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世界が福島を見守っている
~原発事故をめぐる国際組織・機関の動向と見解~

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平成24年8月10日

原発事故後の福島の状況は、世界が注視しています。ここであらためて、主要な国際組織・機関がどのように福島と向き合い、 どのような見解を打ち出しているか、整理しておきたいと思います。

国際連合

 国連に設置されている、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」(※1)では、世界18ヵ国から60名を超える専門家が参加して、福島の原発事故による被ばく線量の評価を精力的に進めています。UNSCEARは1955年に設立され、設立当時の活動の目的は、核実験で生じるフォールアウト(放射性降下物)による被ばく線量と健康リスクを評価することにありました。その後も、様々な局面において「線量と影響」をキーワードとして、活動を進めてきました。
 その報告書は、放射線防護を考える上での科学的な根拠として重要視され、国際放射線防護委員会(ICRP)(※2)の放射線防護に関する枠組みの土台となっています。(「原子力災害専門家グループからのコメント 第七回」をご参照ください)福島の原発事故に関する活動は国連総会にて承認され、事務総長から各国に対し、この遂行へ向けての協力が要請されました。報告書は2013年5月に公表される予定です。

国際放射線防護委員会(ICRP)

 UNSCEARが集約した情報を基に放射線防護の枠組みを勧告しているのが、ICRPです(「原子力災害専門家グループからのコメント第五回」をご参照ください)。ICRPは、事故発生10日後の昨年3月21日に、「福島原子力発電所事故 」と題する緊急メッセージを発表して、緊急時における放射線防護の考え方を再確認しました。また、本年3月12日にも「東日本大震災、津波および福島第一原発事故から一年」と題するメッセージを発表しています。
 これまで個々の事例に個別の対応をしたことのないICRPとしては、異例の対応でした。現在ICRPでは、福島の原発事故に際して提唱した放射線防護体系がどのように機能したか、問題点はなかったか、検証作業を進めています。この報告書は専門誌に公表される予定です。

世界保健機関(WHO)

 放射線に関する国際専門組織以外にも、世界保健機関(WHO)(※3)では、昨年秋までに入手できた情報をもとに、世界を視野に入れて一般人の線量を評価し、報告書「2011年東日本大震災および津波による原子力事故による線量の予備評価」を今年5月に発表しています。福島県民の方々の線量については、今後も長期にわたるデータの蓄積が必要であり、あくまで現段階での"予備的な評価"とのことですが、一方、アジア近隣諸国をはじめとする海外への影響に関しては、"非常に小さい"(事故後1年間で0.01ミリシーベルトあるいはこれを大きく下回る程度)と評価しています。近隣諸国への影響まで視野に入れた報告は、国際機関ならではの対応と言えるかもしれません。

経済協力開発機構(OECD)

 さらに、経済協力開発機構(OECD)(※4)の中に設置されている原子力機構(NEA)(※5)も、福島の事故に対応するための臨時特別委員会を立ち上げて活動を進めています。OECD/NEAは、チェルノブイリ事故後の対応に関する豊富な経験と実績を有しています。福島事故後に地元で開催されている対話集会に専門家を派遣し、住民を含めた様々な関係者の関与のあり方について情報提供を行なうなど、チェルノブイリ事故の教訓を福島に活かす活動に貢献しています。

国際学界

 昨年8月にワルシャワで開催された国際放射線研究会議や、本年5月にグラスゴーで開催された国際放射線防護会議では、福島の事故に関するセッションが設けられ、日本からの情報提供と意見交換が行われました。
 これらの国際組織・機関、学会には、チェルノブイリ原発事故をはじめとする過去の事例に基づく知恵が蓄積されています。こうした組織との情報共有と意見交換を進め、知恵を学ぶことも、福島のより効率的な復興の一助になるものと考えます。

(酒井 一夫 (独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長
 東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻客員教授)


  1. ※1.原子放射線の影響に関する国連科学委員会(United Nations Scientific Committee on the Effect of Atomic Radiation: UNSCEAR)は、1955年に国連総会によって設立されました。その任務は、電離放射線による被ばくの影響を評価し、報告することです。世界中の政府や組織は、放射線リスクを評価するための保護対策を確立するための科学的根拠として、委員会の推計に依存しています。
  2. ※2.国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection: ICRP)は、専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う非営利、非政府の国際学術組織です。この組織の前身は1928年に作られ、1950年に現在の名称となりました。主委員会と5つの専門委員会からなり、放射線防護に関する100以上のレポートを公開しています。
  3. ※3.世界保健機関(World Health Organization: WHO)は、保健衛生分野の国連専門機関で、1948年に設立されました。
  4. ※4.経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development: OECD)は国際経済全般について協議することを目的とした国際機関です。
  5. ※5.経済協力開発機構原子力機関(OECD Nuclear Energy Agency: OECD/NEA または単に NEA)は、原子力発電を安全で、環境に調和したエネルギー源として開発協力することを促進するOECD傘下の国際機関です。
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