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第2回知的創造サイクル専門調査会 議事録


1.開 会:平成17年11月30日(水)10:00〜12:00
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委 員】 阿部会長、板井委員、加藤委員、下坂委員、妹尾委員、田中委員、中山委員、八田委員、前田委員、吉野委員
【参考人】 伊藤参考人
【事務局】 荒井事務局長、藤田事務局次長
4.議事
  (1)開会
  (2)知的創造サイクルに関する課題について
  (3)知的財産人材育成総合戦略について
  (4)閉会


○阿部会長 お待たせいたしました。それでは、時間になりましたので、ただいまから、「知的創造サイクル専門調査会」の第2回会合を開催させていただきます。本日は、御多忙中のところありがとうございます。
 なお、本日、久保利委員は御欠席という御連絡をいただいております。それから、八田委員は御都合により途中退席ということでございます。
 また、本日は、参考人の方にお越しをいただいておりますので、最初に御紹介をさせていただきます。伊藤真様でございますが、久保利委員からの御紹介でございます。伊藤参考人には、本日、後で日本弁護士連合会の研修等の弁護士の人材育成について御説明をいただくということを考えてございます。
 それでは、実は前回知的創造サイクルに関して、一通り御意見をいただいたんですが、御欠席で今日御出席いただいた方がおられますので、最初に御意見をちょうだいさせていただきたいと思います。したがって、人材関係は後回しにさせていただきますが、最初に八田先生から、よろしくお願いいたします。

○八田委員 国際基督教大学の八田でございます。よろしくお願い申し上げます。

○阿部会長 それから、吉野先生です。よろしくお願いいたします。

○吉野委員 吉野でございます。よろしくお願いいたします。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、ここで八田委員から5分程度で御説明をいただくことになっております。よろしくお願いいたします。

○八田委員 私は、本業が経済学者でございます。私は「法と経済学会」に立ち上げから関与してまいりました。この学会は、知的財産の特別セッションを設けたりして、知財に非常に関心を持っています。
 知財と経済学との関わりについてお話し申し上げたいと思います。
 まず、経済学の主たる仕事は何かというと、何を市場に任せて、何に対して国家が市場に対して介入すべきか、その役割分担を明確にすることです。さらに、国家が市場に介入するべきことに関しては、いかに介入することがすべての人々の生活水準を上げるのに役に立つか、を分析することです。
 経済学が明らかにした国家と市場の役割分担の基準は、「国家があえて市場に介入する必要があるのは、@市場に失敗の是正とA所得の再分配のためのみだ。その他は市場に任せるべきである。」ということであります。市場の失敗には、@公共性、A外部性、B情報の非対称性、C規模の経済の4つがあります。
 技術情報の取引に関しては、これらの市場の失敗が複合的に関与しているために、知財に関して、市場への国家の介入が必要であるというふうに考えております。
 知財と市場の失敗との関連を一つひとつ簡単に申し上げたいと思います。
 第1に、情報には外部性があります。情報というのは火のようなものです。情報は、一旦つくると無料でコピーをつくることができます。情報を人に売ると、その人がコピーして再販し、競争相手に売ることができます。このため、普通の企業は、技術情報を市場に出さなくなります。したがって、情報を市場で取引するというのは、基本的には非常に難しいことです。
 企業が情報を市場に出して来るように、情報の再販を禁止するというのが知財の保護の目的であると思います。
 第2に、情報には「公共性」があります。(ここで「公共性」とは、普通経済学で用いられる「非競合性」という用語と同義です。)ハンバーガーのようなものはだれかが食べてしまえば、私はそれを食べることができません。ところが、道路はだれかが使っても、私も使うことができます。そういうだれかが利用してもほかの人も利用できる性質を、ハンバーガーのような財の性質と区別して、「公共性」と申します。技術情報というのはまさにそういう性質を持っています。技術情報ができてしまうと、ほかの人が使っても自分がそれを使うのに何の妨げもないからです。
 こういう公共性のある財は、基本的には無料で公開して、すべての人が利用できるようにすることが一番望ましいと言えます。公共性のある財で無料で供給されているものを公共財と申します。道路や国防は、無料で供給されているから公共財です。
 技術情報にも公共性があります。したがって、でき上がった技術情報はただで供給するのが望ましいわけです。しかし、技術情報の場合には、ただで供給するようにすると、技術をつくる人が何のインセンティブも持たなくなるという特殊な事情があります。道路と違って国が技術情報を供給すると、いい発明をするインセンティブがない。結局、公共性のある財は元来無料で供給すべきであるにもかかわらず、技術情報は、そこには目をつぶって企業に有料で販売させなければならないということになります。
したがって、情報は公共性があるにもかかわらず、お金を取るという例外的な措置を認めて、しかもそのコピーをできないように国が担保してやるということが必要だというわけです。それが知的財産権保護の目的でもあり、もともと抱えている矛盾でもあります。
 第3に、技術開発で生まれた財には、往々にして情報の非対称性という問題が発生します。普通の財ですと、買い手と売り手が何を取引しているかわかるんですが、新薬のようなものについては、売り手の方は性質についてよくわかっているが、買い手の方はその効能や副作用についてわかっていない。その場合に、国が関与せずに市場にまかせておくと、買い手は恐くて市場に入っていかず、新薬の市場が成立しなくなってします。そういうときには、国が関与してきちんとした情報を開示するという役割があります。それをして初めて知財の市場が成立するわけです。
 こういうふうに、知的財産に関しては、政策としてどうしても関与しなければいけない根本的な市場の失敗が錯綜しているという状況です。したがって、ここでどういう政策を立てるかというとき、例えば特許期間を特許ごとにどうやって変えるか。あるいは特許料をどういうふうに取るかということは、基本的には経済学の分析用具を用いて解明すべき問題だろうと思うんです。ただ、残念なことにここの分野での研究が外国では急速に進んでいるにもかかわらず、日本でまだ進んでないという問題があります。ここに関心を持つ人たちをどんどん増やしていく必要があるんではないかと思っております。
 最後に、ここの委員会が興味をお持ちの人材育成の総合戦略について、2、3意見を述べさせていただきたいと思います。
 第1に、司法試験合格者数を大幅に増やして、技術などの知財専門知識を持つ人が大量に法曹界に入れるようにすべきだと思います。さらに、弁護士になってから、実務に優秀な人は伸びていくが、反対にどんなに学校や司法試験の成績がよくても実務に優秀でない人は淘汰されていく、そういう制度にしていくべきだろうと思います。
 第2に、日本の知財の国際化のためには、日本人の学生、特に技術者を、米国のロースクールに大量に送り出す貸与留学奨学金制度を用意する必要があるのではないかと思います。
 国際的な知財の業務というのは緊急に必要ですから、米国の弁護士事務所において、日本語ができる知財弁護士が増えることは、日本の企業にとっても助かることです。そのために、日本の法制度を改革していくことも必要なんですが、それにはものすごく時間がかかります。特に日本のロースクールにそんなに急速な改善は期待できません。したがって知財に関しては、米国で大量の人材育成をする必要があると思います。これを実行すると日本企業の知財に関する国際競争力を高めるだけでなく、日本のロースクールに対する大変な刺激になるであろうと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、吉野委員から、お願いします。先ほど誤解を招くようなことを申し上げましたが、人材も含めてお願いいたします。

○吉野委員 私は、知財の権利保護基盤の専門調査会に引き続いて参加させていただいております。またいろいろ勉強することもあるだろうと思います。よろしくお願いいたします。
 今回、知的創造サイクルというテーマ、とらえ方で、その知財問題を検討されるのは、大変いいことではないかと思います。プロセスと言いますか、フェーズを分けて考えてみるということは、非常にいいことだと思います。
 もう一つ、この調査会になるべくなら期待したいと思いますのは、今までは非常に結果が網羅的に、ものすごい数が推進計画にしても出るんですけれども、その中でこれは重要だということがもう少し色分けされると、もうちょっとわかりやすいのではないかという期待を持っております。
 もともとこの知財の戦略は、国としての競争力を強化しようということがそもそもの目的で出てきたものだと思います。そういうことからいいますと、我々ビジネスをやっている見方ですと、日本はマーケットとしてもう成熟をしていて、これからどんどん伸びていくのは海外だということになるわけで、最近の新聞報道によりますと、投資収支の方がものの収支よりも多くなってきたということが書かれておりますけれども、私どもホンダも売上げの80%は海外という時代になってきておりますので、そういう観点から見ますと、この知財問題をいろいろ議論している中で、あるいはいろんな施策を行う中で、海外を対象にしたいろんな施策、あるいは海外問題を対応していくために注ぐエネルギーの度合いというのが、まだまだ足りないのではないかと思います。
 特に民の方は、当然ビジネスをやっておりますから、どんどん海外でのことも当然たくさん入ってきているわけですけれども、官にお願いしなければいけないことも結構あるわけですが、知財に関して官が国内問題よりも海外問題に注ぐエネルギーが、まだ少な過ぎるんではないかという印象を持っております。
 したがって、人材の点でも、今、先生が御指摘されましたようなことも含めて、海外のことをかなり議論していきたい。ないしは、まだわからない部分が結構あるということも含めて、海外に力を注げたらというふうに思います。
 今日の人材の分野でありますが、サイクルからいいますと、まず知財になり得るものの創造というところから始まると思うんですが、それを権利化し、保護し、あるいは活用しということを考えていくと、この真ん中の権利化とか、保護とかというところは割と見えやすくて、人材もかなりそこに焦点が当たったようになっておりますが、創造というところがやはり見えにくくて、創造している人たちにどういうインプットをしてあげれば、もっといい卵が出てくるのか。やはり金の卵があるのと、泥の卵があるのとでは、後々の効果が全然違うと思いますので、その最初の創造のところをやる人たちに、もうちょっと焦点を当てた方がいいんではないかというのが1つあります。これもまだ手探りでよくわからない部分もあります。
 次は、活用というところです。活用というところがまだまだ不足していて、そこに関わる人たち、これは経営とのリンクとか、あるいは海外で、我々もロイヤルティーは十分取れてないなという意識を持っているんですけれども、そういうところの人材をどうするかみたいなところに、私は非常に関心があります。
 そういう意味で言いますと、創造と活用というのが、今日の配布資料の中で一くくりになっているんです。専門職の人材、創造と活用、それから一般の裾野の話というふうに分類されているように、ぱらぱら見たところではそんなことですが、創造と活用を一くくりにしていいんだろうか、むしろサイクルごとに創造に携わる分野の人材教育というのと活用というのは、やはり別に考えた方がいいんではないかという印象をまず持っております。 私は、実は会員企業が1,000 社を超えてきた日本知財協会の会長を今年の春からやっておりまして、そこでもいろんな教育プログラム、育成プログラムを組んでおりますが、今日は必要があれば担当も来ておりますので、別途説明をいたしますが、さまざまな業種があって、実に業種ごとに事情が違うというのが実態でありまして、したがって、教育のプログラムというのは、まだまだこれからというふうに思っております。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 御討論は後で一括してお願いすることにいたしまして、前回の会合において補足の御意見の御提出をお願いしておりましたところ、加藤委員から資料3の御意見をちょうだいいたしました。時間の関係がございますので、今回は是非ごらんいただきたいということにさせていただきます。
 次に、前回の会合においてパブリック・コメントを行うことにいたしましたので、その結果について事務局より簡単に紹介してもらいます。お願いします。

○藤田事務局次長 資料4でございますけれども、前回の会合の後2週間、ホームページの掲載によって意見募集を行いました。
 その結果、提出された御意見の数は合計で37件、そのうち団体から14件、個人から23件でございます。この資料4に、いただいた主な御意見の概要を整理してございますけれども、委員の方々にはいただいた御意見をそのまま集約したものもお配りしてございます。非常に多岐にわたりまして真剣なコメントをたくさんいただきまして、事務局としてはありがたいことだと思っております。中には、マイクがないので傍聴席でよく話が聞き取れなかったというコメントもございましたので、今日早速マイクを入れることといたしました。
 いただきました御意見につきましては、この専門調査会のとりまとめの参考にしていただきたいと存じますけれども、内容が大部にわたりますので、詳しい説明は省略をさせていただきます。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 今、事務局から説明がありましたように、パブリック・コメントでいただいた御意見については、是非今後の議論の参考にしていきたいと思っております。
 それでは、人材関係に集中して御議論をいただきたいと思います。まず最初に事務局から、知財人材を育成するための課題について説明をしてもらいます。お願いします。

○藤田事務局次長 資料5をごらんいただきたいと存じます。事務局が作成いたしました、議論のたたき台でございます。
 ページをめくっていただきまして、ちょっと大部でございますけれども、ごく簡単に御説明申し上げたいと思います。ページを3枚ぐらいめくっていただきますと、1ページというのがございますけれども、ここが「第1章 知的財産人材育成総合戦略の必要性」についての概論でございます。一言で言えば、近年の知財の重要性の高まり、そして知財に関連する業務がますます拡大する中で、知財制度を支えるのはあくまでも人でございまして、知財に関わる人材の質的、量的な充実が必要ではないかということが書いてございます。
 次に4ページをごらんいただきたいと存じます。先ほど、吉野委員からも御指摘いただきまして、ここはなかなか知財人材といっても非常に多岐にわたりますので、どういうふうにくくるのか、どういう切り口で考えるのか、難しいところがありますけれども、とりあえず4ページの下の表をごらんいただきますと、3つに分類をさせていただきました。これは名称もまだ借り置きでございますが、第1は知的財産専門人材ということで、知財の保護・活用に直接専門的に関わる人材ということでございます。
 第2のカテゴリーが、知財の活用人材ということで、知財を創造する人材、あるいは知財を生かした経営を行う人材。
 第3が裾野人材ということで、一般の方々にも最低の常識として知財についての知識をお持ちいただく。模倣品には手を出さないとか、著作権はきちんと守るとか、そういう常識を持っていただくという意味でございます。
 1枚めくっていただきまして、(1)が「知的財産専門人材(狭義の知的財産人材)」でございまして、ポツがたくさん並んでおりますが、例えば具体的には、企業での知財部門の担当の方々、弁理士さん、産学連携に関わる大学の方々、特許庁の審査官のような人たち、あるいは知財紛争を扱う弁護士・裁判官等の方々というような方々を念頭に置いてございます。
 (2)が「知的財産活用人材(広義の知的財産人材)」、これはもうちょっと外縁部に入っていくわけですけれども、企業や公的機関で研究される部分、大学で研究される方々、コンテンツのクリエーター、企業の経営者、コンテンツビジネス等のプロデューサー、あるいは標準化に従事する人材(企業、大学、政府)という方々が念頭にございます。
 (3)が「裾野人材」ということでございまして、次のページでございますが、一般の社会人、一般の消費者、あるいは学生・生徒たちというものでございます。
 次に第3章、7ページでございますけれども、実は知財本部が発足以来、人材についてもさまざまな動きが既にございまして、成果も出てきております。それを簡単に御紹介してあるのが、この3章でございまして、8ページからごらんいただきますと、(1)は弁護士さんの関係でございますけれども、司法試験の合格者が増えてきているということ、去年の5月にエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークができたこと、去年の3月から日弁連による知財の研修が行われていること、あるいは本年4月から弁護士知財ネットが発足したこと等を紹介してございます。
 (2)は「弁理士」でございまして、弁理士の数も増えてきているということ。それから、付記弁理士制度の現状も書いてございます。ここにまだ書いてございませんけれども、日本弁理士会においても、後で下坂委員から御紹介あるかと存じますが、非常に多様な人材育成の取組みをしていただいております。
 次に9ページでございますが、これも懸案でございましたが、(3)にあります、司法試験に知財が選択科目として認められる方向となりました。
 あるいは(4)ですが、去年の4月から設置された法科大学院では、すべての法科大学院において知財の講義が行われていると。
 2)ですが、夜間の授業がなく不便だという意見もございましたけれども、今年の5月現在で9つの学校で夜間の授業が実施されております。
 3)ですが、理系とか芸術系の入学者を増やすべきだという御意見もございましたが、例えば2005年の4月で見ますと、法科大学院の入学者5,500 人強のうち、社会人が2,000 人強、理系の出身者の方は432 人ということで、1割近い方が理系の出身の方であるということになっております。
 (5)ですが、大学や大学院でも知財の教育が広範に行われていること。
 (6)ですが、知的財産専門職大学院が、今年の4月からでございますけれども、2つ開設されております。
 (7)ですが、MOTが充実をしていること。
 (8)ですが、独法の工業所有権・研修館等で多様な研修事業を行っていること。
 (9)ですが、民間のセクターでも、例えば、去年の3月から知財検定、あるいは去年の12月から知財翻訳検定というものが開始されております。
 先ほど吉野委員から御紹介ございましたけれども、知的財産協会でも非常に多様な、大規模な研修事業を行っておられます。
 次の11ページでも、弁理士会の動き、あるいは発明協会での研修等を紹介してございます。
 (10)ですが、コンテンツの人材ということで、このコンテンツ人材に関しましても、多く大学でこの育成に取り組まれておりまして、その例が「2004年度には、例えば」あるいは「2005年度には、例えば」ということで下の方に書いております。
 それから、去年の4月から、デジタルハリウッド大学院大学が発足したという動きもございます。
 ということで、人材を巡る制度がいろいろ整備されてきているわけでございますけれども、こうしたことも踏まえまして、次の12ページでございますが、これもまだ十分に御議論いただいていないですけれども、事務局として1つのたたき台を御提示させていただいているわけですが、大きく「3つの目標」と「7つの視点」ということで、考えていただいてはどうかと。
 3つの目標の1番目は、知的財産の専門人材の量を倍増し、質を高度化するということで、知的財産の専門人材、大体6万人と推計されておりまして、知的財産の推進計画の2005において、10年間で倍増を目指すということは既に書き込まれております。この倍増計画を、しっかり中身のあるものにしていくということかと思います。
 2番目に、知的財産の活用人材を多様化して、質を高度化するということ。
 3番目に、これは妹尾先生の表現をお借りしてございますが、国民の「知財民度」を高めるということ。
 「7つの視点」というのは、第1に国際的に戦える人材を育成する。
 第2に、人材のネットワークを構築し活用する。
 第3に、知財戦略を取り入れた経営戦略を推進していただく。
 第4に、融合人材を育成する。
 第5に、人材の流動化を推進する。
 第6に、中小企業・地域で役立つ人材を育成する。
 第7に、多様な学習機会を提供する。
 こういうような、横串的な観点で考えるということがあるのではないかということでございます。
 次の14ページでございますが、やはり人材というと、教育機関、研修機関が必須のインフラでございますので、そうした機関での課題をそれぞれ事務局なりにまとめたものが書いてございます。
 16ページからが、各分野ごとの人材の育成政策でございます。例えば、16ページは、専門人材のうちの民間セクターの企業の知財分野を対象に考えるとどうかということでございまして、「i)現状・課題」のところで、今、研修事業等が行われているということが紹介をされ、「ii)求められる人材像(スキル)」として、例えば全般的には知財戦略を用いて企業の経営戦略づくりに貢献する能力を備えていくことが望ましいのではないかということ等々が列記してございます。
 iii )が、次の17ページでございますけれども、では、そうした人材をどうやって育成していくかということで、育成のための手法、アイデアが並んでございます。2ページ目の目次に戻っていただきますと、こういう観点で、この第4章の第3節は、ここにA民間、B教育・研究機関等、C政府、裁判所、地方公共団体等と書いてございますけれども、こうした多様な職種に応じて、今、御紹介したような現状、課題、それから求められる人材、そしてそのための育成手段ということで、3段構えでそれぞれ書いてございます。
 そして、一番最後が54ページでございますけれども、第5章ということで、10年間でこの専門人材を倍増するということは、今年の6月の推進計画の2005年、既に決定しているわけでございますけれども、漫然と10年間やるのではなくて、例えば1期、2期、3期と期間を分けて考えてはどうかということで、第1期が最初の3年間で基盤を整備する時期、そして第2期が次の4年間で、基盤に乗って集中的に人材育成実施を図る時期。そして第3期に、その結実を図る時期というようなことでお考えいただいてはどうかということを書いてございます。
 資料の説明は以上でございます。

○阿部会長 大変量が多いところですので、ごくかいつまんで御説明いただいたということでございますが、これから委員及び参考人からの御説明をいただきたいと思います。
 最初に下坂委員からお願いします。恐れ入りますが、5分程度でお願いします。

○下坂委員 5分の割に分厚い資料を提出しておりますので、何ページという場合、大変急いで作業していただくということになりますけれども、御協力よろしくお願いいたします。
 弁理士の育成ということで、弁理士に限定してお話をさせていただきます。まず、弁理士に関しましては、平成12年に弁理士法が大幅に改正されまして、この改正は極めて大きかったものですから、私どもはこれを通称で新弁理士法と呼んでおります。明治以来の弁理士法が大幅に変わったということでございます。
 その附則の13条におきまして、弁理士の新法に関しましては、5年目の見直しを行うということ規定されておりまして、そのため現在、関係官庁と弁理士会におきまして、幅広く検討が重ねられているところでございます。
 弁理士の現状、先ほど少し御説明いただきましたけれども、簡単に御説明いたしますと、まず推進計画に基づきまして、量的・質的拡大が図られることになっておりまして、弁理士試験制度の改革がそれに重なりまして、量的な拡大は年々確実に実現されてきております。しかし、質的向上面につきましては、日本弁理士会の研修や、日本弁理士会がやっております知財ビジネスアカデミーなど、任意の人材育成の取組みに任されているという実情がございます。
 資料7ページをごらんください。本年、10月末現在の弁理士数は、自然人が6,212 名、特許業務法人が49名です。真ん中の表からは、会社勤務の809 名を除いた約5,400名の弁理士が何らかの形で特許事務所に所属していることがわかります。なお、本年度、弁理士試験の最終合格者数は、これも弁理士会始まって以来の最大合格者数なんですが、711 名でございますので、この方が全部登録しますと6,923 名になりますから、大体本年度中に7,000 名に近づく数になっております。
 弁理士の業務の現状につきましては、9ページの表で、弁理士1人当たりが扱う出願件数が年々減っていることを示しております。これは、パイを人数分で分けますと減るのは当然でございますので、それを示した表でございます。
 10ページは、弁理士の中で、特定侵害訴訟の付記を受けた弁理士が1,106 名で、付記を受けた弁理士の約二割、17.8%が代理人として訴訟に関与していることを示しております。 11ページは、左側が税関における輸入差止申立代理実績、右側がライセンス等の権利の経済的利用の経験や相談経験を示しております。
 12ページは、日本知的財産仲裁センターにおける弁理士の関与に関するデータでございます。日本知的財産仲裁センターは、日弁連と日本弁理士会でつくっている組織でございます。なお、右側の円形グラフがございますけれども、新人研修の際に行いました調査で、合格者の約三割が実務経験がないということを示しております。
 左下の表をごらんください。新しい弁理士試験制度が導入された後は、年々合格者が弁理士登録しない割合が増えていることを、この表が示しています。
 13ページは、外国関連業務に関係する必要です。PCT出願に限らず、日本国内の弁理士に外国出願を依頼する率は非常に高くなっております。
 次に、日本弁理士会の人材育成の取組みについて簡単に説明いたますと、日本弁理士会では、研修所を中心に幅広い研修を行ってまいっておりますけれども、14ページ〜22ページにわたりまして、その研修内容を記載したものを出させていただいております。
 14ページを見ていただきますと、研修所が取り組んでおります研修内容、新人研修、会員研修、継続研修、地域研修など全部が出ておりまして、15ページからはそれら研修の中身を具体的に記載してあります。24ページまででございます。それらは後ほどお目通しください。
 研修所とは別に、日本弁理士会は高度な知財専門人材たる弁理士の新たなロールモデルとなる人材を育成するために、今年7月に知財ビジネスアカデミーを設立いたしました。23ページと24ページに、その設立理念と今年度実施しているプレコースを紹介してございます。
 プレコースと申しますのは、知財ビジネスアカデミーの来年度本格開校を控えまして、今年度の秋から実施している実験的なコースのことでございます。
 先ほど14ページに書きました研修所の取組みに対し、日本弁理士会が使っております費用と言いますのは、大体弁理士会の総予算の2割以上に当たっておりまして、3億円を優に超えた費用を研修所予算として使っております。
 3ページに戻っていただきまして、弁理士試験は知識を考査するもので、試験を通っただけでは実務はできないという状況になっております。先ほど申しましたように、3割強に当たる者が実務経験がないという状況、また、実務ありといっても試験までは偏った一部分の実務だけということもございまして、その実務に代わる研修を、もしくは実務の基礎となる研修を、どのように持っていくかということについて頭をひねっているところでございます。しかし、現行の試験の問題点というのもございまして、論文式試験の選択科目が、技術系あるいは法律系の中から1科目を選択することになっておりますため、技術系の科目を選択しなかった受験者は技術的バックグランドに弱く、法律系の科目を選択しなかった受験者は法律系バックグラウンドが弱いということがございます。
 日本弁理士会といたしましては、そのような受験者に対して、登録前研修というのを、国家レベルでやれないかということを今いろいろな角度から検討しているところでございます。
 なお、会長にお願いしたいのでございますけれども、日本弁理士会の昨年度副会長で、本年度は研修所の副所長をやっております井上一と申す者を、本日随行として連れてまいりましたので、質疑もしくは詳細な点に関しましては、そのときに発言させていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、妹尾委員からお願いしますが、妹尾先生は御専門の関係もありますので、特に10分以内ということでお願いできればと思います。

○妹尾委員 妹尾でございます。特別に時間を与えていただきまして、ありがとうございました。
 社会人教育、特に経営の人財育成に長年関わった人間が、ここ数年間知財関係の人財育成に取り組ませていただいております。その経験を踏まえてお話をさせていただきたいと思います。
 お手元の資料、授業で言えば4コマ分か5コマ分ありますので、さくさくと進ませていただきます。
 まず、1ページ目の下に書いてありますのが、骨子であります。私が知財人財の育成について懸念しておりますのが、どうも当面のHowの話に終始しているきらいがあるんではないかということであります。失礼な物言いになるかもしれませんが、知財立国の屋台骨をつくる人財を育成するということですから、我々は少し長い目で見なければいけないのではないでしょうか。従来のパラダイムは、従来の人財と、従来の人財育成のやり方でやってきましたが、しかし、今後の日本を考えるときには、新しいパラダイムが何であるかということをきちっと踏まえ、新しい人財モデルをつくり、新しい方法論で人財を育成するということで将来を見据えた話にすべきではないかと考えるわけです。すなわち、従来型の知財人財を幾ら増強しても、新しいパラグラフに資するには限界があるということです。
 後ほど述べますが、新しい知財人財育成として、私は3点強調させていただきたいと思っております。
 第1は、知財活用経営・経営貢献知財に資する、新しい知財人財育成モデルをきちっと構築しなければならないのではないかと考えます。すなわち、下坂先生のお話にもありましたとおり、例えば弁理士は従来の特許代理人というコンセプトを広げて、新しい弁理士像にウィングを広げようとされております。
 また、吉野先生の先ほどのお話にもありますとおり、知財部員が従来の特許屋であることから、経営に資する人財としてウィングを伸ばそうとされている。こういうことが、もう少ししっかりとモデルとして構築されるべきではないかというのが第1点です。
 第2点は、そうしますと、今、量的な拡大ということは、勿論賛成なんですが、ただ量的拡大ということの意味について、「質的な再構成を行った上で量的に拡大する」という形でないといけない。逆に言えば、単純に旧来型の人財をたくさん増やしてもしようがないではないかということになろうかと思います。
 そして3番目に、前回も申し上げましたとおり、国民全体が知財民度を高めることにならなければならないと考えます。ここでも、事務局のお話では裾野人財というお話ですが、単に裾野という意味ではなくて、この中には子どもたちや若い人たちという次世代の人財の宝庫が隠されているということを踏まえてみてはいかがかと思います。
 ページを開いていただくと、その辺の骨太の人財構想を育成したいということが述べてあります。なぜ知財人財か、なぜ知財の時代かということをきちっと踏まえて、それに資する人財育成にすべきと議論をさせていただいてます。我々は、単に知財がブームだとか、高まっているということではなくて、実は100 年ごとのパラダイムシフトで情報の究極たる知・技術・ブランドというものが重要になってきた。ここを踏まえなければいけないと。 そうすると、4ページにありますとおり、経営モデルが有形資産経営から無形資産経営に変わってきたという流れになります。
 一方、日本の産業の問題としては、事業の新陳代謝が不全になって新しい事業が出てこないということが最大の問題になっているわけですから、それを踏まえ5ページ目にあるとおり、その事業をつくるネタであります技術開発を進めなければいけないのですが、それがなかなか事業に結び付いていないという状況が問題としてあるわけです。
 これらを踏まえますと、5ページの下にあるように、我々は従来の工業社会のプロダクティビティーというコンセプトからイノベーションというコンセプトに変わらなければいけわけです。
 その両輪となるのが、6ページにありますとおり、技術経営と知財マネジメントのかけ算です。すなわち、ここに書いてありますように、歴史の必然としての情報・知識社会があって、究極の情報たる知・情報・ブランドが来た。それを踏まえますと、経営モデルが変わってくる。そして、産業競争力の源泉である、技術経営と知財マネジメントが重要になる。つまりブームとしてとらえるのではなくて、ここでパラダイムシフトが起こっているんだということを認識すべきでしょう。
 そうすると、6ページの下のとおり、通常社会学的に言うと、パラダイムシフトというのは3点で起こります。技術と制度と文化ないしはイデオロギーです。どこから始まるかというのは、そのときどきです。例えば、第二次世界大戦が終わったときは制度から変わりました。ルネッサンスのときには、文化から変わりました。そして今回は技術から変わっているということです。ですので、知財立国も技術が変わってきたので、まず制度を変え、その次に文化・人財に取り組むというのが、ここでの人財育成の流れだと思うわけです。
 7ページを見ていただいてわかるとおり、社会モデルが変わり経営モデルが変わる。逆ではありません。これは、先日亡くなりましたドラッカーが言ったとおり、社会モデルが変わるから経営モデルが変わるんです。
 そして、そこに対応する戦略が変わるわけですから、それに資する人財のモデルをきちっと考えようではないかということが私は議論の筋だろうと思います。
 すなわち、この筋に沿って人財モデルを考える。人財育成を考えるときに、Howの話ではなくて、そもそもどんな人財が必要かということを徹底的に考えるのがよろしいのではないかと思います。
 ここから8ページに入って、人財モデルは先ほど申し上げた3点になります。これを御説明させていただくと、9ページの上の従来の知財軽視経営、軽く見て知財は必要悪だという見方があり、これが現在知財配慮型経営になってきており、それが先端的な企業では、知財活用型経営になっております。
 逆に、知財関係者は、経営軽視の知財のための知財をやられていましたけれども、最近は経営に配慮することになり、将来的には経営に貢献する知財にならなければいけないということですから、こういうスタイルで人財を考えなければいけない。
 今度は10ページに入ります。そうしますと、現在6万人を12万人の意味が違ってきます。これは反対するわけではないのですが、その6万人が単純量的拡大、従来型を拡大するのではなくて、質的再構成をした上での量的拡大というふうになっていかなければならないと思います。
 そして10ページの下にあるとおり、知財民度の向上ということがあって、オリジナリティーを尊び、品格のある国民文化の醸成をしていきたい。子どもから大人まで国民全般への啓発を推進しようと。知財教育・啓発シャワーを奨励したいと思っております。
 これは2つ、Do'sとDoNot's があります。Do'sは創意工夫の奨励であり、DoNot's は著作侵害や模倣品購入の抑制ということで、先日中山先生が強調されたところかと思います。
 それでは、どういう人財が必要なんだという見取図は、11ページの下に三層構造で提示させていただきました。ある部分では事務局案に重なる部分があろうかと思います。例の知財サイクルを書いたときに、今、知財専門人財と言われている人々は保護権利化人財のことであります。それから、創出と活用の人財。そして、その裾野と言われておりますが、将来的にここに入ってくる子どもたちと、そして一般社会人がここになっているという状況です。
 特に強調したいのが、12ページの上にあります、知財保護・権利化人財を高度化すると同時に広域化しなければいけないということです。すなわち国際化対応ということで、従来の職能の中で高度化するということが勿論必要なんですけれども、同時にほかのウィングを伸ばして、例えば経営がわかるとか、あるいは科学技術がわかるというような広域型のワイドな人財に拡張しなければいけませんし、そもそもここのメタレベルで、私は汎と書きましたが、ジェネラリストを育成しなければいけないのではないかと思います。ジェネラリストというのは、従来文系の何でも屋というふうに言われる可能性がありますけれども、そもそもジェネラリストというのは将軍のことですから、専門家を使いながら作戦を展開できるジェネラリストが必要ではないかと思っております。
 同時に、下に書いてありますとおり、弁理士・知財部員・審査審判官といった、従来の専門の方々が相互に交流し、そしてキャリアを上げるようなパス、あるいはそういう専門職のイメージを醸成していく。人財育成は今いる人を生かすだけではなくて、今後入ってくる人たちを呼び込むような魅力的なものにする。優秀な人たちが入ってくる魅力的なモデルをつくってあげることが必要かと思います。
 そうしますと、関連職能の拡充として、今、IPパラリーガルと呼ばれている人々にもっと活躍して欲しい。私はIP業務管理司というふうに呼んでおります。あるいはサーチャーをIP情報検索司、あるいはトランスレーター、インタープリターをIP通訳・翻訳司というようにしたり、あるいは検定資格によって学習目標としての魅力化を図ってはいかがかと思っております。
 13ページ、従来、保護権利化、創造、活用というふうに言われている3点だけではなくて、そもそもこのサイクルを回せる人財、そしてこのサイクルを回すことを支援する人財ということがあります。恐らく支援人財としては教員だとか、知財ジャーナリストが必要になってくると思います。
 そして、14ページ、15ページは御参考までです。
 16ページで言いたいのが、これをごらんいただけるとわかるとおり、現在の知財立国は産業競争力を育成するという、非常に基本的なことがありますから、知財マネジメントが重要になります。そのときに、科学技術、法務、経営商務、それぞれに専門職能があります。弁理士は、科学技術と法務を司る。弁護士は、法務。科学技術では、技術士ないしはMSc/MEgがいるわけです。
 ここで欠けているのは、実はMOTの技術経営士というところがないんですけれども、これらの人たちにあまねく知財教育をするというのが1番。
 2番が、相互交流・互学互修型。互学互修という言葉は、私が学界で提唱しているやり方ですが、エグゼクティブ教育を充実化し、それを常設化する
 3番が、和製英語ですが、ダブルメジャー化の奨励促進、すなわち技術士が弁理士を取る、弁理士が中小企業診断士を取るといったような形を奨励してはいかがかと。
 更に、現実的に言えば、ダブルメジャーというのは大変難しいことですから、メジャー・マイナー、すなわち主専攻に対して副専攻を入れるというディプロマ、欧米では通常であります、ポスト・グラジュエイト・ディプロマを導入して、皆さんに取りやすくするという副専攻的な資格と位置づけ、学習促進を図ることがあろうかと思います。
 15ページの下は、国民全体の知財民度に関して、知財シャワーを浴びせるということと、大胆な普及・啓発などの展開で、「知財プロジェクトX」だとか「キムタク弁理士物語」もあってもいいだろうと思っております。
 あとは、総合的な戦略を最後に申し上げさせていただきます。16ページのところで、知財人財育成拠点を是非設置していただきたいと思います。私は、知財人財、弁理士、知財部員から特許庁の方々まで、現場でいろいろ教育や育成をさせていただいておりますけれども、その横断交流的な組織がありませんし、その具体的な場所がありません。倍増する、しかも質的に高めるということでしたら、是非そのセンター機能を負うような拠点を設置していただきたいと思います。
 2番目に、資格制度を検討して、特に中核を支援する周辺の資格や、あるいは学習意欲をそそるような資格、ないしは検定、そういったものをここで検討すべきではないかと思います。
 そして、17ページにありますとおり、先ほど御紹介されましたけれども、現在いろんな試みがなされておりまして、試みが試みだけで終わるのではなくて、定着をさせていただければと思います。特に、50代の役員ないし候補であるディレクターレベル、40代のエグゼクティブレベル、ここが今後の肝になってくる方々ですので、この知財マネジメントの教育機関を常設化する必要があるんではないかと強く考えます。30代のMBAレベルはいろいろなところで始まっております。しかし、中核となる40代のエグゼクティブレベルの教育機関が、試みだけで今、終わりかけようとしています。それを是非常設化していただきたいと強く申し上げたいと思います。
 更に、経営系、特に産業競争力の強化ということですと、今までが理系の方の知財教育が主だったのですが、私は経営系に何もされてないということを問題視したいと思います。経営系の教員で、知財関係に関わっている人間は、私以外に数名しかおりません。経営系の学会で、知財が語られることはほとんどありません。それではいけないということで、経営系の教員と、経営系の学生の年間10万人教育は工夫さえすれば容易にできます。
 その一端として、下に書いてあるとおり、例えば、放送大学、大学院での常設科目化を図っていただけたらと思っております。よくe−Learningと言われるんですが、e−Learningはほとんど今、専門家の間では踊場状態になっていると言われております。むしろ単位交換がきちっとできて、意欲が湧くような形をいろいろ工夫する。その1つとしては、放送大学等があるだろうと思います。
 4番目の地域への知財教育、これは先ほどの事務局のとほぼ同じかと思います。
 そして5番目に、先日申し上げたとおり、知財リスクが今、非常に高まっておりますので、リサーチノート、ラボラトリーノート、これは勿論業種業界ごとに温度差がありますし、濃淡はありますけれども、こういう地道な努力も1つ忘れずにやっていただけたらと思います。
 以下は、いわゆる教育の参考を載せました。なぜそれを載せさせていただいたかというと、簡単でありまして、私は経営の人財育成の方から、こちらの世界に入らせていただいたときに、とにかくびっくりしたのが、知財の世界の教育は、非常に古い19世紀型で進んでいるということです。座学をやれば教育だと。この19世紀型を是非21世紀型に変えて人財育成を進めさせていただければと思います。
 ありがとうございました。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続き田中委員からお願いいたします。

○田中委員 それでは、資料に従いまして、企業から見ました知的財産人材という視点でお話ししたいと思います。
 資料の2ページ目を開けて下さい。タイトルは企業における知的財産です。企業というのは、メーカーであれ他の業種であれ、新しいコンセプト、あるいは新しい技術を生み出して、それに立脚して事業展開を行なっています。その過程で生み出される色々な差別化した知恵は、無形資産ということになると思います。資料にありますように、いかに新しい技術を生み出すかという方法論も知恵ですし、いかに安くつくるか。あるいはいかに安く物流を行うかなど、もろもろのことが、すべて知的財産です。そして公的に認められたものが知的財産権として扱われます。ですから製品に使われている技術だけが知的財産ではないと思います。
 こう考えますと、知的財産力というのは、その企業の価値創造力であり、企業経営における力の源泉であると考えることができるわけです。
 次のページをお願いします。ここでは、企業における知的財産活動と求める基礎的な能力について、説明したいと思います。まず、【創造】につきましては、基礎研究の深耕、これは一番大事なことです。単独でやられるばかりではなくて産学連携、あるいは企業間連携というオープンイノベーションに対応できる能力というのが、ますます求められてくると考えています。
 それから、権利化するもの、あるいは知的財産をノウハウとして管理するものの明確化も大切な活動です。ですから特許だけをやるのが知的財産部員ではないとつね日頃本部員に話をしています。そういうふうに考えますと、今議論されているようですけれども、先使用権等もきちっと明確化して、これから運用する必要性というのも、非常に強くなってきていると思うわけであります。
 2つ目の【権利化】につきましては、企業におきましてこの発明の発掘ということが、一番大事なポイントです。それから、権利化活動そのものも大切なことですが、もう一つ忘れてはならない大事なことは、知的財産のポートフォリオのマネジメントということが企業活動にとっては非常に大事な部分であるということです。
 先行技術調査に関しては、サーチャーですとか、技術翻訳者も含めて考えています。
 求める基礎能力としては、最先端技術の理解力、及び言葉の理解力というものが必須であります。それから、発明者とのコミュニケーション力。
 もう一つ大事なことは、価値ある権利に対する洞察力。この洞察力がなければ、発明の発掘という一番大事な活動ができません。研究開発者は、必ずしも権利に対して詳しいわけではないということです。
 次のページの【活用】につきましては、技術流出防止、あるいはブランド管理といったものも知財部門としてきちっと考えて活動していかなければいけない。そうしますと、各国の文化の違いの認識、あるいは商品知識、マーケティング力、といった能力も必要になってきます。
 技術契約、ライセンシング、侵害係争、これは一般的に言われていることですけれども、1つはオープンイノベーションに対応できる能力、権利の解釈・評価、これはもう当たり前でございます。
 交渉力という言葉がよく使われますが、これは相手企業の経営指標、経営状態が理解できる、場合によったらバランスシートも読めるというような能力も必要だと考えています。 競争法ですとか、あるいは国内外の税法等の経済法、これらの知識がないと契約書も作成できないということになるわけです。
 更にこの【活用】の部分に関して、私どもでは各種の知財マネジメントルールを作成しております。グローバル発明取扱いルール、商標取扱いルール、営業機密取扱い、ブランド管理、あるいは標章取扱いルール等で、このようなルールの整備についても、知財部門が主導権を持って活動しています。
 「人材の育成」につきましては、いろいろなところでもう既に書かれていると思いますが、企業として一番大事なのはローテーションであり、海外、あるいは関係会社、外部機関というところを利用しています。関係会社等にいきますと、契約、渉外、権利化、すべてのことを自分でやらなければいけないという状況に立たされるわけでございます。このようなローテーションを通じて実務能力の付いた人材を教育していっております。
 企業から見た人材育成ということで、お話ししました。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 急いで恐縮でございますが、前田委員からお願いします。

○前田委員 自分の経験等実例を元にお話しさせていただきたいと思います。また、弁理士の方の教育等は、専門家の方にお任せしまして、主に大学のライセンスに焦点を当てて説明させていただきたいと思います。
 妹尾委員がお話しになりましたように、大学における知財人材は、非常に不足しております。多様なスキル、コミュニケーション能力、柔軟性が必要です。発明者である先生方のお話をきちんと水面下の情報を含めて伺い、それを企業に上手にアピールする能力。更に、ライセンスをしなければいけませんので、人脈も必要になってきます。これを全部兼ね備えた人を、大学の知的財産本部の人材として必要としています。しかし、このマルチな人材が不足しておりまして、これは深刻です。
 そして、私が関わっております東京医科歯科大のようなバイオテクノロジー・ライフサイエンスの分野は、更に深刻で、製薬会社に知財の専門家がいらっしゃるぐらいで、産業界から大学に来ていただくだけでは、不十分な状況になっております。それでは、養成しなければいけないということで、東京医科歯科大では、平成16年度から文部科学省科学技術振興調整費の助成を受けて、広く産業界・法曹界・研究者等、学外の方を対象にして人材養成をさせていただいております。
 この教育プログラムは、主に目利きと言いましょうか、ライセンスをする人の養成です。ですから、一般には知財人材の養成と言いますと、専門家への広報が多いのですが、努めて、産業界全般へ働きかけしております。もともとライセンスする人というのは、案件ごとにケース・バイ・ケースで、行う人ごとにすべてスタイルが違います。ですから、マーケットをよく知っていて、優秀な人を集め、その方たちに育っていただかないとなりません。そしてたくさん成功事例をためていくことで、この業界種は活性化していきます。ですから、いかに質の高い人を集めるかに、たいへん力を入れています。
 アピールが功を奏したようで、募集定員の5倍以上の応募をいただきまして、今年度は大変優秀な方にお入りいただいております。半数以上の方が弁護士・弁理士・大学教授というような、どちらが養成していただくのかよくわからないような状況のメンバーで、今行っております。具体的には、次のページにありますように、まず、学内の教授にバイオテクノロジーの講義を行っていただきます。その後、実験を12時間行い、パテントの講義は、勿論、日本だけでなく、ライフサイエンスは特にアメリカの技術など、きちんと知識を持っていなければいけませんので、欧米の特許法、そしてライフサイエンス特有の生命倫理や利益相反に対する講義も行っております。
 そして、一番時間をかけていますのがバイオビジネスの講義です。ベンチャーを立ち上げられた方、また、お金を支援する方等、いかにして起業、産業へ持っていくか成功なさっていらっしゃる方、勿論、失敗例もたくさんお持ちの方でいいんですけれども、そういう先生方に講義をしていただいております。講義スタイルは、座学だけで無くケーススタディや討論形式なども取り入れています。更に、さきほど八田委員がおっしゃっていましたように、特にライフサイエンス分野は国内だけでは十分とは言えませんので、今年度は、優秀な2名にワシントン大学ロースクールへ3週間の研修に行ってもらいました。また、アメリカの弁理士事務所で、主にクライアントが日本の事務所へ、6週間のインターンシップを企画しております。後々、もう少し長期で3か月ぐらいのインターンシップも考えております。
 何よりも、産業界へ働きかけて、専門家だけではなくてマーケットを知っている人、あるいは企業の経営陣の方に、この分野の知財の充実を図ることの必要性を知っていただくことがとても大切だと思っております。
 広く産業界全般の方々に認知していただこうと思いまして、シンポジウムを2つ、今年も企画しております。特に、アメリカの特許法が春に大きく変わると言われましたので、この状況を知ってらっしゃいます先生方にアメリカの実情をお話いただくシンポジウム。
 また、その次のページにありますように、広く経済界で活躍なさってらっしゃる方、ここにいらっしゃいます荒井さんにもパネリストをお願いしておりますが、著名な方を集めて、広く社会にこの分野大事だよねと働きかけることも私の使命かなと思っていますので、このようなシンポジウムも開催して、世の中に広報しています。
 昨年度も、日本経済新聞社と共催で、いかにライフサイエンスの知財を、皆さんにわかっていただこうかと思いまして、海外の著名な方をお呼びして授業を行いました。(7ページ参照)それの前後には、延べ800 人を集めまして、(広く経済界の方にもお見えになっていただけたようです)シンポジウムをさせていただきました。
 自分の学校のことはこのあたりで終わりまして、他大学の状況を少しご紹介いたします。文部科学省の科学技術振興調整費のプログラムオフィサーをやっておりますので、このプログラムで活発に行っています大学の資料を示しました。
 妹尾委員がやっていらっしゃいます東大を始め、このようないろいろの大学でも積極的に知財の人材を育てようという形で頑張っています。
 更に育てるだけでは不十分で、大学の知財の人材は、特に、雇用体制の確立をすることが大変大事だと思っております。
 弱年層の雇用、安定雇用、処遇の改善、先ほどご説明しましたように、いろいろなスキルを持っていないと行えない仕事なものですから、これらをすべて合わせ持つ方の雇用体制をきちんと確立させないと、この業界は根づかないのではないかと思っております。
 経済産業省の依頼でアジアの大学の状況、特にお金の出どころを探ってくるということで、先週、中国へ行ってきました。具体的には清華大学、上海交通大学、復旦大学の3大学を訪問しました。清華大学の特許数が多いのは大体想像していたんですけれども、ライセンスする人が50人いて、どうしてこんな50人も取れるのですかと伺いましたところ、「ライセンスの仕事は将来性があり、政府も支援しているから、外で働くより、収入が高いからね」とおっしゃっていました。私は、アメリカ並みの対応を中国が行っていることにたいへんびっくりしてしまいました。「当たり前じゃない、市場に敏感で経済に精通している。技術をよく知っている。交渉能力がある。更に、体力がないとできない。このような人たちを、安いお給料では雇えないよ」と笑われてしまいました。ちなみに、復旦大学に次の日に行って、同じことを聞きましたら、同じように答えられました。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、伊藤参考人から、短い時間で恐縮ですが、お願いいたします。

○伊藤参考人 伊藤でございます。時間が短いので、すぐに始めさせていただきます。お手元に、資料10で配布させていただきました。私の仕事は弁護士に係る人材育成の現状を御説明するということでございます。
 既に御承知の方も多かろうと思いますけれども、日弁連主催で、2003年の夏から、午前・午後合わせて3日間連続という形での集中研修を東京と大阪で行ってきました。最初の時は、東京でも500 人の予定だったんですが、参加希望者が多くなったということで、急遽、同じ研修を2回実施するようにしました。3日間連続にしたのは、泊まりがかりで地方の先生方にも多数参加していただけるようにとの配慮であり、実際、地方からも多数の先生が参加しております。この研修は当初は毎年1回ずつの予定だったのですが、間隔を詰めることとして1年半で3回実施し、東京大阪併せて延べ3,476 名が受講しております。更に、インターネットでも配信をし、地方の弁護士会単位で集合して見るとか、個々の事務所でも見るとか、また、ビデオも配布して、視聴していただいております。現在も続けておりますが、そういう形で実際に受講された3,476 名以上の多くの方々が受講されております。
 それ以外にも、今年も東京、大阪で、丸1日の研修会、あるいは名古屋で、これは金土、金土という形で4日間だったと思いますが、研修をいたしました。
 そのあたりの実情につきましては、まず全体的なお話として『自由と正義』に掲載された報告のコピーを、資料の3ページからに付けさせていただいております。特に4ページのところの左側ですが、育成と研修というところで、全体の様子について詳しく記載されておりますので、後でお読みいただければと存じます。また、本年、名古屋でどんな研修をやったかということにつきまして、8ページで名古屋の研修の内容が具体的に記載されております。この研修の中では、実際の起案研修、9ページの右側ですが、訴状という具体的な書面の研修もやっております。
 このような形で、裾野を広げる。特に知財の分野について、基礎的な知識を得ていただくという研修を行っておりますが、それとともに、コアになる人材育成ということで、今年の2月から大阪で、5月からは東京で、集中的な専門研修を行っております。この資料が11ページにございます。このような研修は日弁連という大きな枠組みではできませんので、日弁連法務研究財団、あるいは大阪では立命館大学と日弁連法務研究財団との共催という形で行っております。12ページに東京の研修の資料を添付しております。東京では今回、商標法・不正競争防止法を行いまして、来年特許を行う予定でございますが、「講義の内容」として、裁判前の警告書であるとか、訴状・準備書面などの起案を実際に行わせて、それを講評する等の形をとっております。各受講生が起案したものについては、全員分を各受講生に配布する、30名1クラスに弁護士が2名張り付く形で行っております。この研修には弁理士の先生にも一緒に参加していただいております。
 実際のカリキュラムについては、15ページのところに掲載してございます。こちらの方は、かなり専門的かつ2か月あるいは4か月を使っての長期の研修で、受講生の方には丸一日研修を行った後に1週間の間に訴状などを起案するなどの作業をしていただき、講師の方もそれを読んでいただいて講評するという極めて実践的な演習でございました。
 そういう形ですので、後で受講生間のメーリングリストがまだ残っておりまして、その中で受講生、講師が活発に自分の事件などについてのコメントを出したりするという形で継続しており、これもまたいい研修になっていると思います。
 あと大学・大学院での良質の講義がございますので、そういうものに科目履修生などで行くようなことも実施しており、これからも充実させていきたいと考えております。
 もう一つ、特に力を入れて御説明したいお話が、16ページにパンフレットを載せております弁護士知財ネットでございます。こちらの方は、現在1,200 名ぐらいの弁護士が参加しております。ホームページを設けて、そこの中で会員名簿を公開したりして、企業からのアクセスの改善、また、研究・普及というようなことを中心に行っております。もうすぐホームページで各コーナーが立ち上がる形になります。
 また、地方の支部へ日弁連からの講師派遣、研修の実施なども活発に行われるるようになっております。
 あと、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク、こちらは久保利先生から前回御説明があったかと思いますので、省略させていただきますが、弁護士345 名が参加しており、こちらの方はエンターテインメント系の知財人材の育成が行われております。月1回研修会をやっておりますが、そこでは企業、例えば放送局の部員であるとか、コンテンツ関係の方々、そういう方との交流も深まっております。
 本来、弁護士の研修や研究はそれぞれの単位会で行うものが中心であります。これは余り事細かに説明する時間がございませんが、例えば私が所属しております、第二東京弁護士会では知財の研究会が1か月に1回の研究会を行い、それから今年は北海道に合宿に行って、田村教授に教えていただきながらの研修もやっております。資料は18ページに、その1年間のカリキュラム、今年は不正競争防止法を中心テーマとしてやっているようです。更に、会としての研修として、弁理士会と共催で模擬裁判を4日間にわたって実演していただいたというような研修も行っております。
 19ページでは、大阪弁護士会での知財法の実務研究会の状況などについて、小松陽一郎弁護士のレポートがございましたので、それを抜粋させていただきました。
 また、単位会以外の部分でございますが、例えば、北海道で弁護士の先生が中心になって、北海道知的財産実践塾、荒井先生にも2回目に講演に行っていただいたわけでございますけれども、そういう形で現場、あるいは経産局、そういう産業界を巻き込んだ形での動きが進んでおります。
 特に地方の場合には、弁護士が中心になって動きをつくることによって、いろんな形で関係する方々を巻き込んでいくことができるようになるのだと思っております。
 時間がまいりましたので、最後に1点ごく簡単に私の思いを申し上げたいと思います。
 知財の育成というのは、裾野を広げることとコアになる方々を増やすという両面であります。先ほど妹尾先生のお話で、19世紀型というお話がありましたが、コアになる部分については、既に、今お話しさせていただいたような実践的な、例えば相談業務だとか契約書のドラフトだとか、そういう実践的な研修が進む段階に来ているだろうし、実際にやっているという状況になっていると思います。
 そして、このような研修をより進めていくためには、弁護士などを中心とした専門職大学院の創設などの形によって継続的な研修が進められる基盤が創られることが是非とも必要だろうと思っております。
 人材の人数を単純に増やせばいいかどうかという部分についての懸念でございますが、商品であれば市場の淘汰に任せるということが簡単でございますが、人材の育成の場合、淘汰をする過程では、逆に間違った人間の頼んだ人の問題、そういう副作用というものが淘汰の部分にはございます。人数を増やせばいいのか、という点では、商品の売買とは違いますので、単純に市場の淘汰に任せればいいというものではなくて、始めから一定の水準のあるものを確保した上で、その上での人材の育成ということを考えなければいけないんだろうと思っております。
 この点で、勝つ者がちゃんと勝てる、そういう基盤がつくられることが必要だろうと思っております。その辺りのところが、今の日弁連の取組みということで御理解いただければと思います。
 ありがとうございました。

○阿部会長 八田委員は、もう御退席されなければいけないんですが、何か一言。

○八田委員 2点申し上げたいと思います。一点目は、今の伊藤参考人がおっしゃった司法に関わる人財は市場の淘汰にまかせられないという御意見に関してです。
 第1に、そもそも、だめな弁護士は、1人で世の中に出て行って、お客さんに迷惑をかけながら消えていくわけではなくて、弁護士事務所の中で淘汰されていくわけですから、間違った人間がいきなり世の中に、弊害をまきちらすということはないと思います。第2に弁護士の質に関しての情報開示を徹底的にやることが官の役割の一つだと思います。これをやると、質は今より改善すると思います。第3に、技術に詳しい人を弁護士にして、競争メカニズムを入れていく方が、技術について何も知らない、高校を卒業していきなり法学部に行ったという人だけの法曹人よりはるかに優秀な知財法曹人をつくれると思います。現行のように、無能な弁護士を競争メカニズムで淘汰できない仕組は、その分実務上優秀な人が弁護士になれるスペースを減らしていると思います。
 2点目は、先ほどの7つの視点というのが、資料5の12ページにございましたが、国際的に戦える人材の育成、融合人材の育成、それから人材の流動化、そういうことを達成するには、何をすべきかということに関してです。人材のネットワークを国際的につくる為には、皆様のおっしゃったことに付け加えて、奨学金をつけて外国で知財方法を学ばせる制度が必要だと思います。今、文科省は大学院レベルでの科学や経済学を含めた全学問分野で60人ほど外国に留学させる奨学金を出しております。これは3年前に始めました。20年前の留学生は米国の大学から直接奨学金を貰っていくのが主でしたが、今は中国人留学生が増えて日本人は奨学金を取っていくのが難しくなったので、そういうことを始めました。知財分野では、もともと留学すべきだった人材がこれまでに随分留まっていますから、最初の3年ぐらいは毎年60人ずつぐらい派遣してもいいのではないでしょうか。しかもそういう人が日本に返ってくることは期待しない。とにかく世界中で活躍してもらって、そのうち戻ってくることを期待して送り出せばよいと思います。
 最後に申し上げると、外国の人が日本での知財の法律に精通してもらう必要がどうしてもあると思います。本当に日本の法律を勉強する人は、きちんと日本語で勉強しなければならない。しかし英語に訳した日本の法律や判例でもって勉強できる教育機関もつくらなければいけない。そういう教育機関をつくるためには、最初にかなり大量の人材を海外に派遣して、向こうで経験を積まして戻ってこさせるということが必要ではないかと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 どうもありがとうございました。貴重な御意見をいただきまして、少しお引き止めしたのかもしれませんけれども。
 それでは、大分時間がオーバーしておりまして、いいお話がたくさんありましたので、途中ブレーキをかけなかったんですが、残り時間を御討論にさせていただきたいと思います。特にプレゼンテーションされなかった、加藤委員、板井委員、中山委員から、優先的に御発言をいただければと思いますが、いかがですか。
 加藤委員、どうぞ。

○加藤委員 我々がやっておりますバイオ分野に関しては、先ほど前田委員もおっしゃっておられましたが、世界的に負けの状態といわざるを得ません。研究自身は負けてはいないのですが、権利化ということが非常に下手です。単に権利化することだけではなく、当社を含め、結局ハングリー精神がどうも足らないという気がします。
 当社グループは1,000 人ぐらいの従業員がいるのですが、日本人は約3割です。当社はアメリカの会社を買収しましたし、中国に会社を2つ設立しておりますが、彼らと付き合うことによって非常にハングリーさを学ぶのです。
 ですから、例えば、DNAチップについて、我々も似た技術はかなり前に持っていたのですが、その技術をDNAチップのように高密度化し、権利化するというようなハングリーなアイデアがないのです。ですから、負けたことになってしまうのです。
 我々の経験から申しますと、日本人同士がこうあるべきだということをやっていても、勝てないだろうと思います。国際性を培うというためには、例に挙げてはいけないかもしれませんが、ソニーのように世界で入り乱れてやっていかないと、結局知財というものでは勝てないのではないかという気がしております。
 知財のことに関しても、米国や中国の方は非常にハングリーですから、そのような方々と日常的にやりとりすることは非常に役に立つんです。我々はいろんな意味で刺激を受けます。そういう人種複合型で当社はアタックしていこうという道を歩んでおります。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、先に板井委員、どうぞ。

○板井委員 今日はたくさんいいお話をお聞きしましたので、余り私としては新たなものはないんですけれども、今日のお話の中で、ちょっとなかったのが、特許を守るという点で、要するに、侵害をウォッチしていくシステムとかがなくて、私どもは零細企業なものですから、特許はたくさん出願していて、国際的に特許化はしていますけれども、守るということができないで苦しんでおります。
 ウォッチが遅れると問題が大きくなって、解決がどんどん難しくなってきますね。相手がどんどんビジネス化してしまいますから、そうするとなかなか引いてくれないということもあったりとか、戦う余裕がないということとか、特に国内でも問題ですけれども、国外はなおさらやれないということもあります。
 そういったことが、データベースが完備したり、支援機関ができたらいいのかなと、それでもなかなか個別の特許についての侵害は発明者とその関連者しかわからないということもあって、ちょっと人材育成の面でこれをどうしていくかと考えると、今日は何も提案がないんですけれども、とにかくライフサイエンスの分野では、非常に進歩が激しいということと、グローバル化が早いということがありまして、特許化してあっても、それがなかなか守り切れないという問題を、何とか皆さんのお知恵を拝借できたらと思っております。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。特に中小企業の問題は、非常に大きいところで、これまでもやってきましたけれども、またいろんな知恵を出していかなければいけないだろうと思います。
 それでは、中山委員、お願いします。

○中山委員 今日のお話をいろいろ伺っておりますと、大体社会人教育といいますか、弁護士、弁理士等の専門家、会社の知財部の人、あるいは大学で知財を運営している人材をどうやって育成していくかという話が中心だったと思いますし、それが恐らく一番大事だろうと思うんですけれども、私は大学におりますので、ロースクールのお話をしたいと思います。これは実はもう若干手遅れと言いますか、ロースクールができる前にこの本部でも、あるいは司法制度改革推進本部でもいろいろ議論をして、私も申し上げました。基本的にはこれからの新しい司法試験は、従来の司法試験よりは簡単かもしれませんけれども、それでも極めて難関であるということは間違いありません。ということは、もう必然的にロースクールは予備校化するということを意味しているわけです。
 私の大学ではないんですけれども、いろいろ話を聞きますと、先生の意見はどうでもいいから、試験に受かる答えを教えてくれとか、司法試験科目ではない科目は期末試験の問題を教えてくれと、そんな勉強をしている時間はないとか、笑い話のような話がたくさんあるわけです。受験生にとってみれば大学院まで行って司法試験に受からなかったら、これは医学部に行って医者になれないのと同じで、学部とは違って非常に深刻な事態が起きるわけです。
 したがって、学生としては、ロースクールが当然予備校化してほしいというのは当然なことです。ですから、このジレンマはやはり司法試験の合格者を増やすということしかない。これは司法試験だけではなくて、弁理士試験も同じだと思うんですけれども、それしかない。そうしないと、本当に将来役に立つような勉強をしようという意欲は湧いてこない、インセンティブがなくなるわけです。
 したがって、先ほど言いましたようにちょっと手遅れに近い、ロースクールはこれで動いてしまっているので、今すぐ変更というのは難しいんですけれども、やはり長い目で見れば法曹人口の増加という点が基本だろうと思います。前回申し上げましたけれども、弁理士も数の問題だろうと思います。
 現在の受験生を見ておりますと、みんな予備校化しておりますから、現在の状態で数を増やせば、あるいはどうしようもない人がいっぱい入ってくる可能性もありますし、現にそういう意見もたくさん聞いておりますけれども、しかし、長い目で見れば、人数が増えてくると、当然その中で激しい競争が起きます。ですから、アメリカは弁護士が100 万人いても半分ぐらいは食えないんですけれども、激しい競争をしていますから、上の方は恐らく日本の弁護士よりもずっと優秀です。
 例えば、税法なんかでオランダの弁護士は世界一ですけれども、これはものすごい数の弁護士がいて、世界的にものすごい競争をして、百戦錬磨の税法の弁護士がオランダにはいっぱいいるわけです。
 そういう具合に、競争によっていい人材が出てくる。そのためには、余り人数を制限するのはおかしいし、そうすると悪い、変なことをやる人も出るわけです。これはもう弁護士会、弁理士会の自浄能力で、懲戒等で処理していくしかないと思います。
 基本的には、法曹人口、弁理士人口を増やすことによって質を高めていくということが必要ではないかと思っております。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、どなたでも結構でございますので、御質問、御意見ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
 下坂委員から、先ほど井上先生のお話がありましたが、何か。

○下坂委員 もし御質問があれば、ずっと人材育成に従事しておりますので。

○阿部会長 それでは、質問があったときでよろしいですか。

○下坂委員 はい。
 ちょっとよろしいですか。数は力成りと申しますので、弁理士の数が増えることは、いい面も多々ございます。タクシーの運転手さんも最近は弁理士と言えば知っているというところもありまして、非常に社会的に通用しやすくなったと。御近所にもいるということで、私は数の力は偉大であるということを十分理解しているつもりです。
 推進計画2005に、10年で倍増とあります。そうしますと、推進計画2005策定当時は6,000 人ちょっとでしたから、10年間で1万2,000人〜1万3,000人ぐらいかなという予想で、この数字でいろいろ研修なんかも考えていかなければいけないと考えているんですけれども、中山先生お考えの競争というのが、1万2,000人でシビアになるのかどうか。それはわかりませんけれども、1級建築士の問題などもありまして、どこまで、どれくらいのシビアさが適当なのかという問題もあります。
 中山先生のお考えとして、弁理士に限ってお話いただければ、例えば、10年後、20年後とかいうことで、大体数の予測をお持ちでございましょうか、先生のお考えとしてですが。

○中山委員 数の予測はありません。さきほどの八田先生の見解もそうだとおもいますが、恐らくエコノミストの多くは数の制限には賛成しない。むしろ、弁理士の専業を奪う、つまり誰が出願の代理を行ってもよいが、ただ弁理士という名前を名乗るのは国家試験に受かった人でなければいけない、多分そういう考えだと思います。私はそこまで行き過ぎで、やはり試験は必要であり、ある程度のレベルはチェックしなければいけないと思っているんですけれども、しかし市場規模から推し量り、人数が何人だと決めるのは必要ないと思うんです。運転免許となぞらえては叱られますけれども、一定のレベルを持っていれば受かるというのが、本来の筋だと思います。これは弁護士もそうなんです。ただ、法曹の場合には司法研修所というものがあって、そこの物的人的の制約から収容人数に限りがありますので、人数に制限がありますが、アメリカでも、ドイツでも、研修所というものがないのである程度のレベルがあれば試験に合格させてしまう。あとは自己研修と競争という世界です。ですから、人数が何人という意見は、私は特に意見を持っておりません。

○阿部会長 どうぞ。

○田中委員 日本では、知っているか、知らないかという、知識だけの判定で、資格を与えるような考え方が強い。ヨーロッパでも弁理士というのはかなり実務経験をきちっと経てなければ試験が通らないという側面があります。ですから、日本にそのまま入れるのがいいのかどうかわかりませんけれども、場合によったら考えていく必要があるんではないかと思います。
 私どもでも弁理士資格を取った者はたくさんいますけれども、必ずしも企業活動の中において、いい知的財産活動ができるかというのは、資格を持っている持っていないというのは、余り関係がありません。ですから、その資格は一体何だと、やはり実務をきちっとできるような形にみんなで持っていってあげないといけないのではないかと思います。
 それで、社内でもいろんな研修プログラムをつくって、新人ですとか、あるいは全社員、研究開発する人たちに研修しておりますけれども、従来どうしても知識の切り売り的な教育がすごく多かったと思うんです。もっと実務ができるような、あるいは本当に鍛える教育というのをこれから目指していかなければ、知識はいっぱい知っているけれども、何の役にも立たぬという状況が繰り返して起こってしまうんではないかと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 その辺は、田中さんの会社では、何かやっておられるわけですか。実務トレーニングといいますか。

○田中委員 私どもの知財部門には、毎年12〜13名の新人が入ります。入ってきた新人をある程度の期間一般的な教育を行なった後、権利化部門にて半年間ぐらい、知財の知識を身に付けさせる研修を行なっています。そうしますと、逆に特許の権利化だけはできるけれども、それを何のためにやっているのかよくわからぬとか、そういう部分もものすごく出てきます。
 ですから、今年からは徹底的にいろんな意味で鍛える。それから全体状況をわからせるという教育の仕方に改めつつあります。その結果というのはこれからどう出てくるか、ちょっとわかりません。
 それから、私どもは契約渉外という部門もあります。ここでは権利化をやった人から何人かピックアップして、契約関係、あるいは訴訟関係などの業務を担当させています。ですから、まず権利化をきちっと勉強した上で契約渉外業務をやることになります。勿論、法律を勉強して入ってきた人が契約部門に直接入るということもありますけれども、いろんな形でできるだけローテーションさせて、いろんな経験を積ませてやろうという、そういう意識でやっております。

○阿部会長 今日、弁理士会あるいは弁護士会でもいろんな教育プログラムの御紹介がありましたけれども、今の田中委員の御指摘のような点から見ますといかがですか。その辺も、どうぞ。

○伊藤参考人 御指摘のとおりで、いろんなゼネラルなところを見なければ作業ができなくて、それは座学で教えられる部分と、教えられない部分があるんだろうと考えております。
 強調したかったのは、裾野を広げる、例えば地方でTLOとかが絡む場合には、契約のことから、そういうゼネラルな法律知識を弁護士は持っている。あと技術的なこととか特許法などの特別法の知識であり、これは基礎的な素養があれば十分に対応できる。そこから先は弁理士さんと組んで、あるいは、いろんな方と組んで、知識・経験を集めてまとめるというのが弁護士の仕事だろうと思いますし、そういう人材の育成が大切です。あるいは逆に、専門のコアになる人材の部分については、実際の事件を通じて学んでいくのが一番よろしいんですが、実際のものは事務所の中でしか扱えませんので、先ほど申し上げたように、模擬裁判であったり、実際の起案研修であったりというもので学んでいく。これがコアになる人材育成の仕組みは、これから一番必要になってくるだろうし、そのシステム、箱のようなものはかなりできてきたんだろうと思っておりまして、これをこれから充実させていく時期に来ているんだろうと思っております。
 1点、ついでに補足させていただきますと、先ほど人数のことについて私が口火を切った関係で、その話になってしまいましたけれども、増やすなということを申し上げているわけではなくて、「一定の質を確保した上で」という形のことを申し上げたかったということで補足させてください。
 ありがとうございました。

○阿部会長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○吉野委員 企業の中で、知的財産関係というのは、従来権利化みたいなところが仕事が多かったんです。それがどんどんやらなければいけない仕事が増えつつあるわけですが、この知財特許に関する担当の人たちというのは、ややもすると自分の世界に専門家として閉じこもりがちなところがありまして、例えば、従来のシステム部なんかもそうなんです。システム部というのは、コンピュータで企業の中のいろんなオートメーションをやる連中ですけれども、やはり自分はここの世界に住んでいればいいんだみたいな感じのところがありまして、ところがいろんなことを勉強しないと、それ以上進歩がないような時代になってきていて、例えば、ウォッチングの話がありましたね。侵害をどうやってウォッチングするのかの話がないような御発言がございましたが、これも知財だけで仕事をしている人たちというのは、それをどうするかということまで普通考えないんです。実際には、我々が中国でやっておりますのは、知財が侵害されれば、たまたまパートナーがいるものですから、資本のパートナーと、中国での会社の我々の製品を売る販売店がもう各地にあるわけです。したがって、その販売店の人たちにまで知財の問題を投げかけて、その人たちがフィールドでウォッチしてくれると、それは共通の利益ですから、そういうことが企業としてやれるかどうかというのは、どこまで知財の意識なりそういうものが社内で普及しているかというようなことになってくると思うんです。
 したがって、知財をやっている人たちに、どこまでビジネスの状態だとか、いろんなものまで把握して、どこまで経営に役立つようなことをやっていただくかというのは、ものすごく大事なことになってきていると。殻を破ってもらうというようなことがますます必要になるんではないかと思います。

○阿部会長 それでは、前田委員、妹尾委員の順番でどうぞ。

○前田委員 大学の知的財産本部というのは、弁理士資格を持っているか、大企業で知財部の上の方にいらっしゃる方しか入れない。そうじゃないと高い肩書が付けられないというのが実情です。大学は、知財を創造するところで、非常に大切な場所だとは思いますが、大学というところは、人格とかマーケティング能力、ネゴシエーション能力、どれだけ人脈を持っているかというのを点数化することができないものですから、やはり資格がないとなかなか高いポジションで入れなかったりして、全国どこの知的財産本部を見ても、ほとんど特許部出身の方、もしくは弁理士しかいない状況です。
 一番大事なことは、先生方といかに上手にコミュニケーションを取れるかです。いろいろな企業と関わっていて、バッティングしていないかどうかなど、字面には出てこない裏の情報をどれだけつかみ取れるかなど重要なことです。活発な先生ほど、多数の企業と関わっています。ともすると、すでにライセンスした特許と重複した範囲で,他の企業とも結ぼうとしている場合があります。個人の先生と企業とでやっている時代は、企業は、自分たちで調べなければいけなかったかなと思ってくださいますけれども、一応、契約のプロであると謳っている知的財産本部が間に入って、このようなことを起こしてしまったら、大変なことになります。訴訟問題になることもありえるかもしれません。交渉能力や、先生とのコミュニケーション能力が一番大事なのですが、そこは点数化されませんので、このような能力の優れた方には、なかなかアカデミアの世界に入っていただくことが難しいです。どうしたら、このようなスキルの方々に、知財を創造する大学の中で活躍してもらえるのかが課題だと思います。
 ある意味、成功事例として、私が、愚痴を言わずに、私の人生ハッピーですと謳って歩くのが一番いいのかなと思います。技術系の女性がどんどん入ってきてもらえると嬉しいです。私、母親もやっておりますので、そういう人が増えればいいかなと思って、ハッピー、ハッピーと言うのが一番いいのかもしれませんね。どうやったら、若くて、交渉能力があって、資格なしでも大学の中に入ってくることができるようになるのかなというのは、日々悩んでおります。

○阿部会長 大学の知財戦略、知財マネジメントというのは、確かにすごく動いていますね。1年前、2年前、3年前と比較すると、ほとんど違ったフェーズが来ているように思いますけれども、妹尾委員、お願いします。

○妹尾委員 今の話だと、例えば、私も昔、ある大学の知的資産センターの副所長をやっておりましたから、大学の状況がここのところ様変わりしているというのは、非常によくわかります。ただ、残念ながら大学には若い優秀な人材を引き付けるだけの魅力が制度的になかなかない。どうしても実績を持った方がアドバイザーと称してたくさん入っているんですが、実態としては、多くの方は、申し訳ないんですけれども、日経の切り抜きをしながらお茶を飲まれているという状況です。アドバイザーだ、コーディネーターだといろんな省庁がつくっていますが、実質的に意味があるかどうかは、現場はみんな知っているわけです。また、何かというとマッチングでコーディネーターという、もうあの思考からは脱却していいんではないかと思います。重要なことは、コーディネーターではなくて、プロデューサーが必要だということなんです。コーディネーターとプロデューサーの概念の違いというのを、もうそろそろ我々は認識してもよいのではないかと。コーディネーターというのは、相互の調整役ということです。これから重要なことは、だれかがイニシアティブを取って、リスクを取って、ほかの人を動かすプロデューシング、つまりコンテンツビジネスで言われているのと同じことが、この科学技術の事業化、社会化ということにも必要になってくるわけです。
 資料の中で、私がテクノビジネスプロデュースという概念を出させていただいているのは、実はそのことなのです。
 翻って人財育成の問題ですが、人財育成ということは、非常にファンシーで耳当たりのいい言葉なんです。例えば「総合科学技術会議」でも、あるいはいろいろな産業人財育成の議論でも、みんな結論として人財を育成しようで終わるんです。たしかに結論としては非常にいい結論なんですが、そこで終わると我々人財育成屋はいかがなものかと思います。そこは結論ではなく、出発点じゃないかと思うわけです。出発点であるのにも関わらず、何かと最近の政府の話は人財育成ということで、何か結論で終えてしまおうという感じが、我々専門家から見るといかがかなと思うわけです。
 考えてみると、人財育成というのは実は教育だけではないんです。3つあります。1つは交流、1つは業務、1つは教育なんです。業務を通じた人財育成をどうするか。それから、交流というのは、ある方はパーティーのことかとおっしゃりましたけれども、そうじゃない。いろいろな関連人材が触れ合うことによって、その人たちが広域化される。先ほど吉野委員が言われたように、いろんなことを知らないと閉じこもってしまう専門家ばかりですから、そういう場所と機会を設けるということが、非常に重要になってきます。
 そのときに、人財育成、例えば、人の資格という観点で言うと、先ほど御議論がありましたように、競争原理を働かせた方がいいのか、あるいはきちっと育てた方がいいのか、人財育成の世界では2通り、両方ともいまだに並行の考え方です。競争をすれば人が育つという考え方と、少ない人数でやらせれば、一騎当千になっていくという考え方と両方あります。
 ただ、この議論に立ち入ることよりも、先ほどの御議論の中で、やはりまだ弁理士という枠だとか、そういう士業の枠の中で考えている状況ではないかと思うわけです。例えば、私が出しました資料の中の12ページをごらんいただきたい。そこの上の方に、例えば今、話題になっております権利化の人材は、一方で高度化をしなければいけないとしました。国際化は確かに必要です。でも、ともすれば、これは企業の中の知財部員がよく陥る、そればかり専門でやっているということで高度専門化してしまう。あるいは弁理士の方が出願代理人という枠だけにとどまってしまうということになってしまうと。右側に私は広域の専門職を出すべきだと申し上げておりますが、これは例えばウィングを広げることによって経営と話ができる人たちにならなければいけない。あるいは創出のところを支援する人たちにならなければいけないということだと思います。そして、先ほど申し上げたように、汎の方々、超専門職という右上のことですが、これは言わばスーパースターの話です。我々は俗にIBMの七人の侍なんていう言い方をします。日本人が一人いますけれども、そういう人たちをどうやって育成するか、これはイチローが出てくるようなもので、教育だけで育てられるわけではありません。
 要するに、広域化、高度化、あるいはメタのレベルでのマネジメントをする人が出なければいけないということです。
 それから、下の方で見ていただくとわかるんですが、実は今、実態としては、企業内弁理士が非常に増えているんです。ですから、弁理士、知財部員、審査官という分け方は、必ずしも明確に区別できなくなってくるんだろうと思います。
 任期付き審査官が増えていますが、数年後には弁理士にざっと流れ込むわけです、あるいは知財部員にざっと流れ込むわけです。その人数も加味して考えると、ここのところが弁理士さんの人数を増やすとかよりは、ここでどういうふうに流動性を確保して、その人たちが多様な経験を積んで育つかというところを見通した方がよいのではないかという感じがします。
 更にもう少し枠組みを広げれば、そこに黄色いところで書かれている。知財関連職能が、ここのところずっと発達してきました。IPパラリーガルだとか、IPサーチャーだとか、あるいはIPマップをつくってくれる方だとかという関連職能が増えてきています。ここから専門職へ上がってくるという方がいらっしゃるんです。ここでの議論というのは、恐らく2つあります。1つは弁護士の下位にパラリーガルがあるという議論と、もう一つは、医者か看護師かという議論です。看護師が医者の助手ないしは部下でないのと同様に、ここのときに知財をやっている人と、そうでない方のコンセプトをどうするかという問題です。医者と看護師の場合は、キュアとケアというコンセプトの違いで学部を分けるということをやりますけれども、ここのところをどうするのかという議論が、これからきちっとされないといけないと思います。それが、先ほど申し上げた、資格を魅力化するということと、資格制度をきちっと検討して、こういうところに魅力ある人材をどうやってもたらすかというところにつながってくるのではないかと思います。
 いずれにせよ、私は知財の今までの人財育成のところ、勿論大賛成なんですけれども、ちょっと気になる、もう少しウェイトを置いてほしいことがあります。それは要するに、産業競争力をという観点から知財立国が非常に大きいわけですから、経営に資する人財育成、あるいは経営陣が知財を理解するという部分での人財育成策を強めなければいけないのではないかと。そこのウェイトづけが若干、まだまだ必要なんではないかと思います。
 例えば、我々の東大先端研で役員研修をやらせていただいていております。これは荒井先生にも非常に御協力いただいているのですが、これは知財の役員を育てるというよりは、経営事業役員に知財の基本を理解していただくという試みです。お陰様で大好評で、次々と大企業の役員の方が受講されに来ています。そういうものも、今、アド・ホックにしかできないという状況なんです。こういうものが、定着化する。あるいは先ほど申し上げたとおり、40代ぐらいの、今後のリーダー層になっていく方々の知財マネジメントの研修なり何なりが常設化するということを、是非進めたいと思います。
 その意味では、定着化を図るための組織だとか、あるいは具体的な場所が必要です。今、いろいろ知財関係者の研修は、皆さん渡り鳥をやってらっしゃるんですけれども、そういうものが常に行われているような物理的な拠点も含めて、これは10年の時限立法でも構わないんですけれども、政策的な支援をしていただければ非常に良いと思います。
 いずれにせよ、我々は人財育成の問題を考えるときに、制度なり仕組みなり、モデルなりを考えたときに、常に次の世代の若い人たちが魅力的に思う職場であるかどうか、あるいはそういうプロフェッションであるかどうかということが重要だと思います。その魅力づくりの責任を我々は負っているんだという感じがありますので、それを訴えさせていただければと思います。
 ちょっと長くなってしまい、済みませんでした。

○阿部会長 ありがとうございました。そろそろ時間がまいりましたけれども、是非という方がおられましたら、どうぞ。

○加藤委員 ロースクールの必要性はわかりますけれども、バイオ分野で感じるのは、もっと理系出身で技術のわかる方がそういうところで学んでいただかないと、結局優等生ばかり集めているような感じになってしまうと思うんです。
 御参考になるかどうかわかりませんが、当社は鹿児島大学と共同で、連合大学院の講座を運営しており、その講座を希望する学生がいれば、当社内で研究を行い、博士号をすることができます。
 理系でも知財が面白いからやりたいという方もおられますが、講演会を受講するだけではどうしても見えない世界がございますので、このようなどっぷりつかる形態を知財の世界でもお考えになった方がいいんではないでしょうか。

○阿部会長 そうですね。
 それでは、そろそろ時間がまいりました。今日は、最後の加藤委員のお話も含めて、大変興味ある御意見がたくさんあったと思います。人材については、推進計画2005まで随分やってきたつもりですけれども、知財が活発化するにつれてと申し上げた方がいいのかもしれませんが、新たな課題がどんどん出てきていると思いますし、依然として難しい問題として残っているのは、やはりバイオの関係、ライフサイエンスの関係、あるいは中小企業の関係、これはもう依然としてというふうに申し上げた方がいいかもしれませんが、今日いただいた御意見を事務局に相当負担をかけることになりますけれども、来年の5月ごろに予定されている2006にどういうふうにつなげていくかということですので、またいろいろお知恵をいただきたいと思います。
 とりあえず、本日いただいた議論の概要につきましては、12月9日に総理の主催される、知的財産戦略本部会合がございますので、そこで、これは事務的にお願いすることになるかもしれませんが、経過報告になるかもしれませんけれども、報告をしていただきたいと思います。
 それから、本日の御議論を踏まえまして、事務局において知的財産人材育成総合戦略の報告書の案をつくっていただきまして、次回の本調査会に間に合わせていただけるとありがたい。相当大きい課題がたくさんございますので大変かと思いますが、よろしくお願いいたします。
 次回は、12月21日水曜日10時〜12時に、ここの会議室で行う予定になっております。
 次回は、今つくっていただくことをお願いした報告書案について御説明申し上げるとともに、もう一つ知財の広がりに対応した国際ルールの構築を中心に御議論いただきたいと考えております。
 今日も国際化について、随分いろんな御提案をいただいたように思いますが、それとは違った視点がまたございますので、御議論を賜りたいと思っております。
 そういうことでございますが、何か御質問等ございますでしょうか。事務局何かございますか。よろしいですか。
 それでは、本日は御多忙中、大変ありがとうございました。御礼を申し上げます。