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内部被ばくとホールボディカウンター

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平成23年7月27日

 現在、放射性物質に汚染された牛肉の流通が問題となっておりますが、このような放射性物質に汚染された食品等を摂取することによって体内から放射線を浴びることを「内部被ばく」。これ対して、体外にある放射性物質から放射線を浴びることを「外部被ばく」と言います。そして、内部被ばくの程度を調べることに用いられている特殊な装置が「ホールボディカウンター」です。通常の病気の診断・治療にホールボディカウンターが必要となることはないため、医療関係者の間でも専門家以外にはあまり知られていませんでしたが、福島原発事故の内部被ばく検査で注目を集めることとなりました。
 現在までに福島原発から放出された主な放射性物質は、放射性ヨウ素-131(半減期8日)と放射性セシウム-137(半減期30年)です。これらはいずれも、放射線の一種であるガンマ線を放出する性質を有しており、ホールボディカウンターは、このガンマ線量を精密に計測し、内部被ばくを推定します。しかし、空気中に放射性物質が浮遊している外部環境では、放射線量を正確に測定できないため、原発周辺地域の住民の方々に便の良い場所での測定が困難となっています。
 なお、内部被ばくは、原発事故とは関係なく、自然界にもともと存在している放射性カリウム-40(半減期12億年)が人体(主に筋肉)に取り入れられることによっても日常的に起こっています。体内に取り入れられた放射性カリウム-40によって、通常、1年間に成人で約165マイクロシーベルト、子供で約185マイクロシーベルト内部被ばくしており(注)、ホールボディカウンターは、こうした自然由来の放射性カリウム-40からのガンマ線量も測定することができます。
 このように、ホールボディカウンターは、体内にわずかに存在する放射性物質からの放射線量を測定することができるので、今回の事故による内部被ばくの健康影響の調査に役立っています。


遠藤 啓吾 京都医療科学大学 学長、(社)日本医学放射線学会副理事長



参考情報:
 現在までに福島原発から放出された主な放射性物質である放射性ヨウ素-131と放射性セシウム-137は、放射線治療のひとつとして、病気の治療に使われています。例えば、放射性ヨウ素は、甲状腺が腫れて血液中の甲状腺ホルモンが増える病気(バセドウ病)、甲状腺がんなどの治療として用いられています。患者に経口投与した放射性ヨウ素の体内分布を画像として撮影することで、治療効果を予測することもできます。また、放射性セシウムは、放射性セシウムを先端に付けた針を患部に直接挿入し、腫瘍等には十分な放射線を与えつつ、周辺の正常組織への影響を少なくすることができる小線源治療として舌がんなどに用いられています。


(注)原典は以下のとおり

  1. UNSCEAR 2000 report Vol. 1, Sources and Effects of Ionizing Radiation , ANNEX B, P94
    http://www.unscear.org/docs/reports/annexb.pdf
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