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 トップ会議等一覧知的財産戦略本部権利保護基盤の強化に関する専門調査会 [印刷用(PDF)]


第8回 権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成16年5月7日(金)10:00〜12:00
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委員】阿部会長、伊藤委員、久保利委員、下坂委員、高林委員、竹田委員、中川委員、野間口委員、吉野委員
【本部員】中山本部員
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)模倣品・海賊版対策の強化について
(3)知的財産の関連人材の育成について
(4)閉会


○阿部会長 それでは、皆さんにお集まりいただきましたので、少し早いですが、第8回の専門調査会を開催させていただきます。御多忙中のところをお集まりいただきましてありがとうございました。以後、座ったまま進行させていただきます。
 お手元の議事次第にもございますが、本日は「模倣品・海賊版対策の強化について」とりまとめを行いまして、その後で知的財産関連の人材の育成について御議論を賜りたいと考えております。よろしくお願いを申し上げます。
 また、財務省の方から当専門調査会のとりまとめに対して補足の説明の申し出をいただきましたので、前回にも御説明をいただきました財務省関税局審議官の藤原啓司審議官にも御出席をいただいております。後ほど水際のところで御発言をいただきたいと考えております。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 最初に「模倣品・海賊版対策の強化について」でありますが、これまで3回にわたりまして、何人かの参考人からの意見聴取や御討論をいただきまして、かなり整理がついてきたのではないかと考えております。前回事務局に最終的なとりまとめを目指した整理をお願いしました。この結果のとりまとめ案が資料1にありますが、主な修正点を中心に小島次長から説明をしていただきたいと思います。お願いします。

○小島事務局次長 それでは、資料1に沿いまして、御説明をいたします。資料1「模倣品・海賊版対策の強化について(とりまとめ)(案)」でございます。
 まず、基本的な構成でございますが、前回のとりまとめ案までは右左で構成をしておりましたけれども、今回、報告書の形ということで、前回右側に付けておりました参考資料は、資料1の下に添付しておりますけれども、参考資料という形で別冊にして整理してございます。それでは、前回までの御議論を踏まえました主な修正点を御説明いたします。
 資料1の2ページ、「I.我が国政府の外国市場対策の強化」でございますが、1−1の(1)「海外での企業支援の強化」のAでは、前回までの議論で外交や在外公館の果たすべき役割が非常に大きいとの議論を踏まえまして、この1行目にございますが、模倣品・海賊版対策を、我が国外交上の重要施策と位置付け、外務省の体制強化を図るとともに、在外公館では大使自ら先頭に立って、また担当窓口も明確にして積極的に取り組むということを加えております。
 続きまして、3ページ(2)のBでございますが、前回での御議論を踏まえまして、1行目、海外における模倣品・海賊版を撲滅するためには、知的財産を重視する風土を醸成し、自ら模倣品・海賊版を生まない国となることが肝要である。このため、侵害発生国・地域において対策に取り組む当局や団体との連携を強化するとともに、模倣品・海賊版が社会悪であることを侵害発生国・地域の国民が広く認識するよう、啓発活動の支援に取り組むべきであるということで、侵害発生国・地域での対策に取り組む当局や団体との連携強化の必要性の観点を明記いたしました。
 それから、5ページ目「II.水際での取締りの強化」「II−1.侵害判断が困難な貨物の取締りの強化」について修正点を御説明させていただきます。
 (7)でございますが、前回の御議論で水際の制度を改正する際には、関税定率法だけではなく、関税法なども視野に入れるべきだとの御指摘をいただきましたので、最初の段落の下から2行目「以下のような侵害判断の手続につき検討を行い、必要に応じ関税定率法等関係法律を改正するなど制度整備をすべきである」といたしました。
 その下、(B)でございますが、意味を明確にするために、サンプル分解制度を活用した侵害認定ということで、解析を分解検査と修正しております。
 6ページ、(E)でございますが、これまでいろいろ御議論がありました点を、(E)のなお書きで追加しております。読みますと、「なお、本手続については、行政機関による処理を求めるニーズがある一方、司法手続との重複や費用対効果等の問題を指摘する意見があることから、さらに慎重な検討が必要である」という点を付記しております。
 また「(F)裁判所の仮処分命令を活用した侵害認定」につきましては、前回までの御議論の中で、裁判所の仮処分命令に基づいて税関が侵害を認定するとしても、それをどのような形で手当てすべきなのかという点について、種々御議論がございました。そこで、この仮処分命令と侵害認定との法的関係につきましては、さらに検討が必要であるということで、最後のなお書き2行でございますが、「なお、仮処分命令と侵害認定との法的関係(法的拘束の可否等)については、さらに検討が必要である」旨を付記しております。 7ページ「II−2. 商標権侵害品等の取締りの強化」でございますが、(11)の水際でのマーク切除による脱法行為の取締りの強化、同じく(12)水際での部分品・部品取外しになる脱法行為に対する取締強化、次のページの「(14)商標権侵害品の個人所持・輸入の禁止」ということにつきまして、前回の会議におきまして、商標法等の権利法だけでなく、水際における規制の問題としても考えるべきとの御意見がございましたので、それぞれ商標法等の権利法に加え、関税定率法等の関係法律を含めて検討を行い、必要に応じて法改正等の制度改善を行い、税関での取締りを強化すべきであるという形で(11)(12)(14)を修正しております。
 続きまして、9ページ「III.国内での取締りの強化」でございます。「(15)インターネットを利用した侵害の取締強化」でございますが、前回の会議で1つの施策に多数の省庁の名前が並んでおったわけでございますが、それでは責任の所在が不明確になるという御意見がございましたので、各省で取り組むべき法改正や施策ごとに分けて記述することとして、具体的には(15)のAに(ア)(イ)(ウ)(エ)とございますが、そのような形で各省別に取り組むべき施策と、その責任官庁を明確化いたしました。
 次の10ページ、(17)は、新たに追加した項目でございます。
 前回の会議におきまして、有名人の肖像等を不正に使用した商品の売買が横行しているという問題提起がございました。そこでこの肖像商品化権の問題については、被害の実態を踏まえ、不正競争防止法の保護や刑事罰の対象とすることなどについて検討を行い、必要に応じ法改正等制度整備をすべきと記載してございます。
 (18)の「ノウハウ等の海外への流出防止」のB、これも新たに追加した項目でございます。これについても、前回の問題提起を踏まえまして、ノウハウ等が技術者等を通じて海外に流出することを防止するため、国外への営業秘密の漏洩などについても、被害の実態を踏まえ検討を行い、必要な対策の強化を行うべきことを追加しております。
 11ページ、「VI. 中小企業・ベンチャーの支援と啓発の強化」でございます。
 (19)のところでございますが、若干長くなっておりますが、ここでは求められている支援の具体的内容をできるだけ詳細に明記するとともに、中小企業に対する諸外国の法制度やその運用、被害の実態や対策に対する情報の提供などを強力に推進するということを付記しております。
 それから、12ページ「V.官民の体制強化」でございますが、(21)政府内の連携体制の整備」ということで、前回は政府の連携体制について、各省ばらばらではなく、一元的な企業の相談窓口が必要であるという御指摘をいただきました。そのため、関係各省とも相談いたしまして、(21)のAの上から2行目にございますように「政府においては、経済産業省を一元的な相談窓口とする」ということで、その旨を明記しております。(ア)のところにも、政府における一元的な相談窓口を経済産業省に設置するということで明記しております。
 以上が資料1について、前回の議論を踏まえた主な修正点でございます。
 それから、これに関連いたしまして、本日御欠席の山田委員から意見書の提出がございましたので、資料2として添付させていただいております。ごく簡単に御紹介しますと、山田委員の資料2の1では、水際対策の強化ということで、裁判手続だけではなく、(D)や(E)のような税関の機能を強化する方法も併せて整備していただきたいという点。
 それから、2として、個人所持・個人輸入について、法律などで禁止をすれば、国民が偽ブランド品を持つことは恥ずかしいことだと自覚するので、偽ブランド品売買の大きな抑止になるという点。
 3.として、中小企業・ベンチャー企業支援については、すぐれた知的財産を持つ中小企業・ベンチャー企業を支援・助成することは、長期的な視点に立てば、日本にとってプラスになるはず。是非、中小企業、ベンチャー企業に対する支援・助成を進めていただきたいと思いますという点。
 以上、3点、意見書が提出されております。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。各委員の御発言を基に大分整理が進んだというふうに思いますが、章ごとに確認をさせていただきたいと思います。
 前回同様、資料の順番に沿うことにいたしまして、まず、2ページ〜4ページのところに、外国市場対策、これについて特段の御意見がございましたらお願いします。

○野間口委員 3ページ目の(2)のBですが、私、4月の初めに北京に行きまして、ここで報告いただいたJETROの北京事務所、対策室を訪問したんですけれども、「おーいお茶」とか「十六茶」から電気製品、オートバイまで、あらゆる範囲にわたっております。その国自身が何とかしようとする動きが今少しずつ出ており、こういう形でそれを強力にサポートするという取り組みが大変重要かと思いますので、是非ここも主官庁と言いますか、外務省か経済産業省かは知りませんけれども、中心になるところを決めていただいて、取り組んでいただきたいと思います。このアンダーラインは主にやるところですね。
 ここにあるように関係府省を併記するだけではどこかがやるだろうということになってしまう。

○阿部会長 どこかに経済産業省と書いたところがありましたけれども、この点については。

○小島事務局次長 原案を作成した段階では、これはあらゆるルートで、あらゆる形でやった方がよかろうということで、特に主官庁を決めていないわけですけれども、リーダーシップを取ってこういうことを進めるという意味では必要かとも思いますので、関係省庁と相談して、そういう形にしたいと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。事務局の方でよろしくお願いします。ほかの点はいかがでしょうか。
 それでは、特に御発言がないようですので、次に移らせていただきます。5ページからの水際での取締りの強化でございますが、まず、先ほど御紹介をしました藤原審議官に御発言をいただきたいと思いますので、前の方に来ていただきたいと思います。5ページ〜8ページのところです。
 では、よろしくお願いします。

○藤原財務省関税局審議官 藤原でございます。前回に引き続きまして、また、このような場で意見を申し述べさせていただく機会を与えられまして、大変ありがとうございます。 先ほど事務局の方から御説明がございましたけれども、これにつきましては、1つは、仮処分命令があった場合の税関長の侵害認定との関係など、今後、慎重な検討を要する事項も含まれておりますけれども、本日は時間も限られておりますので、2点に絞りまして、申し述べさせていただきたいと思います。
 1点目は、新たな技術判定機関、あるいは税関内の審議機関を設けることについてでございます。
 前回御説明いたしましたように、税関におきまして、知的財産権侵害物品の水際取締りの強化に積極的に取り組んでおるところでございまして、前回のこの会合後に新聞発表いたしましたけれども、平成15年におきましても、7,412 件、対前年比6.2 %増の輸入差止めをしたところでございます。
 また、15年度の関税改正におきまして、特許権等につきましても、輸入差止申立制度等を導入いたしました結果、特別に集計いたしました15年度の数字で見ますと、特許権につきましては、12件の輸入差止申立がなされておりまして、税関におきまして、22件の輸入差止をしたところでございます。
 特許権につきましては、迅速な侵害認定のために弁護士等の外部専門家の活用を行っておりまして、今後さらにその活用を図っていきたいと考えております。
 また、15年度の改正で創設されました特許庁への意見照会制度の利用も今後見込まれるということから、侵害認定につきましては、このような既存の制度を活用することによりまして、迅速な対応が可能であると考えております。
 ここにあります技術判定機関、あるいは税関内審議機関を新たに設けるということにつきましては、卑近な話でいいますと、日程の調整に手間取る。あるいはそもそもこういうような機関をつくりますと、どうしても手続が重くなってしまって、かえって迅速性を損ねる恐れがあるという懸念をいたしております。
 また、新たな機関を設置することにつきましては、これもこの調査会で議論がございましたように、行財政改革の観点からも問題ではないかと考えております。
 2点目でございますけれども、商標権侵害物品の個人輸入の禁止についてでございます。先ほど15年の輸入差止実績7,412 件と申し上げましたけれども、ほとんどが商標権侵害物品の差止でございます。その中には、国際郵便物で送付されてまいります少量の物品もかなり含まれている。
 財務省といたしましては、商標権侵害物品の個人輸入を禁止するということにつきまして、それによりまして、これまで以上に積極的に水際での取締が行えるということになりますので、考え方そのものに反対しているわけではございません。
 他方、関税定率法で規定されております輸入禁制品と申しますのは、他の法令におきまして、その輸入、あるいは所持が禁止されて罰則の適用があるといった物品が並んでおるわけでございまして、何も輸入、あるいは所持が禁止されていないものにつきまして、関税定率法で独自に、創設的に輸入禁制品といたしまて、罰則をもって輸入禁止するということはできないと考えております。
 すなわち、商標権侵害とはならないのに、個人輸入を関税定率法で独自に禁止して取り締まることは困難であるという旨を申し上げたいと思います。これはマーク切除とか部分品の取り外しの場合についても同様でございますけれども、個人輸入を商標権の侵害とするかどうかという問題は、権利法である商標権等の問題でございまして、まず権利法の世界において十分議論すべきであると考えております。くどいようですけれども、考え方そのものに反対しているわけではございませんし、また、取締りたくないと申し上げているわけでもございませんので、そこのところは最後に付言しておきたいと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。今、要約をさせていただきますと2つ、新しい審議機関をつくることについてと、個人輸入についての御発言であります。何か委員の先生方、御意見をどうぞ。

○竹田委員 今の2点について、私の意見と疑問を述べさせていただきます。
 5ページから6ページにかけての7については、(A)と(C)などは現在でも行われているわけで、更に(B)については、この分解検査までやるのには、立法的措置が必要だし、それはすべきであろうということと、それに関連して(F)(G)も入りますが、仮処分命令が出たときの措置について、このような措置を取ることについて立法的な措置を含めた検討をすべきであろうということは、私が前回から申しておるところでありますが、そのほかに(D)(E)という機関を設けることの必要性のないことは、前回、私、いろいろと申し上げたんで、その点は今の審議官の言われていることと基本的には同じですけれども、前回の議論ではこの点を積極的に残すべきだという意見はなかったので、私は削除してもいいのではないかと思っていたんですが、ただ、今日の山田委員の意見の中に、ここで(D)や(E)のような税関の機能を強化する方法も併せて整備していただきたいという記載があります。その点については、私は委員各位の御意見に委ねたいと思いますけれども、ただ、山田委員の意見で誤解があるのは、特許権侵害品を止めるために必ず裁判所を使わなければならないというのではとありますが、そのような意見は全くないわけで、それは従来の、先ほどのような制度のほかに仮処分手続を使って水際措置ができるような規定をも考えるべきでないかということを言っているわけでして、その手続を取らなければならないという意見は、この委員会では全くなかったということだけは付け加えておきたいと思います。
 もう一つ、模倣品の個人所持の問題なんですけれども、確かに現行法の商標法から言うと、模倣品の個人所持は商標権侵害にはならないと思います。これは商標法の37条で間接侵害の規定があって、そこには業要件の規定はないんですけれども、しかし、ここに言う所持とか製造とかというのは、結局、商標法2条にかかわってきますから、結局のところ、業として商品を生産したり、製造したりする者が使用する場合に関することになるので、個人が自分で使うという意味で模倣品を所持しているときには、現行法では商標権侵害には当たらないと思います。模倣品の氾濫を防ぐために何らかの措置を講ずべきだということは、私もよくわかりますけれども、真正面から37条を改正して、あるいは新たな規定を設けて、模倣品を所持する者は個人の使用たりとも商標権侵害とみなすという規定を設けたら、極めて重大なことだと思うんです。特に模倣品を模倣品だと思って買う人ばかりじゃなくて、真正品が安く買えるというのでよころんで買って使っている人まで、みんな商標権侵害になっては、これは大変なことだと思うんです。

だから、設けるとしたら、かなりな要件を厳しく設定しないと、簡単に模倣品の個人所持は不当だからと言って、すぐに立法措置を講ずるところにはいけないのではないか。そこはもう少し慎重に対応すべきだし、その点の表現が何か入ってしかるべきではないかと思います。
 それと藤原審議官の言ったことと関連しますと、もう一つ、そこで商標法にそういう規定が設けられれば、これは関税定率法の例の21条の規定の商標権の侵害品になりますから、それで別に関税定率法に規定を設けなくてもすべて処理できるわけです。
 逆に今度は商標法にそういう規定は全く設けないでおいて、関税定率法でそれを取り締まることができるかと言ったら、これはできないと思うんですが、その意味で、なぜここで関税定率法が出てくるのか。そのことの関連は事務局も含めてお聞きしたいと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。2点について、藤原審議官の御発言にかなり近い御意見もあったわけですが、どうですか。事務局という話も出ましたけれども。

○小島事務局次長 事務局の方で委員の方々を回ったところでは、権利法で対処すべきという御意見と、関税定率法でという両方の御意見があったことから、今のような形に整理しております。

○阿部会長 それは後者の方ですね。個人の方ですね。

○小島事務局次長 個人の方です。(11)(12)(14)の関連の商標権のところですが、権利法で対処すべきという御意見と、関税定率法で対処すべきする御意見と、それから、その組み合わせで対処すべきという御意見と、いろいろ御意見がありましたので、それぞれについてどれが適当かというのを今後検討していただいて、ベストミックスと言いますか、1つになるかもわかりませんけれども、それで決めればいいということで、権利法と関税定率法との関係法律について検討し、必要に応じ制度改正するということで、ここで整理させていただいたものです。また、いろいろな組み合わせが考えられ得るので、1つの場合もあるし、組み合わせの場合もあるということで、そこはそういうことで並べて整理しているという趣旨でございます。

○竹田委員 今のでははっきり言って答えにならないと思うんです。つまり、商標法は全くいじらないで、関税定率法だけ改正して、個人の模倣品所持を水際措置で排除することが立法的に可能なんですか。それが疑問だから、お尋ねしているわけなんです。

○小島事務局次長 そういう御意見もあったものですので、また、可能だという御意見もあったので、その点も含めて今後検討してということだと思います。

○高林委員 私は、関税定率法1本だという説を取ったつもりはありませんけれども、必ずしも国内における商標権侵害品でなければ、水際で止められないというふうには考えておりません。わいせつ物等と同じように刑法上の概念と関税定率法の概念を分けるという議論ができるかどうかもわかりませんし、わいせつ物に関する最高裁の判例がどのような射程範囲なのかも問題があろうかとは思います。けれども、今、竹田委員がおっしゃったとおり、商標法の中だけであれば非常な限定を加えていかなければなりません。一般的に業としてでない商標の使用も全部商標権侵害だと言っていくのは難しいだろうと思いますので、著作権の場合に、侵害品を知って所持して、更にそれを譲渡するとかのいわゆる間接侵害の場合と同じような規定を商標法に置くとか、その辺をぎりぎりやっていくということが1つ考えられるし、それができない場合に、そのぎりぎりのところで水際だけで差止めるということも私は不可能ではないのではないかと思っております。

○久保利委員 要するに、8ページの(14)のところで、必要に応じ、商標法、関税定率法等の関係法律を改正するなど云々とというところが今議論されているわけですね。私はどちらかというと、少なくともニセ物の認識を持って商標権侵害品を持っているというものについては、規制をするべきだと思います。だまされて、真正品だと思って偽物をつかまされている人は被害者なわけですから、その人が持っていることを処罰するということは本来おかしな話で、むしろ詐欺の被害者と言うべきなんで、それは別です。そういうふうに考えていくと、商標法を含めて関税定率法等を制度整備するんだというのであれば、決して間違いではないのではないか。
 仮に今の竹田先生等の議論のように、関税定率法21条の変更だけでやれるかどうかというのは、これは学問的には、いろいろ議論のあるところかもしれませんけれども、しかし、これだけの大計画をつくって、商標権侵害のものを撲滅しようと叫んでいる国が、個人は偽物と認識していても持っていていいんだというふうにする国でいいのかどうかというところを実は問われているんだろうと。
 中国に対して偉そうなことをいろいろ言っていながら、前回、17番の肖像商品化権のことも言いましたけれども、要するにこの国のありようを問われているときに、今のような精細な議論だけやっていていいのかなと。むしろ、大きな大づかみに、やはり偽物商品、偽ブランド商品というものを偽物と知っていて、それを真正品のように愛用するというのは、やはりよくないんだというのが、やはりどこかに出てくるべきではないかというふうに思うので、2番のポイントについては、私は原案でよろしいのではないかというふうに思っています。
 それから、1番の点の(D)(E)という、この制度をつくるかどうかということですけれども、山田さんのお話というのは、言わば司法改革とセットになっているわけでありまして、日本の司法というのが、いかに中小企業にとって割高で使いづらいかということが背景にあるために、どちらかというと行政に頼ろうというので(D)と(E)が出てきているということだと思います。しかし、そういう実態があるのであれば、私は(D)(E)についてもやはり実現する方向で努力をするということが必要でしょう。かつ、資料の方の6ページの(E)のところの注で、TRIPS協定の53条2項の話が出ておりますけれども、要するに留保というのが、司法当局その他独立した当局の決定を根拠としない場合には、暫定的な救済を与えられないという趣旨のことが書いてあって、従って(E)という、ある種の独立的な、当局の決定というのが必要だという趣旨なんだろうと私は理解しているんです。そうだとすると、司法ではなくてもそのような審議機関というのがあるというのは、山田さんの要請にはかなり応えられる意味があることなのかなというふうに理解をするわけでありまして、これをどういう組み立てでつくるか、あるいは予算とか、行政のいろんな縛り、規制緩和というふうなものとどういうふうに考えるかということはありますけれども、言わば準司法的な存在が(E)の場合には特に要請されているわけですから、私としては、そこはむしろ財務省の創意工夫によって上手な予算の使い方をすることによって、Dタイプ、Eタイプというものも実現する方向で御努力をいただけないかというふうに考えます。
 それから、従来からマークを外して云々というマーク切除の話、2番との関連でもありましたけれども、この判例を調べたら大阪地裁の一審で、しかも欠席判決なんですね。普通欠席判決で判例として評価される判例というのは、ほとんど見たことがないわけですけれども、相手方が出てこないで、原告が一方的に主張して被告が出てこなくて、裁判が職権でいろいろ議論をした結果、マーク切除で回避できるのであれば、そのもの自体について焼却したり、廃棄したりする必要はなかろうというふうに言っただけの判決でありまして、これは税関当局相手の行政事件でも何でもないわけです。民民の事件であります。
 そういうふうに考えてみると、余りマーク切除の問題で税関が、大阪地裁の57年の判例を金科玉条のように振り回るのはどういうことだろうかという気もしますので、この点についてあえて一言申し上げれば、この辺りについても原案を支持したいというふうに考えております。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。どうぞ。

○藤原審議官 事実関係のところだけ御説明申し上げます。
 3点目のマークの切除の話でございますが、前に何人かの方とお話させていただき、ちょっと誤解があったのかなと思いますけれども、マークの方は税関で切除してばらばらにすれば輸入できるというふうな誤解があろうかと思いますけれども、マークの方は輸入は認めないわけでございまして、それを外したものだけを輸入させるという点でございます。 2点目のTRIPS協定の53条2項の話で、独立した当局の決定がなければ通関開放にそのまますぐ行ってしまうというふうな誤解があろうかと思いますけれども、その後に、独立した当局の決定を根拠としない場合は、暫定的な救済が与えられることなく一定期間が経過すれば、と書いてあるわけでございまして、この暫定的な救済というのは、例えば15年度の改正で設けました特許庁に意見照会をするというのも暫定的な救済でございまして、そこで通関開放が、これは回答が来てから10日まででございますけれども、そういった暫定的な救済が可能でございますので、必ずしも独立した審議機関がなければ通関開放が止められないということではございませんというのが2点目でございます。
 それから、商標法の話は、先ほど申し上げた内容でございまして、山田委員の意見の中にも、それを持つことが悪いことだという認識がないということがございますけれども、その点は久保利先生と同じ意見でございます。

○阿部会長 どうぞ。

○中山本部員 (E)の税関内審議機関、私は、個人的にはこれはなくてもいいというか、かえって非効率になると思うんですけれども、仮に置くとしても、この文章だと一体何を置くのかわからない。例えば、山田委員の意見を見てみますと、裁判所は、どうもお金がかかって大変だ、時間もかかって大変だから、何か簡単にやってくれる行政機関を置いてほしいという趣旨だと思うんですけれども、しかし、ここでやることは侵害認定なんですね。したがって、裁判所と違うことをやっては逆に困るわけで、結局、もしそこで審議機関を置くとすれば、民訴のような重い手続を行わない限りは侵害認定できないんですね。結局二重になってしまうというだけで、これは一体どういうことなのか、職権でやろうというのか、それとも裁判所と同じことをここでやろうというのか、その辺をきちんと書かないと、ここの文章を読んだだけでは、一体何をやるのかというのがわからない。場合によっては、何か役所が出ていって、勝手に侵害を証拠調べしてくれ判断してくれ非常にいい機関であるという誤解も与えかねない。
 ですから、提案者は何を考えているのかということを言ってもらわないとよくわかりません。

○阿部会長 独立性の高い審議機関については、いろいろ御意見がありますが、これは是非置くべきであるという御意見は、どうぞ。

○下坂委員 是非というところまで強くは言っていないんですが、(E)は、当初、ITCのようなものということで御提案をさせていただきまして、その変形でだんだん弱まってきているというふうに考えられるんですけれども、Aは現行法上できることで、Bは今後是非進めていただきたいと思っておりますし、CはAの延長線上にあるもので、これも現在おやりいただいていると聞いております。そうしますと、結局A、Cのみでは余り現状と変わるところがない。それから税関の方、これらに沿って誠心誠意おやりいただいているという点は非常に高く評価しているところではございますけれども、この際Fだけでなく、行政側の手続整備というものも体系見直しの上では必須ではないかと思っております。 それで、このEのところも含めて、ここでは、今、中山本部員がおっしゃったような司法手続との重複や、費用対効果等の問題を指摘する意見があるということは承知しておりますし、更に慎重な検討が必要であるということも述べられておりますので、御検討いただけるという前提でD、Eというのは、行政側の手続整備という意味、もしくは体系見直しという意味で、是非お残しいただきたいというふうに考えております。

○阿部会長 とりあえずよろしいですか。ほかの委員の方で、是非この審議機関を設けるべきだと、あるいはそういう方向の御意見の方は。

○久保利委員 私も趣旨としては同じ意見です。

○阿部会長 わかりました。そうしたら、中山先生の御意見もこれだけでは中身がわからぬということですから、検討していただくのは構わないですね。

○中山本部員 勿論いいんですけれども、一応提案として案として出す以上は中身がわかるような案にしていただかないと困るのではないかと、こういう意見です。

○阿部会長 それはどうですか、事務局はどの辺まで。

○小島事務局次長 先ほど下坂委員から御発言がありましたように、経緯的にはアメリカのITCのようなものをという議論がなされたわけですが、米国ITCのような準司法的機関ということですが、この場を始めとして、米国型のITCということについては、非常に違和感を覚える方が多かったので、だんだんトーンダウンしていったわけでございます。そういうことでいろんなことが消えているので、説明的に書くということは問題ないと思います。その上で、ここでの議論を踏まえて更に慎重な検討をしていただくということだと思います。

○中山本部員 私の言っているのは、経時的な説明ではなくて、トーンダウンしてしまったら、民事と同じことをえらく簡単な簡略な行政手続でやってしまうと、そのことの整合性とか、そういうことを書いてほしい。こういう理由でこうなったということではなくて中身です。

○阿部会長 そういう御意見だということですけれども。

○小島事務局次長 したがって、準司法的な手続をやるという機関だと、準司法的な手続を持った独立性の高い審議機関だということを書くという趣旨です。

○中山本部員 民事と同じようなことをここでやるという趣旨なんですか。

○小島事務局次長 準司法的な手続ということであり、民訴と同じというかどうかは別にして。

○中山本部員 基本的には当事者が訴えを提起して、当事者主義で証拠も出して、職権主義は採用しないということですね。

○小島事務局次長 行政手続としてやるということでございます。その行政手続に対するニーズがあるということで、今も、御意見がありましたように。だから民訴を、訴訟をやるのではなくて、行政手続の中で準司法的な手続でやるということが、ここの(E)の趣旨でございます。

○中山本部員 恐らく、行政でやってほしいというのは、もっと簡略に官庁が何か証拠調べして、もっと自分はお金も時間もかけないでやってほしいという意見ではないかと思うんです。それができるかどうかという議論なんです。一方で裁判という民事があって、それと同じことを、そんな簡略な手続でやってどういう意味があるか、整合性があるかと、そのことをきちんと書かないと提案にならないんじゃないかという意見なんですけれども。

○中川委員 山田委員がおっしゃっている裁判所の敷居が高いというのは、恐らくまさに裁判所よりも使いやすくあってほしいということだと思うんです。提案者には、今ある侵害認定手続とEがどう違うのかということを、まず御説明いただいて、その上で、なお裁判所よりも使いやすいんだという説明があるとEのイメージがよくわかるんです。準司法的手続だというだけでは、恐らく裁判所に比べて変わらない、今の公正取引委員会なんかもそうですけれども、えらく時間がかかりますし、恐らく弁護士さんに頼まなければいけないというので、余り変わらないんじゃないかなという気がします。

○中山本部員 ちなみに、アメリカのITCだって、ものすごい金もかかるし、この前あるアメリカの専門にやっている弁護士に聞いたらば、30人か40人ぐらい弁護士をそろえて一挙にやらなければいけないと、時間が短いだけに大量な弁護士を投入してやるということでした。つまり侵害事件ですから、簡単にできない、簡単にやるということは、どっちかに不利になるということですから。

○阿部会長 今日の段階で、今、先生がおっしゃったようなことも含めて、具体的な議論をするのは時間がないんです。ですから、そういうことを含めて検討してもらうのはだめですか。しかし、これを消してしまうのは、まずいと思うんです。いろんな御意見がありますから、消してしまうわけにはいかないので。

○中山本部員 提案者はどういうイメージでいるかと。

○阿部会長 ですから、そういうことも含めて、現実的に先生が言われたようなことも含めて検討してもらうのはだめですか、そうじゃないと消さなければいけないことになります。

○下坂委員 是非お願いしたいと思います。

○阿部会長 先生、何か御意見ありますか。

○伊藤委員 ここはいろいろな御意見があって、恐らく今の会長の御発言もそれを踏まえたものと理解します。私は、こういう考え方が述べられたことはありますから、これはこれでいいと思うんです。ただ、中山さんが言われたのは、意見の趣旨としては、むしろ簡易に迅速な救済に重点が置かれていたのではないかということです。ですから、ここの2行で書かれていることに付け加えて、簡易、迅速な救済を実現するためとか、そういった文言を入れていただければいいのではないでしょうか。

○阿部会長 今の伊藤委員の御提案はいかがでしょうか。それで、検討してもらうことですから、設けるということの少し手前になるかもしれませんけれども、どうですかそういうことで、そこで中山先生が言われたようなことをよく議論していただくと。

○久保利委員 結構じゃないですか、今の伊藤先生のお話で結構だと思います。

○阿部会長 いいですか。

○久保利委員 はい。私も中山先生とそんなに違っているわけではなくて、「そんなものがあるか」と先生はおっしゃっていて、「あるんじゃないの」と私は言っているわけで、あるかないかをよく検討した上で、こういうものができますよというのだったら、それでよろしいということだと思います。

○阿部会長 では、そういうことで整理をさせていただくことにいたしたいと思います。 それから8ページに移っていいでしょうか。

○中川委員 6ページでまだ議論を。特に今日は議論になっていませんが、Fの仮処分のところですけれども、今から申し上げることは最近2〜3日前に事務局にお伝えしたばかりなので、今まで出ていない論点かと思います。仮処分があったからといって、それに基づいて税関がクロ認定するのではなくて、むしろ問題は解放請求権が発生した後でもまだ止める方法はないのかということだと思います。仮処分が出たんだから、税関ではまだ侵害認定をやっているんだけれども、かなり日数がたって、解放請求権が発生しているという事態にどう対応するかです。しかし、仮処分が出ているんだから、ある種の共助という言葉を使っていいのかわかりませんけれども、裁判所がそう言っているんだから、税関で止めるだけ止めましょうというような制度づくりはできないものでしょうか。とりまとめ案では仮処分の侵害認定部分に基づいてクロ認定というふうに話が行っていますけれども、むしろ仮処分の保全の必要があると、つまり輸入禁止に仮にしておく必要があるという部分をとらえて、税関でもクロ認定までするのではなく、通関をもう少し止めましょうというふうな仕組みにした方がよりすっきりするんではないかなという気がしていまして、やはり仮処分は所詮仮処分ですので、仮の権利侵害の判断にすぎないものに基づいて、行政としては最終決定であるクロ認定というのは、ちょっとバランスが悪いような気がします。論点をずらした方がいいのかなと。もしかしたら、民事保全の観点からおかしいという御指摘があるかもしれませんが、もう少しそういうふうな幅を持たせた案にした方がいいんではないかなと考えました。

○阿部会長 今の御提案について、いかがでしょうか。

○高林委員 私もそのような考えを持っております。とりまとめ案中にそういう言葉を入れるべきと提案するわけではありませんが、一応仮処分というのは暫定的な命令ですので、仮処分のみで最終的に廃棄とかの手続きまで進むというのでは、むしろ、先ほどのお話のように、裁判手続が長くかかるとか、慎重審理になってしまうということにつながるように思います。ですから、あくまで暫定的な措置であるということで押さえておけば、仮処分自体の手続も簡略してやっていけるのではないかと思っております。
 私はそれを含めて仮処分の活用に大いに期待しております。ただ、この中にそこまで含んで書くということではなく、むしろ、これらの点も含めて検討していただきたいというふうに思っております。

○阿部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。

○高林委員 それから、細かい言葉の問題なのですけれども、7ページの。

○阿部会長 今のところについていかがでしょうか。何か、これは非常にふわっと書いてあるんですね。仮処分命令と侵害認定の法的関係についてさせに検討する必要があると言っているわけですから。

○竹田委員 多分、ここのところを詰めていくといろいろな意見が出てきてしまうから、その点は最終的には審議会でいろいろ議論するんでしょうから、そこに委ねましょうということで、私の意見は今まで言ってきたので繰り返しませんけれども、このような形にしておけば、できるだけの総意を盛り込むことになるので、ここは私は原案でいいのではないかと思っています。

○阿部会長 では、今いろいろ御意見があったことを、きちんと記録にとどめておいて、今後の検討に役立てていただくということで、では高林委員、7ページを。

○高林委員 11と12を比較しますと、先ほど審議官からお話がありましたが、11の方は一旦切除すると書いてあるんですけれども、これは一旦という趣旨というのは、一旦切除した後でくっ付けるという意味がここに入っているように読めるんですね。
 意匠の場合には、取り外すということだけしか書いていないわけですが、なぜ11の方だけは一旦が入っているのか、これをちょっとお伺いしたいと思います。

○小島事務局次長 余り深い意味はありません。

○高林委員 一旦というのは、なんか後からくっ付けますよという趣旨があるように見えますけれども、先ほどの話でマーク自体は、そもそも今でも焼却してしまうというか、没収してしまうということですね。

○阿部会長 12と同じように書くと何か問題があるんですか。

○荒井事務局長 では取ります。

○久保利委員 一旦というのは、脱法行為に立ったときでしょう、一旦切除をしておいて通関させてしまうという脱法行為。

○高林委員 12も同じですよ。

○久保利委員 だから、一旦でなかったら脱法行為でないということになってしまうから。

○高林委員 それはこの趣旨としては、税関の手続に入る際には両方くっ付いていて、それを外したと、前回久保利委員がおっしゃったとおり、まさに脱法行為的なものだから、ここで押さえてあるという趣旨と私は理解しました。ですから、一旦であれ、何であれ、外したものはだめだという趣旨なのかなと思いましたけれども。

○久保利委員 一旦は要らないでしょうね。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、8ページに移っていいでしょうか。

○中山本部員 7ページでよろしいでしょうか。

○阿部会長 どうぞ。

○中山本部員 13番です。この形態模倣の取締強化の意味がよくわからないんですけれども、この文章というのは、関税定率法21条に不競法違反の物品を入れるという趣旨ですか。すると、不競法自体の、例えば形態模倣の期間を3年から5年に変えるとか、そういう強化も含むんですか。それとも両方なんですか。

○小島事務局次長 13は、この冒用とか、混同を惹起する製品の輸入取締等の問題です。

○中山本部員 ということは、つまり関定法21条に不競法を加えるという趣旨ですか。

○小島事務局次長 趣旨はそういうことです。これは不競法及び関定法と書いてあるのは、関定法で税関で止めるためには、不競法で禁止措置が講じられる必要があるというこです。

○中山本部員 講じられているわけです。

○竹田委員 ですから、中山先生の言うとおりだと思います。不競法の3年の期間を、例えば5年にするとか、保護を強化することと、それから関税定率法の禁制品に不正競争行為に当たるものも禁制品としする両方の面から検討しましょうというのが、この趣旨だと思いますけれども。

○小島事務局次長 この趣旨は、特許法及び関定法を入れた趣旨は、冒用製品なんかの規制といいますか、あれは不競法に入っているんですが、刑事罰の対象にはなっていませんね。混同惹起製品、冒用製品については。刑事罰を入れるということです。

○中山本部員 なっているのもあるんです。形態模倣と著名表示はなっていないけれども、周知表示の混同はなっている。

○小宮経産省知的財産政策室長 これも中山先生御存じのことですけれども、1号しか刑事罰が入っていないわけですが、関定法で禁制品にするためには、国内法で刑事罰がかかっていることが条件になっていまして、したがって、前回の種苗法を改正して、刑事罰を入れて禁制品にもしたということは、去年の改正でやっていますが、同様に、ここに書いてある意味は、例えば形態模倣品の2条1項3号についても刑事罰を導入した上で関税定率法を改正して禁制品にするということを意味しています。

○中山本部員 それならそれをはっきり書いていただきたい。これはものすごい大問題です。これに刑事罰を加えるということは、学界を挙げて大議論になりますので、それならそれをはっきり書いてください。そうしないと何を言っているかわからない。その上で検討が必要であるというのならわかりますけれども。

○竹田委員 私の記憶でも、そういう形でこれをやるという議論が、今までなされていないような気がするんですね。そういうことを検討するというのであればそのように書いていただきたい。

○中山本部員 形態模倣とか、著名表示を刑事罰を入れるとなったら、これは大変な、特に著名表示は範囲が広いですから、大変ですよ、恐らく困る業界はいっぱい出てくると思いますけれども、それを議論して、なおかつもっと検討が必要だというのなら勿論入れてもいいんですけれども、竹田委員のおっしゃったように、刑事罰について1回も議論した記憶がないと思いますけれども。

○小島事務局次長 ここの形態模倣品や著名、混同惹起製品の取締強化というのは、(13)のところはこれまでもあって、このように書いてあったんですが、ここの場で刑事罰のところまでは特に議論がなかったということは確かです。
 ただ、もう少し丁寧に説明すればよかったんですけれども、今、小宮室長が説明したようなことで、刑事罰を科さないと関税定率法で止められないということで書いていますので、もし必要ならばそれを書き足すということです。
 ただ、この議論でも最初のころ、不競法が関税定率法の中に入っていなくて、不競法の部分がこういう不競法に該当する部分が税関では止められないという議論は、バンダイでしたか、参考人の意見聴取の時にもございましたし、これ自体は前から書いてございましてここで議論されたと思うんですけれども、必要ならば表現を改めます。

○阿部会長 これはどうなんですか、表現を改めればいいんですか。

○中山本部員 大問題過ぎるんではないかと思うんですけれども。

○下坂委員 それも含めて大問題を認識されていないから。

○中山本部員 この推進計画に、意見が出たから全部入れよと、検討と書いてあるからいいんだということではないと思うんですね。やはり国家戦略として何をやるかということを、まず述べなければいけないので、何でもかんでも、ここで意見があれば突っ込んでしまえばいいというものではないので、国家戦略として、やはり何かと議論をして、なおかつ検討が必要なものだけを入れると。

○阿部会長 勿論そうですけれども、今日はとりまとめですから。

○中山本部員 でも議論していないことを入れるというのは。

○阿部会長 議論していないことは入れない方がいいと思いますけれども、だから文章の修正で済むんでしょうかというのが、うまい修正があれば。

○久保利委員 そもそも初めの2行ですね。「強化するため」までは、これはみんな異存がないんではなかったでしょうか。

○下坂委員 議論が前に出ていたと思うので、ここのところは。

○久保利委員 そうすると、形態模倣とか、周知表示の混同惹起製品云々かんぬん、これを強化するという目的は、多分だれも異存がなくて、そのときに不正競争防止法に刑事罰を、その部分について認めるかどうかというのは、今、中山先生は大議論になりますよという話をおっしゃっているわけで、そうだとすれば、この不正競争防止法と関税定率法について検討を行いという、ここが問題なんで、その後に必要に応じ法改正等、改善すべきであることは、これまたみんな異存はないわけですね。
 そうだとすると、今、小宮さんが非常に正確にディテールまで御説明になったので、議論が新たな段階に深まったわけですけれども、そこまで深まると大議論で収拾がつかないというのであれば、むしろ不正競争防止法と関税定率法、これについて検討を行いというのを抜いてしまうかどうかですね。
 それで、法律名を書かないと話にならないというなら、もう一案は関税定率法に、などを付けるかどうかですよ。

○中山本部員 形態模倣を強化してほしいという意見はあっても議論はしてないと思います。これはそもそも形態模倣を不競法に入れるときも大議論が起きたわけです。形態模倣というのは特段の要件なく模倣を禁止する制度ですから、要するに、実用新案法上の進歩性、意匠法上の容易創作性に該当する要件なく保護する制度です。容易に創作できるものも保護してしまう制度なのです。ですから、これを強くするということは、意匠法とか実用新案法を、ある意味では無にしてしまうことも意味するわけで、これは知的財産法の根源に関わる問題で、議論した記憶はないんです。大いに議論をした結果3年になって意味があるわけです。あれを伸ばしてしまったら、意匠法の意味がほとんどなくなってしまう。

○下坂委員 でも、多分今までの法改正というものは、ものすごい議論をしてやっておりますね。

○中山本部員 しているのもある。

○下坂委員 だから、その議論をしたからということをもって、あと何もできないというのは、おかしいと思います。

○中山本部員 今までの議論を前提にしてほしい、どういう議論をしたかということを知って、それでその次にこういう問題があるということを言ってほしい。つまり全く議論をゼロから始めるんじゃなくて、土台に議論してほしいという話をしているんです。

○下坂委員 だから、よろしいんじゃないですか。検討を行えば、そこのところに議論が出てくれば。

○中山本部員 さっき言ったように、ここで検討してないものを、だから検討しろというだけでいいかという問題です。推進計画は国家戦略として書くわけですから、もう少し慎重にになる必要があります。

○阿部会長 それは一般論としてはそのとおりですが、しかし、今日はまとめですが、余りまとめにふさわしくない御意見はちょっと御遠慮いただかないと。

○小島事務局次長 この(13)のところは、先ほど申しましたように参考人からこういう御指摘があって、これは問題提起、それから全体のとりまとめ案というところで、2、3回御議論の対象になっていて、刑事罰のところまで指摘があったかと言えばなかったのは事実ですけれども、全くここが議論の対象ではなかったということではないと思います。当初からこれは問題提起があったのでここに掲げていますので、突然出てきたものではございません。

○阿部会長 久保利委員の御提案は、いかがですか。

○下坂委員 2種類あったと思うんですが、法律を消すというのと、等を入れるというのがあったと思いますが、どちらですか。

○久保利委員 どちらでもいいんじゃないですか。ただ、基本的に形態模倣品の取り締まり強化をしてくれというニーズはものすごく多くて、これは何らかの形でしなければいけないということについては、コンセンサスがあったと思うんです。だとすれば、これはやはり削除するわけにはいかない話で、だとすればこれを残すのに中山先生の御議論をどうこの中に盛り込むかということですから、削除してもいいし、等でも構わないし、検討は行うんですから。この場で行うんじゃなくて、今後検討を行えというふうにここでは決めたわけであって、検討の中身は今後また議論すればいいわけですから、ソフトに言うならなどという等を入れればいいのかなと。これは中山先生のおっしゃる期間について3年、5年の話などを、何もクリアーに書くことはないと思います。

○阿部会長 関税定率法等ということですか、そういう御提案はいかがですか。

○野間口委員 私はやはりこの種の検討を、日本としてきっちりやるべきだなと思います。ちょっとこの問題からずれてしまいますが、例えば日本のメーカーが取り扱う製品に対して、日本における環境基準とか何かという規制もあるわけです。海外から来る製品に対して、そういう日本のルールを適用するのが、非常に遠慮がちだと感じます。いろんな日本自らつくった障壁があって、自由な貿易を阻害しているんじゃないかというようなクレームに対して非常に弱いというところがありますから、やはりこれはどうなるかは別にして、一度こういうのを検討して、その結果やはりこれは先ほどおっしゃいましたように、確かに商標権とかほかにあるんだから、そちらの方でやれるならばやってもらえばいいし、そういうことも含めてこの機会に検討の価値は大きにあると思います。

○阿部会長 いかがですか。久保利案で。

○野間口委員 ですから、久保利案でいいんじゃないでしょうか。

○阿部会長 すっきりしない御意見の人もいるかもしれませんが、ではそうさせていただきます。
 それで、8ページでいいですか。

○下坂委員 5ページでよろしゅうございますか。四角の中なんですが、「基本認識」のところで、ささいなことなことなんですが、日本国内に流入し始めておりと、始めてがあるんですが、次のところなんかでは取り締まり当局の努力にかかわらず大量に流入していると。海賊版・模倣品なんですが、これ特許や商標は今、始まったというような印象を受けるんですけれども。

○阿部会長 何行目ですか。

○下坂委員 5ページの四角の一番上の中の基本認識の1行目の右側です。「始めて」という言葉は、あえてここで使われているのかどうか。もう既にたくさん入ってしまっているのではないかと思ったので、ちょっと御検討いただければと思います。

○阿部会長 それでは、検討させていただきます。言葉が実態に合えばいいということですね。それでは、時間の関係もありますので、8ページにいきたいと思いますが、8ページに2つありまして、「個人使用目的による偽ブランド品の所持の禁止及び税関での輸入の禁止について検討を行い」ということと、それ以後の2つについて御意見があったと思いますが、前半についてはこのままでいいですか。後半については、商標法、関税定率法の関連で、竹田委員からも御意見がありましたけれども、これは法律論の世界ですので、私にはわからないので、併せて検討していただければいいのかなという程度しか意見がありませんが、まずその前半のところは少し強過ぎるというか、例えば、竹田委員のお話ですと、全く偽物を意識的に所持していない場合も罪になるのかどうかというようなことを心配されている御意見がありましたけれども。

○竹田委員 これは過失の推定も受けますし、刑事罰まであるわけですから、ここに何らかブレーキをかける表現を入れてほしいと思うんです。文章の「個人使用目的による偽ブランド品の所持の禁止」ではなくて、そこに悪意を持ってとか、故意にとか、何かそういう言葉を入れないと、本当に国民が困ると思いますよ。自分で本物だと思って買ってきて持っていたら、それは刑事罰まで科せられるのは商標権侵害だということになったら、そこはもっと慎重な表現にしてほしいと思います。

○阿部会長 いかがですか。今の御提案。

○野間口委員 こういう書き方だと、年金未納問題なんかと似てますね。

○阿部会長 それでは、事務局で工夫してください。それから、後半の「必要に応じ」以降はどうでしょうか。これも竹田委員の御指摘があったわけですが、それを踏まえて検討してもらうということでいいか、あるいは。

○竹田委員 商標法等の関係法律とするのであれば、全然問題はないだろうと思いますけれども、関税定率法が入っていたので、商標法の方と関係なしに、関税定率法がどういう形で改正できるか、私、具体的にイメージが湧かなかったものですから、禁制品で商標権侵害にはならないけれども、なお禁制品になるというような規定を設けるということが、果たして可能なのかと思いましたので、関税定率法までここに出すことはないのではないかと思ったのですけれども。

○阿部会長 そういう御提案ですが、是非出すべきだという御意見の方ございますか。商標法等と、等を入れた方がいいですか。今の御提案は、関税定率法というのをカットして、商標法の次に等を入れるということでいかがかという御提案ですが、どうでしょうか。
 それでは、そうさせていただきます。ありがとうございました。
 時間が大幅に、随分原則的な議論に戻って、重要な御意見もたくさんありましたので。それでは、藤原審議官、どうもありがとうございました。
 それでは、3の国内でのとりまとめ、9ページ、10ページについて、特段の御意見があれば御発言いただきたいと思います。

○久保利委員 10ページの17について、私が言い出しっぺだったものですから、17ということでとりまとめていただきまして、大変ありがとうございました。御礼を申し上げたいと思います。

○阿部会長 そういうことですか。

○中山本部員 さっきの国内の形態模倣は(16)に出てきますね。やはりさっきのは税関だけの話ですね。

○小島事務局次長 はい。

○阿部会長 それでは、とりあえず次に移られていただきます。11ページの中小企業の支援でございます。これは11ページだけですね。特段の御意見がありましたらちょうだいしたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、次に12ページの「官民の体制強化」について、同じようにお願いいたします。

○吉野委員 これはこの前、総合窓口というのがなかったかな、経済産業省に設けるというふうにはっきり書いていただきまして、ありがとうございました。

○阿部会長 御礼ですか。よろしゅうございますか。
 それでは、一通り御意見をいただきましたが、とりまとめについて全体を通してさらにというところがございましたらお願いします。
 どうぞ。

○下坂委員 11ページの中小企業に戻りまして、中小企業、随分御丁寧にお書きいただきまして、ありがとうございます。中小企業が推進計画全体の中で占めるページ数というのは、必ずしも大きくないんですが、日本国にとりましては中小企業というのは非常に重要でございまして、また今の大企業も何十年か前はベンチャー企業であり、中小企業であったということもありますので、是非今後とも力を入れてやっていただきたいと。積極的に取り組んでいただきたいと思います。これは要望でございます。

○阿部会長 ありがとうございます。ほかいかがでしょうか。
 それでは、模倣品・海賊版対策の強化につきましては、本日いろんな御意見をちょうだいしましたが、おおむね御了解が得られているように思います。ただし、若干の修正点につきましては、事務局に工夫してもらうところが何点かございましたので、それにつきましては事務局の方で案をつくりまして、特に御意見を出された委員の方に最終的に調整をしていただくということで、時間的な制約もあるものですから、最終的なとりまとめはそういう前提の上で、会長である私に御一任いただくということをお願いしてもよろしいでしょうか。
  (「異議なし」と声あり)

○阿部会長 それでは、事務局、何点かありましたので、そこを関係の先生に再度調整してください。ありがとうございました。
 それでは、本日の2つ目の議題に移らせていただきます。知財関連の人材の育成についてでございます。
 人材の育成は非常に重要なテーマでございまして、委員の皆様もたくさんの御意見があろうかと思います。他方、専門調査会の日程は今回を含めて2回と限られているため、特に重要な事項に絞って御議論をいただければありがたいと思います。重要というのは人によって違うかもしれませんけれども、そこは事前に事務局から委員の皆様に御意見をお伺いし、検討結果を整理していただいたと聞いておりますので、それについて小島次長から説明をしてください。

○小島事務局次長 はい。それでは、資料3に基づきまして御説明します。資料3「知的財産の関連人材の育成についての課題」ということで、1ページ目には、冒頭に現状認識として3点記載しております。
 1点目は、知的財産人材としては、弁護士や弁理士といった専門職のほか、民間企業等において知的財産の関連する業務を担当する者、あるいは大学で技術移転や産学連携といった業務に従事する者、さらには行政や司法において知的財産を担当する者、先行技術文献を調査する者など、多種多様な人材が挙げられる。こうした知的財産人材には、法律のみならず、技術、経営、芸術といった多様なバックグランドが求められること。
 2点目として、知的財産の重要性が高まり、知的財産に関連する業務が拡大するにつれて、これまで知的財産との関わりが少なかった研究・開発・営業・企画・経営等の分野においても、知的財産の知識や実務的な能力が必要となり始めていること。
 3点目として、このため、知的財産人材については、その量的な拡大や資質の向上を図るとともに、知的財産に関する知識や実務的な能力を提供するための施策を推進する必要があることを挙げております。
 その上で、具体的な検討課題として、これまで各方面から御意見、御指摘があった点を以下に列挙しております。順次御説明いたします。
 まず、1ページ目の1でございますが、「弁護士等法曹・法科大学院・司法試験」でございますが、(1)では、司法試験について取り上げております。御案内のとおり、本年の4月から法科大学院がスタートし、68校すべてに知的財産法に関する講座が開設されておりますが、知的財産に強い法曹を育成するために、やはり知的財産法を新司法試験の選択とすべきではないかというのが1点目でございます。
 2ページにまいりまして、(2)として、先ほども申しましたように、知的財産人材には多様なバックグランドが求められることから、技術的素養を持つ人材を始めとする多様な人材の法科大学院への入学をさらに促進する必要がございます。そこで、本年度の入学者に関する調査分析を行い、その結果を公開するとともに、更に必要な対策を検討すべきであるということを2点目として挙げております。
 (3)では、知財に強い弁護士を増やすためには、弁護士の方でも自己研鑽として知的財産法の知識を習得し、経験を積むことが必要であります。幸い昨年、日弁連主催による知的財産法に関する研修は非常に盛況であったと聞いておりますが、引き続きこのような研修を充実させるとともに、自己研鑽としてのさまざまな研修を促すべきではないか。
 また、弁護士や弁理士、その他の社会人が自己研鑽に励もうした際に、法科大学院での知的財産法の講義、例えば聴講生のような形で受講できるよう、法科大学院側の取り組みを奨励してはどうかということを挙げております。
 2ページの「2.弁理士・弁理士試験」の項でございますが、(1)として弁理士人口の拡大が進む中で、弁理士の資質の向上を図るため、知的財産専門職大学院等との関係も踏まえて、試験制度や研修の在り方について検討していくべきことを挙げております。
 3ページ目でございますが「3.専門職大学院」、(1)では知的財産の創造・保護・活用に関する高度専門職業人を組織的に養成するためには、知的財産に関する専門職大学院が必要ではないかという点を挙げております。
 続きまして4ページでございますが、一番上の(2)ではMOTプログラムについて取り上げております。広くビジネスやマネージメント、あるいはマーケティングの知識を備えた知的財産人材に対するニーズに対応するため、知的財産の戦略的なマネージメントを行う人材の育成プログラムである、MOTプログラムを引き続き推進していくべきではないかと。
 それから「4.人材育成のための環境整備」ということを挙げておりますが、(1)として企業の人材の能力を更に高めるため、社会人が夜間に学べる法科大学院等がもっと必要になるのではないかと。現在この「参考」に掲げてありますけれども、幾つかの大学がそのような取り組みを始めておりますが、より一層の拡充が必要ではないかということを指摘しております。
 5ページの一番上の(2)でございますが、科学技術に精通しているポストドクターは、知的財産人材としての潜在的可能性が大であり、そのようなポストドクターを知的財産人材として活用するため、知的財産のキャリアを追求するための支援をすべきではないかということを挙げております。
 (3)としては、広く研究や企画等に関わる人々に対しても、知的財産の知識を習得する機会を提供するため、e−ラーニングといったITを活用した教育・研修環境の整備が必要ではないか。
 6ページに入りまして、(4)では、知的財産人材を教育するインストラクターやサーチャーの育成を推進すべきではないか。
 (5)としては、最近民間において知的財産に関する実務者や翻訳者などに関する検定が実施されるようなってきている現状にかんがみ、このような民間における検定制度は、知的財産の人材の育成に資するものであることから、このようなものを民間の自主的な取り組みであることを前提として、推進をするべきではないかということを挙げております。 以上が資料3でございます。
 それから、参考といたしまして、資料4に昨年策定しました推進計画におけます知的財産の関連人材の育成に関する各府省のとりまとめ状況を、各府省から報告のあったものをとりまとめております。
 その別紙として、一番下でございますが、法科大学院における取り組み状況を整理した資料も付けております。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。これまで各方面からの指摘を事務局で整理をしてもらったのが今の資料であります。これにつきまして、若干今後の予定を先に申し上げたいと思いますが、次回はここの委員の先生方、いろんな点で知財人材の育成にお取り組みをいただいていますので、それについて是非お聞かせをいただきたいということを考えております。
 それから、人材育成については、一つひとつ実は非常に大きい問題なんですが、今月末に予定されています、知財推進計画の見直しに何らかの反映をしたいと考えておりますので、本日あるいは次回にいろいろ出していただいた御意見の整理をするということで、勿論先生方に見ていただく機会をつくりたいと思いますが、そういうことで推進計画の見直しに反映をしたいということを考えておりますが、そういうことでよろしゅうございますでしょうか。
  (「はい」と声あり)

○阿部会長 今日は、いろいろこれから御意見をいただきたいと思いますが、実は次回、伊藤先生と中山先生が御欠席ということなんで、できれば今日お話を伺えればありがたいと。ほかの委員の方も御発言いただきたいと思いますが、できたらお願いいたします。

○中山本部員 一般的にここに書いてあることは、これでよろしいと思うんですけれども、一番問題なのは3ページの3番の専門職大学院、これは多分理念として反対する人はいないと思うんです。これは大事ですねと言うこと自体は結構なことです。実はこの一番下の行に書いてある履修モデルについてとりまとめたというのは、文科省で私が委員長でとりまとめたんですけれども、やってみますと実はものすごく難しい。
 なぜかと言いますと、法科大学院はそこを出なければ司法試験の受験資格がないからみんな行くと、経過措置は別としていずれみんな行くということで問題は少ない。知財専門職大学院は弁理士試験の受験資格にすればいいんだけれども、それは事実上不可能。ということになりますと、ここへ来ると弁理士、弁護士の資格が取れない。取れないと言ったら失礼ですけれども、取りにくい。どうなるかというと、ほぼ間違いなく専門職大学院は予備校化するんですね。弁理士試験のです。司法試験は資格ないですから、弁理士試験の予備校化してしまう。
 そもそもこれはどういう人を受け入れるのかという理念と、どういう教育をして将来その人がどういう職場に就くのかという明確な理念がないと実際問題、具体的な設計ができないんです。
 例えば、アメリカのLLMみたいに弁護士あるいは弁理士がもう一回大学に戻ってきて専門的なことを学んで出ていこうというのか。あるいは、大学院を出た後、どこかに就職しようとするのか。そこら辺の理念をきちんとやらないといけないという点。
 あと、いろんな要望があって、知的財産法は勿論ですけれども、ほかに会計学・財政学をやらないといけない、やれコンピューター、やれバイオテクノロジーはこれから必要だとか、無数の意見が出まして、ここを出るとスーパーマンができ上がるのではないかという感じです。つまり、一体ここで何を教えるのかという理念もまずわからない。
 だからこれを書くとしたら、そのこと自体に反対はないんだけれども、もうちょっと具体化して書いてほしいという感じはします。

○阿部会長 我々は、先生の委員会でも具体的なイメージがまとまらなかったと。

○中山本部員 一応はつくりましたけれども、しかし、私が思うには、やはりあれはいろんな意見の寄せ集めで、どういう人間をつくって、それは将来どうなるのかと。つまり、ロースクールなら弁護士になるとか、何か明確なあれがないんです。こんなところを出て、本当に企業は採っては出るのかと。それでは、企業の知財マンを養成するのか。何を養成するのかという、そこをまず議論しないと実際問題できないだろうと思うんです。

○阿部会長 私も実は、この知的財産専門職大学院の話が出るたびに、先生が言われたことと同じような、よくわからないことでそのまま今まで、いつも質問だけしているということが続いているんです。

○中山本部員 次のページのMOTは、ここで知財をもう少し頑張ってというのはよくわかるんです。こっちは、書くのは勿論いいんだけれども、もうちょっと具体化して。

○阿部会長 多分、これは短い時間で議論をして具体的な目標設定というのは難しいですね。

○中山本部員 さんざん議論したけれども、やはり難しいです。さっきの問題にも関係する、みんな難しいことを書いて検討してくださいという、何か物足りないです。

○阿部会長 先生が言われることは私はおっしゃるとおりだと思います。専門職大学院について、何か御意見ございますでしょうか。

○下坂委員 専門職大学院に関して中山先生と久しぶりに意見が合いまして、大変感謝しているのでございますが、ここでまだ1校も設立されていないというところがございます。その設立の困難性、現実に設立いただこうということでいろんなお話を伺ったりしていると、今、中山本部員がおっしゃったような、どういう学生をどう集めていくか、本当に集まるかどうかとか、学校といえども企業ですから、採算が必要ですので、いろんな面で大変難しい面が出てきております。
 そうすると、例えば専門職大学ですからいろんな大学にいろんなインセンティブがあっていいんでしょうけれども、抽象的なものではなくて、知財専門職大学院にどういうインセンティブをお渡ししてつくっていただけるかと。そこのところを具体的にディスカッションをする場をつくってやっていかなければいけないのではないかというふうに考えておりまして、是非これは具体性を持ったディスカッションの方向に進めていただきたいということで、この表示を残していただいて、とにかく進めていただく方向ということでお願いしたいと思っております。

○久保利委員 中山先生、一つ質問ですが、弁理士試験の予備校化をするとどうしていけないんですか。

○中山本部員 そんなものは、もし必要ならば普通の民間の予備校に任せておけばいい。大学という非常に重い組織なんです。これは本当に重い組織です。これは1回つくるとなかなか運営も大変ですし、金もかかります。

○久保利委員 というより、予備校は既にありますね。

○中山本部員 あります。それと競争するものをあえて大学院としてつくる必要はないという話です。

○久保利委員 ということは、要するに専門職大学院が弁理士試験の予備校化をするのではなくて、予備校にもかなわない存在になると。だから、意味がないということなんですか。

○中山本部員 そうです。つまり、受験テクニックで競争すれば、大学は必ず予備校に負けるんです。何で競争するか、という問題です。学問で競争するなら勝つけれども、受験テクニックで競争したら絶対にかないません。

○久保利委員 自信を持っていますね。

○中山本部員 受験勉強は、受験のプロがいるんです。ですから、そういうものを大学としてつくる必要はない。こういうことだけです。

○久保利委員 逆に私が考えたのは、例えばロースクールで知財の弁護士になりたいと思う中で、学部は理学部だとか工学部の人が来ています。一部は大学院を出た人もいるんですけれども、逆に法学部とか文学部を出た人で、その人が知財の弁護士になろうと思ったときに決定的に理科系の部分が弱いわけです。この専門職大学院があると、そこで理科系の学科がもし学べるんだとすると、そこで理科系の大学院クラスのことを何か学んで、バイオでもいいんですけれども、そしてプラス法科大学院でリーガルの部分を学んで、合わせて一本となるんです。今の日本の法科大学院には法律科目しか原則にないわけです。
 アメリカのロースクールだったらば、JDの間にそこでバイオだとかケミカルだとか、要するにもっと専門化した理系のそういう科目が取れるわけです。だから、ジョージ・ワシントン大学だと、そういうところだったらそういう科目は取れるのに、日本のロースクールではそれが取れないわけなので、ロースクールが法律しかやらない代わりに専門職大学院がもし本当に科学的な部分で、理科系の部分でかなりそれが弁護士になったり弁理士になったりするときに役に立つような先端的な部分を教えていただけるんだとすれば、それは単なる予備校ではなくて非常に意味を持つ形態があり得るのではないかと。
 そうしたら、逆に私なんかがやっている大宮ロースクールはそこと提携をして単位互換性にして、一定の単位をそれからもらえるというふうにできないのかと思って、理科大の専門職大学院を楽しみにしていたんですけれども、なかなかできないみたいなので、その辺、どうなんですか。

○中山本部員 これも勿論検討したんですけれども、理系の大学とやればいい。これをもしここでやりますと、それではバイオはどうだ、コンピューターはどうだとかいろいろなものができまして、結局虻蜂取らずになる。これという専門がないんです。1年や2年程度のカリキュラムでは、もうつくることは不可能。もしバイオの弁護士になりたかったら、どこかのバイオの大学と提携をするしかないし、その方が正確です。
 やはり、ここで今、おっしゃったような理科系の、あるいは満たすような教育というのは多分、難しいと思います。

○久保利委員 例えば、専門職大学院同士の単位互換はあり得ても、先生がおっしゃっているような理科系の大学で学んでも、多分、それはロースクールでの単位互換には入ってこないという文科省の指導があるのではないかと思った次第です。そうなってくると、そこが専門職大学院であるということで意味を持つのかなと。それはむしろ、文科省の単位互換の制度を変えればいいのであって、専門職大学院をわざわざつくることはないという御議論になるのかもしれません。

○下坂委員 法科大学院をつくりますときに、司法試験の予備校化するのではないかというような危惧がありましたが今は進んでおります。だから、ある試験の予備校化をするのではないかというのはその一面であって、そこで教えることが日本の知財の人材に貢献するようなことであれば、別に一部予備校化したような形になったとしても、それは致し方ないのかもしれないと思います。知財の場合にはあれもこれも全部入れますとまとまりがつきませんので、専門職ですからそれぞれどういうところに目的を持って、どのようなインセンティブでいくかというようなものをもって分類していってやることもできるのではないかというふうには考えているんですが、今日は時間がないと思いますので、また将来のディスカッションで是非にと思っております。

○阿部会長 一つだけ、本部会合でポスドクの方に知財の分野にどんどん進んでほしいという御意見があって、そういうのは、あるいはポスドクというのは主として理系だと思いますけれども、理系のある程度以上の水準に達している人が知財の仕事に将来就きたいというときに、例えばこういうのが役に立つのかと思って御意見を伺っていました。それでは、どういうカリキュラムにすればいいかとか、そういうことを考えているわけではありませんので、どこまでうまくいくかわかりません。

○中山本部員 それも勿論いいんですけれども、ただ、知財というか法律は一般にそうなんですけれども積み上げ的要素が強くて、知財だけ学んでもわからないので、民法も民訴も行政法も勉強して、最後に知財が来るという感じなんです。
 したがって、もしこれをポスドクの人がやるとしても、知財だけぽっと特許法と先の先を教えても、恐らく使い物にならない。となると、やはりこの専門職大学院ではなくて、むしろそれだったら学部レベルの方がむしろ近いと思います。

○下坂委員 でも先生、専門職大学院にそのようなカリキュラムを入れればあり得ないことはないと思いますけれども、入れられないんですか。

○中山本部員 いや、何年も掛ければ可能ですが、一定の時間の枠内に入れようと思うと、要求ばかり多く、結局虻蜂取らずになる。民法も必要、行政法も必要、民訴も必要、あるいは会計学も全部必要なんです。そうなってくると、どうやってカリキュラムをつくるか。

○下坂委員 ただ、最終の人材のでき上がりをどのような形で見るか、置くかということで、活用の方は既に法科大学院はできておりますので、保護の方をもうちょっと重点的に考えて、そこに必要な民法や民訴ということでもいいと思います。これは中身、カリキュラムになりますと将来的なものになるんです。

○竹田委員 ちょっと下坂委員にお聞きしたいんですが、将来の活用の道ができているとはどういうふうに活用されるんですか。

○下坂委員 道ができている。

○竹田委員 というふうに言われたのではないんですか。知財専門職大学院を出たら、その人たちはどういう道を歩むか。まさに、その展望も理念もないのではないかというのが中山先生の御意見だと思うんです。

○下坂委員 それもあるんです。そこらにいろいろ、大体ビジネス、マネージメント、マーケティングと、4ページとかに出ております。4ページにもありますし、それから勿論、2ページの弁理士のところもありますし、いわゆる幅広い知財人材をつくっていく。あと、会社にそのまま弁理士試験なんかを受けないで就職なさる方、官庁にお入りになる方とかいろんな方ができてくる。その知財に理解を持った人材をそこで育成していくということがあるんです。知財といった場合、すごい広いですから。

○竹田委員 法律的素養の下に、そういう知財の応用部分を重ねるのであれば、大学を出て3年間でそういうものをすべてやるのは困難だというのが、中山先生の委員会で検討した結果ですということなのではないんですか。

○下坂委員 どの程度の法律の素養をお考えなのか、弁護士並みの素養をお考えなのか。それならば法科大学院を出て、また知財専門職大学院を両方とも出なくてはいけない。

○中山本部員 だから、どういう人が入って、どういう人材を養成するのかという理念をまず決めていただかないと、水準も決まらないんです。

○下坂委員 そうです。それはもう数限りなく、方向性はあると思うんです。だから、その方向性の中で今つくるのはこういうものだというのを一つひとつ考えていく必要があると思っております。
 漠然と考えるとつかみどころがなくなりますので、バイオだけに特化した専門職大学院ができるのかもしれませんし、それはわかりません。ただ、今のところで漠然と目的を持ちましてもインセンティブがございませんから、失敗を覚悟で何せつくってくれというお願いをしなくてはならない。そういうモルモット的なものをこちらが進めるということはできない。それならば、できるところから手を付けてお願いをしていこうと。それのインセンティブを与えることに予算だけというのではないんですが、そういうものに対して組み立てができれば、議論ができればというふうには考えているんです。

○阿部会長 これはどうですか。継続的に御審議をいただくということに今日のところはさせていただいて、伊藤先生、ほかの点でも結構でございます。

○伊藤委員 私も、主として申し上げたいのはただいま御議論があった点で、是非慎重に御検討いただきたいと存じます。

○阿部会長 ほかはよろしゅうございますか。それでは、是非ほかの委員の方、もしなければ、今の続きでもいいです。

○野間口委員 先ほど、ポスドクの話が出ましたけれども、これは人材育成というより人材活用という意味だと思うんですが、推進計画の中で期限付き審査官の増強というか拡充というのが審査の迅速化でございました。役目が終わったああいう方々の日本国としての活用も、やはり人材という面で見ておく必要があるのではないか。あれは何年か期限があり、その後、活用するんだということになっていましたね。
 先ほど、中小企業とか何とかありましたけれども、そういうところでいろいろ指導とかをやれる機会を与えるとか、何かそういうことに対する視点が全然抜けているんで、入れた方がいいのではないかと思います。国家的な財産だと思うんです。実践的な能力はあるわけですから。

○阿部会長 おっしゃられるとおりで、どちらかというと日本の場合にはポスドクは研究者にならなければいけないようになっているところがきつ過ぎると思うんです。
 それから、ポスドクのさまざまな御経験を社会に貢献されていくという意味では、いろんな働き口と言うと平たくなりますけれども、いろんな道を、可能性をつくっていかなければいけない。その中で、知財に関するところがあって当然だと思うんです。
 それでは、どうしたらいいかというのはいろいろ難しいところですけれども、おっしゃるようにもったいない話です。

○荒井事務局長 今の点は、その点と任期付き審査官の増強と。

○野間口委員 両方です。ポスドクだけではなくて、ミッションが終わった後の任期付き審査官活用の選択肢を。

○阿部会長 それでは、吉野委員。

○吉野委員 これは量、質ともに拡充が必要だということなんですが、大まかな需要予測だとか需給のギャップみたいなものは大体イメージとしてありますか。

○阿部会長 これは、弁護士とか弁理士とかいろんな数字があるんですけれども、ここでは数字は検討していないですけれども、どうですか。

○小島事務局次長 我々の方でも、いろんな知財人材、企業の中にいる人も含めて知財人材マップ等、いろいろ現状どのぐらいいるかというのをやってみたんですが、まだお出しできるようなものができていないのですが、いずれどういう分野にどういうレベルのどういう人が必要かというのをもう少し積み上げてみて検討してみる必要があると思います。

○阿部会長 どうぞ。

○高林委員 法科大学院の技術的素養を持つ人がどのぐらい入っているかということの調査をするということでしたけれども、私の大学でも実感としまして、技術的バックグラウンドを持っている者が法科大学院に進んでいる割合というのは非常に高い印象を持っております。ですから、この辺は十分調べていただいて、その辺が将来、知財人材としてどの程度育っていく余地があるのかということを十分踏まえていただきたいということ。 それから法律的な素養しかなく、かつロースクールで知財を学んでいった者に技術的素養を加味していくということについては、先ほど中山先生からもお話がありましたけれども、やはり理工学部といいますか、理系の学部、私の大学ですと総合大学ですから、そういう学部と連携しながらそちらの方の授業に参加するとか、サテライト的な授業になるのかもしれませんけれども、そういう形を持ってやっていくというのはいい方法だろうと思っております。それと比べて専門職大学院がどうなのかというのは、私は余り具体的に専門職大学院のイメージが湧きませんけれども、その意味で法律的なバックグラウンドがある者に技術的素養を加味して、知財弁護士にさせていくという道も、かつ技術的バックグラウンドがある者をロースクールで知財教育をして知財弁護士にしていくという道も、両方拡充していく必要があるんだろうというふうに思います。

○阿部会長 先生の場合にはどうなんですか。法科大学院で理系の経験者というのは、学部卒とか社会人とか、いろいろあると思うんですが。

○高林委員 社会人が多いです。これは久保利委員の大学と違いまして、私の大学は昼間の開講ですから、皆さんは職を辞して来ておりますので、そこら辺は非常にリスクが高いと思いますけれども、社会人経験を持った理系の出身者というのは割合的に、これは調査していただいてまとめていただければと思いますけれども、かなりの割合がいると思います。
 ですから、夜間の開講になれば、ますますそういうニーズは高まってくるというふうに思っております。

○久保利委員 ざっくり大宮で100 人、昼が50、夜が50ですけれども、社会人経験者、現在は社会人であったり、ついこの間の3月まで社会人であったという人の割合が7割5分ぐらいあるんですね。逆に言うと新卒の学生が2割ちょっとしかいない。そのうちの夜については、ほとんど全員が今、社会人で、その社会人の中で理科系の出身者というのはイメージ的に言いますと、多分半分以上理科系です。例えば、11名お医者さんがいますけれども、これは理科系ということになってきます。それから、特許庁からお見えになっている夜の人たちも、これもみんな理科系ですね。弁理士さん3名も理科系です。
 こういうふうにいって足していきますと、やはり理科系の人は半分ぐらい。これは大宮の特殊性かもしれませんけれども、少なくとも潜在的にはその層はものすごく夜間を求めている人たちがいると。この調査会でも夜やれという話がありますし、我々も夜はもっと増えてほしいと思うんですけれども、実は夜やるというのは大変なことなんですね。先生の手間、図書館をとにかく深夜まで開けなければいけない。日曜日も学校に入れるようにすべてやらなければいけない。いろんなことを考えていくと、ものすごいコストがかかることであります。
 これをやっている法科大学院は、面白いことにみんな私立で、独法化した旧国立が最も経営資源を持っているはずなんだけれども、やらないというのは、多分やれないというか、さまざまな規制上、できないだろうというふうに思うんですね。そういう意味で言うとなかなか夜を増やしていくというのは本当は難しいのかなと。逆に学費が高くなってしまうか、何らかの補助金がないと実は成り立たないというところが一つある。
 もう一つは、2ページの弁護士や弁理士が知財法の講義を受講できるようにしろという話ですが、例えば、LLMみたいな感じで考えていくべきでしょう。LLMをやると、これまた、まだ日本にはないわけですけれども、これも一体どういうふうにつくっていくのか。その教員はどこから確保するか、どんなふうな講義をしていくか。これもまだないわけでありまして、これもやはり本当は旧国立に模範をつくってもらいたいとは思いますけれども、これもなかなか大変なんだろうなというふうに、次回お二方の東大の先生がお見えにならないというので、あえて今言っているわけですけれども、そういう意味で言うと東大が日本のトップランナーなら、本当は夜の部もLLMも東大がまず模範をやっていただいて、モデルはこういうものだというふうに本当はやっていただきたいというふうに思うんですが、なかなか大変なんですね。

○阿部会長 東大の状況について、少し御紹介いただければ。今の問題もあると思いますけれども、その入学者がどういう専門になっているかも、おわかりになる範囲で御紹介いただければと思います。

○伊藤委員 まだ、きちんとその辺りのデータを整理していないんですが、たまたま私ども、未修者という、要するに3年制ですね。これが大体100 人程度で2クラスに分けてやっておりまして、私はたまたまその1クラスのクラス担任というのを仰せつけられて、ときどきコンパとかそういうところで話をするんですが、印象としてはさっき高林さんがおっしゃったように、未修者の方は大体8割近くが社会人経験がある人。そのうちの半分には行かないけれども、かなりの理系出身者がいるという、これはあくまでそういう意味での印象だけなんですが、そうでございます。正確には、もうちょっときちんとした形でいずれお話ができるようなことになるかと思います。

○阿部会長 未修者というのはどういう定義ですか。

○伊藤委員 要するに、イメージで言えば法学部ではなくて、他学部を卒業して、初めて法律を勉強するというタイプの人ですね。

○久保利委員 大宮は全員3年未修者ということなんで、したがって法学部を経ている人が非常に少ないということは言えるわけですが、ただ、法学部を出たらみんな2年コースの既修者かというと、そうではないと。要するに、実際上はロースクールの1年生が終わったのと同程度の力を持っているという人を既修者というふうに認定すると、早稲田のように既修した認定者は非常に少なくなるというのが実態だと私は思うんです。

○阿部会長 東大は既修者というのは1クラスなんですか。

○伊藤委員 いえ、これは既修者の方が200 名。

○阿部会長 既修者の方が多いんですか。

○伊藤委員 そうです。もうちょっとクラスが多くなります。

○高林委員 ちなみに早稲田は300 人で、既修者は20人しかいないんです。未修者が二百何十人ということですね。大分違うかと思います。

○久保利委員 神戸はどうですか。

○中川委員 同じような傾向ですね。やはり理科系あるいは社会人は想像を超えてたくさん。志望の段階では多分5割は超えていたと思いますけれども、試験に合格して実際に入学した人はまた違ってきて、もう少し社会人は減ったような気がします。しかし、未修者はほとんど社会人、8割ぐらいは社会人。そのうちの3割か4割ぐらいは理科系の人ですので、最初、我々が心配していた全部法学部出身になるのではないかというのは、全く杞憂であったというのが、恐らく全国的な傾向ではないかなという気はしています。

○阿部会長 ありがとうございました。
 夜間が国立でなかなかできないというのは、どこにハードルがあるんですか。

○高林委員 それは国立に限らず、私立でも、私の大学でも夜間開校というのは、俎上に上ったことはありますけれども、非常に難しいです。特に知財ですと教える方の人材も少ないですし、それから設備等の問題もありますし、これは私立国立を問わず、非常に難しいことであることは間違いありません。

○中川委員 学部を抱えた上で、しかも学部も最近は法学部なら法学部の専門科目だけではなくて、学部の1、2年生の教養科目、それも各学部から供出しろというので、教養も教えつつ各専門科目も教える。既存の大学院もある。社会人大学院とかですね。それに法科大学院ですから、これにまだ夜間となると、もう一個純増になって、ちょっとこれはかなり今、アップアップしていますので、人的な負担、授業負担も限界だろうということですね。

○阿部会長 そういうことですか。

○中山本部員 68のロースクールで知財を教える人がいたというのは不思議なぐらいですね。ちょっと考えられないくらいのことなので、それにプラスして今度は夜間となると、これはもう絶対的にないですね。したがって、将来は別として、当面は人、予算の関係でまず無理でしょうね。

○阿部会長 そろそろ12時近くなりましたけれども。
 どうぞ。

○中山本部員 ポスドクの利用もそうなんですけれども、一般的にやはり優秀な人材をこの世界に呼び込むには一番いいのは資格ですね。弁護士はロースクールで今言ったようなことで理科系の人が行くので、それはいいんですけれども、もっともっと行ってほしい。また弁理士資格はもっと取りやすくして欲しい。
 戦略大綱では弁護士や弁理士の増員が何とか入ったんですけれども、これは今は入っていないみたいですけれども。やはり全体のパイが増えなければ夜間大学をつくったって仕事の方が忙しくて勉強ができなければ、結局、司法試験は受からないですね。ですから、やはり弁護士、弁理士全体のパイをもっと増やしてほしいという、それをどこかに織り込んでいただきたいと織り込んでいただきたいと思うんです。

○阿部会長 そうですね。調査も含めてお願いします。

○小島事務局次長 はい。

○竹田委員 この一番最初の新司法試験の問題ですけれども、やはり現実に法科大学院の学生が知財に対する指向をどのくらい持つかは、知財法が司法試験科目の選択科目になるかならないかで、かなりの程度違うと思うんですね。だから、これは是非推進する、知財を目指す弁護士を育てるのであれば、これは是非とも入れなくてはならないと思うんですが、私は1つだけ懸念するのは、知財法と言っても、ものすごく広いですね。ほかの選択科目に比べてもどうでしょうか。知的財産法概論と仮に言ったとしても、それは大変な範囲になってしまって、さりとて特許法、商標法、意匠法、不競法、著作権法、全部選択科目なんていうことはなかなか望まれないとしたら、やはり例えば、特許法に絞るとか何かそういうこともその辺のところに御関係になる方々にちょっと御尽力していただいた方が通りやすいかなということを感ずるんですけれども。

○久保利委員 私は逆に特許法に絞るのではなくて、おっしゃるとおり、非常に広いので1つでは大変だと思いますが、例えば、特許法とコンテンツというふうな形に絞って、これは言わばコンテンツの著作権も商標等々も入ってくるというふうな形で2つ分けて、それぞれを別個の選択科目として取れるというふうにしていかないと、特許だけ盛んになってコンテンツ系がだれも志望しないというのも難しいというなんで、この辺はいろいろ要望はあるんですけれども。

○阿部会長 どこまで入っていくかですね。この中には司法試験に御関係の先生もおられると思いますので、よろしくお願いします。

○下坂委員 先ほど、中山本部員からパイを増やすのを是非というお話がありまして、それ自体はよろしいんですけれども、そのときに是非、質の問題、資質の向上というのもくっ付けて、それをどのようにやっていくかというのも同時にお考えいただく文章にしていただきたいと思います。

○久保利委員 知財専門の大学院を出ないと弁理士にならないようにすればいいんでしょう。

○下坂委員 ありがたいですね。

○久保利委員 それで弁理士はどんどん増やすようにすれば、両方とも解決する話なのではないですか。さっき中山先生はそれを資格の要件にはできないからというふうにおっしゃったんですね。

○中山本部員 いや、不可能とは言っていない。事実上難しい。

○久保利委員 では、それはだれが反対するんですか。弁理士会が。

○中山本部員 誰が反対ということではなく、無理だろうということです。つまり、今の弁理士になる人が、2年ぐらいその大学院に全員が行くかという話なんですね。受験生の多くが企業や事務所に勤めているわけですね。学校を出ても2年間ここへ行って、しかもそれで受験ということを希望するか。そういう話なんですね。ですから、私の予測違いでニーズが大いにあるというなら、それはもう全然問題ない。

○久保利委員 だって、弁護士はロースクールに3年行って研修所に1年行って、その間に司法試験を受けたりするのだって5年ぐらいかかってしまうんですよ。

○中山本部員 現にニーズがあるんです。だから、それはそれでいいんです。

○久保利委員 弁理士会もあるのではないですか。

○下坂委員 弁理士の場合も職を辞めて浪人をやっていて、そのためだけに専心するというので、先が見えないで5年、6年とかかっているというのもおります。

○中山本部長 あと、もう一つは、ロースクールの場合もそうなんですけれども、それに見合った学校を一挙につくる。68は要らないけれども、幾つか知りませんけれども、弁理士試験だったら司法試験の2分の1程度でしょうか。10や20ぐらの大学を一挙につくる必要があります。受験資格ですから、これはばらばらにつくるわけにはいかないんですね。これもまた実際にやってみると極めて難しいですね。

○阿部会長 ありがとうございました。先生は何か。

○中川委員 2ページの(3)ですけれども、これは恐らく弁護士のリカレント教育ということだと思いますけれども、リカレントにはツーステップあると思うんです。そのうちのワンステップだけしか書かれていないような気がするんですが、ここで書かれているのは弁護士会での3日間の研修であるとか、あるいは法科大学院での授業を聞く。これは要するに、全然知財を知らない弁護士が多少、体系的な知識を初めて得たという意味で、これでは知財に強い弁護士ではなくて、「知財を知らないわけではない弁護士」という、まず第1ステップだと思うんですね。
 第2ステップは、実務で多少は知財関係の事件を扱ってみて、いろいろ先端的な問題があると。それについて自分で論文を書いてみようという段階ですね。1年間で修士あるいは2年か3年で博士とかですね。ほとんどスクーリングの要求は少なくて、ほとんどの時間をかけて論文を書くと。いろんな大学の教官、あるいはそのほかの本当の専門性の高い実務家の方々が大学院に来て、それで議論をしながら、その人なりの一つの専門分野をつくっていってもらうという、もう少し高度なリカレント教育ですね。そういったものも必要なんではないかと。アメリカのロースクールのいわゆるLLMというのは第1ステップの方だと思うんですね。そんなに専門性は高くない。そうではなくて、もう少し本当に知財に強い、知財の中でここは私のエリアだというふうなものを持つためには、論文を書くのが一番いいと思うんですが、そういうふうなより高度なリカレント教育というのを考える必要があるのではないかと。
 そのためには恐らく、今、各大学でいろんなCOEをとったり、あるいはセンターをつくっているところがございますけれども、知財についてある程度お金があって、そして専任教官もいるけれども、いろんな実務家が入れかわり立ちかわり講師として入ってきている。そこに学生もいるというふうなセンターづくりを、全国で幾つか拠点をつくって、ここに行けばそういう教育が受けられますよというふうなセンター、あるいは拠点づくりという方向もあるんじゃないかと思います。 そこに、さらに、例えば、今、侵害国と言われている海外のですね、どこの国とは言いませんが、そこの国の若手の法曹を留学させて、それで知財の勉強をさせる。そうすると、その国の知財弁護士も増えるということで、そういうふうなセンターづくりという方法もいいのではないかと、そのセンターのお金は、勿論国家予算でもいいんですが、できれば民間の拠出もお願いしたいと、最大の受益者でありますので。冠講座でもいいですし、そういうプログラムに対して一部学生に自分たちの職員を派遣することを条件としてお金出しますよということでもいいですし、そういう工夫もづくりができるんじゃないかと思います。リカレント教育をもう少し2段階で考えればいいと思います。

○阿部会長 どうもありがとうございました。それは工夫させていただきます。

○高林委員 今の点で1分だけですけれども、よろしいですか。

○阿部会長 どうぞ。

○高林委員 知財についてロースクール68校すべてで開講されていると書いてありますが、この一覧表を見ますと2単位の授業があるだけとか、そういうようなロースクールが割合的には多いわけです。今の中川委員のお話ですけれども、このロースクールで2単位の授業を受けた人がどの程度の知財の素養と言いますか、教養的なレベルなのかわかりませんけれども、携えたローヤーにやれるのかというのは、やや私は不安なわけです。久保利委員もおっしゃったことですが、アメリカではジョージ・ワシントン大学もそうでしょうし、特色のあるロースクールというものがあるわけですから、68すべてに知財の講座があるからよしというわけではなくて、やはり今お話にあったとおり知財に非常に重点を置いているロースクールにあっては、そのようなところに特色を持たせていくことが大切かと思います。

○阿部会長 人材育成については、次回も引き続き御意見をちょうだいしたいと思います。時間がまいりましたので、本日はこれで終了させていただきますが、先ほど申し上げましたように、本日並びに次回の御議論を踏まえて、知的財産推進計画の見直しに何らかの反映をさせていただきたいと思いますので、事務局によろしくお願いいたします。
 そういうことで、よろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

○阿部会長 それでは、そうさせていただきたいと思います。次回は、5月13日木曜日午後2時から、この場所で開催いたします。
 御多忙中のところ、誠にありがとうございました。