第9回アフリカ開発会議(TICAD9)公式テーマ別イベント「日・アフリカ共創で拓く健康と経済の未来:官民連携の最前線」を開催しました

 内閣府および内閣官房は令和7年8月20日(水)に、「日・アフリカ共創で拓く健康と経済の未来:官民連携の最前線」を開催しました。本イベントにおいて、城内実内閣府特命担当大臣 健康・医療戦略担当をはじめアフリカ諸国政府の保健閣僚、国際金融公社、一般社団法人 日本経済団体連合会、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金の首脳陣が、アフリカ健康構想とグローバルヘルス戦略の一体的推進によるアフリカの保健課題解決とビジネス機会の開拓について議論を行いました。また、アフリカの保健課題に対する革新的ソリューション、キャパシティ・ディベロップメントに資する官民連携のビジネス展開事例を人材育成やDXなどの観点から紹介しました。なお、イベント冒頭には日本企業によるアフリカとのヘルスケア分野での協力覚書等の発表も行いました。
 当室で実施したTICADでの取組の詳細は、TICAD(アフリカ開発会議)特集 をご参照ください。

概要

 当イベントにおいては、アフリカ健康構想とグローバルヘルス戦略の一体的推進、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた日本の貢献やアフリカにおける保健課題、日本企業の取組が紹介されました。イベントには日本、アフリカ各国政府の閣僚、国際機関、経済団体の首脳陣や日本の関係企業等をはじめ約300名(うちオンライン約80人)が参加しました。

  • 主催: 内閣府、内閣官房
  • 共催: 総務省、厚生労働省、経済産業省、アフリカ開発銀行、国際金融公社、日本経済団体連合会
  • 後援: 日本医療研究開発機構(AMED)、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、
  •     日本国際交流センター(JCIE)、日本貿易振興機構(JETRO)、国際協力機構(JICA)、
  •     国立健康危機管理研究機構(JIHS)国際医療協力局、Medical Excellence JAPAN(MEJ)
  • 日時: 2025年8月20日(水) 10:00-14:10(日本時間)
  • 場所:パシフィコ横浜 展示ホールD S-03及びオンライン配信

主な参加者

  • 【第一部】(登壇順)
  • 城内実内閣府特命担当大臣 健康・医療戦略担当、アデン・バーレ・ドゥアレ ケニア共和国保健長官、バラカ・ルヴァンダ タンザニア連合共和国大使館特命全権大使、サミュエル・カバ・アコリエア ガーナ共和国ガーナ・ヘルス・サービス長官、サンバ・コール・サール セネガル共和国保健・社会活動省官房長、エチオピス・タファラ 国際金融公社(IFC)アフリカ地域担当副総裁、加留部淳一般社団法人 日本経済団体連合会アフリカ地域委員長(豊田通商株式会社 シニアエグゼクティブアドバイザー)、國井修公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)CEO兼専務理事
  • 富士フイルム株式会社、テルモ株式会社、AA Health Dynamics株式会社、中和機工株式会社、公益財団法人 味の素ファンデーション、SORA Technology株式会社、日本電気株式会社(NEC)、ヤマハ発動機株式会社、塩野義製薬株式会社
  • 【第二部】(登壇順)
  • 鈴木秀生国際保健担当大使/内閣府健康・医療戦略ディレクター、ヘンドリーナ・チャルウェ・ドロバ アフリカ開発銀行人間開発局教育・保健担当課長、福永哲也一般社団法人アフリカ開発協会参与、オリビア・マウニョ・ティンポ ガーナ共和国ガーナ・ヘルス・サービス栄養部長、武居光雄諏訪の杜病院長 CEO and Founder of GRAND FOREST JAPAN HOSPITAL、ファトゥ・バラ・ディオン セネガル共和国保健・社会活動省インフラ・設備・メンテナンス局長、パトリック・アモス ケニア共和国保健省保健局長、セイフ・アブダラ・シェカラゲ タンザニア連合共和国保健省事務次官
  • 公益財団法人味の素ファンデーション、シスメックス株式会社、日本電気株式会社(NEC)、塩野義製薬株式会社、株式会社Sunda Technology Global 、株式会社ツインバード、富士フイルム株式会社、テルモ株式会社、商船三井ロジスティクス株式会社、Revital Healthcare(EPZ)Ltd.

会議結果概要速報

○ 第1部のハイレベル対話の冒頭で、日本企業によるアフリカとのヘルスケア分野における協力覚書等に関するセレモニーを行いました。続いて、城内実内閣府特命担当大臣 健康・医療戦略担当がアフリカ健康構想やグローバルヘルス戦略の理念や進展、グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ(Triple I)の活動内容、日本政府による「アフリカ保健投資促進パッケージ」を紹介し、日本とアフリカの共創による保健課題の解決と経済成長の可能性について強調しました。その後、ケニア、タンザニア、ガーナ、セネガルの各国保健閣僚が登壇し、各国の保健課題や日本との協力の成果を報告するとともに、今後の連携強化への期待が表明されました。

○ ケニア共和国のドゥアレ保健長官は、気候変動問題に配慮した医療インフラ整備や医療人材育成に関する日本の官民連携による取組の成果を紹介し、持続可能な保健財政の重要性への認識と、健康安全保障の確立に向けた日本との更なる連携への期待を表明しました。タンザニア連合共和国のルヴァンダ特命全権大使は、母子保健の改善や地域医療体制の強化など、日本との協力による具体的な成果を報告し、グローバルファンドへの日本の継続的な貢献への期待とタンザニア国内における保健分野への財源増加に向けた意欲を示しました。ガーナ共和国ガーナ・ヘルス・サービスのアコリエア長官は、アフリカ健康構想におけるヘルスケアに関する協力覚書の下で進められた母子の栄養改善プロジェクトの成果を紹介し、日本企業とのさらなる連携によるイノベーションの推進を提案しました。セネガル共和国保健省のサール官房長は、国家の保健政策を「セネガル2050:変革の国家アジェンダ」戦略に基づいた戦略的方針を共有し、日本との協力により病院整備や遠隔医療など多くの成果が得られていると述べました。

○ IFCのタファラ副総裁は、アフリカの医療体制の脆弱性や医薬品・ワクチンの輸入依存を背景に、地域製造能力の強化やデジタルヘルスの導入を通じた民間投資の重要性を強調し、日本企業との連携事例を含むIFCのアフリカ地域での取組を紹介しました。経団連の加留部アフリカ地域委員長(豊田通商株式会社シニアエグゼクティブアドバイザー)は、ハード・ソフト・ヒューマンリソース・ヒューマンセキュリティーの4つのインフラ整備を通じて、アフリカの社会課題を共に解決していく必要性を強調し、経済界として官民連携による取組を通じて保健課題の解決とビジネスの加速の双方を追求していく意欲を示しました。GHIT Fundの國井CEO兼専務理事は、HIVやCOVID-19のパンデミックの経験を踏まえ、科学技術による感染症対策とアクセス格差の是正の重要性を訴え、企業・研究機関・政府の連携事例を紹介し、アフリカ各国によるオーナーシップと国際社会のパートナーシップに基づいて新薬やワクチンの開発・普及を加速するべきだと述べました。

○ 第2部冒頭で鈴木大使は、今回のTICAD9が、アフリカで初めてG20が開催される象徴的な年に開催されていること、また、アフリカにおけるデジタル革命やICTの進展によるビジネス環境の急速な整備や発展に言及し、アフリカ地域全体及びグローバル全体にイノベーションを広げる重要な局面であると述べました。

○ アフリカ開発銀行のドロバ人間開発局教育・保健担当課長は、アフリカにおける病床数や診断機器の不足、電力供給などの課題を指摘し、同銀行の保健インフラ分野における官民連携の取組を紹介するとともに、今後も官民連携(PPP)の専門知識と、多様な資金提供手段を活用し、加盟国における民間投資促進に取り組む意向を表明しました。続いて、アフリカ開発協会の福永参与は、保健医療分野が同協会における重要な取組分野のひとつであると述べ、同協会がアフリカ開発銀行の支援により、ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)、日本企業と連携して実施中の情報インフラ強化を目的とした取組について紹介しました。

○ 日本の民間企業によるビジネス・ケーススタディでは、公益財団法人味の素ファンデーション、シスメックス株式会社、日本電気株式会社(NEC)が、栄養サプリメントの普及、貧血・マラリアの早期診断技術の導入、保健師の問診支援アプリといった3者のソリューションを活用した、ガーナにおける母子保健と栄養改善に向けた異業種連携事業について発表しました。また、塩野義製薬株式会社からはケニアにおける薬剤耐性菌(AMR)対策を含む抗菌薬適正使用体制の支援に関する、長崎大学、サラヤ株式会社、株式会社Connect Afyaとの連携プロジェクトについて紹介されました。株式会社Sunda Technology Globalからは、ウガンダにおける給水設備の従量課金型自動集金システムを活用した、安全な水へのアクセス拡大と水道設備の持続的な維持管理に向けた活動実績について発信されました。

○ アフリカ側の講評として、ガーナ共和国ガーナ・ヘルス・サービスのティンポ栄養部長は、日本の継続的な支援に対する謝意を表明するとともに、日本企業とガーナの協力による母子保健の成果を報告し、保健インフラ分野における革新的なエコシステムの育成の必要性を訴えました。続いて、諏訪の杜病院院長でありGRAND FOREST JAPAN HOSPITALの創設者である武居医師は、ケニアでは感染症が依然として主要な保健課題であることを強調し、抗菌薬の乱用や耐性菌の問題への対応において、現地の医療人材の教育、一般市民への啓発が不可欠であると述べました。また、清潔な水が感染症予防に繋がることから、日本企業による水のアクセス拡大に向けた取組の意義と、現地との信頼関係の構築等の必要性を提示しました。

○ 続いて、株式会社ツインバードから、アフリカでのワクチンのコールドチェーン構築における課題(ロスの削減、メンテナンス等)の解決に向けて、同社のワクチン保冷庫・冷凍庫が貢献できる可能性と、官民連携によるこれまでの取組実績が紹介されました。また、富士フイルム株式会社からは、独自のAI技術を活用した医療ITシステムを通じて、予防・診断・治療の質とアクセス向上をはかるための医療従事者向けのトレーニング、携帯型X線装置による結核対策、医療用画像管理ネットワークシステム導入等の取組が紹介されました。

○ セネガル共和国保健・社会活動省インフラ・設備・メンテナンス局のディオン局長は、コールドチェーンの取組はワクチンの品質維持・感染症の大幅な削減にとって不可欠であるとし、保守管理においては技術者への研修支援の必要性を訴えました。また、日本企業によるX線装置の普及や、医療AIの取組が、結核をはじめとする疾患の診断において重要であると述べた上で、特に放射線科医不足の課題への対応として、日本企業によるAI技術を活用した診断支援の取組に対する期待を述べました。

○ 続いてテルモ株式会社より、ケニア、コートジボワール、ウガンダの3か国における現地政府との連携による鎌状赤血球症の早期診断から治療に繋げるケアパスウェイ確立に向けた取組が紹介されました。また、商船三井ロジスティクス株式会社および Revital Healthcare (EPZ) Ltd. は、ケニア・モンバサ港における医療物流センター新設を通じた医療用品の製造・流通の効率化に向けた取組について発表しました。

○ ケニア共和国保健省のアモス保健局長は、同国で鎌状赤血球症による疾病負担が大きいことについて言及し、開発支援が減少傾向にあることを背景に、日本政府および日本の民間セクターによる技術支援の重要性を強調し、二次予防の観点での必要性も訴えました。また、COVID-19影響下でアフリカ諸国が直面したワクチンや診断機器供給の遅れなどの物流課題を踏まえ、医療物資が現場に確実に届くことの重要性を訴え、日本企業による物流センターの設立が域内の医療品供給体制の改善や、公衆衛生上の緊急事態対応の強化につながると述べました。最後に、タンザニア連合共和国保健省のシェカラゲ事務次官は、アフリカ地域が直面する様々な保健課題の対応における官民連携の重要性を改めて強調するとともに、すべての関係者に対し、官民連携の機会を積極的に活用し、イノベーションと成長を促進しながら、アフリカにおける喫緊の保健課題に取組むよう呼びかけました。

参考