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第5回 先端医療特許検討委員会 
議事録

  1. 開 会 : 平成21年3月2日(月)16:00〜18:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 金澤委員長、片倉委員、北川委員、小泉委員、佐藤委員、永井委員、中内委員、長岡委員、羽生田委員、林委員、本田委員、渡辺委員
    【参考人】 木下医政局経済課長、南特許技監、田村審査基準室長
    【事務局】 素川事務局長、内山次長、小川参事官、高山参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開  会
    (2) 先端医療分野における特許保護の現状と課題について     
    (論点整理)
    (3) 自由討議
    (4) 閉  会


○金澤委員長 おいでになるべき委員の方々は皆さんおいでになりましたので、早目ですけれども、始めましょう。永井先生は実は遅れておいでになることが分かっておりますので、始めさせていただきます。第5回目であります。
 今日は白石委員と須田委員がご都合によりご欠席ということでございます。
 また、今回は外口厚生労働省医政局長のかわりに、木下医政局経済課長がお見えになっております。また、特許庁からは、いつものとおり、南特許技監と田村審査基準室長においでいただいております。よろしくお願いします。
 では、配付資料の確認をどうぞ。
○内山事務局次長 配付資料でございますが、まず資料1が、後ほど渡辺委員からのプレゼン用の資料でございます。
 それから、資料2が、その後、佐藤委員からのプレゼン用の資料でございます。
 それから、資料3でございますけれども、事務局の方で論点整理のペーパーとしてまとめたものでございます。本体と別添1、特許審査基準の抜粋と、別添2、参考資料となっております。
 最後に資料4、1枚紙で今後のスケジュールについてでございます。
 以上でございます。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。足りない方はどうぞおっしゃってください。
 それでは、最初に先端医療分野における特許保護の現状と課題についてという議題の中の最初のプレゼンテーションをお願いしたいと思いますが、今、次長から紹介がありましたように、資料1に基づきまして、渡辺委員からご説明をいただきたいと思います。どうぞよろしく。
○渡辺委員 渡辺でございます。
 2ページ目に示しておりますように、前回、新たに用法・用量を変えることによって患者の利便性が向上した例として、フォサマックの例、毎日投与だったものが、利便性が悪いために1週間に1回になることによって、患者にとって飲みやすくなった、しかも安全性が良くなったという例をご紹介させていただいたんですが、今回は他に例がないかということで、イリボー錠、過敏性腸症候群の薬でございますが、それとキュビシン注という、これは米国の事例なんですけれども、いずれも開発中止であったものが、用法・用量を工夫することによって開発されるようになったという例でございます。
 3枚目に、まずイリボー錠についてご説明いたします。
 これは、物質といたしましては、ラモセトロン塩酸塩というものでありまして、効能効果といたしましては、下痢型の過敏性腸症候群、これはストレス等によって下痢とか便秘を繰り返したり、あるいは下痢をひどく繰り返したりして、会社に行くあるいは学校に行くのにもつらいといったようなことが起こるような病気であります。
 用法・用量といたしましては、ラモセトロン塩酸塩として5μg、これは1mgの1000分の1がμgでありますので、1mgの200分の1の5μgですね、これを1日1回経口投与するということで、2008年10月より発売が開始されました。
 この場合には、他の適応症でも既に販売がなされておりまして、効能効果といたしましては、シスプラチン等の抗がん剤に伴う悪心・嘔吐の抑制ということで、注射剤としてはナゼア注という商品名で同じ有効成分のものが1996年9月に発売されておりますし、経口剤としてはナゼアOD錠、OD錠というのは口腔内崩壊錠でございまして、水無しで飲める薬でございますが、1998年8月に発売されております。
 これらの用法・用量といたしましては、注射剤の場合には0.3mg、つまり300μg、経口剤の場合には0.1mg、100μgということになります。
 この薬剤の作用機序からすると、そういう悪心・嘔吐の抑制というのに加えて、過敏性腸症候群という病気にも効くんじゃないかということで、ナゼアという悪心・嘔吐の薬と同時に開発をこの適応症に関してもやっておりましたが、中止されました。
 その時には、動物実験等の成績から、臨床でもナゼアと同じ用量で効くんじゃないかということで開発がされた訳ですけれども、実際のところやってみますと十分な有効性が認められなかったということで開発中止になった訳です。
 次の4ページ目でございますが、ここで課題として挙げられたのは、本当に当時としては過敏性腸症候群というのは、必ずしもまだ十分に臨床評価方法が確立していなかったということもありますし、下痢に対しましては、薬がよく効き過ぎますと便秘にもつながりかねないということで、効いたということがひょっとしたら副作用として見られているというようなことも、後で考えると分かったような状況でありまして、そういったことを十分に評価するような臨床評価方法が無かったというのが一つの課題でありました。また、そういう十分な効果の得られる投与法の開発というのがやはり解決すべき課題でありました。
 そういうことで、以前に行われたデータを見直してみて、ひょっとしたら低い用量でも効くかもしれないということから開発が再開されまして、ナゼアOD錠、これは悪心・嘔吐の方ですね、それの20分の1の少量で有効であるというのが分かったと。下痢型の過敏性腸症候群に非常に顕著な作用を示しまして、プラセボ、偽薬ですね、これを投与しますと、二十数%の方が症状が改善したというのに対して、このイリボーの場合には四十数%と、有意な改善が見られたということであります。投与量といたしましても、ナゼアOD錠に比べましてはるかに低用量、20分の1の量でございますので、用量を減らすことで効果があることを見出したのがキーポイントであります。
 また、同じ作用メカニズムのLotronexというのが米国で、違う有効成分でありますが、発売されておりますけれども、その場合も0.5mgを1日2回経口投与ということでありまして、イリボーというのが予想外に低用量で効いたというのが分かっていただけるんじゃないかと思います。こういったことによって、新たな用法・用量の開発によって過敏性腸症候群に悩む患者さんのQOLの改善というのが得られるようになりましたということで、開発中止のものが開発されるようになった例でございます。
 続きまして、5ページ目には、キュビシン注の例を挙げました。
 これは、有効成分はダプトマイシンという抗菌剤でありまして、日本ではまだ売られておりません。米国の事例であります。
 効能効果は、グラム陽性菌という菌による皮膚感染症、それからブドウ球菌という菌による菌血症、血の中に菌が回るような病気ですが、特にMRSA等の難治性の耐性菌感染症に対してこういった薬が効くんじゃないかというふうに期待されている例であります。
 用法・用量といたしましては、体重kg当たり4mgを30分間点滴静注、1日1回、7から14日間というのが皮膚感染症に対する用法・用量でありまして、菌血症に対しては6mg/kgを1日1回、2から6週間投与されるということであります。これに関しましては、米国において2003年9月に発売となっております。
 ただ、開発経緯に書いておりますように、この薬の場合には、いったんEli lillyという会社がこの物質を見出して開発を途中までしていたんですけれども、これはかなり古い時期に開発されまして、実際のところ物質特許は2002年に満了しているといったところで、売られている時には物質特許はないという状態の薬です。
 Eli lillyが開発している時には、2番目のポツにありますように、3から4mg/kg、1日2回、先ほど承認になったのは1日1回ですけれども、1日2回投与した場合に、骨格筋毒性というのが観察されました。実際のところ、耐性菌等に効かせるためにはもうちょっとたくさん打たないといけないということでありましたので、それだと骨格筋毒性というのが問題となって開発ができなかった。ただ、なぜかというか、かなり熱心なCUBISTという会社が1997年にライセンスを受けて開発を継続していったということでございます。
 6ページ目に開発上の課題をまとめておりますが、先ほども申し上げましたように、特に高用量が必要な耐性菌に対して十分な効果と副作用の少ない投与方法の開発というのがポイントであります。
 それから、物質特許は既に2002年に満了ということで、販売後には物質特許はないということになりますので、やはり新規投与方法の特許取得というのが一つの課題でありました。これはCUBISTの開発によって解決された訳ですけれども、1日から2日に1回というような、ある程度投与間隔を空けることで使えるようになることを見出しました。これによって副作用を回避し、また耐性菌でありますMRSAにも有効、長期間投与することが可能になりました。
 骨格筋毒性というのがキーポイントだったんですけれども、血漿中濃度じゃなくて、投与間隔に関連することというのをこのCUBISTという会社が見出したことがキーポイントでありまして、投与間隔をあけることによって副作用を減らして長期間投与できるようになったということで、MRSA等の難治性感染症に対する治療薬の選択肢を広げることができたということでございます。
 以上2例、いずれも用法・用量を大きく工夫することで、開発中止であったものが開発できるようになり、しかもそれによって患者さんに対してQOLの改善とか治療に対する選択肢の拡大といった有用な効果が得られたという事例でございます。
 以上でございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 スペシフィックなご質問ありましょうか。
 ちょっと確認ですが、ラモセトロンの事例は、日本の例ではないのですね。
○渡辺委員 日本です。
○金澤委員長 ああ日本ですか、そうですか。分かりました。
 他にご質問をどうぞ。
○羽生田委員 これの特にアメリカでの特許は申請されているんですか。
○渡辺委員 イリボーの件でございますか、アメリカにも出されています。
○羽生田委員 特許は取られていない。
○渡辺委員 特許になっています。
○金澤委員長 そうですね。去年の10月に日本で発売されたそうですから。
 他にご質問ございませんか。
 それでは、とりあえず後でまた議論の対象にさせていただくことにいたしまして、次は資料2でありまして、佐藤さん、お願いいたします。アシスト機器関連技術です。
○佐藤委員 佐藤でございます。
 私、最近、ウェアラブルブロボット、体に装着するロボット系の技術について実務上扱っておりまして、それに関連しまして今日はご紹介をしたいと思っています。
 そういう意味で、アシスト機器といいますか、人体に対して何らかの補助をするという機器が医療行為というふうにみなされて特許にならないということが実際あるということをご紹介したいと思います。
 2枚目を見ていただきまして、日本における少子・高齢化の社会で、人のアシストをする技術領域の開発というのが今進んでおります。具体的には、今申し上げた介護支援ロボット、歩行補助というような装置でございます。しかし、これは明らかに医療行為と直接関係ないんですけれども、今の現在の審査基準では、医療方法の発明に該当するということで、拒絶になってしまうということがあるということでございます。
 3枚目をご覧ください。
 ここでは、歩行補助のうちの振り出し補助という話ですが、日常、筋肉トレーニングとか、また歩行状態というのを見るために、技術の内容としては、人間の足関節の動きが時間経過とともにどのように変化するかを計測して、その計測結果に基づいて、この人間が上り坂、平地、又は下り坂のいずれかを歩行しているかという歩行状態を判定するというような方法で出願しましたところ拒絶されたと。
 理由は、病気の発見、健康状態の認識等の医療目的で人間の身体の各器官の構造・機能を計測するなどして各種の資料を収集する方法、これは人間を診断する方法に当たるということで、今作業上利用できないということになっております。
 しかし、これはヨーロッパでは既にこういう判定方法では、直ちに特定の治療的処置を施す決断につながるようなものでなければ、医療行為に関する診断方法とはしないで特許されるということになっております。そういう意味で、日本とヨーロッパでは違いがあるという事例でございます。
 次のページにいっていただきまして、やはり歩行補助関連ですが、体重支持型のものでございます。工場作業などの負荷軽減のために使われていまして、これは広くは介護者の支援機器などに役立つものでございます。
 具体的な技術内容は、歩行にあわせて体重支持力を発生させるために、人間が床を踏む力を測定し、当該測定結果に基づいてアシスト機器によって人の腰に持ち上げる力を作用させる。作業している時に、だんだん疲れてきた時に体を支える力をそれにあわせて与えるという方法でございます。
 これに関しましても、これは仮想事例でございますが、今の審査基準でいきますと、作業者や介護者の作業負荷を軽減するという目的で、直接医療行為とはかかわらないんですけれども、機器による人体への作用を含む方法ということで、医療機器の人間を手術する、「手術等する」方法に該当するという理由、もしくは健康状態を維持するために処置する方法ということで、病気の予防に該当するということで拒絶される可能性がございます。病気の予防方法というは、広く人間の治療に関する方法だといって扱われている訳です。
 この点についてもヨーロッパと比較しますと、本来目的及び効果が治療(予防)でない限りは医療方法として判断されないという点で、日本の審査とヨーロッパでは違っているということです。
 説明しましたように、機器の目的、効果によって医療機器かどうかというふうに区別されるとすると、明らかにこの場合には医療機器ではなくて、歩行補助と、人体の作用に対して補助するというだけのものであって、こういう場合に単に機器が人間に作用するということで特許とならないというのはヨーロッパと非常にバランスを欠いているということでございます。
 最後のまとめでございますが、今、医療方法そのものは特許にするかしないかというのは当委員会の議論でございますが、これを特許にしないとしても、少なくとも医療行為と直接関係のない、診断でない判定方法とか、人体の作用工程を含む医療機器以外の機器の作動方法、それから最後にご紹介しました作業者への作業負荷を軽減するというような発明については、本来、直接医療方法の発明とは遠いところにあるので、この辺は区別して特許されるべきではないかということでございます。
 以上です。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 拒絶された実例と仮想の例とが入っておりますが、どうでしょう。スペシフィックなご質問ございませんか。
 どうぞ、林委員。
○林委員 林でございます。
 特許庁にご質問させていただきたいのですが。薬事法との関係で、特許審査基準上の用語の意味について確認させていただきたいのです。特許審査基準上の「医療機器」はどこかに定義があるのかどうか。言いかえますと、薬事法上の「医療機器」であっても、人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないものは特許審査基準上は「医療機器」と呼ばないのかどうか、これが1点目でございます。
 関連して、2点目ですが、薬事法上では、細胞組織由来の「細胞組織医療機器」というカテゴリがございますが、これは特許審査基準上は「医療材料」という理解でよろしいのでしょうか。改正薬事法、平成14年改正、平成17年施行の薬事法では、医療機器が非常に多様でございますので、それに対応した定義を2条で設けて、安全基準の上乗せなどもなさっている中で、生物由来製品については細胞組織由来の医薬品、医療機器という定義が設けられていると思いますので、その点、特許審査基準等はどういうふうに考えたらよろしいのか、この2点目も教えていただければと思います。
○金澤委員長 どうぞ、お願いします。
○田村審査基準室長 まず、1点目の方ですが、「医療機器」という定義自体は、特許の審査基準の中に特に設けている訳ではございません。それで、審査基準の中では、医療機器というよりは、「医療目的」かどうかというところを判断することになってございます。
 佐藤委員の方からご説明のありました2つの案件につきましては、まず1つ目の方の案件については拒絶されたというようなお話でしたが、現実にはこちらにも書いてございますように、最終的に特許になったものでございます。
 こちらの方は、どちらかといいますと、医療機器において医師の行為とか、あと患者さんの人体への作用というところがクレームに載っているような場合については、医療機器の作動方法というふうに考えられませんので、特許できませんが、最終的にはそういう医師が係わっている部分とか、あと人体への作用というところがないということが確認された上で特許されたという状況でございます。
 それで、2つ目の事例の方、これは仮想事例でございますので何とも申し上げられないんですが、もしここに書いてある利用領域というところが介護者の支援機器というところが特徴という機器でございましたら、患者さんの体の方には直接作用はございませんので、全く問題なく「医療目的」ではないということで、こちらの方は特許になるものかなというふうに考えてございます。
 いずれにいたしましても、人体への作用というところは、産業上利用できない発明というところでは、現在特に医療目的の場合はメルクマールになってございますが、例えば美容目的で人体に係わるようなものとか、あと実際にお洋服ですね、そちらの方を仕立てる時に人体に係わるようなものというのは、特に医療目的ではございませんので、産業上利用できる発明ということになりますので、こちらの介護の支援機器ということであれば、介護者の体の方に作用はありますが、その点については特に医療方法の絡みという判断はなされないということでございます。
 あと、2点目の方でございますが、細胞について、薬事法で規定があるということでございますが、これについては前回もご質問がございましたが、細胞だから医療機器なのか、医薬品なのかというものではございませんで、その細胞を生体に入れることによって薬効を持つような場合であれば、薬事法上、医薬品という判断をされますし、例えば皮膚シートということで患者さんの皮膚を単に覆うようなもの、絆創膏に近いような位置づけで、薬効が無いようなものということであれば、医療機器というふうに判断されるということになります。そこは特に医薬品なのか、医療機器なのかというところは、細胞だからどちらというものではなくて、その細胞自体がどういうふうに使われるかというところでその辺の判断が違ってくるやに聞いてございます。
 特許法上も、審査基準の中では、医薬品もしくは医療材料の製造方法であれば、それを生体外で製造するものであれば、産業上利用できる発明であるというふうに言っておりまして、現実に医薬品なのか、医療材料なのかというところまでは厳格に区別しないで、そこは生体外で処置をするようなもの、そういうものについては産業上利用できる発明という形での整理をしておりまして、特に薬事法との絡みでの細かな定義というところは現実にはございません。
 以上でございます。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。林さん、よろしいですか、それで。
○林委員 はい。
○金澤委員長 佐藤さん、どうですか、最初の例は認められたというような話になっていて、どうなっているのかなと思いますが。
○佐藤委員 この議論は他でもそうなんですけれども、特許の請求の範囲の記載の仕方で権利になる範囲というのはあるんですね。ただ、今ここに挙げましたように、足関節の動きの時間経過を測定して、それに基づいて歩行状態を判定するというような上側のクレームの書き方になると通らないということがあるということを申し上げておりまして、今までもクレームの書き方で、方法を物に書きかえれば特許になるということはあった訳で、今回はそういう意味で書き方次第によっては特許にならない分野があるので、そこを明確にされたらどうかという趣旨で申し上げたということでございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。他にどうですか。よろしいですか。
 どうぞ、北川さん。
○北川委員 渡辺先生に伺いたいんですけれども、これは実際に用法・用量の部分で特許化できない場合、できないことによるデメリットは何が起こるんでしょうか。
○渡辺委員 今回お示しした例というのは、実は画期的な用法・用量でもちゃんと薬事法上開発しないといけないというような、また用法・用量を変えることによって開発できなかったものが開発できたという、新しい用法・用量に対するニーズの例でございまして、特許とはちょっと別の観点から述べさせていただきました。
 特許の観点からいいますと、実は1例目のイリボーに関しましては、用途が変わっておりますので、用途特許としては一応用量限定ではございますが、成立しているという状況です。
 2例目のキュビシン注の方は日本でも、審査の段階では拒絶されましたけれども、審判では一応登録になっております。ただ、厳密に今の審査基準を当てはめますと、既に抗菌剤としての用途は公知でありましたので、幾ら投与方法を変えたとしても対象患者は違いませんので、特許にならないという状況でございますが、審判の方で恐らく審査基準とは違う判断をされたというふうに理解しております。
○金澤委員長 どうぞ。
○田村審査基準室長 特許の審査について3つの事例、フォサマックも含めましてご説明をさせていただきますと、まずフォサマックについては、1日1回という投与が週1回ということで、用量の5mgが35mgになったというお話を前々回聞かせていただきましたが、こちらの方につきましては新規性という観点では、1回投与量が35mgになったという点で一応新規性ありというような判断になってございます。
 あと、イリボーについては、今ご説明がございましたが、20分の1の用量というところが特徴ということでございまして、こちらの方も1回投与量という観点ではそこが一応新規性があるというふうに審査官はどうやら判断して実際に特許になったという状況でございます。
 あと、キュビシン注の場合は、これは実際投与方法も少し変わっておりますが、投与方法が変わることによりまして、実際に通常ですとグラム陽性菌に効く薬ということでございましたが、特に強いMRSAのような黄色ブドウ球菌には用量を多くしないと効かないという状況だったかと思われますので、その投与方法を少し改良することによりましてMRSAにも効くようになったというところでは、対象患者群が変わったという判断で、こちらは渡辺委員の方からご指摘ございましたように、審査の段階では審査官がなかなか納得してくれなかったようでございますが、審判では患者群が変わる、MRSA適用になったというところを認めて、医薬用途発明を認めたというふうな事例でございます。
 いずれも、今お話ししましたのは新規性という観点でございますが、特許の場合は新規性だけではなくて進歩性ということで、技術的創作として特に優れているかどうかというところも見ないといけないということでございまして、先日以来、フォサマックについては色々ご議論になってございまして、渡辺委員の方から色々教えていただいて、実際に安全性を確認するという点では、非常に製薬会社さんもご苦労されているということでございますが、現実には技術的創作という点では先行技術との関係を見るというところになってございまして、こちらの方は先行技術に非常に近いものがあるというところで、アメリカでも実際にはCAFCの方で特許権が無効になって、その後日本でも一度特許にはしたんですが、特許が無効になったという次第です。こちらは進歩性なしという判断での特許が無効になったというふうに聞いてございます。
 そういう意味では、薬事法の用量を増やす点では非常に患者さんに負担がございますので、安全性という観点では細心の注意が必要かと思われますが、特許の世界ではそれよりは、むしろ先行技術との関係というところで新規性を満たして、なおかつ技術的創作で特に優れているかどうかという進歩性という観点を見させていただいて、一度日本もアメリカもヨーロッパも特許にした訳ですが、結局先行技術文献が出てきて、進歩性なしということで特許が無効になっているというふうに聞いてございます。
 以上でございます。
○金澤委員長 どうぞ。
○渡辺委員 ありがとうございました。
 田村室長のご指摘のとおりではあるのですが、ちょっとフォサマックに関してはコメントさせていただきたいのは、進歩性否定を示唆するような先行技術があったからということなんですが、これは確かに事実としては、そういう文献、殆どの人の目に触れないような非常に限られた刊行物に治験のアイデアが書かれたものが先行事例になって、進歩性が否定されてしまった訳ですけれども、もしそういう情報がきっちり管理されていて、いわゆるこういった治験をすることに関する情報がもし出ていないのであったとしても、現行審査基準に基づいて日本で審査がされていれば新規性で恐らく拒絶されていた可能性が高いというふうに捉えておりますので、今の説明の単に進歩性で拒絶と言うとちょっとミスリーディングがあるかなというふうに感じた次第でございます。ですから、そういう状態であれば、安全性や利便性の改善で進歩性は恐らく認められたんじゃないかということでございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。北川さん、どうぞ。
○北川委員 今の話を伺っていると、物の進歩性とか新規性には非常に評価が高いんですけれども、実は産業化するという観点からすると、安全性を高くするというのは非常に進歩性のあるものだと思います。ですので、ちょっと今の話を聞いていると、投与量とか投与方法を変えることによって、安全性が高まるのであれば、それを僕は進歩性があるという判断をしてもいいのではないかという感じがいたしました。
 それから、あとの2つのイリボーとキュビシンについては、実際問題として最終的に成立した訳ですよね。これは、それは特許庁というか、審査側の判断基準の曖昧さの問題じゃないんですか、ずばり申し上げますが、要は最初は拒絶されて、最初審判でもってこれは成立している訳ですよね。渡辺先生、そういう理解でいいですか。
○渡辺委員 後の方の問題は、先ほど確かにMRSAにきくから、患者層が違うよということで成立したということなんですが、確かにそれは事実ではありますが、実際にこの薬を患者さんに使う時には、MRSAだけではないんですよね。アメリカでの効能効果にも書いてますように、アメリカでの使用に関しては、用法・用量には特にMRSAに限定されておらず、耐性菌以外の一般的なグラム陽性菌、あるいは黄色ブドウ球菌に使えるという状態で許可になっている訳です。ですから、日本でも使うとしたら、やはりそういう限られたものじゃなくて、広く使えないと意味がないということになりますと、クレームの一部が確かに許可になったとしても、本来欲しいところが許可になっていないということにもなるかと思います。
○金澤委員長 どうぞ、田村さん。
○田村審査基準室長 実際に分かりやすくMRSAと私の方で言わせていただいたんですが、実際、特許クレームの方はMRSAという訳ではございませんで、グラム陽性菌であって、実際に投与する用量が通常よりはちょっと多目の用量であるという特定の仕方になっておりますので、MRSA以外のそういう用量が多くないと効かないような菌にも適用しようという形での特許権になってございます。
○金澤委員長 どうぞ。
○北川委員 そうすると、問題はないんじゃないですか。
○金澤委員長 最初のところで拒絶をされたというところが事実としては残っている。
○渡辺委員 新規性のところで拒絶されたというところがありまして、多分薬事上の許可を得て使われる時に、現行審査基準での新規性を無理やりクリアして成立になったクレームの範囲と実際に使われる菌種が必ずしも一致しない、あるいは一部しかとれてないということになるんですね、新規性のところで切られているために。恐らくそうだと思います。
○北川委員 今ご説明があったのは、そうじゃなくて、少し広げようというお話だったんですが、それでも限定されたということですか。
○渡辺委員 というふうにとらえております。
○金澤委員長 なかなかこれは難しい話ですね。問題の詳細は大体分かったような気がしますが、さて他に何か。
○北川委員 実は私が本当に聞きたかったポイントは、その後の話を聞きたかったんですけれども、これが成立した場合としない場合で何が変わってくるのかということですね。ただ、後発品、産業界としてという観点からちょっとお話を伺いたいんですが、例えば後発品の開発のことだとか、そういったことに影響があるのかとか。
○渡辺委員 この場合は用途特許でございますので、物質特許が切れると後発品というのは、一応原則として承認されます。ただ、まだこうした用途特許など有効な特許があるうちには、後発品会社がリスペクトすれば、後発品はその適応症に対しては後発品を出すことができないと、あるいは売らないということになる訳ですね。
 そういう意味で、先ほど来申し上げておりますように、こういう新しい用法・用量で開発したとしても、研究開発、臨床開発というのをして、かなり投資をするものですから、特許がないとすぐに後発品が出てしまって、ビジネスがなくなるというのでは、そういったものに対する開発に投資すら行わなくなりますということで、特許的な保護が必要であるというのは繰り返し述べていることであります。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 もっと伺いたいことがありますが、大分予定の時間が過ぎておりまして、次の資料3をご説明して、また皆さんの自由討論に戻りたいと思います。資料3という大きな紙をご覧下さい。3枚ぐらいあるでしょうか、これは論点整理であります。ここまでのご議論の内容をまとめてありまして、これからどういう点をさらに突っ込んで議論すべきか、ということを事務局から説明をしてもらいたいと思いますので、内山さん、よろしくお願いします。
○内山事務局次長 まず、1ページ目でございますけれども、これは3つ項目がございますが、現行の審査基準においても特許対象になると考えられますけれども、その点必ずしも明確ではないと見られて、基準における明確が必要と考えられるというものでございます。
 2ページ目でございますけれども、現行の基準の見直しなどによりまして、特許対象の拡大が必要ではないかという意見が出されている事項でございます。特に意見が分かれている項目につきましては、主な意見、そして論点というものを掲げてございます。資料全体といたしまして、それ以外の項目については現状と課題・方向性ということを整理しております。
 また、3ページ目でございますけれども、その他の論点として、前回弁理士会のプレゼンにおきましてもご指摘がございました細胞の特定の困難性に係る論点でございます。さらに右側には、この委員会の場、あるいは別途事務局が研究者の方々からヒアリングをした中で指摘のございました先端医療特許の取得にかかわる問題全般について、支援方策の課題をまとめたものでございます。
 それでは、1ページ目から簡単にご説明をいたします。
 まず、既存物と既存物の新規な組み合わせということで、この委員会でもご報告がございました物理手段として磁気発生装置、あるいは赤外線の照射装置と薬剤や細胞といった生化学手段との組み合わせ、こういったものにつきましては、全体として物の特許として取り扱われるということから、特許対象でございます。例えば、下図の物理刺激を用いたDDS等でございます。しかし、こうした組み合わせ発明につきましては、審査基準に明記されてないということで、これ以外にも細胞等の生体由来材料と足場材料や成長因子等の薬剤との組み合わせといったものが存在する訳でございます。
 課題といたしましては、下にございますように、様々な組み合わせ物の発明、物理手段と生化学手段の組み合わせ、生体由来材料と足場材料との組み合わせといったようなものがものの発明として特許対象となるということを特許可能な例示を豊富に示しながら、審査基準に明記すべきではないかという点でございます。
 2番目の項目、下でございます。細胞や細胞由来製品等の生体由来材料の用途に特徴のある発明でございます。
 現状に書いてございますように、細胞自体、あるいは細胞由来製品自体は物の特許として対象になってございます。その用途に特徴のある発明につきましても、物の用途発明として表現するにことにより特許対象でございます。下の例にございますように、口腔粘膜上皮細胞培養シートを角膜移植用や、食道管の摘出後の閉塞予防治療といった異なる用途の発明がございます。
 iPS細胞の樹立を契機といたしまして、再生医療に係る研究開発が非常に活発化をしており、今後様々な細胞が人工的に作成をされて、その用途発明も数多くなされることが予想されておりますけれども、こういった生体由来材料の用途発明が特許対象となるということは、審査基準に明記をされておりません。したがって、下の課題にございますように、こういった細胞、あるいは細胞由来製品といった生体由来材料に関しましても、その新しい用途については用途発明として表現することにより、特許対象となることを例示を示しながら審査基準に明記すべきではないかということでございます。
 次に、生体外で行われる細胞等への処理方法に特徴のある発明でございます。
 現状につきましては、資料3別添1を見ていただきますと、特許審査基準の抜粋が書いてございます。この1ページ目の部分がこの項目に関する審査基準でございます。資料3とともにご参照いただければと思います。
 同一人に治療のために戻すことを前提としている採取したものを処理する方法、例えば血液透析方法というのは、特許対象外とされております。下の図の@の部分でございます。ただし、このうち人間から採取したものを原材料として医薬品、又は医療材料を製造するための方法については特許対象となっております。下の図のAの部分でございます。Aの部分は自家由来の医薬品、例えば血液製剤などでございますし、又は医療材料、培養皮膚シートなどでございますが、そういったものを製造するための方法は特許対象ということでございます。
 現状の下の丸でございますけれども、今後の再生医療のかぎを握る技術と言われておりますiPS細胞を神経細胞等の組織細胞に分化誘導する方法であったり、採取された幹細胞や分化誘導された組織細胞の分離・純化方法というのが現行の運用においても特許対象である訳でございます。しかし、審査基準にはその旨明示されていないということで、今後の課題といたしましては、今後出現する技術が特許対象であるか否か、研究者の方々にも予測できるように、自家由来の生体材料を体外で処理する方法のうち、どのような発明が医薬品又は医療材料を製造するための方法に該当し、特許対象となるのか、事例の追加等によりまして、その判断基準を明確化すべきではないかという点、あわせて、細胞の分化誘導方法や分離・純化方法などが特許対象であることを審査基準に明記すべきではないかという点でございます。
 次に、2ページ目でございます。
 このグループは特許対象の拡大にかかわるものでございまして、左の細胞や薬剤の使い方に特徴のある発明でございます。
 これも資料3別添1の特許審査基準の抜粋の2ページ目に関連の部分がございますので、ご参照いただければと思います。2ページ目から3ページ目にかけてでございます。
 投与間隔、投与量などの治療の対応に特徴のある医薬発明につきましては、ここに記された(a)又は(b)のように、患者群が明確に異なる場合、そして適用部位が異なる場合、これは医薬用途が相違すると認められる場合ということで、特許対象になっております。
 この上記2点以外の時間、手順、投与量、移植場所等の薬剤や細胞の使い方に特徴がある発明につきましては、新たな用途の発明ではなく、方法の発明と考えられるということで、特許対象外になっております。
 先ほど冒頭渡辺委員からご説明がございましたように、骨粗鬆症治療薬フォサマック錠のように、新用法・用量医薬の例がございます。フォサマック錠のように、既存医薬の投与間隔、投与量の工夫によりまして、図にございますように、患者のQOLを向上したり、副作用の低下ということなど、これは通常行われている工夫の範囲を超えて、また顕著な効果があったとしても、現行の基準では特許対象とならないという問題がございます。
 これに関しまして主な意見といたしましては、こうした用法・用量の特徴のある医薬の発明を保護するということが新用量・用法に係る医薬の開発にインセンティブとなるという点。それから服用に際しての患者の負担が大きく軽減される医薬の発明や、患者さんの身体的負担が低減される、そういった再生医療に係る発明が促進されるということであれば、QOL向上の観点からは特許対象にすることが望ましいというご意見。また、世界医師会宣言に照らせば、全般的に医学的手法の特許対象化というのは認めるべきではないということ、その具体的な内容としては医療のフリーアクセス、患者の選択権、医師の裁量などに悪影響がないようにすべきだという点。最後に患者群、適用部位の他に上記現状のところの(a)、(b)の点でございますけれども、方法的要素を物の発明の特定事項として評価するように審査基準を改訂する、そういった余地もあるのではないかというご意見をいただいております。
 論点といたしましては、用法・用量に特徴のある医薬などを特許とした場合に、研究開発にインセンティブを付与していくということは、患者のQOL向上にとって有効であるのかどうかという点。また、処方に関する医師の裁量の自由にどういった影響をそういった場合に及ぼすのか、また仮に負の影響があるといった場合には、どのようにすればそういったものを低減することができるのかという点でございます。
 次に、右の機械・器具の使い方に特徴のある発明でございまして、これはやはり資料3の別添1の4ページ目をご参照いただければと思います。
 例えば、カテーテルを用いた血管中の閉塞物の除去の仕方や、腹腔をつり上げて手術空間を作る方法などの医師による人体に対する機械・器具の使用方法については、特許対象外となってございます。
 主な意見でございますけれども、こういった特許対象化をするとともに、医師の行為を特許権の効力の対象外としながら、企業に対しては間接侵害を問えるということにすれば、患者の治療機会の均等や医師の裁量、医療のフリーアクセス、そういったものへの悪影響は防止をできて、かつ、研究開発の促進が図られるのではないかという点。あるいは特許対象化によって技術の公開を促す、それによる開発の促進ができるという点。また、世界医師会宣言に照らせば、医学的手法の特許対象化は認めるべきではない、また、機械・器具の使い方に特徴のある発明というのは、医師が行う研究の中でなされるべきものであって、特許対象化して独占させることになじまないという意見。最後に、間接侵害をめぐる紛争が多くなることへの懸念というご意見もございます。
 論点といたしましては、医師に対しての権利行使をしないということを前提とすることの是非。そして特許対象化した場合には産業界におけるメリットはどういったものがあるのだろうかという点。また、特許対象化することによるデメリット等、こういったものを比較考慮した場合に、特許対象化はすべきかどうかということでございます。
 その次でございますけれども、最終的な診断を補助するための人体のデータ収集方法の発明でございます。
 これも資料3の別添1のページ4に特許審査基準の関連部分がございます。現状にございますように、X線CT装置とかMRI装置の断層画像撮像の仕組み、原理などの医療機器を用いた測定方法の発明につきましては、人間を診断する医療方法であるとして特許対象外になってございますが、米国、豪州だけではなくて、欧州等、他の先進諸国におきましても、こうした最終的な診断を補助するための人体のデータ収集方法につきましては、特許対象としてございます。
 そういった点から、課題にございますように、先進諸外国の特許制度と調和をさせていくということで、現在特許対象外となっております最終的な診断を補助するための人体のデータ収集方法に係る発明につきましては、新たに特許対象としてこの旨を審査基準に明記すべきではないかという点でございます。
 3ページ目をご覧いただきたいと思います。
 その他の論点ということで、細胞の特定の困難性、これは先般の弁理士会のプレゼンの中でもご指摘がございましたけれども、資料3の別添2にその関係の資料がございます。細胞組成物を新規適応症の治療目的に用いることに発明の特徴がある場合、治療剤等の「物」の用途発明として表現することにより特許対象とすることができる訳でございますが、ただしその前提として細胞組成物が「物」として明確に特定される必要がございます。しかしながら、実際に治療のために有効な細胞を同定して既知の細胞と区別するということが困難な場合がございます。
 別添2の参考1に間葉系の幹細胞の例がございますけれども、体内には様々な間葉系の幹細胞が存在をしていることが分かっていて、これは採取された組織や採取方法などによって得られる細胞が発現する細胞マーカーは異なっているということで、なかなか特定のマーカーによってこの細胞を定義するというのは困難だそうです。
 資料3に戻っていただきます。図を見ていただきますと、採取された原料Xに処理方法Aを施して細胞のYを得て、これを移植して疾患Zの治療をするという、こういう図でございます。この図示した中で処理方法Aや原料となるX、また被生産物となっております細胞Yというのは、公知のものである訳でございますけれども、細胞Yを疾患Zの治療に用いるという点が新たな発明の特徴があるという、そういうものでございます。しかし、この細胞Yの特定が先ほどのように困難である場合、どのように考えるべきか、というのが論点でございます。
 課題にございますように、原料とか処理方法、そして用途が確立されている発明については、原料や処理方法が公知であっても用途が新規である場合には、被生産物に用途限定を付したものの生産方法の発明として下記の例のように特許対象とすべく、審査基準に明記すべきではないかという、そういう課題がございます。
 最後に4番目でございますけれども、特許取得への支援方策の議論でございます。
 現状、第一線の研究者の皆様方におきましては、我が国において医療方法は特許にならないという、こういう基本的な理解はある訳でございますけれども、他方、物の発明、あるいは物の製造方法の発明、あるいは医療方法に該当しない方法の発明、そういったことによって、実際上は特許取得できるという個々の技術について、そういう理解が必ずしも十分じゃないという点。それから先端医療分野におきます特許の取り扱いは、この委員会でも色々議論がございましたが、諸外国の間でも運用が異なっておりますので、海外での色々な情報が欠如しているという点。そしてまた研究者の皆さんが知的財産について相談できるような体制が整ってないという点。あるいは、先端医療技術や海外の特許制度の運用に詳しい専門家が不足をしているという点でございます。
 以上の点を踏まえますと、下の課題にございますように、事例を豊富にすることも含めて、審査基準を分かりやすく明確化をする点。そしてまたそれの周知をすべきではないか。また、審査過程におきましても、できるだけユーザーフレンドリーな審査を推進すべきではないかという点。それから海外での権利取得の手法等に関する情報を広く提供すべきではないかという点。また大学等におきまして、研究者の皆さんが知財について相談できる体制、例えばネット上での相談サイトの開設等々を整備すべきではないかという点。最後に先端医療分野の技術、特許制度に詳しい知財の専門家を育成すべきではないかという点。以上でございます。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 だんだんまとまってきたような気はいたします。先ほどお二方からお話をいただいたものも今まとめたものの中にありますので、この資料3を中心に少しご議論をしていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、この資料3を基にしまして、まずは1ページ目、審査基準における特許対象の明確化についてです。よく伺ってみると、特許になるんだという訳だけれども、何かどうも明確化されてないというようなものが幾つかある訳でありまして、その例を3つほど出してもらった訳です。
 いかがでしょうか、この件に関して、つまり審査基準における特許対象の明確化についてということで、まずはご議論いただきたいと思いますが、どうでしょうか。
 林さん、どうぞ。
○林委員 この3つの場合につきましては、いずれもこれまでの話の中で今、委員長もおっしゃられましたとおり、特許庁によれば現行審査基準においても特許対象であるとおっしゃられるにもかかわらず、一般にはそのように理解されてないということが明らかになった訳ですから、是非ここに書かれておりますように、特許可能な例示を豊富に示しつつ、審査基準に明記するということをお願いしたいと思います。
○金澤委員長 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 どうぞ、片倉委員。
○片倉委員 ここのページに結構私が提案した内容のものが含まれていて、この時にお願いしたのは審査基準の明確化と事例を出していただきたいということを提案させていただいて、基本的にはそのような方向で考えましょうということですので、私の方から反対する理由は特に無いです。
 具体的に組み合わせのところと再生にかかわるところというのは、特許庁の方からは事例がありますよと言いつつも、具体的な本当の事例は無かったと思いますので、仮想事例でもよろしいのですけれども、より明確な事例が必要ではないかということと、再生のところは用途特許についての考え方を早い時期にちょっと整理していただければ、ありがたいなというふうに思っています。
 以上です。
○金澤委員長 分かりました。
 他にそんな必要ないというようなご意見は無いだろうと思いますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、この部分に関しては先ほどからお話がありましたように、最終的にどういう形になるかは任せることにしますけれども、例示を付して明確化をしていただきたいと思います。
 本来ですと、1の次は2でありますが、ちょっと議論が長引く可能性がありますので、一番最後の3ページ目の4、先端医療特許の取得への支援についてに行きたいと思います。1、4、3、2と行きます。お許しください。
 従って次は4番の先端医療特許の取得への支援についてです。ご議論いただきたいんですけれども、先ほどもありましたように、よく聞いてみれば、特許になるとか、あるいは最初から話にならないとか、色々あると思います。先ほど内山さんからも説明ありましたように、バックアップ体制といいましょうか、支援が十分でないように思われるという訳ですね。この辺についてどうでしょうか、皆さんご意見いただけませんでしょうか。
 どうぞ、中内さん。
○中内委員 今までのお話を聞いていると、かなり専門分野でのせめぎ合いというか、微妙なところで線引きをしているのであって、私にはなかなかついていけないと、これは非常に現実的に困っていることですので、発言させていただきます。
 大学が法人化してから色々なシステムが整ってきて、現在では我々は何かあったら発明届けを出して、あとは事務的にやっていくという、一応そういったシステムはできているんですが、ところが我々にとって何が発明なのかがよく分からない。そういう相談するところも、東京大学ですらあまり無い訳ですね。殆ど無いに等しいんですね。ですから、もし知財の問題でこういった新しい先端医療がさらに展開していくということを考えるとすると、実際の研究者がこういった発明ということに対して、もう少し理解をできるような状況とか、あるいはそれをバックアップするシステムというのは、非常に重要であるというふうに考えます。
 私は今から20年近く前にスタンフォード大学に留学していたんですけれども、スタンフォード大学では何カ月かに一回、ご用聞きみたいに弁理士の人が回ってきて、色々情報を集めて、既にその時期ですら行われていた訳ですので、こういった知財に詳しい目利きの人が研究室をもし回って、ご用聞きなんですけれども、いい特許を見つけるということができれば、非常にいいと思いますし、そういったプロセスを通じて、研究者の側も発明、特許性というのはどういうところにあるのかということを勉強できると、そういうようなシステムがあると非常にいいなというふうに、ただ圧倒的に人材が足りないかもしれませんので、そこら辺も含めて色々な課題が残されていると思います。
○金澤委員長 ありがとうございます。
 基本的には、サポートするというお話をいただきましたが、他にどうでしょうか、ご意見ございますか。
 どうぞ、佐藤さん。
○佐藤委員 やはり知財の専門家というのは弁理士なので、我々の役割が非常に大きいというふうに思っております。ただ、今まで医療関係の特許というのは、なかなか数も少ないし、特許にならないということもあって、なかなか実際に扱う人が少なかったということもあったと思うんですね。ただ、今回こういう検討をされて、明らかに非常にクレームのテクニカルな部分が大きく左右するということは明らかですので、そういう意味では専門家である弁理士がもっとしっかりした役割を果たさなきゃいけないということは、明らかだと思います。
 弁理士会の中では、今、バイオ特許委員会というのがございまして、この中ではこの前ご報告したお医者さんであって弁理士というような方も含めて、専門家が集まって研究をしております。これらを基盤にして、大学等の研究を支援していく体制をもっと強化していかないといけないなというふうに思っております。
○金澤委員長 ありがとうございました。他にどうですか。
 どうぞ、渡辺委員。
○渡辺委員 佐藤先生のところの弁理士会さんと一緒になって、今製薬協の方でも特にiPS細胞の研究に関しては、色々な大学の方でこういった知財に関して十分理解されていない、あるいはアメリカ等の海外での権利化等に関して、十分にご理解いただいてない点があるかもしれないということで、弁理士会さんと一緒になって各大学を回っておりまして、特許出願戦略に関して色々なことをお教えする、特に大学の方から要望があれば、具体的な相談に乗って、どういうふうに権利化していったらいいかというようなことを今1年間限定でございますが、そういった活動もしておりますので、もしこうした活動の存在を広めていただいて、うまく活用していただければ、多少でも役に立つかなというふうに思っております。
○金澤委員長 iPS細胞に関してだけですね。
○渡辺委員 現在はiPS細胞に関してだけでございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 他にどなたか。
 どうぞ、林さん。
○林委員 この委員会での研究者の方のプレゼンにおいても、特許取得への支援体制が必要だということは、非常に強くアピールされていたと思いますので、是非必要だと思います。それについて弁理士会や製薬協がボランティアでなさっているというのは、本当に大切なことだと思いますが、やはり単年度でない予算措置をとることが必要だと思います。特許取得のみならず、先端医療分野における開発現場の環境を維持、管理というか、もう少し待遇をよくするための予算措置をとらなければ、先端医療開発で日本がこれから伸びていくということは期待できないと思います。その意味でこういった研究補助の予算は、単年度予算の弊害が大変あるように感じておりますので、予算措置のあり方も含めて、この4番のところはご検討いただきたいと、ちょっとここの場から外れてしまうかもしれないんですが、お願いしたいと思います。
○金澤委員長 大変大事な、しかし難しいかもしれないことをおっしゃった。
 どうぞ、中内さん。
○中内委員 先ほど発明性がどこにあるか分からないという、そこでアドバイスが欲しいと言っていましたけれども、もう1点、最近は発明届けだけじゃなくて、明細書を書く訳ですけれども、弁理士さんが殆どやってくれるものと思うとそうではなくて、我々はかなり専門性が高い弁理士に頼んでいると思うんですけれども、それでもなかなか最先端の技術についていけないようで、我々の大学院生がかなりつきっきりに、明細書に関してもアドバイスをしないと明細書が書けないという、そういう情けない状況でありまして、我々にとりましてはすごく負担が多くなっているんですね。
 大学院生が儲かるかどうかも分からないようなことに、それより自分の論文を書いた方がよっぽど大切なのに、かなりの時間を費やさなくちゃいけないということもありまして、弁理士さん自身の専門性のブラッシュアップといいますか、そういうこともすごく大事なので、確かに制度的に例えば過去に生物学の研究をしていた弁理士さんの数を増やすような、そういうようなことが非常に望まれるのではないかというふうに思います。
 ちょっと補足させていただきたいと思います。
○金澤委員長 なるほど。
 一言あるようですね。佐藤さん、どうぞ。
○佐藤委員 実は弁理士の中でバイオの弁理士が一番数が多いんです。しかし、バイオの出願自体、数が非常に限られていて、なかなかバイオの弁理士が活躍できる場がないというのが現実でございます。
 さらに、その専門性の点については、確かに最先端の世界トップの研究者と同じレベルの弁理士というのはなかなか難しいのが現実です。ただ、我々弁理士に一番重要なことは、最先端の技術をいかに理解して、その発明を抽出し、それを権利として構成するかというのが弁理士の仕事でございます。そういう意味では、研究者と我々権利化をする弁理士との共同作業であって初めていい権利が作れるというふうに思っております。そういう意味では、是非研究者の先生方と我々がしっかりコラボレートして、いい権利を確立できるように我々も努力していきたいと思いますが、是非研究者の方にもそういうご理解をいただきたいというふうに思います。
○金澤委員長 ちょうどいい機会なので、大まかに教えていただきたいのですけれども、かつては非常に少ないと言われていた弁理士さん、今大体どれぐらいおられて、どれぐらいのパーセンテージがバイオ関係なんですか。
○佐藤委員 今、弁理士は大体7,800人、8,000人弱でございます。この8,000人弱になったのはここ5年間ぐらいで倍ぐらいになったと言っていいと思います。その中でバイオ系の人が今ちょっと正確に数字、パーセントは分かりませんが、我々が毎年の合格者の専門性を見ると、化学系、バイオ系が非常に多いというふうに私はデータを見たことがございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 この3ページの4の一番下に特許制度に詳しい知的財産の専門家を育成というのは、一つはそれを含んでいるのでしょうね。
 どうぞ、田村さん。
○田村審査基準室長 特許庁の取り組みを簡単にご紹介させていただきますと、総合科学技術会議の方から、バイオ分野の技術を大学の先生方たちが特許出願しようと思った時に、なかなか分かりにくいというようなご意見がございまして、昨年度からなんですが、昨年度は全国の大学12カ所、それで本年度は14カ所、ライフサイエンス分野の審査基準ということで、大体大学の先生方たちを中心に、あとTLOの皆さんも含めまして説明会をやってございます。それで、来年度も同じような取り組みをやろうというふうに考えてございます。
 あと実際に特許出願をされますと、地方の大学の先生の皆さんはなかなか東京に出てこれないということで、審査官が出張審査をやるということで、例えば熊本大学ですとか、九州大学ですとか、京都大学に現実に審査官が赴いて行って、実際に教授の先生とフェース・トゥ・フェースで、こういうふうに補正していただければ特許になり得ますとか、もし必要があればそれ以外のところも少しご相談をお受けできるというような体制を組んでございます。
 以上でございます。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 それぞれにお考えいただいているようです。何かご質問は?
 どうぞ、片倉委員。
○片倉委員 企業の場合は研究者といっても、基本的には色々ケース・バイ・ケースの場合があるのですけれども、テーマを考えた段階でまずアイデア特許を考えろ、外部発表の前には必ず権利化しろと、企業の場合、必ずそういう形になるんですけれども、研究の先生方というのは、どっちかというと権利化よりも発表することのプライオリティーが高いので、だから今、中内先生がおっしゃったように、それ全部先生に委ねるというよりも、何らかの支援をしっかり支援体制を整えない限りは、何でも全部先生方にどんどん寄せていくというのは、難しいなと、先生方が明細を書くのは非常に大変だなという、企業だとある程度それは会社の活動の中でトレーニングはしますけれども、研究の先生方にそこまでの負荷をかけるというのは、なかなか難しいのではないかなというように思います。
○金澤委員長 ありがとうございます。
 他にいかがですか。どうもありがとうございました。
 それでは、この4番の先端医療特許の取得への支援については、ここに課題というところにございますように、今既に特許庁のように頑張ってくださっているところもあるようでありますけれども、まさか出張してやって、そういうふうにやってくれるとは思わなかったのですが、そこまでやってくださっているようですから、今後もどうぞお続けいただいて、さらにフレンドリーになっていただきたいということがあります。他の組織ではそれなりにこれからも林さんがおっしゃるように、かなり根本的な問題もあるんですけれども、できるだけのことはどうぞやってもらいたいと思います。 それでは次の左側の3番、特許対象に関するその他の論点というメーンのところにいく前の話でございますが、この3.の部分に関してご意見をいただきたいんですが、いかがでしょう。
 何かこういう例をきちっと出して、これは審査基準には明記されてなかったものを明記した方がいいのではないかという意見だと思いますけれども、どうでしょうか。
 どうぞ、佐藤委員。
○佐藤委員 この課題の一番下に例という形で表現されておりますけれども、弁理士会のプレゼンのときには、こういう表現の仕方ではなくて、むしろ細胞Yを人体に移植して治療するというような観点でのプレゼンだったと思うんですね。それがここの例のところでは、そういう人体に治療するという形ではなくて、むしろこの人間から取得した細胞組成物Xに処理法Aを施して組成物を取得することからなる外組成物を有効成分とするZ治療剤の製造方法という方法で書きかえれば、医療行為から離れたところで権利化できるのではないかという一つの案だろうと思うんですね。この辺も医療行為を特許にするかどうかという本質的な問題だけではなくて、可能な範囲でどこまで医療行為に入らない形で権利化できるかという方策も検討すべきではないかというサジェスチョンだろうというふうに思っております。
○金澤委員長 おっしゃるとおりだと思いますね。
 これは医師会の先生、どうですか。
○羽生田委員 非常に細かい話でよく分からないんですけれども、いわゆる物としてこういった形で認められるという書き方で可能なのであれば、大きな問題にはならないというふうには理解するんですけれども、ただその書き方によって、本来取得したかった特許のものと違った形になるということが起こり得るのかなというところが少し心配するところがあるんですけれども。
○金澤委員長 その辺はどうですか。
 どうぞ、永井委員。
○永井委員 この辺のところはなるべく色々な資金が入るようにする必要があります。再生医療用の細胞の調整は、セルプロッセッシングセンターという特別な施設の中で行うように決められています。その維持に非常に莫大なコストがかかります。そうしますと、何らかの特許を与えておきませんと、細胞治療がこれからできなくなる可能性があります。具体的にどういう形にするかは議論が必要ですが、なるべく細胞の調整法に対する特許を認めるという方向で議論すべきだと思います。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 どうぞ、林委員。
○林委員 今ご発言があったように、実際のニーズとして、この部分の特許を何らかの形で認めていかないと、新しい治療に遅れてしまう、開発インセンティブは保護していかなければいけないというところは、認められるのではないかと思っております。そういった意味では、それでは医師の行為を拘束せずに特許対象化を認めていくためには、どういった形があるかというと、欧州でスイス・タイプ・クレームとして確立されているような、こういったクレームの形であれば、物としての延長でありますし、3の例にある「〜とする物の製造方法」といった、この書き方による保護というのも、メリットとリスクとの両方を考えたときのあり方としては、よろしいのではないかと考えています。
○金澤委員長 ありがとうございます。
 どうぞ、長岡委員。
○長岡委員 単純に私は質問なんですけれども、そもそもこういう新規用途の開発をする人が誰かという、その人が保護されるのかどうかという、このエンフォースメントは結局製造方法ということですから、さっきのセルプロセッシングセンターでこういう細胞を作った方が権利侵害の対象になるというか、でも実際問題、しかしこれはZというのを売ることで初めて侵害になるのか、その辺がエンフォースメントが一体どうなるのかなというのが必ずしもよく分からないところがあって、その辺をちょっと教えていただけると、この特許の侵害というのが誰が侵害したということになって、それをどのようにエンフォースされるのかというところがもし分かれば教えていただきたいなという基本的なことです。
○金澤委員長 質問の意味が難しいので、よく分からない。分かりますか?
○佐藤委員 製造方法でございますので、当然この実施行為は製造方法です。したがって、権利侵害の対象は製造するところです。それから、また製造された物でございます。
○長岡委員 ただ、研究開発をする人は、この製造する人じゃないということになる。
○佐藤委員 そういう意味では、実際にお使いになるお医者様はこの製造行為にかかわってないという段階では、エンフォースメントの直接対象にはならないという、そこが製造方法という表現の仕方のところの一つのミソだと思います。
○金澤委員長 どうぞ、北川委員。
○北川委員 今の問題と非常に関連性があるのは、再生医療の産業化を今後どういうふうに進めるかという大きな話とちょっとリンクするので、一言お話ししますと、現状は大学の臨床研究という研究の一部の中で今治療が行われているので、そこで権利侵害ということは現実問題としては起こってないと思うんですね。先ほどおっしゃられたように、研究の一分野であるということで、権利の侵害には及ばない。
 ただ、実際にこれをビジネスとして展開する場合には、我々のような企業がこの物を作って、薬事法上の承認を取って、医療機器とか医薬品に開発をして販売をする訳ですね。そうすると、その出来上がったものについて特許を取り、製造プロセスについてパテントを取りますと、他社がそれに追随できなくなるというところでインセンティブが働くというところは、いわゆる産業に持ってくるところでのメリットになると思うんですね。
 それで、ここで一つ議論になるのは、ここと最初に1番のところで私は1番の左側の一番下のところもポイントになると思うんですが、特定の細胞というところなんですけれども、今大学の中でやられている臨床研究と薬事法上で審査をされる医療機器、医薬品との間には、求められる物の品質だとか、物の規格という品質管理にかかわる部分で非常に大きなギャップがあります。臨床研究のレベルで持ってきたデータで人に投与するものでは、とても製品として許認可を受けることができないので、私はこの分野で要するに特許化できるものというのは、そのものをかなり限定して特定できて、有効性もある程度証明できたものに限るべきだという意見を持っているんですね。
 例えば、非常に簡単な例を申し上げますと、間葉系の幹細胞をとって、動物のある皮下でも構わないんですが、そこへ細胞の塊を移植したとします。それを何日かで培養していて、その塊を取り出します。幹細胞なので、生体の中に入れると色々な影響を受けて、多分化能を持っていますから、その中には骨系の細胞もできるでしょうし、色々な細胞ができる訳ですね。それを切片を作成して、染色で染めてみたら、多分色々な細胞が出てくる訳です。
 そうすると、幹細胞はマルチパフォーマンスを持って、全ての色々なあらゆる臓器に変異する可能性があることが示唆される。この現象をパテントとして誰かが押さえた場合、これはその細胞を純化して、例えば皮膚の細胞を作るとか、そういったことにスペシフィックにすごい高度な技術で培養工程を工夫しても、工程は特許がとれるかもしれませんが、根本の幹細胞を使ってこういうものを作るという物のところは、特許が取得できない。私はこういうレベルの研究は特許化を防ぐべきだと思っているんですね。余りにも広過ぎる。ですので、産業上の利用を考えるのであれば、ベースになるのは医薬品や医療機器として開発できるグレードのものができ上がっているかどうかと、品質とか有効性について、そのレベルのものを特許として認めるということで持っていったらどうかなと。
 そうすると、多分先生方がやっている研究の段階では、そんなに強く特許を意識しなくても、ある程度製品といいますか、医療行為として進んできた段階で特許化できるのであれば、私はそれで産業の促進には十分なメリットがあるんじゃないかというふうに考えております。
○金澤委員長 なるほどね。
 どうぞ。
○佐藤委員 私はお医者様でもないし、医療界の直接の当事者でもないので、抽象論的に申し上げますが、通常我々発明の特許を見ているときに、今、北川委員のご心配のような従来その業界において知られていた常識に基づいて、容易に考えられるものは特許にならないんですね。したがって、殆どのものがよっぽど特徴が顕著に出てこない限り、特許にはならない。そういう意味では、北川委員がご心配されるようなものは殆ど特許にならないというふうに言っていいんじゃないかと思っております。
 先ほど来、お話があった、渡辺委員の方の話も極めてスペシフィックな特徴があって、従来から考えられないという飛躍があって初めて独占権が与えられますので、通常はお医者様が今までやってきたような常識でやられる、また、それにちょっと手を加えた改良していくというようなものは、まず特許にならないので、余りそこは心配しなくていいんじゃないかなというふうに思います。
○北川委員 先ほどの幹細胞の話は非常に分かりやすくお話ししたんですが、我々は実は角膜上皮の口腔粘膜を使ったもので角膜上皮の再生をする材料の開発をやっているんですけれども、そこで先行特許で十分な知見がないけれども、応用可能ということで侵害に値するようなものが先行特許としてあるんですね。
 でも、そのレベルというのはどのぐらいのものをやっているかというと、培養してそういう可能性があるという示唆をしている程度のものである。でも、後発で我々がそこをそのヒトへの移植まで成功していますから、そういうものを出しても先行の公知があるというと、これは私はこの業界の中の常識からすると、明らかにレベルの違う研究なんですよ。ヒトに移植ができるレベルにいくというのは非常に大変ですから、そういうところのレベルの話をちょっとしたんですけれども、しかし多分これは心筋だとか、他の組織にも再生医療関係というのは、動物実験でうまくいっているものはいっぱいありますけれども、今これからヒトに応用した段階で、どこまでその有効性が証明できるかというのは、私は全然次元の違うレベルの話だと思うので、こういったところの審査をある程度非常に専門性が高くなりますけれども、少し厳しめに見ておいた方がいいんじゃないかというふうに思います。
○金澤委員長 大変大事なご指摘で、田村さん、ちょっとお願いします。
○田村審査基準室長 北川委員のご指摘はごもっともというところかと思われます。実際に幹細胞も10年以上前から幾つか出願がございまして、その濃縮度がどのぐらい上がっているかというようなところがむしろ特徴で、実際に産業化できるぐらいの濃縮度の上がったものというようなところになってまいりますので、審査官はどこからが産業上本当に使えるようになったものかというところを見極めて、進歩性という判断をしているということになろうかと思われます。
 弁理士会の方からもご指摘があったんですが、審査官が厳しいというふうに言われておりますが、現実には進歩性を見極めるために、本当に先行技術とどこが違うんですかというご指摘をさせていただくということです。一番良いのは、そういうマーカーがはっきり違いますというところで区別をつけていただいた上で、さらに実際に医療の現場でこんな効果がありますと言っていただければ、大手を振って進歩性を認めて特許することができるんですが、現実は弁理士さんでもなかなか明細書にその特徴を表現できないというところをさらに審査官がそういう進歩性を満たしているかどうかという判断をするというのは、またさらに難しいところになってくるというところでございます。いずれにしましても、難しいことではございますが、いい加減にはできませんので、十分出願人や弁理士の皆さんとコミュニケーションをとりながら、適切な審査をしていくというのが肝要かなというふうに考えてございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 さて、どうでしょうか。
 どうぞ、林さん。
○林委員 これまでの議論の中で新規性、進歩性という言葉が出てきていますが、特許審査基準上、我々はまず入り口のところで新規性があるかどうかというところを議論している訳でして、私も先ほどからスイス・タイプ・クレームでもいいじゃないかとか、審査基準の明確性の点で賛成だと申し上げておりますのは、新規性の入り口のところが今非常に狭くなっているのを広げるという意味で申し上げている訳でして、実際上、その後の進歩性のところでは、北川委員がご心配されているようなところは、十分、私もきっちり線を引いて審査されるべきだと思っておりますし、またその進歩性判断上の基準もなるべく明確にしなければいけないと思います。アメリカでも、プロセス特許や方法特許については、抽象的なものについて広く特許を認め過ぎると、その弊害が非常に大きいということがまさに議論になっている訳です。この問題については、新規性の問題と進歩性の問題を切り分けて、今我々は入り口の議論をしているというところでお考えいただければと思っております。
○金澤委員長 確かに、非常にシビアなお話ですね。
 どうぞ。
○北川委員 今から約3年、4年、5年前、再生医療がこの世の中に細胞を使ったこういう材料の治療が始まった初期のころは、まさに入り口のところが非常に広く行われていたんですね。これは特許も同じですし、実際の臨床研究といってヒトに応用する部分もそうだったんですよ。
 それで、余りにも品質とか、そういった安全性について、患者さんの安全性に配慮をすることがおろそかになって、移植をしてそういうものを使うということにだけ要するに研究者が走ってしまったという過去の経緯があって、そのときに特許を取ってしまえばここから先の要するに発展的なもっと純度を上げるとか、そういった研究をしなくても、最初に特許を取った人が大きなインセンティブを取って終わってしまうというふうに解釈されてしまった。逆に言うと、実際はそれで厚生労働省は何をやったかというと、これでは医療の質の問題になるということで、幹細胞を使った臨床研究のガイドラインを施行して、研究のレベル水準を上げた訳ですね。ですから、そこは私は同じように特許の審査水準もそういう研究レベルの内容に準じて審査レベルも上げるべきと、要するに項目も厳密に指定するべきじゃないかという考えを持っているんです。
 ですから、入り口を余り大きくしてしまうと、そこからそれを目指すことと医療の実際の水準がアンマッチになってしまうことを私はおそれているんです。今現実問題としては、私は現行の制度、先ほど田村委員がおっしゃったように、実用化できるレベルというのはどこにあるのか、例えば具体的に言えば臨床研究が実施できるレベル、厚生労働省の幹細胞のガイドラインがとれるレベルとか、そういった何らかの審査水準レベルがあるべきではないかと思います。
○金澤委員長 ちょっと妙な質問になるかもしれませんが、先生がおっしゃる先行の非常に広く取ってしまった特許というのは、日本のものなのですか、外国のものですか。
○北川委員 日本です。
○金澤委員長 日本のものですか?そういう時代があったのですかね。初期にはそういうことがあり得たのかな。
○北川委員 普通特許を書く時にはできるだけ、例えばA細胞、何か細胞があると、まさか口の中からとった粘膜細胞が角膜上皮の再生に使えるなんてことは、なかなか考えつかないですね。当時はそれを移植していた訳ではないので、移植とかをしてデータをとっている訳じゃなくて、要するに上皮系の細胞であるということで応用がきくだろうという考えのもとに多分書かれていたんだろうと思うのですが、我々が申請した時に、その特許との差別化といいますか、侵害かどうかということを言われたケースがあるんですね。
 それは例えば構造体であるとか、それから有効性の問題で我々が非常にもっと厳密なものとして物質特許として取得する方向でやりましたけれども、そういったことは多分他にも起こってくるだろうと思うので、その手間を省くために入り口のところはある程度やはり、例えばマーカーがあれば非常に分かりやすいというお話がありましたけれども、物を特定するということですよね。物を特定するということをどういうふうにするかということをある程度厳密に審査していただきたい。これができないと、いわゆる薬事法上の医療費とか、人に安全なものを投与するという観点からすると、その水準、産業上利用可能なレベルに達していないという判断で私はいいんじゃないかと思うのですけれども。
○小川参事官 今の議論の整理ですけれども、林委員のおっしゃっていた入り口を広くというのは、一つの特許の判断の中で、審査の中で新規性のところで狭めているだけではなくて、そこは少し門戸を広げたとしても、進歩性のところできっちり審査をして、トータルちゃんとした審査をすべきだとおっしゃったんではないのかなというふうに理解したんですけれども。
○林委員 特許法上の考え方の順番として、今説明してくださったようなつもりで申し上げたのですが、物の特定について北川委員がおっしゃられるところの実質的な意味はすごく私も共感しております。
○金澤委員長 そうですね。よく理解できますね。
 そういう事例もあるので、一つ一つ丁寧に考えていただかなきゃいけないということは当然ながらあると思いますね。
 ありがとうございました。
 これは3枚目の3、特許対象に関するその他の論点についてというものの、骨格の部分に関してのご意見をいただけませんか?
 どうぞ。
○羽生田委員 先ほどちょっとお話が出ておりましたけれども、いわゆる知的財産の権利といいますか、これは先ほど研究所とか会社であるとか、色々出ましたけれども、細胞の提供者というのはどういう位置づけになるのか、その辺どなたか教えていただければと思いますけれども。
○金澤委員長 片倉委員どうぞ。
○片倉委員 今ルール上はたしか細胞提供については、無対価の原則というのがあるはずなんですよ。ですから、細胞の提供者に対しては理論的には戻りがないというのが日本の国内ルールという理解を我々はしております。
○羽生田委員 これは諸外国でも同じなんですか、大分違うんですか。
○片倉委員 そこは細胞とか、そういったものに対する考え方は日本とアメリカと大分違います。アメリカの場合は生命がなくなった段階で全て物になってしまいますので、そこの考え方は全く違うという理解はしています。
○金澤委員長 どうぞ、林さん。
○林委員 今の点は厚生労働省の方では何かガイドラインは作られていないのでしょうか。平成14年の薬事法改正のコンメンタールには、その辺のヒト由来原料の産業利用についての検討をするという点の図があったんですが。
○木下医政局経済課長 ちょっと確認をしてみますけれども、先ほど来からヒト幹細胞の指針は確かできて、永井先生とかご議論いただいたその点だけはありますけれども、それ以外はちょっと私も今承知しておりません。ただ、先ほど北川先生がおっしゃったように、どの水準かと、薬事法の水準とか審査の水準とのリンケージというのは、確かに必要だとは思うんですけれども、ただそうすると例えば段階、段階によって、非常にそれぞれの研究が進化をしていきますよね。その都度、レベルを合わせなきゃいけないみたいな話になった時に、特許との関係で機動力といいますか、機動的にできるかどうかという点というのはどうなのかなと。
○金澤委員長 どうぞ。
○北川委員 そのレベルを合わせる……。
○木下医政局経済課長 もともと非常に内容的に今のレベルからすれば低いレベルで特許を取っていて、それがさらに新しい進化したレベルで申請をした時に、低いレベルの特許を侵害してしまうので、逆に取れなくなるということですよね、ご質問は。
○北川委員 製造方法が改変させて、より純度の高いものがとれれば、それは特許性があるという認識です。多分、そうですよね。あります。ただ、一番最初に要するに非常に包括的にとる、一番最初のレベルのところは、要するに動物実験のレベルでいいのか、例えば幹細胞のレベルでいいのか。幹細胞のレベルになると、マーカーだとか、安全性だとかということはある程度担保したものでなければ通過しませんよね。ですから、そのレベルまで来れば産業化が見えてくるという私は判断なんですよ。動物実験であれば、それはまだまだ先が長い。でも、臨床研究のレベルまでの、これは例えばの話ですが、そういったレベルまで上がってくれば、これは実用化に近づいているというふうに判断してもいいのではないかと。そうすると、産業に供するための特許の価値というのは、私は非常に出てくるんじゃないかということを申し上げていると。
○木下医政局経済課長 分かりました。
○北川委員 ちょっと先ほどの移植の話をしていいですか。
 日本は基本的に今我々はヒトの材料をいただいて研究する時には、患者さん、病院の倫理委員会と弊社の倫理委員会の承認を得て、症例数とか採取方法とか不利益にならないようにという、インフォームドコンセントをとった上で、ご協力いただいて提供いただいているというのが現実です。
 アメリカは臓器を売買するところもあるので、そういったバンク的なところから供給を受けることもありますが、日本では無償で受けるということで、交通費とか、そういったものだけということですね。ですから、非常にここの部分は再生医療の研究の難しい部分になっているんです。成長細胞がなかなか入手できないというような研究を阻害していることは事実です。
○金澤委員長 ありがとうございます。
 それでは、3ページ目の3、特許対象に関するその他の論点についてはこのぐらいということにさせていただいて、基本的にはお認めいただいたとさせていただきます。
 余り時間がなくなってしまいましたので、途中までになるかもしれませんが、2ページ目の特許対象の拡大についてというこの委員会のかなり重要なところに移りたいと思います。議論していただけるところまでで結構ですから、ご意見いただければと思います。恐らく左側のページからの方がいいかと思います。細胞や薬剤の使い方に特徴のある発明という先ほど渡辺さんからご説明があったようなものも含めてだと思いますけれども、いかがでしょうか、どうぞ、ご議論いただきたいと思います。
 どうぞ、小泉さん。
○小泉委員 3つの点が挙げられておりますけれども、まず第1点に細胞や薬剤の使い方に特徴のある発明につきましては、前向きに進めていただければと考えております。確かに、物の用法というのは、本来方法にむしろなじむことは確かなんですけれども、医療分野につきましては、今から申し上げるような特殊性というのがありまして、結論的には医療に特殊なルールとして明示して進めるべきじゃないかと思っております。
 医薬の特殊性ということですけれども、医薬品というもの自体が元々用法とか用量とセットで意味を持っているということは、薬事法上明示されておりますし、それから仮に方法で特許を取ったとしても、使うのは患者さんですので、これは業として実施されていないので、やはり物として取った方がよいだろうということですね。
 ところが、現状では特許対象外となっていまして、成分とか効き目は特許されるのに、用法は特許されないわけです。
 整理していただきました論点の左の下、お医者様の裁量に影響を与えるおそれについてですが、お医者さんの処方権については、用法を物として特許しても抵触はしないと思います。例えば、お医者さんが35mgの薬を処方されても、処方するということは患者さんが薬を買えるようになるということですので、物の発明を実施したことにはならない訳です。従いまして、論点のポツの2つ目はご心配要らないでしょう。一方、主な意見のポツの2つ目に書かれておりますとおり、また、今日も渡辺委員の方の資料の4ページあたりでご指摘ありますとおり、患者さんのQOLだとか、あるいは副作用を低減するといった観点から、イノベーションが期待されると思いますので、公益上も非常に有益性があると思っております。
 2番目の器具の使い方は、ちょっとまだ私自身結論が得られないので、もう少しご議論を伺ってからにしたいと思いますけれども、なかなか難しいのかなと思っております。
 それから、3番目のこのデータの収集方法ですけれども、お話伺っておりますと、非常にこの分野はイノベーションが目覚ましくて、国際的調和の観点からも是非加えるように、前向きにご検討いただければと希望しております。
 元々、特許法というのはあらゆる新規なイノベーションを広く対応できるという体制に今なっているんですけれども、医療分野というのは非常に慎重に臨まなければいけないということで、例外的な取り扱いになっております。先ほどから議論に出ていますけれども、入り口で余り絞らずに進歩性なりの判断をきちっとしていただくことによって、実質的に具体的な妥当性を図っていただければよろしいんじゃないかと思っております。
 長くなりましたけれども、以上でございます。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 どうぞ、本田さん。
○本田委員 皆さんの議論がとても専門的で、私などが口を挟むことがなかなか難しいので、恐縮なんですけれども、この2ページ目の細胞、薬剤の使い方の部分なんですけれども、私は患者でもありますので、一般の患者の立場としてどういうふうに感じるのかなと思っているところで、2つあるんですね。
 1つは、例えば臨床研究にしても、米国などと比べて研究費が50分の1だとか、そういう数字を伺うと、患者にとってよりよいお薬なり治療なり使用方法なりの研究が進むという意味では、こういうことがあって、費用がそちらに回るということは、患者にとって期待されることになるとは思っています。なので、一概に全く反対というふうには思っていなくて、企業が回っていく一つの手段としてあってはいいのかなというふうにも感じています。
 ただ、一方で以前も申し上げましたけれども、一体これを特許とすることでどういうマイナスが患者側に起きるのか、治療を受ける側に起きるのかというのがもう一つ整理されていないような気がして、私に分かるような論点が整理されていなくて、QOLが上がるものができるとか、いいことは幾つか書いていただいているんですけれども、例えばそれが患者側の負担がどういうふうに増していくのかとか、もしくは先ほど医療者が裁量権、処方権とかに抵触しないので、患者が買うんだからとおっしゃいましたけれども、そうすると買う患者に何かそういう問題が権利の侵害とか、起こるようなことにはまさかならないとは思うんですけれども、その辺をはっきりしていただきたいとか、現実に現在新しい、例えば私はがんなので、がんのことしか余り詳しくないですけれども、抗がん剤などはすごく高くて、現在ある分子標的剤とか、そういうものでどんどんエビデンスがよりよくなっているという現実は、患者にとってとても希望の持てることではあるんですけれども、一方で新しい希望の持てるお薬が費用の面で使えなくて、治療を途中で断念している患者さんも現在どんどん出ているんです。
 例えば、がんなんかの場合は、治療費の貸し付けとか、そういうことすらも公的なもの、医療費、介護費の貸し付けの制度なんかもがん患者は受けられないという仕組みになっているんですね。そうすると、ただあることはあるんだけれども、あるものですら受けられなくなってきている。患者にとってQOLがいいとか、効果が高いというものが出てきても、実際問題使えない人が増えているという現状の中で、ここの論点の一番下にある仮に負の影響を及ぼす場合、どのようにすればそれを低減できるのかという、そういうものとセットで議論をしていただくこととか、もう少し患者にとってどういうマイナスがあるのかという、恐れずにきっちり出していただいて、それを回避する仕組みがあるからこそ、必要なんだというような議論の整理をしていただくと、私たちにも分かりやすいかなと思って、必要性もとても感じていますけれども、そこの部分の議論がないと、一概に何ともそうですねと言いづらいという部分があります。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 どうぞ、永井さん。
○永井委員 2の新用法・用量、医薬の例として、骨粗鬆症のことが書いてありますが、1日5mgを週1回35mg投与にするのは、これはたしか食道炎を防止する上で意味があるのだと思います。この治療法が食道炎の発現を抑制するというように考えると、これは単なる用法・用量の変化ではなくて、用途の違いと理解することもできると思います。そうなると、これは用途特許が認められる例になるのではないかでしょうか。言い回しによって考え方が違ってくると思います。
○金澤委員長 田村さんからどうぞ。
○田村審査基準室長 副作用の点は、多分医薬用途発明ということで認識できないんではないかなと思っておりますので、積極的に薬効があるということであれば、先ほどのMRSAのケースのように適用範囲が広がるということで、医薬用途発明が認められる訳ですが、副作用を軽減するということになりますと、患者群が明らかに区別できるというケースについてはよろしいんですが、その例としては資料3の別添1の2ページ目の事例8がそういうケースでございまして、これの場合はC型肝炎の治療剤ということでございますが、特定の遺伝子型、SNPsを持ったような患者さんについては、その医薬品を大量に投与しても特に副作用が出ないということが分かっているということでもって、大量に投与することができる患者さんの群という、そういう切り口で患者さんを区別できるということで医薬用途発明が新たに出てくるというのは一つございます。
○永井委員 食道炎の症状は出る人も、出ない人もいる訳です。ですから、症状の出る人については週1日の投与にすると特定できる訳です。
○田村審査基準室長 そこがこの事例のように、例えばSNPsのような形ではっきり患者さんを区別できるようなケースについては、特許することも可能かと思われますが、一般的にそういう副作用を軽減するということになりますと、患者さんを区別できないと考えています。
○永井委員 SNPsも決して100かゼロかという話ではなくて、確率の程度の問題です。1.5倍とか、2倍高いという話ですから、同じSNPでも、何でもない人たちもいます。そうすると症状が出ているか、出ていないかの方がよほどSNPsよりも対象は明確と思います。
○田村審査基準室長 そこははっきり患者群を区別できるということであれば、そこは医薬用途発明として現行でも特許を可能かなと思われます。
○金澤委員長 どうぞ、渡辺さん。
○渡辺委員 例えば、これは医薬品のビジネスとも関係して、あと患者さんに広く使われるということも関係するかもしれないんですが、確かに特許的には特定された患者さんに使えるよということではあるかもしれないんですが、そこで仮に特許を取ったとしても、本当の目的はこの場合、実は利便性だったんですね。食道炎等の副作用もあったんですけれども、これを回避するために非常に窮屈な飲み方をしないといけないんですね。毎朝起きて30分間、飲んだら寝ることもできないと、そういうことが改善されて非常に使いやすくなった。
 それから、副作用でしか使えないといったって、起こるか起こらないか、飲んでみないと分からないような薬の使い方は患者さんにとってもかなり不便であるということで、1週間に1回使える方がずっと楽な訳ですよね。そういうこともあって、できるならばそういう新しい用法なりが広く使えるようにするための特許としてあった方がいいということではあると思うんですけれども。
○永井委員 なぜ窮屈な思いをして飲まないといけないかというと、それは副作用が出るからです。食道炎が起こる可能性があるので、内服後、横になってはいけないということになる訳です。
○渡辺委員 この場合は違うんですね。副作用もあるんですけれども、実はこれは多分吸収の問題があると思うんですね。例えば、30分間寝ておくと、きっと胃から腸の方へ物が行きにくくなるんですね。多分、立っている方がきっといいというところで、胃から早く出ていくために、きっと全部出さないと吸収されないということは、体への吸収ということと関係しますので、そのために一定期間立っておかないといけないというような理由から、30分以上窮屈な姿勢ということになっているというふうに聞いておりますけれども、もちろん……。
○永井委員 確認が必要だと思います。
○渡辺委員 副作用もあります。両面でこういう窮屈な投与を避けて、1週間に1回になったとは聞いておりますけれども。
○金澤委員長 他にご意見ございますか。
 どうぞ、北川さん。
○北川委員 本田委員にちょっと伺いたいんですが、さっき治療を受けたくても途中で費用の問題で受けることができないというお話がありましたけれども、それは保険で認められた治療ですか。
○本田委員 私が例に出したのはそうです。すみません、がんのことばかり例にしてしまうので、他の治療でもきっといっぱいあると思うんですけれども、具体的に知っているのががんばかりなので、恐縮なんですけれども、抗がん剤をどんどんいいものが出てきているということはありがたいんですけれども、一方で費用も高くなっていて、月々普通に治療していても自己負担が7万、10万、何万といって、返ってくる高額療養費制度もあるんですけれども、あれはレセプトごとですので、結局足してもらえなくて、放射線治療もして、抗がん剤治療もしてとかすると、全部別々に計算されるので、なかなかあまり返ってこないんですね。それまでの建てかえ費用にも困っちゃう人もいる。だから、保険の中の治療のことを言っています。
 この特許のことが即全てが費用がすごい高くなることに全部がつながるのかどうかというのも、私には分からないんですけれども、その辺どんなマイナスとかがあるのか、患者一般の最後のユーザー側にどんな影響があるのかということをちょっと整理していただければありがたいなと思ったもので。
○金澤委員長 なるほど。
 負の影響を及ぼす場合と書いてあるが、この負の影響はどういうことを考えているのかな?
○内山事務局次長 負の影響については、上にございます主な意見の中の医療のフリーアクセス、医師の裁量等々、それから国民皆保険制度とか医療費の問題ということでございますので、本田委員のおっしゃられるようなことも当然入っていると理解をしております。
○金澤委員長 どうぞ。
○羽生田委員 やはり負の部分は今、本田委員が言われた金銭的な患者さんの負担というのは非常に大きいと思うんですね。これはいわゆる特許を取った時に、簡単に言うと後発品ができないということになりますので、そういった意味では価格が下がりにくくなるというのは当然ありますから、その面だけから言うと、患者さんの負担はそのまま大きいままでいる時間が長いということは言えると思います。ただ、逆に今、本田委員も言われたように、研究費がその分から出ていくということももちろん大事なので、その辺裏表がかなりあると思うんですけれども、患者さんにとっては金銭的な負担というものは、大きな負の問題だろうというふうに思っております。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 佐藤委員、どうぞ。
○佐藤委員 薬剤の場合には、物質特許が認められた時にも、価格の問題が問題になったんですね。医薬が独占されると、当然価格高騰につながるということで、その時に議論されたのは、特許法上、公共の裁定実施権というのがありまして、公共上必要なものについては国が裁定で実施権を他人に与えることができるという制度が特許法上担保されていると。だから、もしそういうことが公共的に必要であれば、裁定実施権を使えば問題を対処できるのではないかという議論が前回もされたということが一つと。
 それから、もう一つは前回の専門調査会の時にも、物質特許の時に議論された今のような問題点について、あれから十何年たってからの話で、十何年間の間に物質特許を認めて、医薬を特許化することによってどういう弊害が出たのだということをアンケート調査をしたら、実際には薬価も上がってないし、そういう弊害も出てなかったという結果が出たと。ただ、それだから即医療行為を特許にしてもいいという話ではないということで、前回は見送りになったというふうに覚えております。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 もうそろそろ時間が来ていますが、渡辺さんにちょっと一つだけ伺いたいと思います。イリボー、つまりラモセトロンですが、これは非常に少ない量でやってみようとしたのはお医者さんですか、それとも研究者なんですか。
○渡辺委員 やはり企業の開発担当者が以前の臨床試験の結果を見直した上で、もっと低い容量で効くかなというふうになったんだと思います。
○金澤委員長 まさに大変な目利きですね。これは特許になるかどうかも分からん時に、それにしかも量が多くするのではなくて、少なくする訳ですからね。新しい錠剤にはなるかもしれないけれども、しかしだから製品特許は取れるかもしれないけれども、なかなか分かりにくい時代によくやってくれたと思います。こういう例というのは他にまだまだ潜在的に、具体的におっしゃる必要は全くありませんけれども、潜在的にかなりあることですか?
○渡辺委員 これほど大きい例がたくさんあるかというと、よく分かりませんけれども、薬の開発というのはいったん世に出てから、ある程度の改良を経て、より適切なものになっていくというのは、今までの歴史においてたくさんあることでございますので、たくさんあると思います。ただ、特許がないとなかなか開発されないということも逆にございますので、余りぴったりした例があるかというと、なかなか探しにくいというのが現状でございまして、ちょっと難しいところでございますが、少なくとも用法・用量の改良によって、より患者さんのためになるというようなことというのは、当然たくさんあることだと思っております。
○金澤委員長 どうぞ、永井さん。
○永井委員 β遮断薬は、従来、心不全に使ってはいけないことになっていましたが、少量使うと心不全に非常に良いという例があります。
 それから、先ほどの骨粗鬆症の例ですが、今調べてみたところ、食道炎や胃炎を起こさないように横にならないということが指定されています。ですから、これは副作用低減で、単なる利便性の問題ではないと思います。ご確認していただけますでしょうか。
○渡辺委員 5mg錠1日1回での窮屈な投与法は副作用回避と吸収性確保のためで、35mg錠週1回では利便性と副作用低減の両面あるというふうに私は理解しておりましたので。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 司会の不手際でまた時間が来てしまいました。
 今日はこのぐらいまでにさせていただきますけれども、引き続き議論を続けていただこうと思います。
 引き続き論点の整理を行っていくことにいたしますが、必要とあらばですが、また特別ゲストにおいでいただくかもしれません。その時はお任せいただければと思います。
 それでは今後の予定についてどうぞ。
○内山事務局次長 資料4を見ていただきたいと思います。委員の皆様方には既に事務的にお伝えをしておりますけれども、次回の会合は4月3日、金曜日、午後4時、16時からでございます。引き続き論点整理等々について、今、金澤委員長の方からご案内のあったようなことについて、議題にしてまいりたいと思っております。
 さらに、次々回以降につきましては、資料に掲載されておるとおり、4月24日、5月8日、5月29日と予定をしておりますけれども、これは議論の進捗状況等によりましては、上記スケジュールの変更、もう少し少なくやる場合もある等々の変更がございます。引き続きよろしくお願いいたします。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 今日の最後に何か言っておきたいことということがございましたらどうぞ。
 よろしいでしょうか。
 会議はまた続きますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、本日の会議はここまでといたします。
 ありがとうございました。