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コンテンツ企画ワーキンググループ(第1回) 議事録


1. 日 時:平成19年10月11日(木)14:00 〜 16:00
2. 場 所:霞が関東京會舘 シルバースタールーム
3. 出席者:
【委 員】 久保利座長、角川委員、久保委員、重延委員、高橋委員、南場委員、 浜野委員、原田委員、廣瀬委員、三尾委員、村上委員、和田委員、 佐藤本部員
【参考人】 大塚参考人、岸上参考人
【事務局】 川事務局長、松村次長、吉田次長
4. 議 事:
(1) 開会
(2) 参考人:岸上順一 NTTサイバーソリューション研究所所長 東京大学特任教授
(3) 新たなサービス展開に関する現状と課題について
(4) 閉会


○久保利座長 それでは、定刻ですので、ただいまからコンテンツ・日本ブランド専門調査会、第1回のコンテンツ企画ワーキンググループを開催いたします。
 本日は、ご多忙のところご参集いただきましてまことにありがとうございます。
 本日は、先般の専門調査会で示されました4つのテーマのうちの「新ビジネスへの挑戦」というテーマに基づいて、「新たなサービス展開に関する現状と課題について」、これを議論いただくことになっております。
 参考人として、NTTサイバーソリューション研究所所長であり、東京大学特任教授の岸上順一参考人にお越しいただいております。
 本日は、まず岸上参考人より、通信と放送に関する新たなサービス展開として、「次世代ネットワークにおけるIPTVの動向についてお話を伺いたいと存じます。
 それでは、岸上参考人、よろしくお願いします。どうもありがとうございます。

○岸上参考人 岸上です。本日は、お時間をいただきましてどうもありがとうございます。
 「IPTVの動向」ということで、資料1にしたがってご説明させていただきます。
 資料1を開いていただきまして、右下のページでご案内していきたいと思いますが、2ページ目、ちょっと余りきれいなものになっていませんで申しわけございませんが、IPTVというものをどういうふうにとらえるかというような話の中で、いろいろなとらえ方があろうかと思います。
 1つは、やはり産業構造的にIPTVがどういうところに位置づけられるか。あるいは、その発展要素として、日本はIPTVの産業を支えるさまざまな技術において世界のトップを走っているだろうというようなお話。
 それから、やはりIPTVを今後広めていくためには、標準化ということが非常に重要です。そのことを3番目にお話ししたい。
 それから、4つ目であえてQoEというのを取り上げましたが、これは「クオリティ・オブ・エクスペリエンス」の略です。「ユーザー・エクスペリエンス」という言葉がIT産業の中ではよく使われているのですが、ユーザーの立場に立って、ユーザーが本当に楽しい使いやすい、あるいは壊れたときでも直しやすいというような、さまざまな意味でのユーザーの立場に立ったときでの快適性みたいなものですね。「ユーザー体感品質」というような日本語訳をつけたりいたしますが、IPTVの場合には、このQoEというのを標準化の分野においてもかなり初めから使われた形で動いてきておりますので、これがIPTVのサービスの1つの特徴かと思うので、その辺のお話をしていきたいと思います。
 特にQoEに関しましては3ページ目でさらにその中身を書いておりますけれども、大きく分けて機能性とかコンテンツ、例えば画質そのもの、音質そのもの、あるいは遅延、何か自分がコンテンツを選択して、選択してから選択されたコンテンツが出てくるまでの時間、これは、例えば現在のテレビに置きかえると、チャンネルを変えたときの時間の遅れみたいなことになろうかと思うのですが、IPTVの場合はもうチャンネルという概念すらなくなって、自分の欲しいものを例えばメタデータで選択してくるというような新たな概念が入ってこようと思います。そういうときには、メタデータを使うといっても、自分が欲しいものが漠然としてあったときに、それをどうやって膨大なコンテンツ空間の中から選択するかというような話が出てこようかと思います。
 それから、操作性、皆さん、私どももそうですけれども、家の中には今いろいろなリモコンが転がっているかと思いますが、それにさらにIPTVというようなサービスがあって新たにリモコンが入るということは、なかなかこれは厳しいことだろうなということで、ではそのリモコンをどういうふうにしていけば、IPTVでも使いやすい、従来のものでも使いやすいというようなことというようなことも、やはりQoEの1つかなと思っております。
 それから、テレビというのは平均8年間ぐらい使われるというふうなことが言われていますけれども、IPTVはかなり通信と放送の連携分野ということで、PC的なこともあるだろう。というのは、新たな制度サービスを行うとか、新たな機能を付加するとかということで、バージョンアップする可能性もある。ただ、テレビでバージョンアップするという概念が本当に許されるかどうかというような話もありまして、その保守性。
 それから、実際に使っていてつぶれてしまった。だけれども、そのつぶれてしまったときにそれを誰に、どこのコールセンターに電話すればいいか。テレビのメーカーなのか、それにサービスをしているIPTVのプロバイダーなのか、はたまた、私どものように間の通信を担っているネットワーク事業者なのか、さまざまなことがあろうかと思います。だけれども、ユーザーから見たら、そういうのを言っていられなくて、とにかく目の前にあるなんか動かない、映らないテレビを何とかしてほしいというときに、その保守性をどういうふうに考えていくかというような形で、このQoEというのはさまざまな分野で非常に重要かというふうに思っております。
 以上、今日お話しするアジェンダに代わりまして大体の流れをお話しいたしました。以降、今の話をもう少し、それぞれのところの詳細ということでお話ししていきたいと思います。
 4ページ目は、私がお話しするまでもなく「コンドラチェフの長周期論」というのはいろいろなところで取り上げられるかと思いますが、ここで取り上げた理由は、今の産業というのが、やはり一番近いところで言うと不況だったころでしょうが、1947年に発明されたトランジスタがICになって、SIになって、それから今の産業、ITを引っ張ってきたというような歴史が、ちょうどつい最近の50年、あるいは60年の周期に一致するというようなことを強調したくてこの4ページ目を出しております。
 重要なのは、今は、この論が当たるとすれば不況から上がってきているような位置にあろう。その中でIPTVというものが位置づけられているということが、1つの重要なことかと思っております。
 5ページ目はそれを裏づけるようなデータで、トランジスタの場合は60年前、ちょうど長周期の波長と一緒ですが、RAMACというのは、これは世界最初の磁気ディスクということで、IBMでつくられましたが、それが51年前ということで、ほぼ同じぐらい周期、前ですね。それから、その後、IC、LSI、そしてPCということで、ちょうどその半分ぐらいの時期でハードウェアが整ってきた。こういうような恩恵を受けて、現在のIT産業が来ている。
 IPTVというのも膨大なハードディスクを使いますが、6ページ目に行きまして、今のハードディスクの位置づけというのは、昔のRAMACと現在の例えばPC等に使われているものとは、容量にしても、あるいは電力消費にしたって何万倍のオーダーで違ってきているというようなことで、今の産業ができてきているというのがハードウェアの話で、もう1つが、7ページ目がソフトウェアといいますか、よく使われるモシェラの「パラダイムシフト」の絵ですが、コンドラチェフの半分の周期ぐらいを見ると、メインフレームからPCに来て、ネットワークの時代になってきた。これからは、コンテントの時代だろうというふうなことが言われています。これは、1人当たりのデータ量というような見方でノーマライズしますと、非常に膨大なデータを我々はもう扱うことができるというようなところに来た。
 ただ、IPTVの方から見ると、例えば膨大な量、膨大なコンテンツが選択できることはできるのだけれども、その中で自分が本当に欲しいもの、必要なものって何だろうかというような見方をすると、パーソナライゼーションという、その人だけに必要なデータを取ってくるということがこれからは重要になっていくだろうというようなことの裏づけでございます。
 8ページ目からはちょっと産業論的な話なのですが、まずネットワークから見たときに、我田引水的なところがございますけれども、ITUの、これは2005年で少し古いデータですが、各国別の100キロビット当たりのブロードバンドネットワーク費用というような形で見ると、日本と韓国が世界で今一番安い。7円とか8円のオーダーで、一番高いノルウェーとかオーストリアに比べて100分の1ぐらいのインフラの料金になってきているというのが1つ。
 9ページ目は、それのいろいろなネットワーク絡みの推移を、97年から10年間分ぐらいを見ているということです。
 一言で言うと、固定電話が徐々に減ってきていますけれども、それを補って余りあるぐらいの値でブロードバンドが伸びてきているというようなことで、そのブロードバンドも、去年ぐらいからADSLが減ってきて、ファイバーが増えてくるというような状況で、間もなく逆転現象が起きようかというようなところにございます。
 それから、IPTVを支えるもう1つの技術としてフラットパネルディスプレー、LCD、液晶とかPDP、プラズマディスプレー、あるいは最近ですとSEDとかあるいは有機というようなものが実質的に出てきておりますし、少なくとも技術の世界では日本が全世界をリードしているのではないかというふうに思われます。
 11ページ目に入りまして、それからもう1つはHDのコンテンツですね。ハイディフィニッションのコンテンツは、やはり地上デジタルで一番充実しているのではないかというふうに思います。ブルーレイ等のパッケージのメディアも、それを追いかけるような形で広がろうとしておりますが、やはり地デジのHDコンテンツというのが非常に豊富でバラエティに富んだものがあります。
 このHDのコンテンツと、それから大型のフラットパネルディスプレー、並びにネットワークインフラ、この3つというのは日本が非常に強いところでございますが、この3つの要素はそのままIPTVの必要な3大要素、技術になります。したがって、IPTVを考えるときに、日本のこれらの技術というのは非常に重要だろうと思います。
 12ページ目は、IPTV周辺の通信、それから家電メーカー、それから放送が、ここ10年ぐらいどういうような位置づけにあろうかというのをちょっと出したものです。
 通信の方ですと、昔はインターネット放送とかいろいろなことをやってまいりましたし、現在でもNTTは3つのブランドでIPTVのようなことをやっていますけれども、なかなかビジネスとしては難しいというのが現状でございます。
 ただ、2010年に「光3000万加入」というのをNTTも約束しておりますし、それに向けてNGNという新しいネットワークも入れて、その中でIPTVというような、一番大きなサービスとしてとらえているところでございます。
 それから、メーカーの方から見ますと、私的使用の範囲での家庭でのハードディスクレコーダーというのは非常に大きな伸びである。
 それから、もう1つは、これは先ほどお話しいたしました大型のフラットパネルディスプレーが伸びてきているというような状況にあるのだろうと思います。
 それから、放送の方は、やはり何と言っても大きなイベントとして2011年7月のアナログ停波のことがございますので、デジタル化に向かって大きく動いているのだろうと思います。
 この地デジ、原則ハイディフィニッションでコンテンツをつくるというようなことから、徐々にデジタル化、デジタル化でいろいろな形での連携、あるいは融合というようなことが起こってきて、IPTVはその1つだというふうに考えることができると思います。
 13ページ目は、やはりいろいろなプレーヤー、いろいろなメーカーが、1つのサービスを、あるレベルでの共通化というものが行われないと、経済化、あるいはコンテンツの広がりということが行われないだろうということで、「IPTVフォーラム」というのが去年から発足し、動いてきております。
 「IPTVフォーラム」の中では、ここで新たに規格を決めるというよりも、もう既に民民でいろいろな形での規格というのが動いておりましたので、それらを取り込んだ形で、地デジのIP再送信とかIP放送、あるいはオン・デマンド・ワーキングの方ではVODとかダウンロードというようなものに対する規格を決めていこうということで、先日、10月2日にこれがオープンセミナーということで、世の中に対しまして、こういうことをやっていますよということをオープンにするというようなイベントも行ったところでございます。
 参加者といたしましては、これは当初の参加者しかここには書いてありませんが、東京の民放キー局並びにNHK、それからNTT、KDDI、それからソフトバンクも入っておりますが、通信事業者、並びに主要なメーカー等、あるいはケーブル関係の方というので、かなりのプレーヤーの方が入って議論しているというような状況です。
 14ページ目は、IPTVの1つであります、IPを用いました地デジのIP再送信というようなことに関しまして、ここ3年ほど実証実験をしてまいりました。14ページ目に書いてありますのがそれの一番新しい実証実験で、現在も行われているところですが、これを行うために、例えば制度、著作権法の改正、あるいは技術的にも、例えばちょっと細かい話ですが、地デジ、地上デジタル放送という左側に枠がございますが、そこに「H.264のトランスコーダ」というのが四角い枠でございます。これは、現在の地上デジタル放送が「MPEG2」という圧縮方式で送られておりますが、より効率的なシフトを用いるために、「H.264」というようなシフト方式に変換するというようなことを行っています。ところが、これは非常に技術的には難しいことでして、品質を落とさずに、なおかつできるだけディレーも無しに行うということで、非常な技術開発がここには必要だというようなこと。あるいは、下に自主放送だとか、あるいはVOD、これらのサービスが書かれていますが、これらを右側の1つの一体化されたSTB、あるいはテレビで受けるというようなことを実験しておりますが、そのためには、テレビメーカーあるいは放送事業者、さまざまな方々のご協力のもとで現在行っているというような今状況でございます。
 15ページ目は、これもどちらかというとMBA的な話なのですが、IPTVも、よく言われる「PEST」ですね、「PEST」のPはポリティカル、Eはエコノミカルというような形で、制度的にも、あるいは技術的にも、ビジネス的にも、あるいはユーザーからのアクセプタンス、ソーシャル的にも、このIPTVというものが受け入れられるというために、さまざまなプレーヤー、あるいは政府の方々、あるいは消費者の声というようなものも入れながらIPTVのビジネスモデルをつくろうというような今状況にございます。
 16ページ目は、先ほど一番最初にお話しいたしましたQoEですが、もう少し書いてみたものです。これは、ここに書いてある日本語は、そのまま、「IPTVフォーカスグループ」というのが行われております国連のITATの方から持ってきたものなのですが、総合的な受容性というものがそのQoEの中身です。
 例えば、下に図で、「選択・契約・視聴・ケア」というような書き方をしておりますが、ユーザーがあるサービスを選択する。例えばそれが東京で行われているものか、大阪で行われているものなのか、あるいは自分の持っているテレビ、あるいはSTBがそれに合致している性能があるかどうかというようなところから始まりまして、どこかに契約してそのサービスを受けるというときの契約の手順が簡単だろうか、電話でやるのだろうか、自動的にやるのだろうかというような話。あるいは、見ているときに自分の欲しいものを選択しやすいだろうか。あるいは、メディアのコンテンツの画質が十分にきれいだろうか。あるいは、先ほどのリモコンが使いやすいだろうか。あるいは、ケア、故障したときにちゃんと直してくれるだろうかというようなトータルな総合的な話がQoEでございます。
 それから、17ページ目は、「IPTVって、テレビライクな話なのでしょうか、あるいは、最終的にはPCの方での話なのでしょうか」というようなご質問がよくございます。それを考えるための図としてつくってみたものなのですが、横軸が、左側が単機能で、右側が多機能。縦軸がオフラインからオンラインということで、さまざまな現在のデバイスをプロットしてみますと、多分テレビというのはネットワークにつながっていて単機能だから使いやすいというようなことがあろうかと思いますし、PCというのは非常に多機能で、オフラインでもオンラインでも使えるというようなものだろうということで、この2つは対局的に、右側と左側というような形で書けるだろう。
 携帯は、もともとは左側に貼りついていて、テレビの丸の中に隠れるようなものだったと思いますが、それにカメラがついて、お財布がついて、音楽も聞けるようになって、GPSもついてということで、単機能だったものがどんどん右側、多機能の方に移ったものかなと。
 IPTVも同じような位置づけに、一番左側にくっつきながら、だんだん右側に伸びていくというような経過を今後とるのではないかと思います。そのときに重要なのは、第3象限、左下のところにあるさまざまな単機能のデバイスで、これらが非常に右上に影響するだろうと思っております。
 例えば、携帯にカメラがついたというのが左下の、デジタルカメラが右上の携帯の方に線が延びるのかもしれませんけれども、でもやはりデジタルカメラはデジタルカメラとして独自の市場を持っているということで、これらは、どれかに含まれるというようなことがあっても、それぞれはそれぞれとして伸びていくだろう。
 ただ、携帯電話だったら携帯電話の今後の発展に、左下のそれぞれのファンクションというのがいろいろさまざまな影響をするだろう。一番いい例は、アップルから出ましたiフォンかもしれません。iフォンは、恐らくこの携帯電話の伸びとは違う、左側の、例えば「PDAがネットワークを持つとどうなるか」というような発想から出てきたものだというふうにとらえる方がいいかもしれません。したがいまして、IPTVも、この第3象限とのやり取りの中でいろいろな発展をしていくのだろうというふうに思っております。
 18ページ目は、IPTVの話をするときに「IPTVって何だろうか」という提示をせずにしましたけれども、恐らくIP放送、IP放送の中にはCSとかBSの再送信とか自主放送とか、よく取り上げられる地デジのIP再送信とかが含まれるかと思いますが、そういうようなもの。それからVODとダウンロード、この3つのサービスが大きくは考えられるだろう。
 それで、そういうような例えば端末、従来はSTBで見るというのが多くのIPTV、現在でも諸外国でいろいろな形で行われておりますけれども、それが今後は標準テレビにそういう機能が備わってくるというのを私どもは理想としたいと思っております。
 そのためには、右側にあります通信事業者だけではなく、家電のメーカーの方、あるいは放送事業者、あるいはサービスプロバイダーの方のそれぞれの協力の中、コラボレーションの中でこのIPTVの世界ができるのかなというふうに思っています。
 それから、19ページ目に行きまして、では、IPTVって単なる今の例えば放送コンテンツを流すだけなの、あるいはハリウッドの映画を流すだけなのというところですと、IPTVの将来というのは限定的になるだろうと思っておりまして、やはりIPTVという新しいメディアが出てきたときに、そのメディアにふさわしい新しいコンテンツというものが要求されるのだろうと思っております。
 それが何かという答えを提示できればいいのですが、そこまでは行かなくて、私は恐らくメタデータ、メタデータというのは、ユーザーの嗜好とか、あるいはコンテンツの属性とか、あるいはコンテンツの内容とか、権利の表現を含むという、「データ・アバウト・データ」というような言い方を英語ではしますが、そういうメタデータとコンテンツが一体になったような新たなコンテンツというようなものが今後のIPTVにとっては重要だろう。
 それから、20ページ目は、これは電通総研の発表資料から持ってきたものなのですが、今後のIPTVのビジネスモデルをどう考えるかというときに、やはり広告モデルは重要だろう。ただ、従来の、1つのメディアに対する広告というよりも、IPTVの場合は、ここの中でインターネットが非常に伸びていることから、あるいはセールスプロモーションが伸びていることからおわかりのように、多分、デジタルサイベージ的な複数のメディアの中での広告というものをIPTVは強く志向するのだろうと思います。
 駆け足でお話ししてきましたが、最後の21ページ目、その標準化の話、先ほど日本でのIPTVフォーラムのお話をいたしましたが、グローバルにもIPTVというのは非常にホットな話題です。
 この後お話があろうかと思いますけれども、例えば、フリーの場合はフリーボックスというようなボックスを配って、その人が見ているかどうかはわからないですけれども、見られる状態になっているというような数です。そのようなことで、あるいはアメリカの方でも、at&tとかベライゾンが、10万とか50万とかというような値がこの前、9月に発表されています。そういうような数十万から100万、200万というようなサブスクライバーを得つつあります。
 ただ、それらはほとんどが、特にヨーロッパの場合は独立系の会社が行っていますので、将来、IPTVの中でのコンテンツ流通なんかを考えるときにおいては標準化というのが重要だろうということで、さまざまな標準化団体が今動いています。それらを統合するような形で、今国連のITU-Tの中に「IPTVフォーカスグループ」というのができまして、ちょうど来週、ここ東京でそのラップアップに近い第6回の会合が行われますが、非常に活発です。
 右下に参加者とコントリビューションの数を書きましたが、参加者の方は恐らくは東京大会が一番増えるだろうと思います。250名ぐらい全世界から来られる予定ですが、コントリビューションの数も200を超えるというような形で、ここがグローバルには1つ大きな力を持っています。
 ただ、そのベースになるものは、日本ですと例えば「IPTVフォーラム」とか、アメリカですと「ATIS」とか、ヨーロッパですと「DVB」とか、いろいろなところがその議論をしているというような今は状況でございます。
 以上、雑駁でございましたが、「IPTVの動向」ということでご報告させていただきました。

○久保利座長 どうもありがとうございました。
 ただいま参考人からいただいた意見につきまして質疑を行いたいと思いますけれども、その前に、久保委員がご都合によって途中退席されます。久保委員の方から、時間の関係もございますので、ちょっと順番が逆になりますけれども、よろしくお願いしたいと思います。

○久保委員 わがままを申しまして大変申しわけございません。 資料3−1を出させていただきましたのでご覧ください。
 政府が掲げるコンテンツ産業規模の数的目標は、2015年で市場規模19兆円と発表されています。これを達成するためには内需拡大も重要ですが、輸出を伸ばしていくことがより効果的であるとの見方が一般的です。
 そのためには、現在は1.9%ほどしかないコンテンツ産業の国際市場依存度をアメリカの17.8%にどれだけ近づけられるのかが大きなポイントだと思われます。そのためには、著作権に関する問題解決に向けた環境整備が急務です。今回、参考人よりご説明頂いたIPTVに関しても、著作権法との関わりをどうするのかということは大きな課題です。
 前回の会議で、「日本の著作権法は、国際協約であるベルヌ条約を越えた権限を著作権者に与えている」との指摘がありました。個人的には理解できるお話しだと思っております。しかし、一方で、「ビジネス振興のために、既に与えられた個人の権利を制限するのはいかがなものか」という意見があるのも事実です。
 著作権法をもう一度読み返してみますと、目的の項目には、「……文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」とあります。
 一般的に、著作権法は個人の権利、財産を守る法律とのイメージがありますが、法の目的には「文化の発展に寄与すること」とあります。この点を国民に周知して頂く作業をするべきだと思います。
 YouTubeといった新しいビジネスを、法律的にグレーだからという理由で否定し続けることはもう不可能です。また、違法性を薄めるためにサーバーを海外に置くというやり方も健康的ではありません。近い将来、国民的合意のもと、法改正が必要になっていくと思量します。そして、そのときのために様々な環境作りの準備すべきではないかと思っております。この法の精神を今一度、幅広い関係者に説明しておくこと必要があると考えます。
 2番目には、放送と通信の融合問題の解決作業が停滞している点についてです。現在、米国の放送局にテレビの番組を販売しようとしますと、「送信可能化権を付帯してほしい」というリクエストを必ずもらいます。
 アメリカでは「i-tune store」等で、テレビの人気コメディ番組が16話で9ドル95ほどで月単位、シーズン単位でまとめ売りされています。このダウンロードビジネスが、コンテンツホルダーにとっても重要な収入になってきております。アメリカのテレビ局は、送信可能化権のないコンテンツには全く見向きもしなくなってきているのです。
 一方、日本国内はどうなっているかといいますと、さまざまな会議が設定され、意見交換や交渉が行われているということは存じておりますが、海外の変化から考えますと進みが遅い印象が強いです。アメリカのビジネスが3カ月単位でどんどん変わっていくのに、日本は全く追いついていけません。速度を上げて追いかけていくためには、権利者間の話し合いをぜひとも推進していただくように希望します。
 3番目には、これはクリエイター、つまりコンテンツ制作者についての課題です。依然として日本のコンテンツを制作する現場では、国際マーケットへの配慮というものが欠けていると感じています。日本のコンテンツ制作は、韓国のように海外に出ていかないとリクープしないという背水の陣的状況には陥っていません。それゆえ、ドメスティック・オンリーのコンテンツ、言い換えると内容的に海外展開が不可能なコンテンツが大多数を占めています。コンテンツを制作する現場には、海外でヒットさせたいとか、海外の人がどう思うだろうかというような視点があまり感じられない状況が続いているのです。
 コンテンツの輸出は文化の輸出であり、国際的な日本文化の共通体験がもたらす恩恵は測り知れないという事実をぜひともより多くの制作者に認識して頂けるような、そんなPR活動が必要になっていると思います。今後、国際的な視点を意識しながらコンテンツを制作する人が増えてくることを期待したいということでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。

○久保利座長 ありがとうございました。
 それでは、元へ戻りまして、先ほど岸上参考人からいただいた意見を踏まえて、ご発言のある方はネームプレートをお立ていただいてご発言いただきたいと思います。1回のご発言は、お一人3分以内ということでお願いします。
 では、浜野委員、どうぞ。

○浜野委員 1つ質問があります。IPですから、海外にも直接届けようとすれば届けられるわけですね。インターネットに国境をつくることは技術的に可能ですが、国際競争力の強い国際企業が、スポンサードしているテレビ番組が世界中に向けて一斉に放送することも不可能ではありませんし、国際的に受け入れられる魅力度の高いコンテンツをたくさん持つ国もあるわけです。そうなれば一方的に輸入超過になるような国も出てきて、防ぐ方法がないのではないでしょうか。
 IPTVが国際放送の方向に行くと思いますが、コンテンツで強い国がますます強くなる可能性もはらんでいるのではないかと思って私は危惧しているのですけれども、その点はいかがでしょうか。

○岸上参考人 私の立場から言うと、純技術的なお答えしかできないわけなんですが、一般的にIPTVをやるときには、CAS、あるいはDRMというような形での視聴制限、あるいは暗号化するというような形での、契約している人にしか見られないというような形を、一般的には行いますので、そういう形で1つは防げるかなと。技術的にはですね。
 ただ、それはプロバイダーのビジネスモデルによりますので、そういう全世界を対象にするような形で流れてきて、なおかつそれをビジネスにするというのを日本の代理店が請け負っていれば、それはそのまま流れることにはなると思います。
 そういう意味では、もう少し言いますと、コンテンツ自体が、IPTVの場合は非常に個人の選択の範囲が増えてしまうだろうと。増えてしまうというのは、別にネガティブな言い方をしているわけではないのですが、現在、例えばテレビ局、東京、関東広域ですと地上波だけだったら9チャンネルぐらいから選べる。それが、例えば1万チャンネルから選べるとか、10万チャンネルから選べるみたいなイメージのサービスになろうかと思いますので、ユーザーが非常に、どういうのを選ぶかというのは、よく言えば選択の幅は広がるだろうなと。
 悪く言うというか、危惧されるような、どこか強いところが一方的にというような危険性はあることはあると思いますが、当面は、先ほどお話しいたしましたCASとかDRMがありますので、そういうのを日本の方でビジネスされるという代理店なり、あるいはシンジゲーターなり、何かそういう方が出てきてやるということがないと、実際には流せないというような状況かと思います。

○久保利座長 ありがとうございました。
 和田委員、お願いします。

○和田委員 17ページの図なんですけれども、ゲーム機がローカル/オフラインであり、単機能ということなんですが、現在のゲーム機はすべてネット対応で、すべて多機能になっております。
 また、ゲーム機の際立った特徴はディスプレーを持っていないというところでして、20年前から、唯一、ゲームだけが、受信機としてではなくディスプレーとしてテレビを使っていたという経緯があります。
 つまり、例えば、現状の受信機付き画像出力機に現状のゲーム機が内蔵されると、ほぼ、高機能IPTVと言えなくもないわけで、その意味で言えば、現段階で日本だけでも数百万世帯が、既にこの機能を持っているということになります。
 なぜこんなことを申し上げたかというと、IPTVについて考える時、実質的、機能的には、現状でもう数百万世帯がそういった環境を享受しているということから、ここを実験場として見ても良いのではないかと思うからです。例えば、今このペーパーで議論されていたような問題がこれまでゲーム産業において問題視されていなかったのはなぜかというのが、1つの視点になり得るのではないでしょうか。
 ここで例として、公共性の問題を捉えてみます。
 ゲーム機ですから、ゲームをやろうと思って、ゲーム機を買って、それからゲーム関連のサービス、コンテンツも意図して買って、サービス、コンテンツが双方向であるから、コンテンツを楽しむ際にもひとつひとつの選択に果てしなく自分がかかわっていく。ゲームは非常に主体的なものなのです。全く、瞬間、瞬間で、自分が選択して行動しないと事が起きないようになっておりますので、恐らく機能的にはIPTVと同じ環境であるにもかかわらず、今行われているような問題が、問題として表面化しなかったのではないかというふうに思います。つまり、公共性の論点についても、受動か能動かという度合いというのも、1つの観点としてあり得るかもしれないということが、ゲーム業界の「経験」から指摘し得るということです。

○久保利座長 これは、参考人の方からお答えを何かいただく必要はありますか。

○和田委員 どちらでもいいのですが、もしございましたらお願いします。

○岸上参考人 お答えというより、コメントを。
 ありがとうございました。ゲーム機の位置づけに関しましてはちょっと、おっしゃるとおりで、余りこれは適当ではなかったと思います。
 それから、IPTVというのは人によって定義がまちまちですので、今おっしゃった形で広くとらえたときに、ゲーム機、確かにIPTVと同じ機能が持たれるかもしれません。
 ただ、今例えばIPTVフォーラム、あるいはITU-Tで議論されておりますIPTVというのは、どちらかというとハイディフィニッションで、ネットワークはマネージドされたIPネットワークというような形で、かなり、しかも限定的に共通のCAS、あるいはDRMを持つというような状況の中でどうするかというようなことが割と多くて、そういう範疇でのIPTVというのに今のゲーム機というのがそのまま対応されるのかどうかというような話が、1つ必要かと思います。
 以上です。

○久保利座長 では、廣瀬委員、お願いします。

○廣瀬委員 先ほど出ました浜野委員からのコメントですが、実は音楽の世界では、2年ちょっと前からi-Tuneサービスが始まっておりまして、i-Tuneサービスの中身を見ますと、曲目のラインアップは圧倒的に洋楽と呼ばれる世界なんですね。海外の音楽、洋楽が大半を占めております。
 一方、日本の音楽マーケット、CDマーケットを見ますと、実はCDの売上の8割近くが邦楽であって、2割前後が洋楽であるという、こういう比率になっております。
 i-Tuneが日本のマーケットで活動を始めました結果、海外の洋楽の比率が急激に増えたかといいますと、実はそれを一部期待しておったのですが、それほど増えていないわけですね。したがいまして、なかなか、世界中のコンテンツが日本国内で利用、あるいは入手できるとなっても、やはりある種のローカリティというのはかなり根強く残っているのではないかと思っております。

○久保利座長 ありがとうございます。
 ほかには、いかがでございましょうか。では、角川委員、お願いします。

○角川委員 14ページの説明のところで、著作権の問題を触れられたのですけれども、異議と言う事ではなく、お聞きしますが、参考人はどういうところに著作権の問題があると思われますか。

○岸上参考人 お答えいたします。ことしの1月11日から施行されました著作権法の改正によりまして、IP再送信におきまして、従来隣接権者の方に対する許諾権というのが報酬請求権になったというところが一番大きなところでございます。これがないと、やはり再送信を行うというのが現実的には難しかったかなというふうに思っております。
 以上です。

○久保利座長 ありがとうございます。
 議論は尽きないのですけれども、参考人のお時間の関係もございますようですから、このあたりで、もしほかにご発言がなければ一たん締めたいと思います。よろしゅうございますか。
 では、岸上様には大変ご多忙のところ、有益なお話を承りましてありがとうございました。心から感謝申し上げます。ありがとうございます。
 それから、次に「新たなサービス展開に関する現状と課題について」という議論をいたします。事務局の方から、資料に基づいてまずご説明ください。お願いします。

○吉田次長 それでは、資料2をごらんいただきたいと存じます。
 これは、今日のテーマでございます「新たなサービス展開」の関係で、主に知財法制の観点からまとめたものでございます。このテーマの関係では、もちろんこれに限るだけではなくて、ほかにもさまざまな課題があろうかと思いますけれども、これは今後の議論の中で深めていただければと思いますが、とりあえず知財法制の関係につきまして状況をご説明申し上げます。
 2部構成になっておりまして、2ページ以降のところで、Tとして「通信と放送に関する知財法制の在り方」ということでまとめております。
 3ページをごらんいただきますと、これは「コンテンツの流れ」でございます。左側の方に、創造を行います著作権者や、あるいは著作隣接権者がございます。右側の方に、最終的な利用者いうのがございますが、その間をつなぐ「流通」という部分で、流通には、映画とかDVDとかCDというようなパッケージがございますけれども、放送や有線放送、さらには通信、こういったあたりが非常に有力な流通手段として出てきているということを言っているわけでございます。
 4ページのところをごらんいただきますと、その中で幾つかピックアップしてみたものでございますけれども、4ページのところは、先ほど岸上参考人の方からもお話のございましたIPTVに関するものでございます。
 上の放送と有線放送の場合には、情報は常に受信機まで届いているという形で整理しておりますが、真ん中あたりにちょっと囲んでおりますけれども、IPマルチキャストにおける自動公衆送信の場合には、利用者がリクエストに応じて選局するというようなことで、法律の上ではこれは区別をなされているわけでございますけれども、最初の2行に書いてございますように、IPマルチキャストによるストリーミング型配信は、利用者の目から見れば有線放送とほぼ同一の効果があるというようなことでございます。
 次に、5ページのところをごらんいただきますと、これは携帯端末向けのマルチメディア放送ということでございます。放送を使いまして、携帯向けにストリーミングコンテンツ、ストリーミングサービスであったり、あるいはダウンロードサービスであったりというようなことがあり得るわけでございますけれども、この中のストリーミングサービスについては従来の放送と同様に考えられるのかもしれませんが、ダウンロードサービスにつきましては、今通信の世界でネット配信などの形で行われているものとほぼ同様の機能を果たしているというようなことがあるわけでございます。
 次に、6ページをごらんいただきたいと存じますが、ここはインターネットラジオでございます。右側の方に従来型のラジオ放送がございます。それで、左側の方にいわゆるインターネットを使いましたラジオということが出てまいります。これも、ストリーミング型のインターネットラジオによる配信につきましては、利用者から見ますと放送とほぼ同一の機能を持っているというようなことが言えようかと思います。
 次に、7ページをごらんいただきますと、ここは、今申し上げましたものも含めまして、さまざまなこういった放送や通信にかかわりますサービスを俯瞰したものでございます。左側の縦の罫のところに放送、有線放送、それからIP配信といったものがございます。また、横の方には、ストリーミング型とダウンロード型に大きく分けまして、ストリーミング型につきましても、同時再送信と自主放送とVODというふうな形で分けているわけでございます。
 例えば携帯端末の場合でございますと、放送を伝送経路とする場合にはマルチメディア放送というのがございますが、これはストリーミング型からダウンロードまで、ここにずっと延びているというかたちでございます。
 それから、IPTVは、先ほど岸上参考人の方からもお話がございましたように、これも同時再送信から自主放送、VOD、ダウンロード、そういうふうなところにもまたがっていくものでございまして、その中のIPマルチキャストというのは同時再送信と自主放送という形で今のところ整理できるのだろうと思います。
 その下に、インターネットテレビですとかあるいはインターネットラジオ、さらにはライブ配信あるいは音楽配信というようなものが入ってきているというようなことでございます。
 そこで、ここは現在のサービスの現状でございますけれども、次の8ページをごらんいただきますと、これは現在の著作権法制につきまして、関係の権利者にどのような権利が与えられているかということを整理したものでございます。
 放送につきましては「放送権」、通信については「送信可能化権」、著作者の場合には「自動公衆送信権」というふうに言いますけれども、そのポイントも、送信可能化というところにはまりますので一応「送信可能化」ということで統一させていただきましたが、「放送権」と「送信可能化」という形で権利関係が分かれているというところでございます。
 9ページのところをごらんいただきますと、これはさまざまなサービス形態に現行の著作権法上の権利関係を落としてみたものでございます。非常にさまざまな利用形態がございますので、ここの中では、真ん中の方にございますが、「レコード音源を利用した自主制作番組サービス」、いわゆる自主放送的なものですね、を取り上げております。
 著作権の分野におきましては、基本的に権利は、若干でこぼこはございますけれども、いずれにしても許諾というものにかかわってくるということでは変わりはございませんが、実演・レコードといった分野につきましては、放送あるいは有線放送というところでは、許諾権ではなくて報酬請求権という形になっている。
 それに対しまして、通信、これはIPマルチキャストのところをごらんいただきますとよくおわかりいただけるかと思いますが、ここは送信可能化権ということで許諾権の世界になっているというところが大きな違いでございます。
 なお、先ほど岸上参考人の方からお話がございましたように、その右側の放送を同時再送信する場合の実演・レコードの権利関係につきましては、昨年の著作権法の改正によりまして、報酬請求権という形で、ここは有線放送と同様の状態になっているということでございますが、なお、インターネットラジオですとかインターネットテレビの関係につきましては、従来と同様の権利関係になっているということであります。
 あわせて、著作隣接権の付与の問題もございますけれども、通信関係につきましては、現在著作隣接権者としての位置づけはされていない、こういった状況でございます。
 10ページをお開きいただきたいと存じますが、ここでは通信と放送の垣根が非常に低くなってきているわけでありますけれども、その中で、この権利関係を見直す際の視点として、こういうものがあり得るのではないかということで記述をしてみたものでございますけれども、従来のように放送と通信というようなその区分ではなくて、利用者、ユーザーが享受するサービスの形態や特質、そういったものに着目した見直しという視点が必要なのではないだろうかということです。
 その際、例えばということで、先ほどちょっと見ていただきましたようなストリーミング型のサービス、つまり視聴を目的にしたサービスなのか、あるいは、手元に複製物が残るという形でのダウンロードサービスなのか、こういったあたりの区分も1つ、考慮の予想として出てくるのではないだろうか。
 また、一方で、IP関係のさまざまなサービスにはまさに多様な形態があり得るものですから、単にストリーミング型・ダウンロード型というだけの区分でもまたいかがなものかという部分もあろうかと存じます。そういった意味で、ここではサービス提供事業者の公共性の視点というようなものを出しておきましたけれども、これ以外の視点もあるのかもしれませんが、ほかの要素についても、これはやはり考慮する必要があるのではなかろうかといった形でまとめております。
 11ページのところは、これは放送通信法制の関係で、今現在総務省の方で議論が進められておりまして、皆さんもご承知の3つのレイヤーに分けて検討してみたらどうかという話でございます。
 それで、ちょっと時間の関係もございまして先を急がせていただきますが、12ページのところから、少し個別の話題に入っております。
 まず、最初にネット検索サービスの問題でございます。これは、第1回の専門調査会の場でも何人かの委員からお話がございましたけれども、こういった情報を検索するための検索サービスの関係につきまして、今現在の著作権法制では、この事業者が著作権法に牴触する恐れもあるわけでございまして、国内に検索サーバーを置いた事業といったものが育っていないというような実態があるわけでございます。
 そういったところから、このネット検索サービスに係る法的な問題を明らかにして、早急に必要な法的措置を講ずるべきではないかということをここで挙げております。
 次の14ページは、その概念図でございます。
 15ページをお開きいただきますと、今度はまた別の視点でございますけれども、こういったインターネットですとか、あるいはさまざまな録音・録画機器、そういったものを用いまして、ユーザーの行います録音・録画やその視聴放送の手助けをする、そういった行為を行う方が若干おります。
 物理的な利用行為の主体、これを「直接行為者」とこういうふうに言いますと、そういった手助けをする方は「間接行為者」ということになってくるわけなんですけれども、そういった方々の法的な位置づけといったものをどうするかということでございます。
 この関係につきましては、法律的な世界では「カラオケ法理」と言われているものがございまして、ここで、目的ですとか、あるいは管理支配性ですとか、あるいは利得性ということに基づいて間接的な行為をしている方についても、著作権侵害に当たる場合があるというようなことでございますが、ただ、このサービスの多様化ということを考えますと、あらかじめ予見可能性を持っておくという観点から、明確な基準が必要ではないだろうかということで、その点についての法的措置をできるだけ早く明らかにすべきではないか、こういった視点でございます。
 次の16ページは、その関係でこれまで問題になりました幾つかの事件について、簡単に図示しております。
 最後の17ページの関係は、少しこれは細かい問題になりますけれども、IPマルチキャスト関係につきまして、同時再送信というものをどうとらえるかという問題でございます。今現在は、衛生放送からの同時再送信を巡りまして、気候不順によりまして衛星からの電波を十分に受けとめられないという場合には、別途、光回線でテレビ映像などを入手いたしまして、そして再送信に回しているというふうな実態がございますけれども、これにつきまして、電波を受けて同時再送信をする場合には、許諾は不要で「報酬請求権」という形になりますけれども、光回線を通じていく場合には、これは自主放送と同じ取り扱いになりますので、許諾が必要ということがございます。こういった違いといったものも、まだ現在のところはあるということでございます。
 以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 それでは、事前に資料をご提出いただいております南場委員と浜野委員から、それぞれご発言をお願いしたいと思います。
 南場委員、お願いします。

○南場委員 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の代表をしております南場でございます。私どもディー・エヌ・エーは、一般に携帯の業界では「コンテンツ・プロバイダー」と呼ばれる分野で事業を展開しております。私どもが運営しているサービスを事例にご紹介するのが一番よいかと思いまして、事例の紹介と、それから制度上の課題ということでお話させて頂きます。
 2ページにございますのが、サービスの会員数と月間ページビューです。これはモバゲータウンというサービスです。昨年2月に開始して以来、今や若者を中心に使っていることが当たり前というくらいに急成長し、非常に多くの人に使って頂いている携帯電話でのゲーム&SNSのサービスです。これを事例にお話し申し上げたいと思います。
 昨年2月に開始したのですが、今年9月末の会員数が743万人となっております。月間ページビューは、9月が133億ページビューでございます。なお8月はちょっと夏休みの関係で多くなっています。
 3ページ目をごらんください。主な携帯サイトの1日当たりのページビュー、総アクセス数、のグラフです。このように、8月は夏休み効果がありまして、1日5億ページビューという、感覚としてどれくらいかはわかりづらいかもしれませんが、大変大きな数字になっています。
 比較のために、同じ携帯上で3大サイトと言われるその他2つのサイト、mixiモバイルとYahoo!モバイルの数字を持ってまいりましたが、この2社も驚異的に大きい数字であります。1億とか2億というページビューを1日で出しているサービスです。
 このモバゲータウンをだれが使っているかということを、4ページ目でご紹介します。男性6割、女性4割でありますが、年齢構成をごらんいただきますと、このブルーの部分が10代です。そして、黄色とレモン色の部分が20代以上となります。
 ご覧いただいてわかりますように、200万人達成時から600万人達成時までグラフで並べていますが、どんどん10代の割合が減って、20代以上の割合がふえております。
 一番右のグラフをごらんください。10代の割合が減っているとはいっても、全人口におけるモバゲーユーザーの利用率でいうと、例えば16歳男子は6月時点で52.4%となっています。今時点ですと、もう少し大きい数字になっています。ですから、10代後半の男女にとっては常識的なサービス、使っているのが当たり前と言ってよいくらいの状況にあります。普通のサービスですと、大体3割を超えるとみんなが使っているように見えるわけですが、5割を超えているサービスがあるということでございます。
 ではこのサービスは一体何なのかと申しますと、1つはゲームです。カジュアルなゲームはすべて無料で提供されていますし、オンラインでリアルタイムの対戦が出来るゲームなども充実しています。
 それから、「SNS」と言われるソーシャル・ネットワーキング・サービス、コミュニティ系のサービスです。6ページをごらんいただきますと、日記をつけることができる機能の紹介をさせていただいています。今日あったことを、いつでもどこでも簡単に書き記すことができます。左の「モバ友達ってありがたいなぁ」といったたわいもない話、自分がちょっと今落ち込んだり焦ったりしたのだけれども、モバ友様々だよ、いろいろ励まされて、ありがとうと。そうすると、コメントに、無理はしないようにねとか、自分だって君に助けられているよといったいろいろなコメントがあります。また、人の日記に感想や激励などのコメントを残すことができ、画像なども掲載することができます。1日の平均日記投稿数は、48万回を超えております。
 それから、サークル活動というのがありまして、7ページにありますように、共通の趣味を持った仲間がサークル活動をすることができます。あるいは、掲示板を作成して、その中で情報交換を行うことができます。これは勉強のサークルで、「勉強宣言」という掲示板ですが、「これからやるぞ」とか、「30分、集中する」とか、「携帯電源をオフにします」とか、そういったことを宣言して、勉強に没入するというものであります。
 モバゲータウンにおいては、「オフ会」、いわゆるバーチャルな場以外で、リアルで会うということをルールとして禁止しております。
 サークルの数は全部で55万のサークルが立ち上がっていまして、掲示板の1日平均の投稿数は251万にのぼります。
 さらに、8ページ、「質問広場で知りたいことを尋ねる」ということで、こちらは「赤ちゃんポストについてどう思いますか」というような質問に、若い男女が、賛成だとか反対だとかということを一生懸命議論をまじめに取り交わしている場です。部活ですとか、恋愛、人生相談も多いです。それから、「勉強を教えてくれ」というのもあります。それから、このような社会問題もあります。
 寄せられた回答に対して、投票したり、感謝をしたりということができます。
 公開中の質問の数は今73万となっています。
 さらに「クリエイター」コーナーでは、自分が創作した音楽や詩、小説等の作品を発表することができます。特定の作家、作家といっても素人の作家さんですが、そのファンになるということもできます。
 そこで、「モバゲー小説大賞」ですとか、「ミュージックオーディション」などを開催しています。優勝者については「小説大賞」では出版が決まっておりますし、「ミュージックオーディション」ではデビューも決まっています。
 8月現在で26万品の小説や詩が、うちほとんどが小説ですけれども、発表されていますね。
 このモバゲーの目指す姿は、今は無料のゲームとSNSが中心ですが、様々なコンテンツを載せてポータルにしていこうという戦略で取り組んでいます。例えば私どもがやっていますeコマースのコンテンツですとか、今申し上げたような投稿系ですとか、ニュース、天気予報、乗換案内、それから検索エンジンなどを投入しています。
 ただ、やはり気になりますのは、若年層のユーザーさんが多いので、このコミュニティの健全性を維持するために、かなりのコストと労力をかけてやらなければいけないことがあります。
 1つは、ルールをしっかりと、例えば「外での出会いは禁止ですよ」とか、「実際の、本当のメールアドレスの交換は禁止ですよ」といったようなルールをはっきりさせていくということ。あと、誹謗、中傷ですとか、公序良俗に反する書き込み等、そういったものをきちんと禁止していますということを明文化して知らせしめるということです。
 それから、パトロールが挙げられます。モバゲーでは24時間、365日体制で監視をしています。そして、違反する書き込みを抽出して削除したり、啓蒙するということをやっております。
 こうした違反を見つける手段として、サンプリング調査やキーワードなどによる検索であるとか、画像・動画の全件目視チェックをしています。
 また、ユーザーさんとの協力関係の中でこのコミュニティの健全性を維持するということで、ユーザーさんにも積極的に参加していただいています。サイト内の多くのところに通報ボタンを設置して、ユーザーにコミュニティの浄化活動に参加して頂いたり、サークル主催者のリーダーシップなどもあります。
 あと、全般的に啓蒙活動を積極的に行っております。
 これだけやっても完全ではなくて、なかなか100%ということはあり得ないのですが、このような努力によってサービスの健全性を維持するということが、どうしても、多くのユーザーに使っていただくコンテンツ事業者にとって必要なことであり、またこれをやっている、やっていないが恐らく事業者の差になってくるのだろうなと考えています。
 このようなサービスを提供している事業者として、12ページにございますが、課題と感じること、特にこの制度上の課題ということでお話したいと思います。例えば、わかりやすい話でいうと、フィルタリングサービスというものが有害サイトから未成年を保護しようということで行われています。我々のように、24時間、365日、相当なコストをかけて、サービス存続の必須条件として、健全化に向けて自助努力をしている事業者と、ほとんどそういったことをケアしない事業者が、等しく「有害サイト」というふうにカテゴライズされて、もしフィルタリングで外されるとすれば、携帯サイトを購入するときに、「有害サイトのフィルタリングを使いますか」ときかれて「使います」と言うと、全部除外されてアクセスができなくなるわけです。努力をしている企業とそうでない企業が等しく除外されてしまうとなると、業界全体として自助努力を促進しない方向になってしまうだろうというふうに感じており、問題意識を覚えております。
 それから右の方に行きますと、前回も言及いたしましたように、メール規制について、今このような動きがございます。これは前回の繰り返しですので細かくは申し上げませんけれども、私どもは個人に無承諾でメールを送っていませんが、店舗事業者に対しては法律に則り、未承諾広告を送っています。具体的には、店舗さんに対して、ショッピングサイトへの参加を呼びかけるというような広告です。
 例えばこういった行為は対象にならない、すなわち「事業者宛に送るメールなどは禁止しませんよ」ということをはっきりうたっていただきたいと思います。あるいは、オプトイン規制といって、あらかじめ承諾をしているメールしか送らないという規制について、この承諾のやり方、オプトインの方法までこと細かに規制されてしまうと、やはり事業者の創意工夫を阻害してしまう可能性がありますし、通常我々がやっているやり方はほとんど否定されてしまう可能性もあって、非常に危惧しています。
 前回も申しましたが、新しいデジタルサービスを立ち上げよう、あるいはコンテンツサービスを立ち上げようとしたときに、特に中小企業にとっては、コスト効率のいい告知の手段としてやはりメールは重要ですので、そこに関してもバランスのある判断をしていただきたいなと思っています。非常に危惧しているところであります。
 あとは景表法ですが、例えば特定の携帯電話を使っていないと利用できないサービスなどを、クローズド懸賞、一般懸賞とするのか、オープン懸賞とするのかというようなところ等々、基準がまだあいまいで、おっかなびっくりで私どももやっているところがございます。
 代表的なものだけ書きましたけれども、基本的にこのように基準がはっきりしないものや、現実に即さないもの、あるいは消費者の保護、そういったことは非常に重要である一方で、その議論の中で、事業者の中でもまともな自助努力をしている者の行動範囲まで急激に狭めてしまうような、バランスを欠いた議論がされていないかどうかの検証を、今行われている議論の中できちんと担保して見直していただきたいなと思います。それから、新たな規制を設ける前に、既存の規制の運用をしっかりやっているかどうかについての検証も行って頂きたいと思います。
 特に、オプトインメールや迷惑メールの話は、今既にある法律を破っている事業者が山ほどある中で、取締りが全く不十分ではないかと感じます。そういった中で、さらに新たな規制を設けるというところなど、幾つか、規制の強化の方向については、事業者として大変危惧しているところがありますので、改めてこれらの事例をもって申し上げたいというふうに思っております。
 以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 あとは、浜野委員からも事前の意見書が出ておりますので、よろしくお願いします。

○浜野委員 今の説明に入る前に、先ほどの岸上さんへの質問について補足します。かつてNTSCというテレビの送信技術があったときに、ヨーロッパでは、アメリカの番組が直接放送できないように、あえてPALという異なる技術を採択しました。技術が統一化できればいいとは、政治家は考えません。文化を守ることも考えます。だから、そういう議論が今回もあるのではないかと思って、そういう趣旨でお聞きしました。
 それで、先ほどの久保さんの補足になりますが、日本は体力があるうちに海外市場を考えて輸出の態勢を強化しておかないと、体力が低下するとそういうことも議論できませんので、今やらないとまずいのではないかと思います。
 それで、即座にやれることとしては、重延委員の「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」は日本に呼び込む努力として行われていています。海外での努力としては、財源的なことを考えると即座にできるということは、日本政府が関係した既存の文化紹介施設があるので、それを活用したらいいと思います。例えばパリの日本文化会館とか、シンガポールで新たな日本の文化を紹介する施設ができるそうですので、そういったところの有効な活用をやっていただきたいと思います。
 それと、海外には日本に関連するイベントがたくさんあり、アメリカでは毎週どこかでアニメーションとかゲームに関するファンの集いがあります。そういったことがネットワーク化されておりません。そこで何が議論されて、何が人気があるかといった情報のフィードバックはありません。そういったところにゲームデザイナーの方とかアニメーターの方を派遣するとか、そういった情報のフィードバックをできるだけ業界で共有できるような努力をしていただきたいと思います。
 同様に、今JETROが、海外のコンテンツ市場とか輸出・輸入の調査をやってくださって、大変貴重な資料になっております。もちろん、各国にはそういったデータがあるのでしょうが、やはり日本語で書かれた資料でないと、利用も限定されます。アメリカでは1920年代から商務省がそういう資料を集積しておりますので、やはりそういったものをぜひとも拡充していただきたいと思います。
 海賊版を少しでも正規の収入に転化できれば、これ以上に海外でマーケットに売り込みをしなくても大きな収入になるわけですから、海賊版については、真剣に取り組む体制をぜひともつくっていただきたいと思います。
 某国の専門家に聞きますと、海賊版パッケージのビジネスモデルまで崩壊していて、海賊版のパッケージが儲からないぐらいネットに犯されているのだそうです。これは直ちに着手して、各国と協調してこういった対策をとっていただきたいと思います。
 本日の趣旨と違いましたけれども、以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 最後に、今日はご欠席なのですが、木村委員から意見書が出ております。その内容について、補足説明するためにソニー株式会社、コーポレートアライアンス部の担当部長、大塚参考人がお見えになっております。大塚参考人からご説明いただければと思います。

○大塚参考人 ソニーの大塚です。
 冒頭、1枚めくっていただきまして、最初にご紹介したいのが「OPEN IPTV FORUM」ということで、今年3月に私どもを含む9社で設立した、IPTVのエンド・トゥ・エンドのソリューション、そのスペックを開発する、しかもオープンスタンダードベースのテクノロジーによって開発していこうという標準団体でございます。
 テレコムオペレーターさんとして、AT&T、France Telecom、Telecom Italia、そしてネットワークのインフラをつくっているEricsson、NokiaSiemens、そして家電の4社、Panasonic、Philips、Samsung、そして私どもSony、こういうメンバーで、インダストリーの枠を越えた標準化イニシャアティブというのを進めてきました。
 ことしの年末に1st spec.をリリースする予定で、こういう会社さんと、あるいはそのほかのオペレーターさんも含めて、特にこの1年、非常にインテンシブにIPTVに関する意見交換、ビジネスディスカッションというのを進めてまいりました。
 今日の以下のお話は、こういうところから私ども自身が非常に強く感じていること、それから現在の欧州のIPTVに関する状況というのを、かなり主観も交えていますけれども、ご説明したいと思います。
 3ページ目ですが、IPTVの全世界のSubscriberの実績と予測ですけれども、これもさまざまなデータが実は出ておりまして、特に予測の部分に関しては、非常に強気な見方から弱気な見方があるのですけれども、2006年で390万人、2010年になると、強気な見方では7,500万人という数字が出ています。11年には1億人を超えるだろう。
 ただ、7,500万人という数字は、これはほぼアメリカのケーブルの世帯と同じ数字でして、これをもって非常に大きな市場なのかどうかという議論は、実は社内でもいろいろあったのですけれども、最新のデータ、今週ちょっと見つけたデータなんかを見ますと、2006年6月からことしの6月までの1年間で、前年比179%増で、いよいよ800万人を超えた。そのうち、ヨーロッパが500万人に達する。しかも、地域的には一番伸びていて、230%の伸びというデータもありますので、市場規模がどうかということはさておき、成長率としてはものすごく伸びているというふうに認識しています。
 2006年のこの390万人の内訳を見ますと、第2位の香港のPCCWを除きますと、上位5社のうち4社がヨーロッパベースの会社です。
 もう1枚めくっていただきますと、欧州各国、ほとんどの地域で既にIPTVのサービスが始まっています。現在どんなサービスが行われているのかといいますと、一番先進国であるフランスを例に取りますと、例えば月額40ユーロ弱を払うと、ADSLベースの高速インターネットのサービス、それから、voice over IPが無制限で使える、これに加えてテレビ番組が41チャンネルついてくる。さらにデジタル地上波放送やビデオ・オン・ディマンドへのアクセスもついてくる。
 さらに20ユーロを追加すると、衛星放送で見られるプレミアムチャンネルですとか、あるいはHDのコンテンツとか、そういったものが追加料金を払うとついてくるということです。
 イタリアとかスペイン等、IPTVの比較的先進国では、ほぼ同様のサービスが、料金体系は若干違いますけれども、既に提供されているということです。
 もう1枚めくっていただきますと、こうしたIPTVの成長の背景にあるものは何かと考えてみますと、まず、テレコムオペレーターさんの事情について、固定系の事業、特に音声サービス、これは徐々に低下していくという中で、新しい収入源としてIPTVというものに力を入れていらっしゃる。
 それから、ケーブルや衛星放送、それからISP、こうしたプレーヤーによる音声サービスへの参入というものに対抗するために、逆にテレコムオペレーターさんがビデオ・サービスに参入していく。
 それから、Internet、Voice over IP、IPTVというこれをパッケージにした、いわゆる「Triple-play 」、こういったものを提供することによって、顧客の維持率を高めていく。
 それから、一部のオペレーターさんは、もう単にネットワークのパイプを提供するだけではなくて、自らがサービスプロバイダーに変貌する、こういう事業戦略をとって、非常に積極的にコンテンツのディールを進めたり、必要な技術開発をやっているということが始まっています。
 コンテンツプロバイダーの側としては、従来のテレビ視聴パターンが変化している。特に若年層のテレビ離れというところ、それに対応する新しい形のコンテンツ流通へのチャレンジということが考えられるかと思います。
 これは、IP技術を使ったパーソナリゼーションとか、インタラクティブとか、あるいはニッチコンテンツ、こういったものをどんどん提供することによって、こうしたテレビから離れていく人たちにいかにコンテンツを見てもらうかというチャレンジがあるようです。
 一方、エンドユーザーがこういった「Triple-play」のようなパッケージサービスの中で、テレビを何らかの追加料金を払って見ているという感覚が比較的薄いのかなと。したがって、IPTVというものに対して、比較的受け入れる態勢が心理的にできているのかなというふうに感じています。
 6ページ目になりますが、今の欧州IPTVの市場の特徴に関して、特に私どもが強く感じていることを挙げているのですけれども、まず、ネットワークの「All IP化」というもの、この威力が非常に現実味を増してあらわれていると感じています。
 欧州が、デジタル放送への移行のタイミングとIPTVの普及というのが比較的合致しているということもありますし、それから地上波の再送信もやっていますので、こういう追い風もあると思うのですけれども、一方、回線はDSL、しかも4メガ〜8メガというのが主流で、画質も標準画質が主流です。一部ではHDも始まっていますけれども、例えば日本からヨーロッパに行ってこういう放送を見ると、必ずしも画質が非常にきれいだなという感じはしないのですけれども、こういう状態でもかなり消費者にはうけているということです。
 それから、テレコムオペレーターの側も、「Triple-play」、それからこれに携帯電話のサービスも合わせた「Quadruple Play」というような、こういったものを非常に積極的にマーケティングしています。
 さらに、IPならではの特徴を生かした、単なるビデオのストリーミングとかダウンロードということではなくて、ネットワークPVRとか、Catch-up TVとか、矢継ぎ早にどんどんマルチメディアサービスというのが投入されていまして、コンテンツを新しい形態で視聴してもらう。そのためのサービスロードマップみたいなものもかなり確固たるものをオペレーターさんは持っていて、それに必要なコンテンツの獲得とか、あるいは技術開発、こういったものも着々と進められているようです。
 次のポイントですが、さらにこのIPTV、現状のものに加えて、「Digital Home」という中でIPTVをどうつなげていくかというテーマに関しても、特に先進オペレーターの方々は非常に強い関心を持っています。
 いわゆる「Anywhere, any time, any device」という、こういう環境を実現するという方向に行っていますけれども、私ども家電メーカーが、例えばホームネットワークに関する標準技術であるDLNAというものをベースに、これからネットワーク対応機器というのをどんどん市場投入していきますけれども、家電の中での議論が機器と機器をどうつなぐかというところに比較的とどまっていたのですけれども、こういった欧州のオペレーターさんなんかと話していますと、それぞれの機器の特徴を生かした形でどんなサービスに、どうユーザーから見て付加価値のある形でつなげていくかというところに非常に関心があって、私どもも非常に勉強させられるところが多いのですけれども、こういう環境の中で、例えば1つのコンテンツを家の中で複数のデバイスで見るとか、あるいは、外の携帯電話から家庭にアクセスしてそのコンテンツを見るとか、非常に新しいコンテンツの視聴スタイルというものを意識したサービスロードマップというのがここでもしっかり計画されているということです。
 そして、こんな中で、コンテンツ流通というのが非常にドラスティックに変わっていくのではないかというふうに感じています。私どもの家電製品そのものも、こういうIPコミュニケーションというものと融合することで、新しい進化というのを遂げていくのかなと思っています。
 最後のページですけれども、とにかくネットワークがIP化するというところ、これを生かしたIPTVのサービスというのがヨーロッパにおいては既に始まっています。そして、単純なビデオ配信というものから、よりユーザーにとって価値の高い新しい形の視聴スタイル、サービスというところにどんどん進化していく、そういう兆しが出ています。
 そして、こういう中で、コンテンツの見方、流通のされ方というものが非常に変わっていくのではないかということを特に最近感じるようになっております。
 以上です。

○久保利座長 ありがとうございました。
 この段階で、何か特に大塚参考人にご質問の方、いらっしゃいますか。
 それから、あと、資料の方の3−5でございますけれども、中村委員は今日ご欠席でございますけれども、「創造社会に向けた知財政策の拡充について」ということで、書面で意見をちょうだいしておりますのでご紹介させていただきます。
 それでは、全体にわたるフリーディスカッションに移りたいと思います。
 委員各位からのご意見、あるいは事務局からの説明等を踏まえまして、ご発言のご希望のある方はネームプレートをお立ていただきたいと存じます。
 それでは、原田委員、よろしくお願いします。

○原田委員 これまで各委員、参考人のお話を伺っておりまして、本当にユビキタスといいますか、視聴者にとって放送と通信の区別が全くなくなる、そういう時代に入ってきたと思います。
 放送の世界でも、伝送路の区別なく視聴者にコンテンツをお届けするということがこれから本当に必要な時代になってくるのだろうと考えておりますし、そのことが視聴者、国民の利益にもつながっていくことだろうと基本的には思います。
 コンテンツの流通、あるいはコンテンツ大国を作っていくということでは、もう言うまでもありませんが、まず1つは世界に流通するソフトをつくっていく。そのために、人材育成も含めてさまざまな課題があることは前回も申し上げました。
 それから、今日の話とも関連しますが、併せてそうしたコンテンツの開発と、一方で関連機器のイノベーションが相乗効果をうまく生んでいくような展開というのが、これからのことを考えると非常に望ましいのではないかと思います。
 岸上参考人のお話にありましたように、例えば日本の今の一番の得意技で言いますと、薄型テレビの高精彩な受像機の開発、これは日本が今一番進んでおります。また、インターネットの超高速のネットワークということも進んでおります。
 また、あわせてソフトの面では、デジタルハイビジョンの番組制作ということも、日本が極めて先行して進んでいるところであります。
 ですから、こうした得意分野がうまくかみ合わさって、全体として総合力を出していくということにつながっていかないか、是非これから考えていく必要があると思います。
 例えばハイビジョン番組の販売というのは、前回ここで申し上げましたが、かなりニーズも高まっており始まっています。
 先ほど、ヨーロッパのお話がありましたが、ヨーロッパではハイビジョンというのはなかなか広がっていないのですが、例えばクラシック番組は、実はかなり早い段階からハイビジョン制作をNHKとの国際共同制作という形で行ってきております。そうしたものは、やはり文化といいますか、時がたっても非常に価値の出てくるソフトになってくるわけです。そういうことが、やはり優れた受信機などと相まっていろいろなマーケットにもつながっていくのではないか。だから、やはり日本にないものもさることながら、今の日本の強みというものをどう生かしていくのかということ、循環のよいサイクルを生むようにやっていくことが大事だろうと思います。
 それから、併せてこれからさまざまな見直しのことを考えますと、やはり規制のための規制というのはもう出来るだけなくしていただきたい。視聴者のニーズに合わせて、融合サービスを様々に展開出来るように、制度的な枠組みをぜひ作っていただきたいと思います。
 以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 では、次は三尾委員、お願いします。

○三尾委員 私の方からは、事業者の立場ということはございませんので、今日テーマになっております、むしろユーザーサイドの意見というかコメントということで少しお話ししたいと思います。
 私は、今日IPTVについていろいろお話をお伺いしまして非常に興味深かったのですけれども、従前からIPTV、かなり注目しておりました。
 すでに一般的によく知られているIPTVのサービスがありますが、このサービスが実は余り成功しなかったというか、余り収益を上げなかったということは皆さんご承知のとおりかと思います。
 なぜ、今現段階で我が国ではIPTVがうまく回っていかないかということなんですけれども、無料の放送に比べまして、IPTVは原則有料であるということが1つのネックであるというふうにも言われていますが、サービスが無料の場合でも結果は同じでした。
 では、なぜ余り視聴者に受け入れられなかったのかということなんですが、私が思いますのは、やはりコンテンツのおもしろさではないかと思います。おもしろいコンテンツが余りないので、視聴者がそれほど見なかったということが大きいのかなと思います。
 私も、一ユーザーとして、テレビが大好きな人間でして、かなりいろいろなテレビ番組を見ているのですけれども、やはり圧倒的にテレビ番組の方がおもしろいんですね。いっぱいいいコンテンツがあって、簡単にスイッチを押せば見られるというような状況がありますので、あえてIPTVまで行かなくても十分満足できる状態に今あると思うのです。
 ただ、今後もこれでいいかというと、世界の動向から見ても日本が立ち遅れていってしまう。最終的にはユーザーにかなりいろいろなサービスを提供できるIPTVが、ユーザー・アカウンタビリティがあるということは明らかなわけですね。
 ですので、私の単なるコメントなんですけれども、放送していますいろいろなユーザーに人気のあるコンテンツをどんどんIPTVの方に提供していって、ユーザーがそれをむしろ見たい、かなり自由に見られる、オン・ディマンドで好きなときに見られるというようなことがあれば、もっとIPTVも普及していくだろうし、普及すれば、家電メーカーさんもどんどん開発していって、もう少し簡単な操作でIPTVを見ることができるようになり、ほとんどテレビと同じような内容でのIPTVができ上がるということになりますので、うまく回っていくのではないか。そういった意味も含めまして、放送と通信の融合というのは非常に重要であるというふうに考えます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 では、村上委員、お願いします。

○村上委員 今、三尾委員からテレビの話がまた出ましたので、一応放送事業者としてお話しした方がいいかなと思って発言をさせていただきますけれども、まずその前に、今回事務局さんの方で用意していただいた「新たなサービス展開に関する現状と課題について」というこのパンフがございまして、その中で10ページに「今後の検討の視点」という項がございます。
 ここで著作権法についての提案が出ているわけなんですけれども、まずそれについて申し上げたいと思っていますけれども、著作権法というのは、基本的にやはりコンテンツ産業にとって憲法みたいなものであるというふうに思うわけです。先ほど久保委員の方から、この法の精神というのは文化の発展に寄与することだというお話が出ました。
 私としては、逆にまさにその視点でこの著作権法というものについて、ここに書いてありますような利用者が享受するサービスの形態、あるいはその特質に応じて権利関係を規定する方向でというお話については決して反対するものではないのですけれども、同時に、やはりコンテンツをつくる側、あるいは制作する側のインセンティブですとか、あるいは、いいものをつくりたい、そしてそれを世に出したいという、その発意を阻害するような形になっては、コンテンツ産業の育成という今やっている会議の精神に結局逆行してしまうのではないかと思いますので、基本的には、やはり権利者の正当な権利主張にも十分配慮するということ。
 それから、これは当然、先ほどもお話が出ましたけれども、不正利用防止の観点も踏まえて、多方面からやはりここでも問題点や課題をいろいろ具体的に整理していただいて、十分な議論をしていただくべきではないかということをまず最初に申し上げたいと思います。
 それで、今お話が出たいわゆる放送の流通という問題なんですけれども、これは何度もこの場で私が申し上げているとおり、非常に今遅々としているわけですね。それはなぜかというと、今、三尾委員もお話しになった部分で言うと、まずマーケットが非常に狭いということがございます。いろいろなトライアルや実験をしているのだけれども、なかなか広がる勢いが出てこない。これは、受け取っていただく側の1つの問題点ですが、一方、送り出す話としては、これもよく出ておりますような著作権の問題がございます。
 ただ、この話になるとたちどころに、それでは報酬請求権という形で取りまとめてしまえばいいのではないかという議論がすぐに出てくるわけですけれども、この点については、私が冒頭に申し上げたようなことで、やはり権利者の権利等の十全な確保というのは必要だと思うので、そこの辺はそう簡単ではないということがあるわけです。
 では、さっぱり解決しないではないかという話になってしまうのですけれども、この点については今放送事業者側のやっていることは、前回でしたか重延委員から、やはりまず動くこと、やることだというお話が出ましたけれども、そういう流れは今出来つつあるわけです。
 具体的に当事者がどうやっているこうやっているという話はしませんけれども、権利者団体などとの話し合いを進めながら、現実的にはまず風穴をあけるということしかないというふうに思っております。一つ一つの番組、あるいは一つ一つのコンテンツについて折衝をしながら、まず風穴をあけていく。そこで、ある時点が来たところでこの風穴が多分大きく開くのではないかというふうに私どもは考えておりまして、そういう方向でやっているということをちょっとご説明させていただきます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 ほかには。では、角川委員、お願いします。

○角川委員 前回の専門調査会で、中山委員からYouTubeの問題について提案がありましたが、私も、中山先生のご意見についてポジティブに受けとめて考えてみたいと思います。
 とは言え、YouTubeも含めて、ネットの上で海賊版が氾濫している状況を放置していいとは思えないんですね。先ほど浜野委員から、中国では海賊版のパッケージでさえも崩壊しつつあるというお話がありましたけれども、どうやればネットにおける海賊版の氾濫を阻止できるか。これは実は著作権法の非常に重要な問題ではないかというふうに思います。ですから、それは法的秩序をどうやってつくっていくかということで、真剣に考える必要があると思いました。
 その点で、私は、どうすれば著作権をクリア出来るのかという立場で逆に考えますと、サイトに上げられた違法コンテンツについて支払いを求めることだと思います。支払うことできなければ著作権法に反すると言う論理をつくってみたらどうかと思います。
 著作権は財産権であり、その財産権を担保に複製権というものが生まれているわけですけれども、その複製されていることに対して、経済的対価を請求する、それが支払われないのであれば問題があるという考え方を、きちんとすればいいのではないかというふうに思います。
 そういう点では、1つの在り方かもしれませんけれども、Yahoo!Japanさんの素人の投稿ビデオ(さっき南場さんからも同様なお話がありましたけれども)に関してJASRACさんとの間で1つ契約ができましたね。このことは非常に、意義があるのではないかと思います。素人さんが製作するコンテンツそのものに、音楽が不当に使われていても、ISP、インターネット・サービス・プロバイダーがその代金を代行して支払うということになれば、先ほど申し上げた法的な秩序を与える上で非常に重要な基礎になると思いますし、同じように、ISPのみならず、コンテンツ・サービス・プロバイダーや、あるいは場合によっては経団連で運用をすることが始まったコンテンツ・ポータルサイトにそういう著作権の権利を処理する役割を持たせていくということも1つの方法ではないかと思いました。
 いずれにしろ、今日、南場委員から指摘された問題の非常に大事なところは、素人のコンテンツというもの、投稿ビデオというものが非常に大きなマーケットになっていくと言う点だと思います。そういった意味でも、よく言われている言葉に「群衆の知」とか、「群衆のコンテンツ」というものがありますが、これは国民という言葉に置き換えて良い訳ですけれども、これについても同様に、群衆の側から逆に著作権を請求する、対価を要求する時代が来ると思うのです。著作権法の上でもそういうふうなことに準備をする必要があるのではないかと思いました。
 それから、私の方でもう1つ提案させていただきたいのですけれども、実は国立国会図書館のことであります。
 この国立国会図書館につきましては、880万冊と言われる蔵書があるわけですが、今後ウェッブ時代に対応するために、どういったデジタルデータベース化をしていくか、そして、検索エンジンをつけて、ブックサーチのサービスを国民に提供していくかということを、この知財の場で検討させていただいたらよろしいかと思いました。
 私が読んだ書物によりますと、米国の「ワイヤード」という雑誌の調査ですが、古今東西の図書は古代から現代まで、あるいは東西すべてのもので3,400万点、3,400万種類になると言われております。
 ニューヨーク市の公共図書館は4,000万冊の蔵書があるということですが、それに対し日本の国会図書館の880万冊というのはちょっと寂しい気がするのですけれども、和書に特化しているという点ではやはり非常に貴重なライブラリーだと思います。
 それをまずデジタルデータベース化することによって、国民に広く開放していく。これは、私は「知の開放」だというふうな感じがしています。国民に開放していくということが、まず一つ非常に重要だと思います。
 それから、2番目として、国策として自動検索によってデジタルデータベース化すること、そういうことを推進していくことで、国内にその関連事業者を育てていくということが挙げられると思います。これは、前回の専門調査会で、私がインターネットのアフィリエートする事業者を育成することが、知財産業規模を19兆円、20兆円という目標に近づける1つの手段ではないかと申し上げましたけれども、国立国会図書館の蔵書をデジタルデータベース化することによって、そういう事業も支援していくと言うことが一つの方法論としてあるのではないかと思います。
 Googleというのは、一説にはパソコンが30万台、その30万台が24時間フルに書物をスキャンしていると言われております。それだけのサーバーをうまく利用する、体制・システムは、まさに工場、ファクトリーと言われておりますけれども、これから国内にそういう事業者を育成するということを考えると、日本でも30万台というわけでもないでしょうが、地価が安くて電力が格安な地域への展開が重要となります。このことを推進していけば、今大きな問題になっております中央と地方の地方格差の解消にも1つ貢献できるのではないかなというふうに思います。ぜひ国立国会図書館の蔵書をデジタルデータベース化するということについて検討していただければありがたいと思います。

○久保利座長 ありがとうございました。
 次は、和田委員、お願いします。

○和田委員 2つございます。
 これまでの議論ですけれども、誰の利益を保護するかという観点で見ると、広義のプロバイダーとユーザーの、2つに分かれており、かなり質の違うものになっているかと思います。両者を区別しながら議論することが必要かなと。
 要するに、著作権絡みで出てきたのは、どうものをつくるか、あるいは、どうものを届けるかというプロバイダー側の議論、ここの活性化をどう図るかというポイントですし、公共性というところは、ユーザー側に立ったときにどう考えるかということなのだと思います。かなり質の異なる議論だと思いますので、どちらの話なのかということを整理する必要があるのかなというふうに感じました。
 2点目は、ユーザー側、公共性というような観点で議論する際に注意すべきポイントについてです。
 先ほど南場委員の方からフィルタリングの話がございました。既に制度上は固まっているにもかかわらず、きちんと運営されていない。新たな規制をするより、運営をきちんとすることの方が重要であるというふうにおっしゃいましたが、これは全くそのとおりでございます。
 規制の追加は慎重であるべきです。特に規制の手法には注意を要します。どういうことかといいますと、サイバースペースではコードに書いてしまうと、絶対的な力を持ちます。
 現実社会では、例えば、「銃で撃つな」という法律を定めて、銃で撃っている人がいるかどうか調べて回って、かなり罰則を与えて社会規範として銃を撃たないということを定着させようということになりますが、サイバースペースでは、「銃を撃たない」というふうにプログラムしてしまうと、もう撃つ行為自体が世界から抹消されます。
 コード、ソフトをいじることによって、ある価値観を行政として強制するということは、最後の最後の手段であるということを考えた上で議論すべきだと思います。

○久保利座長 ありがとうございます。
 それでは、どうぞお願いします、重延委員。

○重延委員 今日はいろいろなサービスについてのお話があって、非常に感慨深く伺ったのですが、ここはコンテンツ企画というか、コンテンツの推進を考える会であるのですけれども、IPTVとかモバイルというもののこれからの可能性というのはぐんぐん広がっていくことは事実、もうこの科学技術は止めることはできない。これも事実。
 ですから、それに対応してコンテンツを考えていくという時代だと思うのですけれども、結局、求められるコンテンツ、それに最適だと思われるコンテンツは、だんだん、ドメスティックだったり、パーソナルなものであったりするのではないか。そのことと、グローバルにつながるのかどうかということが、ある矛盾した考えを持っているんですね。これは誰の責任でもなく、そういう方向に向かっていくのではないか。
 そうすると、こういうIPTVやモバイルに進んでいくことが本当にコンテンツ産業の振興になるのかどうか、売上の増大になるのかということに関しては、やはり非常に厳しい検討をしなければいけないだろうと思うのです。
 決して止めることはできません。進むのは、進む自由さというのがありますから、止めることはないのですけれども、その中でさらにコンテンツを振興させる、グローバル化させるというものは、大変なエネルギーと大変な才能が要るのだろうと思うんですね。それをやはりこれからは課題にしていかなければいけないという具合に思います。
 それで、本当にマーケットは狭いですけれども、ただ、どういう可能性を持ってこれからコンテンツ振興ができるかどうかということで、あるヒントはあるような気がするので、それで、先ほどソニーさんの方の最後のまとめのところに、「コンテンツ流通が劇的に変わる可能性」と、こう書いたところがある種のヒントであろうと思うのですが、まず、これは2つの意味があるだろう。
 コンテンツの流通システムが劇的に変わる、これが1つのヒントだろうと思うのですが、もう1つは、コンテンツ自身が劇的に変わるということがあり得るのではないかと、私は思い始めているんですね。
 これは、ある意味では、YouTubeの話は随分お話が出ていますけれども、これはYouTubeにみんなが参加できる。そこをもう利用している人がいるんですね。
 私は今、「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」をやっていますけれども、そこで出会ったある1人は、ある音楽のツールを考えた。これは、つまり楽譜の読めない人、書けない人、演奏できない人でも作曲できるというツールなんですね。
 これを、ある楽器メーカーと組んで素晴らしいものができて、今ロンドンでもう発売になっています。あえてロンドンだけで発売するところがうまいなと思うのですが、これをやはり、YouTubeに出した。50万アクセス、すぐ来ましたということなんですね。
 とすると、今までこれを、今までのメディアで流すという方向ではなく、YouTubeにどっと流すと、それに50万アクセスがすぐ来て、トップだったそうですけれども、やはり非常に広がるといったメディアを個人が持って、それを使って、自分のコンテンツというか、そういうものを広げていくことができるというおもしろさ。
 それから、そこで作曲されたものの著作権はどうなるのかと私は思ったのですけれども、譜面のない音楽ですからね、そういうものの新しい展開を突きつけられますと、これは何か新しいコンテンツというのが、そこから発想されるものがあるのではないかというヒントを受けておりまして、ぜひコンテンツ振興では、やはり今までの規制の問題だけで考えるのはもうだめだと思いました。
 もう1つは、最近の衝撃は、アメリカの視聴率を見ていますと、どんどん4大ネットワークの視聴率は落ちています。もう8.何パーセント、1位ですけれどもね。1位がアメリカンフットボールですが。それで、「60ミニッツ」が本当に7とかそんなもので、パッケージものでは1位です。
 そんな具合に放送がアメリカで変わってきているということも、日本では多少、これは放送事業者の方たちも増大させるという傾向だけではなくて、やはり微減の中でも新しい考え方を持っていくということになると思うのですが、そういうマスメディアの考え方も変わってくるだろうし、本当に公器にかかわっているメディア自体も変わってくるということが1つの流通の激変ということであり、なおかつ、そこでコンテンツをどうつくってグローバルにするかということである。
 これだけ難しいことを、でも、やりましょうという感じがしておりまして、その中で最近会った人たちの、コンテンツ・クリエーターに話を聞くと、どうもやはり海外に向けたものをつくるという感覚だけではだめだと。つまり、私たちが本当に日本人として感じた、経験したことをちゃんとつくっていけばそれが実は海外に通じるのではないか。そういう意味で、日本人というのは決してクローズドではない。やはり本当に自分たちが考えているものをつくって、それを海外に自然に、丁寧に見せていく。それで広がるものではないか。そういうチャンスは、逆にメディアが変わってきましたから、あり得るのではないかということを語る人がとても多かったんですね。
 そういう意味で、もう1回コンテンツ内容を考え直すとすれば、やはり自分たち一人一人のパーソナルな中にあるものをすごくグローバルにできる能力、そこに基本があるのではないかとちょっと予感がし始めて、抽象的で申しわけないのですが、それがモデルとして成功した例もございませんが、そういうところに可能性がなくはない。そういうことをヒントに、今日のお話を伺って、進めたいなと思い始めた次第です。

○久保利座長 大変感動的なお話をありがとうございました。
 それでは、佐藤本部員お願いします。

○佐藤本部員 私はオブザーバーなので、まず委員の先生方にしっかりご議論いただいてからと思っていまして、意見を拝聴させていただきました。拝聴していて思ったことをちょっと申し上げます。
 いろいろな観点からご議論がなされて、いろいろな課題、さらに取り組むべき課題というのが前回も今回も出されたというふうに思います。ただ、これから先、どういうふうにこの議論を整理していくかというのは非常に重要なことだろうと思っています。
 それで、今日は残念ながら中村委員がおいでにならなくて、資料3−5についてのご説明がされなかった。私は、これを拝見する限りは、勝手な推測ですけれども、中村委員としては、結局、知財本部としてどういうものをどういう形で整理して、どう取り組むかということを提案されているペーパーだろうと思っております。
 今まで知財本部の中では、ここにおいてはコンテンツ産業の国際競争力をいかに増すかというのが大きな戦略の狙いだろうと思います。
 そのために、知財本部は今までどういうことをやってきたかというと、制度改革、その制度を生かすための環境整備。さらに、それを使ってどうするのという活用面、社会的インフラをつくる。それに基づいて、事業者がその中で成長し、人材を育成し、国際競争力を増すという構造でやってきたと私は見ております。
 そういう意味で、このコンテンツ産業のさらなる振興という知財戦略の立場から言うと、その観点からやはり論点を整理していって、それをきちんとそれぞれ優先順位を決めて、それでその上で一つ一つを落とし込んでいくという作業が必要なのではないかと思っております。
 特にコンテンツについてのお話を伺っていますと、著作権で法整備上の問題、これはまず基本的なインフラですので、何としてもこれは解決しなければいけない。
 先ほどのNTTさんのお話というのは、前提とする技術的基盤は結構日本が国際競争力はある。だけれども、その社会的なインフラシステムとしては、先ほどのお話ではまだ立ち上がったばかりで十分に育っていない。では、そこをどうするんだ。その上で、それを活用した形でコンテンツというものも、国際競争力があるものとして何をつくるのだという話だろうと理解しました。
 さらに、それを流通、取引するために、実際に事業者の方々が動かしていくための市場をつくっていかなければならない。また、市場をつくるために何を国は支援すべきなのかというようなところを、やはりトータル的に整理しながら、優先順位を決めて、プロセスを考えて、それを組み立てて、やることを一つ一つ実行していくということが必要なのではないかなと思いました。
 そういう意味では、これからいろいろな議論がたくさんあるかと思いますけれども、そういう整理をしながら意見を進めていただいたらいかがかなと思いました。
 以上です。

○久保利座長 ありがとうございます。
 要するに、このワーキングとしては前回の資料7−1に書かれた4つのテーマがありまして、テーマ別に4回、我々としても考えているわけであります。今日は、ニュービジネス、新ビジネスへの挑戦という角度からIPTVを1つの例にとって、どういう方法があるだろうか、その際のネック、これをいかに破っていくかという点としては、いかなる著作権法があるべきなのかという論点が出てきただろうと思います。
 いずれにしても、ワーキンググループでございますので、あまり四角四面に論点を絞ってしまって、この問題、この問題というふうに厳密にやっていきますと、自由な発言の幅がなくなりますので、なるべくさまざまなご意見をちょうだいしたいと考えて進めてまいりますので御理解下さい。
 高橋委員、お願いします。

○高橋委員 ありがとうございます。もうたくさんの論点が出ているので、今「自由に」とおっしゃいましたので、今まで出ていないところで少し申し上げたいと思います。
 著作権の問題を考えるときに、違法な行為ということも出ているのですけれども、やはり規制を強化しすぎることに対する危惧、警鐘が出ている。これも非常によくわかります。
 それで、2点、検討課題として申し上げたいのですが、1つは、技術的にどこまで対応できるのか。それをきちんと整理することが必要だと思います。
 例えば、普通の紙のコピーの場合で、違法コピーですと文字が浮き出るというのがありますけれども、画面上で機器とか、放送技術の方で何か対応できることがあるはずです。どこまで今できていて、何ができないのか、この整理をしていただきたいということが1つです。
 それから、一般の消費者、利用者の立場で、著作権についてきちんと知ることが必要だというご意見が出ました。私もそれに非常に賛成ですけれども、それをどうやってやるかということが、もう少し細かく検討されるべきだと思っています。
 一般の買い物で、偽ブランドのバッグを買ってきたら税関で取り上げられるとか、偽ブランド品をインターネットで売買してはいけないとかということは、一般の人もかなりもうわかっていると思うのですけれども、映像コンテンツに関してはまだなかなかわかっていない部分があると思います。
 南場さんの資料を拝見して、いろいろ健全性のために事業者として取組をしていらっしゃるということがわかったのですけれども、また次回でもできたら教えていただきたい点があります。例えば禁止を明文化している、とありますが、子どもたちに教えたとして、それがどういうふうに実効性が上がっているのか。パトロールをしているとか通報ボタンの活用とかということもあるのですが、少し数値化して示していただくなど、そういうことをやったことによってどんな効果があったのかというふうなことを教えていただけるとありがたいと思っております。
 以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 ほかには、どなたかいらっしゃいませんか。
 一応すべての委員がご発言ですね。わかりました。
 それでは、大塚参考人から、何かご意見はございませんか。いろいろ議論が出ましたので、技術的な問題も含めてという催促もあったようでございますけれども、どんなことでも結構ですが、おまとめいただけますか。

○大塚参考人 すみません、余り技術の方は詳しくないのでちょっとそこはコメントできないのですけれども、重延さんのご発言にもあったように、やはり海外、特に私もイギリスのBBCのお話を最近聞く機会がありまして、やはり確実にテレビ番組をどんどん見なくなっている。
 それが、特に1985年以降に生まれた世代、ここから明らかに視聴パターンが変わっている。いわゆる年を重ねると、大学に入るぐらいから普通はテレビを見なくなって、また就職して、年を経るとまたテレビに戻ってくるというそのパターンがあったのですけれども、それが、85年以降の世代については、ほぼもう戻らないのではないか。その分、YouTubeを見たり、インターネットをやったり、別のことをやっているわけですけれども、そういう危機感というものをものすごく感じていて、逆に、そんな中で、ではBBCのコンテンツをどういう形でさらに広く見てもらうのかというところで、新しい努力もどんどんやっている。
 先ほどアメリカの例もありましたけれども、特にそういう危機感というのが非常に強くなっているというところは本当にそのとおりだと思います。

○久保利座長 ありがとうございます。
 そういう意味で言うと、南場さんのモバゲータウンが大変にビューが増えているということは、逆に言うとテレビを見る人が見なくなってそちらに行っているというようにも思われます。85年生まれ以降の世代というような話等を考えると、かなりいろいろな意味で危機的な状況があるのかなというふうに思います。
 いずれにしても、今回ご議論いただいた「通信と放送に関する法制度」、これは要するに、通信と放送を区別するという問題ではなくて、新しい展開をどういう切り口で見つめていくか、それをどう考えていくかというご意見が、それぞれのお立場からあったように私は感じました。
 これは、新ビジネスへの挑戦という今日考えていた第1の切り口だけではなくて、流通促進や海外展開といういろいろなテーマに関連してくる問題だと思います。
 そういう意味で、佐藤本部員がおっしゃるように1回、2回ではなかなかうまくはまとまりきれませんけれども、できるだけおっしゃるとおり、関係省庁にお伝えいたしまして、可能なものについては、次回予定している関係省庁等からのヒアリングにおいて、検討状況とか、あるいは今後の見通しというものについて報告をするようにお願いしてまいりたいと考えております。
 また、それ以外のものについては、政府部内で引き続き検討をいただきまして、ワーキンググループの中間報告に反映させるべく事務局にお願いしているところでございます。
 そういうことで、ぜひ意見はいろいろおっしゃっていただき、その整理の仕方等々についても、ご意見をちょうだいして、ぜひスピーディに、たった4回しかございませんけれども、できるだけのことをしていきたいと考えております。
 それでは、予定の時間、ちょうど4時になりました。今日の会合は、これにて閉会いたしたいと存じます。
 コンテンツ企画ワーキンググループの次の第2回、これは11月9日、金曜日の14時から、今度は場所が変わりますが、虎ノ門パストラルホテルの「ミモザ」で開催する予定でございます。場所と時間をご確認いただきたいと思います。
 本日は、ご多忙のところまことにありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。どうもありがとうございます。