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進化する個人線量測定の技術~福島の復旧・復興に向けて~

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 原発事故の影響で県内・県外へ避難されている方々の帰還を後押しするのは、政治家だけの仕事ではありません。技術開発による後押しも極めて重要で、しかも実際に着実に前進しています。

日常生活の中で、本当に役立つ道具に

 今月(平成25年4月中旬)、横浜市で開かれた「2013国際医用画像総合展(1)」は、学術集会(後述)に合わせて開かれる企業展示としては、国内最大級のものでした。そこでも、簡便、安価な空間線量率測定器やサーベイメーター類など、今すぐ福島で役に立つ器機が展示されていました。
 とりわけ、ガラスバッジ(個人線量計)などで有名な企業が開発した新たな≪住民用モニタリングシステム≫などは、特筆すべきものでした。個人線量計の本体は、子どもでも持ち運びが苦にならないくらい小型・軽量で、さらに、線量の読み取り装置とセットになっています。読み取り装置では、過去の積算線量と、前日分24時間の線量を読み取ることができます。つまり、日々の被ばく線量をいつでも手軽に確認することができるとともに、昨日の自分の行動の記憶と照合させることで、何をしていた際に線量が高かったのかも推測することができます。それによって、個々人で例えば「いつもの道順を、あの場所に近づかないコースに変えてみよう」など、線量を下げる工夫もできるでしょう。

新鋭機器と住民とを、行政がつなぐ

 この新しく開発された個人線量計は、楢葉町、広野町、葛尾村が導入し、希望する住民の方々に配布されるそうです。
  住民の方々の健康影響を考える際に、「場の線量」のレベルよりも、個人個人が受ける「人の線量」が重要であることは、このコーナーの第38回のコメント(「『場の線量』から『人の線量』へ」)ですでに述べられています(2)。これから住民の方々が、空間線量率が比較的高い地域へ帰還される際、「人の線量」を把握するために、このような住民用モニタリングシステムは大変役立ちます。
 また、市町村役場などに置かれる高性能な読み取り機では、さらに過去にさかのぼって、何日にどれくらい被ばくしたかについての詳細な情報まで読み取ることもできます。

役に立つ技術、役に立つ科学を

 わが国の個人線量測定技術は世界トップレベルで、その技術を応用して様々な放射線測定機器が開発されています。住民の方々、さらには発電所内で事故収束のために活動しておられる作業員の方々の安全・安心のために、様々な新しい技術が活用されることは、開発者にとってもやり甲斐のある仕事となります。さらなる技術開発を進め、それらを活用することによって、国内最悪の原発事故に立ち向かい、一日も早い福島の復興を目指していかなければなりません。
 また、今回の展示会と同時に、横浜では3つの学会が合同して学術集会も開催しました。日本医学放射線学会(3)、日本放射線技術学会(4)、日本医学物理学会(5)が一堂に会したものです。参加者は全体で2万人を超えました。放射線診断やがんの放射線治療にかかわる放射線科医、診療放射線技師、医学物理士等が学術交流を行い、そこでも参加者から福島県の住民の方々を思う声が多数聞かれました。
 技術者も、私たち科学者も、これからもずっと、福島の皆さんと伴走し続けていく決意です。

遠藤 啓吾
京都医療科学大学 学長
群馬大学名誉教授
元(社)日本医学放射線学会理事長







<参考資料>

  1. (1) 2013国際医用画像総合展(日本画像医療システム工業会)
    http://www.jira-net.or.jp/archives/commission/tenji/report/2013/item2013/item_2013.html
  2. (2) 第38回コメント 「場の線量」から「人の線量」へ
    https://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g38.html
  3. (3) 日本医学放射線学会
    http://www.radiology.jp/
  4. (4) 日本放射線技術学会
    http://www.jsrt.or.jp/
  5. (5) 日本医学物理学会
    http://www.jsmp.org/
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