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2008年度 有識者本部員会合(第1回)議事要旨


日 時:平成20年4月 9日(水) 8:30〜10:25
場 所:知的財産戦略推進事務局会議室
出席者:相澤本部員、岡村本部員、角川本部員、佐藤本部員、里中本部員、中山本部員、長谷川本部員、三尾本部員、山本本部員


事務局から「知的財産推進計画2008」の策定スケジュールについて説明が行われた。
有識者本部員会合は非公開とし、議事概要を公開すること、また、有識者本部員会合で配付された資料は原則非公開とするが、「知的財産推進計画2007」の見直しに関する意見募集の結果については公開することとなった。
「知的財産推進計画2008」はこれまでの専門調査会の各報告書等を踏まえつつ、知財政策の第3期に向けた骨太なメッセージを出すものとする等の基本的な策定方針について事務局から説明が行われ、了承された。
事務局から「知的財産推進計画2008」の基本的枠組み及び本年3月13日から4月3日までの間に行われた意見募集の結果について説明が行われ、これに関し、自由討議が行われた。本部員からの主な意見は次のとおりであった。
 
 (技術革新、イノベーションの創造)
 先端医療技術に関する特許保護制度の在り方については、iPS細胞という画期的な成果が生まれたことを踏まえ、もう一度本気で検討しなければならないのではないか。
 知的財産法は財産法であって規制法ではないが、実際は規制として働く面もある。中心的なのはデジタルコンテンツであるが、iPS細胞を中心とした医療に関する問題についても、我が国の産業の発展の規制になってしまう可能性もあるので、早急に検討すべき。
 我々は21世紀の技術革新の激変に対応していくに当たって、技術革新等を規制することにならないという知的財産法の中立的立場の重要性を明確にすべき。
 iPS細胞研究のような画期的な技術については、先発明主義や仮出願制度を正すなど国際競争上のイコールフッティングを確保すべき。米国のように、大学が契約書のフォーマットを公表して非独占で使わせるとした方が時間的に遅れをとらないのではないか。
 iPS細胞研究プロジェクトは我が国の画期的な発明を事業まで結びつけて国際競争力を持つところまで持っていくモデルケース。しっかりしたリーダーの下に総合プロデュース機能を発揮し、外から見える形で支援していくことが重要。
 将来の我が国の国際競争力を強化するためには、科学技術の方向として環境技術をいかに世界にアピールするかということが極めて重要。総合科学技術会議等とコンセンサスを得ながら、環境技術の国際競争力を一層強化し、世界のリーダーシップをとるという大きな柱を立てておく必要がある。
 産学連携の強化に当たっての評価指標として、ライセンス率、事業化率、収益率といった指標が必要である。
 
 (情報通信基盤の一層の活用)
 オープン・イノベーションについては、進んでいるとされている米国市場の実情をまず把握し、日本の状況と比較して日本に何が足りないのかを明らかにした上で具体的取組を考えることが必要。
 特許を開放したり、交換し合ってお互いに共有し合ったりすることは、日本の企業文化の中では相当ハードルが高いのではないか。企業の生き方を変えていくような覚悟がないとオープン・イノベーションは実現できないのではないか。
 日本においてもオープン・イノベーションの芽は出始めている。ハードメーカー同士でも自分たちの力だけでは開発・製造を行うことは無理という機運が高まっており、それがメーカー統合や事業統合を生み出している。このような意味で、それこそが日本産業の生きる道であるというようなことをうたっていただきたい。
 
 (中小・ベンチャー企業への支援)
 我が国においてベンチャーを育成し、それに対する大企業等による投資が国内で循環するようにすることが必要。そのためには、例えば大手の企業がベンチャー出資を行いやすくなるような制度を整えるとともに、ベンチャー創出の文化・カルチャーを育てるべき。
 中小企業における知的財産権に対する考え方は立ち遅れている。技術者の70%が中小企業に属していることを考えると、中小企業発の創造・活用・保護という問題をこれからどう考えていくかということは国の政策としては極めて重要。特許手続きの簡便化や大企業による知的財産侵害に対する悩みの解消等、中小企業の抱えている知的財産権に対する問題点をくくり出して国としてどう対処するのか明確にしていただきたい。
 地域別、業種別にホールディング会社を作って、そこに産業再生機構に在籍していたようなプロフェッショナルを送り込んで、中小企業による資金調達、知財の保護・活用、海外進出等を総合的に支援していくような新しい仕組みが必要ではないか。
 これからは浅く広く押しなべてという形の支援ではなく、伸びそうなところにフォーカスして支援していく仕組みが必要ではないか。
 知財のビジネスの世界では、一握りのトップが全体の90%の収益を生むような世界なので、モデルになるような中小企業を選定してそれを手厚く支援するようなことを考えなければならない。
 小さな企業は自分の持っている技術や発想が世界基準で知的財産になるということを知らないままよそに取られてしまうということもあるので、そのようなものをぜひきめ細やかにフォローしていだきたい。
 
 (海外展開、世界的課題への対処)
 日本の情報文化発信力をどう強化していくかというのがポイント。コンテンツ・ポータルサイトの国際化を含めていかにしてその発信力を高めていくのかということについて何か方向を示していただきたい。
 創造性を有する人材育成のためには、日本の大学制度に競争原理を入れていかなくてはならない。
 環境技術については、有効なビジネスであるという視点に立って、積極的に国が売り物にするという形で取り組んでもよいのではないか。
 海外展開に当たっては誇りと自信を持って取り組むべきであり、ホームページなどに「我が国において生み出されたもの一覧」のような世界の人たちが憧れるようなページを作って、世界に向けて発信していただきたい。
 海外で我が国の地名等が勝手に商標登録されているのは重大問題だが、いろいろな知恵を出して解決していくことができるのではないか。
 コンテンツのグローバル展開に関しては、海外拠点を作るという項目を入れるべき。現地の情報を収集し、それを咀嚼した上で日本のブランドを発信していくという仕組みが必要。その場合、一つの形として在外公館の利用が考えられるが、そのための専門人材を常置すべき。
 海賊版については、これをうまく退治することを前提にすれば、かえって本物の知名度が上がりビジネス展開につながることもある。悲観的にばかりならずにしっかりと対策を講じるべき。
 ネット上で著作権クリアのマークを付けてコンテンツを配信することは、違法サイトを合法化していく一つの方法である。コンテンツ事業者は非常に零細なところが多いので、このような識別マークを付ける費用や海外でブランドを守るための訴訟費用などを国がファンドを作って支援すべき。
 日本ブランドというからにはまず名前とロゴマークを作ることが必要。
(以上)