本文へ移動

首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
言語選択
English
中文
表示選択
PC
モバイル
文字サイズの変更
中
大

「一般論」をこえた情報共有のあり方

  • 印刷

平成24年5月24日

1.今、求められる情報とは

 東電福島第一原子力発電所事故の後、緊急事態を脱してからも、放射線や放射性物質に関する懸念や不安が消えたわけではありません。むしろ、懸念や不安に対する、多岐にわたる対応が求められてきていると言えるでしょう。
 まずは日常の生活環境の中での放射線レベルの把握、次いで除染の実施とその効果の把握、さらに環境中の放射性物質の移動に伴う放射線レベルの増減、食品や飲料水を介した放射性物質の摂取をいかに抑えるか――など、懸念や不安の対象は生活に密着したものになっています。また、放射線そのものの影響に加えて、事故後大きく変化した生活全般に関わる懸念や不安などに対する対応も求められています。
 このような状況では、《一般論》ではなく、《個別の状況に応じた情報》が求められます。これらの情報は、避難生活から故郷への帰還を考える上でも、重要な判断材料になると考えられます。

2.「個別の情報」を、いかに提供するか

 住民の方からのさまざまな疑問・不安・課題を受けとめて、適切な情報を提供し、懸念の解消や不安の軽減につなげるには、地域ごとの「相談窓口」が有効であると考えられます。ここに相談をすれば、放射線の量や影響に伴う“私の”不安に対する答えが見つかる、“地域の”状況に応じた対応策が見つかる、そのような相談窓口です。
 このような窓口の相談員は、必ずしも放射線の専門家がふさわしいとは限りません。除染についても、放射性物質の移動についても、生活環境の中での放射線の影響についても、地域ごとの状況によって大きく左右されます。そういった意味では、地域の生活状況を把握している方、たとえば、教育関係者、医療関係者、自治体の生活関連担当部門の方たちなどが、ふさわしいと言えるでしょう。

3.「相談窓口」と「専門家」とのチームワークを

 ただ、そのような相談窓口の担当者は、放射線に関する詳しい知識をお持ちとは限りません。放射線の測定に関するノウハウや放射線の影響に関する情報は、やはり専門家から得る必要があります。
 もちろん、これまでも専門機関は、放射線に関する情報の提供に努めてきました。しかしながら、その内容の多くは、もっぱら一般論でした。今こそ、窓口担当者と専門家とが協力して、地域ごとに求められている具体的な情報を取りまとめ、住民の方々に提供することが必要です。
 相談窓口の担当者と地域住民の皆さんとのやり取りの中で、より詳細な、その地域に固有の懸念や不安が浮かび上がってくることもあるでしょう。そのような課題についても、これまでに蓄積された知見の中から、専門家が対応策や解決策を見出すことが期待できます。国際的に見ると、チェルノブイリ原発事故後の対処方法の成功事例や失敗の教訓が、蓄積されています。専門家や専門機関は、これまでに培ってきた国外の専門家とのパイプも活用し、相談窓口の担当者と協力して、個別の状況にふさわしい情報を抽出し、提供することができるのです。

これからの情報共有の枠組み

 このように、相談窓口の担当者と、放射線に関する専門家が連携すること。それによって、今後ますます多様化していく状況への対策をきめ細かく取っていくことが、可能となるはずです。その結果として、住民の方々の懸念の解消や不安の軽減につながることが、望まれます。


(酒井 一夫 (独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長
 東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻客員教授)

内閣官房内閣広報室
〒100-8968 東京都千代田区永田町1-6-1

Copyright © Cabinet Public Relations Office, Cabinet Secretariat. All Rights Reserved.