていることは問題ではなくて、すばらしい成果で、いい状況が起こっているんだというふうに認識をした方がいいと思います。 
それぞれ留学生や在外公館の方とか、いろいろな方たちのおかげで今日があったり、あるいは各企業が海外に出て行ったときに、日本人租界的に大きなメーカーがレストランをつくってくださったような時代もありましたけれども、今それはほとんど撤退をしております。
 でも、そこで働いていた人が今、都市に散って、それぞれレストランをやっている。それは日本料理にとっては大変いいことであって、たくさん知識が増えてきたら、日本人もそうですけれども、必ず本物を見てみたい、味わいたいというのは人間の要求ですから、そのときに出て行けばいいんだと思っております。
 ただ、そのときに何が起こるかということを、実はここに書いてあるんですけれども、海外で問題が起こって、やがてこの国に帰ってきた。ですから、外というのは、実は内なることの問題であって、ブランドとして確立するということは、表現が悪いですけれども、宝石箱の中に宝石が入っていたり、経典がないのに経箱があったりすると問題があるということから言うと、日本国内での食文化あるいは日本料理というものに対して、どれだけ日本人自身が認識を持ったり意識を持ってやっているか。
 この前も申しましたけれども、日本料理を国技だと思うぐらいのことがあれば、多分諸外国の人もすばらしいものだというふうに理解をしていただける。そんな認識を考えていくと、今まさに海外でも勿論のことですが、実は日本国内でのことが大切なのではないかというふうに思われます。
 何が大切かというと、実は私も、後継者や若手の育成ということで言うと、調理師学校もやらせていただいておりますけれども、教えるべきは何かというのと、伝えるべきは何かというのは違うというように思います。知識や文化を教えることはできても、伝えるべきものが本来なければならない。その伝えるべきものは何かということを始終、どこかでだれかが必ず考えている場所がないと、それぞれの人間が思い付きや壁に当たったときに、次を乗り越えるための手段であったり知識の深さや昔を訪ねるというだけではなくて、必ずだれかがどこかで何かをやっている、そういう存在がこの国には果たしてあるのだろうかと思っております。
 それが実は最終的には、4の話になりますけれども、実は若手や後継者の育成以上に、現場でレストランをやったり、いろいろなところで食のシーンに関わっている人たちの飽くなき欲求、あるいは向上心に対して、どこか研修をしたり、あるいは学びたいと思うような出会いの場が大切であり、また、出会いの場があったとしても、その出会いの場で何を学ぶのか。それは知識でもなくて、もっと違うものであるなどと考えていくと、それは多分、調理ではなくて料理というところに行き着くんだろうと思っております。
 それは本当においしいみかんがたくさんあっても、これをみかんの缶詰にしたらおいしいと言って、砂糖で漬けて缶詰にする。それはフードビジネスですね。その日しか食べられないものを何日にも渡って食べられるようにする。
 ところが、今このまま食べた方がおいしいよというのを調理ではなくて料理として考える。今、食べることに意味がある。それが実は料理という言葉の原点であります。それが実は日本料理の英知の中にはたくさん込められております。そういうことを踏まえて、外国の料理と接触をしたときに、日本料理のすばらしさみたいなものが伝わればいいんだというふうに思っています。
 そうすると、では、そういう場は存在するのかと。あるいは、学問として絶えずそのことに対して学究的に学んだり研究している人はいるのかというふうに考えていくと、実はこの国には、こちらにも省庁の方がたくさんいらっしゃるんですけれども、だれが食を責任を持って受けてくださっているかというと、なかなか難しい問題があるように思います。 そうすると、実は文化というのはカルチャーで、フードカルチャーと、ビジネスというのはビジネスですから、フードビジネスというのは全く違うものなんですね。この会合でも、何を目的とし何をつくり出すのかというと、本来はフードカルチャーを深く広く振興させる。そのことによって、やがてビジネスに結び付いてくる。それはもう産学ということから言うと、昔から例を見るに、あまたあるということだと思います。
 そういうことで言うと、フードカルチャー。外国の言葉に縁はなくても、食文化ということにはなるんだと思いますが、そのことを実は日本人あるいは日本の国の食文化を絶えず、何らかの情報、あるいは研究をしてまとめていくような存在があることによって、今回のすべての問題は、そこから徐々に解消していくように思います。
 それぞれ個々には、いろいろなテクニックや方法論もあるとは思いますが、そのもの自身が加わらないことには、ビジネスとしても育たないように思いますので、是非、日本食文化研究所的なものをおつくりいただけたらと思っています。そのことによって、未来には、それぞれのパートにおいて、学問として成立していくことによって、それは実はいにしえより日本の言葉としてある大学というものになっていくのではないかと思っております。
 そのような存在のため、あるいはスタートが是非望まれるというのが、私の結論でございますので、そういう報告にさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

○牛尾座長 どうもありがとうございました。
 では、続きまして、辻委員、お願いいたします。資料4−2です。

○辻委員 よろしくお願いします。
 メッセージ的には、小山委員とほとんど同じ内容になると思うんですけれども、今回のワーキンググループに参加させていただきまして、私なりに日本の食のブランド化という観点から、取り巻く環境を概観してみました。
 その結果として明確に見えてきたことがあります。それは多くの日本ブランド化による問題が相互に結び付いていまして、1つずつの課題ではなくて、これには包括的な取組みが必要だということです。
 また、この状況をフランスの近現代史に照らし合わせてみますと、フランスの100 年前の状況に現代日本はあるように感じられます。フランスで芸術家の著作権または知的財産権、ファッションデザインに関する法律の成立に尽力したことで知られる、クロッツという人がいるんですけれども、この同じ人物がフランスの職人の最高の栄誉であるMOFの成立に力を注いでいたのは、今からおよそ100 年前のことです。伝統食文化の継承については、日本もフランスも危機意識は多分同じだと思います。
 それでは、辻資料1と書いておりますけれども、ちょうど6ページぐらいに当たります。表紙に「社交行事『社交夕食会』」という、ローマ字で「KYUSHU−OKINAWA」と書いておりますものをご覧ください。
 これは2000年の首里城で開催されました、九州・沖縄サミットの社交夕食会の資料です。この資料には、3つのポイントがあります。
 1つ目は、食を成り立たせる空間というものが、料理を中心に、食材だけではなくて多くの地域産品によって構成されているということです。
 2つ目が、その地域産品が世界に通用するレベルであるということです。
 最後の3点目が、ここでの料理というのは、沖縄の代表的な食材を用いるとともに、その料理手法のエッセンスを取り入れた上で、日本あるいは沖縄にとどまらぬ、環太平洋というものを意識して創作したものであるということです。つまり沖縄の伝統を発展的に継承する試みだったということです。
 この日本の食というもの、地域産品、そして更に、伝統についての私の考えを、この催しは示していると思います。
 これは、今後推進されるべき食育というものへの取り組み方にもつながるように思えます。国民の健康と文化的な生活を担う食育については、健康を確保するのは勿論のことで、しっかりとした伝統を理解した上で、食の魅力を伝えることこそが大切であって、これを発展的に継承していくものであると考えております。
 それでは、本資料に戻りまして、最初の4ページをご覧ください。この4ページ目には、タイトルで「伝統の発展的継承のための人材育成ネットワーク」というふうに書かれております。
 簡単に御説明いたしますと、左端から、食育の分野。真ん中に料理店などの現場サイド。右端には、食の教育コンソーシアムの3つの領域に分けさせていただきました。これらの各領域の人、組織が連携して相互に活性化する仕組みをとりあえず考えてみました。ここには2つの主張したいものがあります。
 1つ目は、職能別に特化された上位資格。2つ目が教育コンソーシアムということです。
 1つ目の職能別上位資格の提案というのは、ドイツの例を参考にしているんですけれども、例えば、日本の料理人にキャリア上の明確な目標を、マネージャーとかマイスター、もしくはテクニシャンの3つに設定することで、職人のモチベーションの向上を果たす仕組みを考えてみたものです。今、日本の飲食業界で不足しがちな人材を満たす機能も果たすと思います。
 特に、マイスターというのは、後進育成と文化伝承の能力を持つ者として、社会的な地位を認定して、職場あるいは広く業界の活性化の牽引役として位置づけるべきだと考えております。
 例えば、三國委員のような大スター料理人がたくさん出てくることで、やはり飲食業界は活性してくるものですし、そして、また現場で人材を育成できる能力というのは、やはり社会的にも認めるべきであろうということです。
 また、これを単なる顕彰制度としないのは、後進指導と文化伝承の2つの能力を認定することで、次世代の若者に対する現場における教育者であり文化の伝承者であることを担保して、彼らの目標となる料理人を生み出したいという気持ちがあるからです。後ほど、ドイツのマイスターとフランスのMOF制度については、別添の資料がありますので、ご覧ください。
 次に、教育コンソーシアムについて、説明させていただきます。これはさまざまな異なる機能を持つ組織が緩やかに連携することで、全体として包括的な教育機能のある人と組織のネットワークを築き上げようという提案です。また、日本の職人には、一生修行というような、ある意味でストイックな学習姿勢があるにもかかわらず、現状では継続して学習する機会というのが与えられておりません。
 このコンソーシアムは、彼らが学びたいときに学びたいことを学ぶ仕組み、もしくは学ぶことによって学ぶべき時期というものがあるはずですから、そういうことを考慮した機能を持つと思います。また、そのためには職場にも高い育成視点が必要になるということです。
 また、この枠組みの中にも、現在では存在しておりません「徒弟教育の研究機関」、日本料理の定義もない現状も踏まえまして、「日本食文化の研究機関」が含まれております。食文化の発展のためには、基本的な知識・情報を提供し、なおかつ共有し合って基礎研究を行う組織は不可欠です。その設立を、私としては強く望みます。
 更に地域の業界団体あるいは生産団体は、現場、生産地の相互に利益をもたらすための仲介役と位置づけております。また、食に関わる大学や専門職大学院も、もし設立されるならば、業界の弱点とされる経営ノウハウ、いわゆるマネージメントの部分の強化などに役立つと思います。
 勿論、教育については、先ほど、小山委員がおっしゃったように、言うのは簡単です。しかし、行うことは非常に難しいことです。私も教育者として、それは十分理解しております。また、教えると学ぶの関係一つを見ても、必ずしも相互補完的なものではありません。
 もし、食というものが、私の主張するように、極めて広い領域に関連性を持ち、そのすべての分野を学校という枠組みで支え難いのなら、もっと緩やかな枠組みで行うべきです。また、もし必要なネットワークの形成を阻害する規制があるならば、緩和も必要だと思います。
 最後になりますけれども、資料8。これは一番最後のページになると思います。「外国人公邸料理人育成および巡回指導概要」というタイトルでありますけれども、それをご覧いただければわかりますが、これは外務省の外郭団体、国際交流サービス協会の依頼を受けて、私の学校のスタッフが毎年タイで行っている日本料理の教育の概要です。その成果は余り知られてはおりませんけれども、きちんと基本を身に付けた日本料理の職人がタイから生まれているということです。その卒業生たちは、遠方の在外公館で日本料理を担当して、日本の国際交流に貢献してくれています。何よりも喜ばしいことは、彼らが日本文化の継承者であるということを誇りとしてくれているということです。フランスは、三國委員や小山委員に農事功労賞を与えました。また、フランスの私の学校で学ぶ学生たちを多くのフランス人たちが、小さなフランスの食文化大使と呼んでくれて、積極的にフランス国内で事業所に受け入れてくれています。しかし、逆に日本料理を学ぼうという海外の若者に対しては、日本の受け入れ態勢が完備しているとは、まだ言えません。
 かつてフランスで食の評論家アンリ・ゴーたちがヌーヴェル・キュイジーヌの宣言を行ったときに、この宣言に才能ある多くの若手の料理人が共鳴して、この方向に足並みをそろえました。また、この新しい波というのは海外、勿論日本にも及んで、多くの若い日本の料理人たちがその影響を受けて、現代のフランス料理を発展させる起爆剤となったことは確かです。
 海外での日本食ブーム、食育を推進する機運の高まり、更にこのワーキンググループの開催など、日本食は今まさに転換期を迎えています。コンクリートの中から実際多くの才能が日本で芽生えてきたように、更にこの土壌を広げるためにも、もっと多くの芽を出させて、彼らをまた更に成長させて、日本の食を発展させること。本日は、その土壌をいかにつくるべきなのかということを提案させていただきました。今まさに、「日本料理版のヌーヴェル・キュイジーヌ宣言」をするときだと、私としては信じております。
 以上です。ありがとうございました。

○牛尾座長 どうもありがとうございました。
 では、三國委員、お願いいたします。

○三國委員 よろしくお願いいたします。
 資料の一番最後に、私の最近の記事を張ってあるんですけれども、日本の新聞とかの取材も多いんですけれども、特に海外のメディアの取材がすごく殺到していまして、それは私が1999年からやらせていただいている、小学校3年生から小学校6年生までの食育という取組みです。それの取材が非常に海外の方から多いのですが、もともとこれを始めたのは1985年、味覚の授業というのをフランスが始めて、同じ年にイタリアがスローフードというものを興して、そこのいろんなパーツがあるんですけれども、子どもの味覚を保護していこう、ファーストフードに侵されてしまうということで始めたんです。私もそれに倣って、1999年から始めているんですけれども、どういうわけか、たまたま偶然、私がやっているスキームが多分フランス、イタリアの子供の食育よりもはるかに高度なものだということで、取材が殺到しているんだと思います。
 小学校3年生から小学校6年生までの授業をしていまして、皆さんでは大分遅いと思うんですけれども、小学校3年生になった気持ちで聞いてください。実際どういうことをやっているかというと、これはブランドに非常に大きな意味合いを持つものでございまして、小学校3年生から小学校6年生まで、つまり8歳から12歳が対象なんですけれども、味蕾という我々の舌にあるぷつぷつなんですけれども、それが人間の脳を刺激しまして、脳ですべての味覚をキャッチするんです。皆さんにはもう老化して減っていると思うんですけれども、小学校3年生のこのぷつぷつが数万になると言われているんですね。平常の大人は多くて8,000 とか1万。ない人はもっとないんですけれども、それが12歳までで、人間のいわゆる一生を支配する記憶、経験したいろんなことだとか味覚が、ほぼ12歳で決定されてしまうということなので、8歳から12歳までにきちんとした味覚、本物の味覚を教えておく必要があるのです。
 甘い味、酸っぱい味、しょっぱい味、苦い味。この4つは全世界で四味と言われていますが、ただ、不思議なことに我々日本人だけが五味というんですね。それは5つ目がうまみという、それは昆布とか、かつおぶしとか、我々日本人しか持っていない味覚で、それが日本人だけが五味を持っている。それだけ味覚にデリケートで敏感だということです。これは皆さん、津波という言葉を知っていると思いますけれども、あれは世界中でツナミと今、言うんですね。そのウマミというのも、日本語が世界共通用語なんです。
 それはどういうことをしているかと言いますと、簡単でございまして、小学校3年生に行って、どういう授業をするかというと、ただの酢をなめさせるんです。なめて、酸っぱいと。塩をなめさせて、しょっばい。砂糖をなめると、おいしい、甘い。チョコレートでもビターチョコレートを食べさせて、みんな甘いと思っていますけれども、食べると吹き出すんですね。ビターは苦いですから。それで苦いというのを教えて、その苦いという味に砂糖を入れると自分たちが大好きな甘い味になるんだ、いわゆる苦い味がおいしい味なんだということを全部4つ教えるんです。それであとは加工したお料理を食べさせて、その授業は終わるんです。
 どういうことになるかと言いますと、終わった後、必ず栄養士の先生から電話が来るんですけれども、今まで学校給食をほとんど食べなくて、ほとんど残していた子どもたちが、みんな今までしーんとしていたのが騒いで、全部平らげてしまうというのです。それは何をしているかというと、子供たちが給食の中から味を見つけているんです。苦い味を見つけた、しょっぱい味を見つけた、甘い味があったとかということで、活性化をして、ぺろっと食べてしまう。本当にすごい効果で、それで小学校3年生の子は一生その味覚というものに目覚めていくんですね。
 小学校6年生は、もう少し高度で、料理をつくらせるんですけれども、地元の材料を使わせるんです。地元のものを研究して、料理を1時間でつくって、それを校長先生、担任の先生に食べさせる。1時間でフランス料理のフルコースをつくるんですけれども、見事につくるんです。そうすると、ほとんどの先生はハンカチを出して泣きます。うちの子は絶対にできないと思いましたけれどもできましたと。そうすると子どもたちは非常に充実感を持って、それをすぐ自分のお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、妹、弟につくってあげたい。それは最終的に落としどころなんですけれども、今の社会の子どもというのは、されることがあっても自分がつくってあげる、人を喜ばしてあげるという、我々の用語でホスピタリティーというんですけれども、奉仕する心、人が喜んでくれてうれしい、人がおいしいと言って自分はうれしいという心を目覚めさすんですね。それを、味覚の授業で、小学校3年生から6年生までやっています。
 では、どうやって今まで我々日本人が、甘い、酸っぱい、しょっぱい、苦いというものを伝承してきたかというと、これはおじいちゃんとおばあちゃんが一緒に住んでいて、それで孫にそれを伝えてきたんです。それは何で伝えたかというと、超シンプルでサンマなんです。皆さんサンマなんて馬鹿にするかもしれませんが、サンマの苦み、内臓を食べさせて、苦みを刺激して味覚を鍛えた。山の人は、山菜のえぐみ、渋み。川の人はアユとかの内臓を食べて苦みを伝えた。今、よく個食とか言われますけれども、昔からお父さんとお母さんは忙しかったものなんです。お父さんとお母さんがうちにいたら学校に通えないですから、そこには必ずおじいちゃんとおばあちゃんがいて、おじいちゃんとおばあちゃんがその孫に伝承していったのが戦前までです。戦後、核家族化が始まって、結局そこから個食が始まって、今の子どもたちが、お父さんとお母さんは忙しいものですから、子どもたちが放っておかれてかぎっ子という言葉もありましたし、お金を渡して好きなものを食べさせるといったら、子どもは甘いものしか食べないんです。ですから、今、成人病、糖尿病というものが子供に増えていて、日本の国は末期症状で、非常にまずい状況なんですけれども、そういう授業をして食育というものを伝えているということが、小学校6年生まででやっているものでございます。
 ちょっともう時間が来ましたので、私の資料でざっと説明します。1番目はMOF、メイヤー・ウブリエル・ドゥ・フランスというんですけれども、日本の国家で是非MOJ、これは、和・洋・中の料理人、ひいては漁業、生産者、農家の人にもこういうMOJを与えていただいて、海外に出てもらう。やはり日の丸を背負って出ない限りは海外の人は相手にしてくれませんので、これなくして日本の食の世界のブランドは絶対あり得ないと。これはもう是非MOJなるものを政府で検討していただきたいと思います。特にMOJを30代、40代の伸び盛りの子に与えていくと、我々みたいな50過ぎたおやじにはそんなものは必要なくて、やはり30代、40代の才能豊かな子たちに与えて、彼らが人間国宝の予備軍になってくれれば、それは一番経済効果がある。
 漁師さんと生産者というのは、これは地産地消、自給率40%にも関わってくるんですが、ちょっと時間がないので、こういう生産者を保護していくということもとても重要なことだと思います。
 あといろいろ、1、2、3、4は読んでいただければと思います。
 あと学校教育の中で、米国にあるCIAという、プロがプロを教える、これはコーネル大学とリンクしている大学があります。これはもう今、私個人的に動いていまして、民間レベルで、これは最後の方にもありますけれども、運営はすべて企業の協賛と民間で行うと、これはもう何社も是非協力したいという会社がもう既に出ております。それに、日本政府が抱えている人間国宝という人方のいろんなアドバイスなり、助言なり、講座を持っていただければと思います。日本が持っている資産、国宝というものが、本当にもったいないんですね。我々お話も聞いてみたいし、会ってみたいけれども、一度もそういうチャンスもなければ、アンタッチャブルなので、是非そういうものを開放して役立てられるように、教授陣の紹介などで国の支援をお願いできればと思います。
 そういうことでございまして、やはり我々料理人ですから、生産者の保護、農家の人、漁業の人にも同じように、そういうMOJなるものを与えて、プライドを持って日の丸を背負わせてはどうか。私も海外経験が長いもので、私は、ちなみに海外にいたときはあだ名をニッポンと言われていたんです。ニッポンとお前ら呼べと、ニッポンと言われて、それはやはりうれしいもので頑張ってしまうものなんですね。ですから、是非政府としてもその辺を協力していただければ、ますますよくなると思いますので、よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、阿久澤委員、お願いします。

○阿久澤委員 阿久澤でございます。よろしくお願いいたします。
 私の場合は、大変申し訳ないことに資料を用意しておりません。ちょっと事情がありまして用意しておりませんが、口頭で御説明させていただきます。地域ブランドに入ります前に、今までの2回の会合の中で言い漏れた分がありまして、これを補足させていただきます。
 まず、この委員会自体が日本ブランドという委員会でございますが、冒頭第1回の会議のときに、麻生委員や阿久津委員もおっしゃっておられたと思いますけれども、日本ブランドというものをはっきり定義しておかないといけないのではないかということを言われていたと思います。私ども全くそのとおりだと思います。それぞれが日本ブランドという概念をしっかりしたものを持たないで会議を進めるということになると、それぞれの委員の先生方の思っておられるイメージが違うものになりかねないと思って、非常に危険だと思っております。
 すべてあらゆる物産というのは、その国の歴史、風土、それから民族的資質と、その3つを背景とする、それによってつくられた文化を背景としてできている。そこから出てきているものでございます。
 日本ブランドという限りは、やはり日本の歴史と日本の風土、それから日本人の民族的資質、この3つによってつくられた、日本文化をしっかりとした背景として持った産物。これでなければいけないのではないかと思います。そうでなければ、我が国を代表するジャパン・ブランドとして、広く国民から支持されることはできないのではないかと思います。
 そういう文化的な特色、背景との関係をなしにして、それを云々するということになりますと、日本人のつくったものだったら何でもすばらしいんだ、何でも振興していこうということになって、狭隘な日本人至上主義になりかねないと思います。
 ファッションや食を論議される場合でも、やはり日本文化の産物である素材、器、モチーフ、そういったものを重視して、それに関連するものに限って論議していった方がよろしいのではないかと思います。
 できれば、先ほど辻委員から御提案のありました、すばらしいコンソーシアムの御説明がありましたけれども、あれなんかにも日本料理コンソーシアムの場合は食材だけではなくて、食器類関係、漆とか、御椀の説明、どこの産地で、どういう形でつくられているものである。何でこれがこの食材に合うかと。勿論、陶磁器もそうですし、あるいははしもそうですし、そういったようなものも説明していただけるような学校ができることがすばらしいのではないかと。更にまた床の間の掛軸の絵とか、生け花とか、そういったものもすべて含んだ、日本文化の中での日本料理という位置づけにして振興を図っていくことが望ましいんではないかと思います。
 本題であります地域ブランドの件でございます。地域ブランドは、御存じのように地場産業としてほとんど、幕藩体制の下でも非常に熱心に取り組まれて、最近では一村一品運動という形で、自治体での取り組みが盛んに行われておりました。
 これを保護するための一手段として、商標法上、これまで認められていなかった地名プラス普通名詞といったものを、商標登録の対象としていこうということでございますが、これは大変結構なことで是非早期にお願いしたいと思っております。
 西陣織とか熊野筆といったブランドの場合は、外国の企業が登録の申請をしてきて、もう少しで日本が使えなくなるという馬鹿な事態が生じていたということでございます。これが、幸い事前に情報が入りましたので、何とかかろうじて回避することができましたけれども、こういうような状況を回避するためには、商標法で何らかの処置をしていただければありがたいと思うわけです。
 勿論、既にでき上がっている工芸品名、地場産業名につきましては、権利関係でいろいろ問題が出てきておりますので、各方面との調整を十分にしていただいた上で、混乱なく推進していただければありがたいと思います。
 それから、ただいまも触れましたけれども、地域ブランドというのは、自治体、市町村が、ほとんどが市町村なんですが、県等と非常に密接に結び付いております。いろんな意味で、実質的には現在地場産品、地場ブランドの商品の推進役にやっているのが自治体であるケースが多いわけです。したがって、あらゆる先ほどの商標問題を含め、また推進する施策につきましても、自治体の意見を十分に取り入れながらしていただきたいと思っております。
 それから、地域ブランドのつくり手である業界というのは、非常に小規模で零細な企業の集団でございます。したがって、現在いろいろな振興、育成策を考えていただいておるわけですが、これにつきましても、昨今のように受益者負担というものを余りにきつく持ち込んでくると、実際には政策も絵に描いた餅になりかねない。それだけの負担能力がない場合が多いので、この辺については小規模産業の場合には十分に配慮していただきたいと思っております。
 諸外国の大きな有名な工芸品等々につきましては、ほとんどの場合国が全力を挙げて、例えば、フランスのセーブルという陶磁器なんかでも、大変なお金を使って現在の地位があるわけですし、勿論ロイヤル・コペンハーゲン等々につきましても、王室との関係ででき上がっているものです。そういったようなことから、やはり国の名前を付したブランドを確立していこうとする場合には、かなり大量のお金を使っていただかなければならないだろうと。勿論、地域産業では自治体レベルでのそういったことが望まれるということですが、大変な経費がかかるかと思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 それでは、阿久津委員、お願いします。

○阿久津委員 一橋大学大学院国際企業経営戦略研究科の阿久津です。
 私も地域ブランドが課題ということで意見を述べさせていただきますが、その前に少々、「食」ブランドのお話を受けて、思うところを述べさせていただきます。
小山委員からは「食の大学を」という提案が出されました。辻委員の資料には「専門職大学院の設立」と入っておりましたし、三國委員の資料にはMBA(経営学修士)の説明が入っておりました。私は現在、その全てに当てはまる職場におります。発足当時から専門職大学院のMBAプログラムに関わってきて、考えてきたことを少々お話します。
 小山委員より、食の研究所をつくって食を学問にするべきだというお話がありました。食だけでなく、前回議論した衣・ファッションでも、そういうものができることが望ましいと思っております。しかし、今日、大学が置かれた厳しい状況からすると、経営的に成り立たないもの、社会的に評価されないものは、既存の学部であれ、今後存続するか保証されません。学問とはいえ、自立性というものが非常に重要になってきています。特に、専門職大学院ということになりますと、そこから専門家と呼ばれるにふさわしい人材がしっかりと育成されて、その人たちがきちんと雇用されて、社会に貢献して、充実した幸せな人生を送ることができるか。彼らが社会で認められて、その専門性が社会的に評価されるか。さらには、その道で重要な地位を占めた卒業生が、今度は雇う側として専門職大学院の後輩たちを採用してくれるか。そういったサイクルを一通り全部考えてデザインしなければ自立性は維持できず、長続きはしないだろうと思います。今回の議論を機に、日本ブランドの構築を目指して、日本文化の継承や発展、普及促進を担う研究所や専門職大学院ができることは非常に望ましいのですが、そういった自立的発展性まで考えていかなければ長続きはしないだろうと思います。
 大学が直面する問題としてその経営のあり方が重要視される中で、私どものような経営大学院の教員は、近いうちにその専門性の真価が問われることになるのでしょうが、その他の専門職大学院についても、その学生も含めて、経営の知識やビジネス的な視点を持つことが不可欠になってくると思われます。衣であっても、食であっても、その分野の専門性を身に付けるだけでは不十分で、そうした専門性を生かしていくためのビジネスの方法も分からなければならないのではないかということです。とすれば、マーケティングや会計学といった経営大学院的な教育内容が、そういった専門職大学院でもある程度は行われなければならないのかも知れません。
 番号が振っていない資料がお手元にあるかと存じます。委員の方のお手元にとりあえず置かせていただいた「ビジネス・スクール人気ランキング」という資料です。この資料の主旨を簡単にご説明します。私ども関係者の間では何か当たり前のように、MBA、MBAと言っているわけですが、三國委員の資料にも(注)できちんとMBAとは何かという説明が書いてございまして、世の中一般にはMBAとは何かそれほど知られているわけではないと、改めて説明責任を感じて配付させて頂いた次第でございます。ぜひご覧ください。
実は日本の国として本格的にMBAプログラムが立ち上げられたのは、ごくごく最近のことであります。私ども一橋大学は、旧国立大学の中で一番初めにMBAの専門職大学院として認められたのですが、それから5年経って世間からどういった評価をいただいているのかについての、一番最近の資料でもあります。色々な評価指標がありますが、例えばこの「ビジネス・スクール 人気ランキング」という資料の2ページ目を見ますと、欧米のビジネス・スクールも含めてランキング5位となっております。当事者としては、色々考えて、一生懸命やって、ある程度の評価を頂いたものと感謝しております。ビジネス・スクール、MBAの世界では米国が圧倒的な資源と実績を持っておりまして、そんな中で資源もなく歴史もない日本のMBAスクールが太刀打ちするには、どんなやり方があるのかを本資料はご紹介しております。衣や食の専門職大学院を考える際に、参考にして頂ければ幸いです。
さて、それでは、今回の日本ブランドのプロジェクト、そして地域ブランド構築の課題に戻りますと、先ほど阿久澤委員の方からもありましたように、まず日本ブランドとは何かということを、私たちの中である程度合意していかなければいけないのだろうと思います。さらに、それ以前の問題として、ブランドというのはそもそもどういうものなのかというブランドの定義についても、ある程度理解を共有しておいた方がいいのだろうと思います。私の資料の一番後ろに「キーワード解説 ブランド」と書かれたものがあります。これは別に私見ではなく、ブランドについてのこれまでの研究の蓄積を簡単に整理したものです。後でお時間のあるときに見ていただき、ブランドという概念そのものについての理解の共有にお役に立てば幸いです。
地域ブランドの構築については、資料4−4をご覧ください。「地域ブランドの一般的な課題」ということで、三つの課題とそれを受けての対策に分けて簡単に御説明させていただきます。
 第一に「ブランド構築の一般的な課題」というものがわかっていなければいけないなということで、ここに2点ほど挙げさせていただきました。まず、企業がブランドを構築するときにも、顧客を理解して自ら発信していこうという心構えが非常に重要で、その実践のためには、それ相応の資源投入と組織的仕組みが必要です。例えば、組織的仕組みというのは、きちんとそのブランドの面倒を見るブランド・チャンピオンがトップマネジメントのレベルでおられるか、実務レベルではブランド・マネジャーがいるか、代理店等々のパートナーと組織的な協業がきちんとできているかといったことを指します。
 もう一つは、マーケティング研究の蓄積に立脚した、体系だったブランディングの枠組みを理解し、実践できる人材が必要です。このブランディングの枠組みとか体系だったものというのは、一体どういうものかという一例として、資料の次のページにあります「ブランディングの枠組み」をご参照ください。色々な枠組みがある中で、これはたまたま私がまとめたものでして「コンテクスト・ブランディング」と呼ばれるフレームです。ごく簡単にご説明させて頂きます。
最終的には、ブランドというのは顧客を中心とする関係者の心の中にあるものです。これをブランド・イメージと言います。この図では、黄色部分になります。それをどのようにより価値の高いものにつくり上げていくかということがブランディングの課題になります。自然の成り行きに任せてよりよいブランド・イメージができるのを待つのではなくて、図の青色部分のブランド・アイデンティティを企業側でつくり込んでいくのがポイントです。人が、自分は何者なのかと、自らのアイデンティティを求め、確立するように、ブランドについても、それを提供する側が、何を顧客の価値としてつくり上げていくのかといったブランドの存在意義や価値観、将来像などをきちんと考えるわけです。それを図の真ん中の緑色部分にあるブランド・コミュニケーションでお伝えしていくという、非常に簡単なフレームです。ただ、こういったブランディングの基本的な理解も、なかなか一般にはされていないというのが現状です。
 第二に「地域ブランド構築特有の課題」というのがありまして、これが今ご説明した「ブランド構築の一般的な課題」に加えまして、地域ブランド構築に当たって問題となることです。一般に、地域レベルでは、ブランド構築のための資源が圧倒的に不足しています。マネジメントの知識・ノウハウや人材を始め、お金であったり、モノであったり、様々な資源が不足しているようです。もう一つの問題としては、複数組織が利害関係者としてブランド構築に関わってくるために、ガバナンスの問題が出てきます。
 第三に、「政府・自治体支援の課題」があります。公共物と私的財の線引きが難しくて、法整備が遅れており、制度的足かせも多い中で、それらをどのように解決するかといったものです。
最後に、「対応策」です。まず、地域の人たちの当事者意識を損なわない支援を検討すること。そして、資源不足の解消・補完をするということ。さらに、選択と集中というのはブランド構築の基本なのですが、これと公共支援の基本である公共性・公平性維持のジレンマの解消をどうしていくかということ。これらを鑑みての対応策を幾つか述べさせて頂きました。
 まず、既存の組織を使わないで、ブランド構築のために新規のチームを発足する方がうまくいくようです。今、地域ブランドの取り組みでうまくいっているところを見ると、そういう傾向が強く出ております。
 それから、地域の方々の学習のためにも、少なくとも初めはアドバイザーとして専門家の協力を要請した方がよさそうだということです。専門家というのは、PR会社だったり、まちおこしのプロとか、いろいろおりますので、あとプロデューサー、そういう人たちの協力を要請するということ。
 あとは、該当する商品カテゴリー全体のプロモーションの促進であるとか、その他の不足資源を補うためには、やはり大手のメーカー、あるいは流通、小売、前回の会合ではヨーカドーさんなどから参考人の方がいらっしゃいましたけれども、そうした大企業を巻き込んでいくというのも実践では重要です。
 さらに、ただ乗り・偽ブランドを防ぐための法整備の充実、足を引っ張る制度的壁の撤回は無論重要になります。このあたりに十分なエネルギーを投入すること。成功事例の共有や知識・ノウハウの認定制度導入などによって、継続的な学習を活性化させるといったようなところが、ざっくりとではありますが、対応策のポイントになるのではないかと思います。
 以上です。

○牛尾座長 ありがとうございました。
では、最後になりましたが、山田委員どうぞ。

○山田委員 資料4−5に従いまして、意見を申し上げさせていただきます。
 第1は「食育の推進」であります。1つは、食育の重要性と関係省庁一体となった取り組みの必要性についてまとめていますが、食育の重要性は先ほど来からも御意見がいっぱい出ておるわけであります。
 我々としましては、安全で安心な農産物の供給、地産地消、それから食農教育などの取り組みを実施していく所存であります。
 その際、生産が農林水産省、料理が厚生労働省、教育が文部科学省、観光が国土交通省ということであるわけでありますが、関係省庁が一体となった取り組みが本当に必要だというふうに考える次第であります。
 2つは、調理師等における食育の実施でありますが、先日、テレビで小山委員が地元徳島のこだわり食材を調達されているシーンを見ました。更に、アラン・デュカスさんが東京銀座に最先端のフランス料理のお店を出店にするに当たって、京都の野菜を実際に畑に入って、そして試食しているシーンを映しておりました。更には、伝統的な日本の食器を調達するシーン、これも放映されておりましたが、こうした著名なシェフが生産現場に赴き、地場野菜や伝統工芸品を掘り起こしされているわけです。食の最先端は調理師の皆さんであるわけでありまして、レストランも重要なアイテムが食材だということであれば、調理師の皆さんがもっと厨房から飛び出していただいて、そして食や地域ブランドの価値を理解して消費者に伝えていただきたい。これが食育につながるというふうに思います。
 また、先ほど三國委員の新聞の報道を見ましたが、さすがすばらしいと思った次第であります。
このため、地域の農業・農産物の知識や、地場野菜など農産物の情報対策や、「食」の人材育成の対応策としての調理師専門学校や料理学校におきます食育の推進が極めて重要だというふうに考える次第であります。
 第2は海外展開でありますが、1つは在外公館における情報発信であります。
 在外公館が日本文化、日本食の情報発信基地としての役割を果たす。その重要性は本日の資料にもまとめられているところでありますが、我々も昨日、在北京の日本大使館で炊きたてのコシヒカリを試食していただく会を開いていただいたところであります。当然、在外公館におきます公式行事では、可能な限り日本産の食材を使用してもらうということも大変重要だというふうに考えます。
 2つは、国際空港におきます情報発信についてであります。
 海外出張の際によく思うのですが、日本の空港の免税店は諸外国に比べて規模が大変小さい。それに加えまして、欧米の化粧品や洋酒などが中心に販売されておりまして、我が国の伝統的な工芸品やファッションブランド、食品を見ることがほとんどできないわけでありまして、ハイテク工業品も、これはよその国に置いてあるんですが、我が国には置いていないということであります。
 例えば、タイではタイシルクの製品、中国ではお茶、フランスなどヨーロッパではチーズとワイン、チョコレートです。これは免税店の一番いいところに展開されているわけでありまして、また、ファッションでも、ブルガリやエルメスやフェラガモなど、欧米の専門店が欧米の空港でも本当に目の前にあるわけですが、我が国の場合は日本の専門店はほとんどないし、日本の空港においても、日本の本当のファッションのいいところは必ずしも展示されていない。
 外国からの観光客が最後に日本に接するのは出国手続の空港内でありまして、本日、座長の日本経済新聞の経済教室を見させていただきましたが、観光立国を推進する観点からも、日本のファッションの専門店や伝統工芸品、日本の食品の専門店を積極的に出店させる必要があるのではないかというふうに思います。
 また、外国の観光客に日本食を強く印象づけるためにも、帰国直前に最もおいしい日本食を食べていただく必要があるわけで、日本食のアンテナショップもあっていいのではないかというふうに思うところであります。
 しかし、いろいろ聞いてみますと、出店するための料金がかなり高いことから、事業として成り立たないらしいというふうにも聞いておるわけでありまして、実態を十分検証の上、それこそ国家戦略として取り組んでいただいてはどうかというふうに思うところであります。
 第3は農産物の輸出についてであります。
 一方的な輸入促進による「守り」から、農産物の輸出による「攻め」に転換しようということであります。「相互貿易」を目指すことが必要というふうに、我々、国内の農業団体が言うわけでありますからなかなか決心が要るところなんですが、しかし、今、一方でそうした条件ができつつあるというふうに認識しているところであります。
 そこで、我々も輸出に対する取り組みを、今、盛んにやっておるところでありますが、実際に輸出に取り組んでみますと、今までわからなかった各国の若干不透明な非関税障壁も見えてくるわけでありまして、これらを踏まえまして輸出体制の整備を行っていこうと、また行っていただきたいと思うところであります。
 最後に、第4は地域ぐるみの取り組みの推進であります。
 京野菜、加賀野菜などの伝統野菜や食文化の保存・活用のためには、種子の保存とか技術の継承というのは大変大事でありまして、そういう面では担い手の確保が課題であります。
 ところが、そうした担い手の確保は一部の大規模生産者のみがやるというのではなかなか難しいわけでありまして、小規模な生産者も含めまして、行政など関係者を含めた地域ぐるみの取り組みというのは大変大事だということで考えているところであります。
 以上です。

○牛尾座長 ありがとうございました。これで、関係委員の御発言、それぞれ大変に中身の濃いお話をありがとうございました。
 今日は、3人の委員が直接関係がなくて御発言していらっしゃいませんので、恐縮ですが3分ずつぐらいの時間でお話をお願いしたいと思います。
 浜野委員から、どうぞ。

○浜野委員 4点あります。
 1点目は教育機関のことです。日本はもともと日常の中に美を込め、食べたら消えてしまうようなものに美をしつらえたり、身につけるものに美を宿すということをやってきたのですが、西洋の影響で日本の美術教育や芸術教育は、美を目的的につくり出す人を育成するものになった大学だけを作りました。欧米がストックの美だとしたら、私はこの言葉には抵抗がありますが、日本はフローの美というか、日常に使うものの中に美をもたせていたわけです。ですから、食とかファッションとか、できれば建築まで含めて、日本的な美の観点から研究機関とか高等教育機関に創っていただくか、組み直していただきたいと思います。
 2番目は、啓蒙の場です。ストックの美としての美術館はあって、子供たちが触れる機会が提供されていますが、三國委員がやっていらっしゃるように、普段の日常の中の食とかファッションの優れたものに触れる場が全くありません。三宅一生先生は学生時代、白洲正子さんが銀座でやっていた「こうげい」という店で、優れた織物を触る機械を与えられ、白洲さんに技芸について薫陶を受けて、きものについて学びました。三國委員がやっていらっしゃることにとても感銘を受けましたが、子供が引き込まれるようなストーリーをつくって、いいものを触れる機会を作っていただきたいと思います。
 3番目は、QC(クオリティ・コントロール)についてです。アメリカのデータを見ると、今、自称日本レストランというのは8,000 あって、年間10%の伸びを示しています。日本でイタリア料理店が7,000 ですから、結構大きな数字だと思いますが、小山委員がおっしゃったように、これは自称なので、本当にどこまでちゃんとしたものかが分かりません。「悪貨は良貨を駆逐する」ので、かつてフランス政府がやったように、やはり日本料理の定義というものを明確にし、排除するのではなくて、こういったものが日本料理だという説明ができるようなことをやっていただきたいと思います。
 それと、我々は小山委員が一流の料理人だと知っていますが、海外では勲章が分かりやすいので、是非、時宜を逃さないように顕彰制度を作っていただきたい。
 最後は、例えば、フランスが、アートにしても、ファッションにしても、フランス料理にしても、ワインにしても、どんどん外国人を入れて、自らの「ウェイ・オブ・ライフ」の魅力を伝えているわけですから、是非、日本で学びたい、仕事に携わりたいという外国人を排除するようなことなく、どんどん来ていただける制度を是非作っていただきたいと思います。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 それでは、皆川委員、どうぞ。

○皆川委員 ファッションと食ですごく共通していることが、やはり生産者の方とか技術者の育成ということが共通して出てきているのかなと思っています。
 それについて、技術者を育成するにしても、生産者を保護するにしても、やはり日本文化を知った上でのことというのが重要なのではないかと思っておりまして、そうすることでより国際的な場において日本の文化と併せて、日本のファッションや日本の食というものを知っていただくということが本当の日本ブランドとしての認識になる。表面的なことではなくて、日本という文化を知っていただきながら、ファッションと食が国際的に浸透していくということになるのかなと思います。
 その上ではやはり、今、おっしゃられたように、日本人だけがそれに取り組んでいくのではなくて、より多くの諸外国の人を受け入れて、同じ教育の場で一緒に成長していくということが必要ではないかと思いました。
 それに加えて、やはり自分もこの日本ブランドということを考えていって、それが成長し、認識されていく上で、今、自分たちのファッションの現場で起こっている流通における弊害、ファッションでよく川下、川中、川上と言われますけれども、そういうものが工程別に、より一方通行となっているところがあります。それは立場の上下関係にもなっていて、そういうことから起こる弊害というのもすごく多いのですが、そういうものをより公平性を持たせながらビジネスがスムーズに行くようなことを見直していくことも、それぞれのファッション産業がきちんと成長していく基本にもなると思います。まず、自分たちのシステムを見直しながら、今後より教育のことを考え、育っていく若い人に対していい環境を整えるということが重要かなと思っております。

○牛尾座長 どうもありがとうございました。
 太田委員、どうぞ。

○太田委員 1つは教育だと思うんですけれども、本当に名の通った大学にちゃんとした学部をつくってもらうのが一番いいんです。
 もう一つは、特に中学・小学校のときの、恐らく高校へ入るときの受験科目と関係があると思うんですけれども、例えば高校のときに、一応、美術の時間も音楽の授業もあるんですけれども、大体、みんなサボります。何でかというと、これは受験科目が入っていないから、放っておいたっていいとなるんです。
 要するに、美とか、美しさとか、おいしいものとか、家庭科の時間があるにもかかわらず、大体サボるところはみんなそこになっている。それは、受験科目にないからです。
 私たちは高校のときに、音楽の時間にいつも抜け出してサボっていたんですけれども、あるとき、音楽の先生にどうしておまえたちは音楽の時間ぐらい音楽を聞けないんだと。1週間に2時間だけクラシック音楽を聞いてごらんと。そのぐらい余裕がないのか、そんな人間になってはいけないとえらい怒られたんですけれども、やはり受験科目にないから、勉強しなくたっていいではないかということになってしまう。
 さっき、浜野委員が若いときから美しいものに触れるということが大事だとおっしゃったけれども、やはり若いときからご飯をつくってみるとか、美術の時間をもっと大事にするとか、音楽の時間にちゃんと音楽を聞くとか、そういう五感に訴える部分をやはり受験科目にしないことには絶対にやりっこないし、いつも○×式のことしか考えない子どもが生まれていくと、恐らく大人になっても感性なんて二の次でどうでもいいやになってしまう。だから、そういう意味では、例えばセンター試験に音楽を入れるとか、センター試験に絵を描かせるとか、それくらいはやらないと多分変わっていかないというのが1つです。 もう一つは、地域ブランドで気になるんですけれども、例えば、我々のファッション業界でも地域、地域に産地がありますね。かつて、たまたまですけれども、尾州というところに行ったときに、尾州がイタリアのビエラになり得るか否かという議論があったんです。そのときに、なる必要もないし、なれるわけがないと言ったんだけれども、なぜかというと、ビエラという町は毛織物の産地であるけれども、それぞれの機屋はそれぞれ別のものをつくっているんです。フラノをつくっているところはずっとフラノをつくっている。ツイードをつくっているところはずっとツイードをつくっている。だから、それぞれの専用メーカーが、ただ、ウールは使っているけれども、それぞれ織物は違う。その特化されたものが集まって、ビエラという産地になっている。
 ところが、日本の尾州はどの機屋もみんな同じものをつくっているわけです。これがいけそうだったら、全部フラノをつくる。これでいけそうなら、みんなツイードをつくるみたいに、みんなでつくれば怖くないみたいなところが非常に日本の場合はある。それが産地として本当に力があるのかといったら、絶対ない。
 やはり、標準化というんですか、みんなでやれば怖くないみたいなところを少し変えていかないと、何か違ったことをやると、例えば御褒美がもらえるとか、違うことをやると補助金がもらえるとか、そういうふうに変えていかないと、恐らく日本で物をつくるという背景はだんだんなくなってくるだろうし、いいものはつくれなくなるという気がします。
○牛尾座長 ありがとうございました。
 あと、5〜6分ありますが、発表された方で補足する方があれば2〜3分ずつでお願いします。
 どうぞ。

○山田委員 今のお話とも関係するんですが、ブランド京野菜の産地でありますけれども、21品目で107 産地の指定認証産地をつくって対応しています。生産者の数は3,400 名で、350 ヘクタールを生産しているんです。
 ところで、この京野菜のブランド化そのものは、昭和62年から関係者が大変な努力をして産地をつくり上げてきているわけで、当然、シンボルマークの京マークを付けられるのは、きちんとした品質の均一化や規格の遵守や栽培基準を守る、栽培履歴を記帳管理する、更に、認証する。認証は、最上品のみにマークを添付するというような形の取り組みになっているわけです。
 ところで、これまでの御指摘にありますように、フランス等は地域名での産地表示が確立しているわけですが、日本では確立していないわけで、京野菜という名前は、京都で栽培されていなくても京野菜になってしまって流通している部分があるわけであります。

○小山委員 ジャンルにするか、地域にするかの認定を言葉分けしていないから、ラベルだけが生きるわけです。京都でつくられる野菜なのか、京野菜という品種なのか。だから、種苗が流れればどこででも京野菜をつくれるわけです。
 そこのところの管理が、やはり原産地呼称証明をした方がよかったのに、私もあのとき、最初、随分、お手伝いをしたんです。三國委員のところとか、うちとか、日本中に一生懸命、京野菜を送ってきて、私たちもいろんなことを言ったりして立ち上げたんですけれども、そこのところで、ちょっと最後のところで少ししくじったから、しくじったといっても、ある種のところだとは思いますけれども、一番大事なところです。

○山田委員 是非、今後産地ブランド化を進めるという際に、今、おっしゃったことと同じで、そういう部分をどんなふうに整理していくのかというのは大変課題だというふうに思っています。

○牛尾座長 ジャンルと地域が重なって、やはり実力があっておいしいものは必ず残っていますね。

○小山委員 日本は、結局はそういうふうになっていくんです。そうすると、その地域での淘汰というか、実は情報を公開しないで切ってしまうから1件だけいいということになって、地域が地域ブランドになっていかないんです。

○牛尾座長 個別ブランドになるんですね。

○小山委員 個別ブランドになるんです。実は、今、料理の世界も似たようなところがあって、辻委員のおっしゃるような緩やかなシステムしかないような感じのおっしゃり方で、あれは事実なんですけれども、すべてのことはそこになるので、多分、ブランドというのはそういうことなんです。

○牛尾座長 制度的な面もあるし、参加している人にこういうものを大事にしようという運動みたいな性格のものがないとだめですね。

○小山委員 それで、やはりどこかでいつも研究しているところは絶対必要で、それをやったらフランスとイタリアを追い越して、21世紀に日本が食の最先端の国であるという認識を、まずそう取った方がいいですね。三國委員の言ったうまみとか、実は日本料理の中にはものすごい英知があるわけで、そのことを情報公開するための仕掛け、発信する場所、実は、それがブランドだと思うので、そのためにも是非研究所というものがあればいいなというふうに私は思うんです。

○牛尾座長 スローフード、ファーストフードも問題に入るのかもしれませんが、昔はやはり地域や家庭で独自のみそをつくったり、どこの家でも自分の家でお漬物を漬けて、本当にうまかったですね。最近は、お湯を入れるとすぐみそ汁になったり、できるだけ買ってきたりして、大体、そういう手軽な生活態度というものが、世代が若くなるにつれて一層増えてきて、今後はそういうものを自分でという、今のそういう小学校の教育を文部科学省と農林水産省がそれではそうだというので打ち合わせて、今日の三國委員みたいな話の結果になるかというと、絶対にならないですね。農林水産省と文部科学省が学校で料理の時間を持ちましょうかと言うと、それは三國委員の話すようにはならないです。全然、もっと味気ない議論になるから、それならば、第三者をどうやって入れるかということでしょうね。だから、やはり、この問題というのはちょっとしたきっかけでうまくいく場合もあるし、何かそういうきっかけをどうつくるかということも非常に大事なんでしょうね。
 しかし、大変にこのワーキンググループの反響が大きくて、こういうのが全体として議論の対象になるということは言わば一つのきっかけなんだから、このきっかけをどう生かすかということは非常に大事で、1年間ぐらいの間にはそういう環境があるので、その辺は阿久澤委員がおっしゃるように、きちっと定義づけも明確にして、でも余り定義を強くすると、今度は流れがいきなり切れてしまうので、流れをつくるときには初めはややあいまいなものも残しながら勢いを付けて、一つのきっかけを時代の流れにするというのが一つ大事なポイントだと思います。
 今日は大変に、時間があっという間に過ぎてしまいまして、予定の時間が参ってしまいましたので、本日の会合はここで閉会にしたいと思いますが、本日の御意見を次回の会合までに、前回と同じように第3回分の議論として整理をして、皆様にお示しをして議論を交換したいと思います。
 また、次回検討を行う中間まとめ、これまでの議論等をベースに事務局において案の作成をお願いしております。事務局は作成に当たり、各委員とそれぞれ同じぐらい重要な協議をしてもらって、それを十分加味した上で、次回の会合は2月25日金曜日の10時から開催します。それで大体方向づけをして、問題は民の方をどうオーガナイズしていくか。どう考え方を、運動を広めていくか。皆様の適切な助言をまたちょうだいしながら、今日の浜野委員の御提案も非常に貴重なものがあったと思いますので、次回にはそういう点もまとめていきたいと思います。
 それでは、2月25日金曜日10時から開催することをお願いしまして、本日の会合を終了します。
 ありがとうございました。

○荒井局長 どうもありがとうございました。