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東電福島第一原発事故に関するUNSCEARの報告書について

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【国連総会、UNSCEARの活動を支持】

 2012年11月13日、国連総会で採択された決議の中で、「国連総会は、UNSCEARが次回定例会合において、東日本大震災と津波に引き続いて発生した原発事故によって引き起こされた被ばくのレベルと健康リスクについての評価を完成させる意向であることを支持する」と述べられています。(参考:UNSCEARホームページ <英語>)
 UNSCEAR(アンスケアー)については、このコラムでもこれまでに、第7回第11回第27回、そして第28回でご紹介させていただきました。
 今回採択された決議は、UNSCEARが、今年9月に開催された前回の国連総会へ提出した報告に基づいています。ここでは、その報告について、東電福島第一原発事故に関する部分を中心に概略をご紹介させていただきます。

【UNSCEARの活動報告】

 2012年5月21日~25日にウイーンで開催された第59回UNSCEAR定例会合において、検討中の諸課題について報告されました。全体の構成としては、(1)報告書の作成が完了した課題、(2)報告書作成に向けて、現在作業が進行中の課題、(3)今後検討予定の課題、に分けられ、簡潔に報告されています。(全文はUNSCEARホームページ <英語>をご覧ください)
 東電福島第一原発事故に関する報告は、(2)の「報告書作成に向けて、現在作業進行中の課題」の中に含まれています。その概要は、以下の通りです。

<作業のプロセス>

2011年に開催された第58回定例会合において、東電福島第一原発事故によって生じた放射線被ばくのレベルと健康リスクについて、UNSCEARとして評価を行うことが決定された。その後2012年5月の第59回定例会合で予備的報告が行われた。この先、2013年5月の第60回会合でより完成された報告を行った後、さらなる検討を経て、最終報告書としてまとめることになった

<作業の実施体制>
  • UNSCEARの加盟国(脚注参照)並びにオブザーバー国から作業メンバーが募られ、2012年3月18日の段階で18か国72人の専門家が参集。現在この作業に従事している。
  • 包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)、世界気象機関(WMO)という5つの国際機関も、この作業に参加している。
<評価対象となる情報源>
  1. ① 日本政府の要求で作成されたデータ類(電子媒体)や、その他の信頼できる日本の情報
  2. ② 国連加盟国における、放射線測定に関する各種の情報
  3. ③ CTBTO, FAO, IAEA, WHO, WMOから提供されたデータ
  4. ④ 査読(その分野の専門家が、掲載前に行う検証等)を行っている科学雑誌に掲載された情報や、独自の解析
  5. ⑤ インターネット上に掲載された、放射線測定に関する各種の情報
  6.                                        等
<現在評価中の情報>

UNSCEARは、報告を受けている下記(1)-(7)のような情報について現在評価を行っている。数値やデータに関しては、まだ実証されるには至っていない。

  1. (1) 2012年5月までのところ、放射線によって引き起こされたと思われる健康影響は、事故処理にあたった作業者にも、子供を含めた住民にも見られていない。
  2. (2) サイト内で事故処理作業に従事した者は20,115人いた。(2012年1月31日時点。内訳は東電職員が17%、東電の下請けが83%)
     約66%の作業者の被ばく線量は、実効線量として10mSv以下と報告されている。約170人の作業者が100mSvを超える被ばくを、6人の東電職員が250mSvを超える被ばくをしており、被ばく線量の最高値は679mSvであった。これらの被ばくの大部分は、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137の内部被ばくによるものである。この方々の、「甲状腺被ばく」の線量の推定に関する情報は、文献上見当たらない。(UNSCEARは日本に対して、作業者の被ばく線量とモニタリングについて、更なる情報提供を要求した)
  3. (3) 事故処理作業時に被ばくした作業者への対応と健康管理のためのシステムが、2011年5月20日に確立された。2011年3月11日以降に死亡した6人は、いずれも放射線被ばくが原因とは見なされていない(2012年3月10日時点)。
  4. (4) 数人の作業員に、放射性物質による皮膚の汚染が確認されているが、臨床的に観察できるような明確な影響はみられていない。
  5. (5) 30km圏外に位置する飯館村、川俣町、いわき市において、事故当時15歳以下だった子供1,080人を対象に甲状腺モニタリングを行った。その結果、甲状腺等価線量100mSvのスクリーニングレベルを超える者はおらず、最高値は35mSvと報告されている。これらの測定の詳細に関しては、UNSCEARによる更なる評価が必要である。UNSCEARは、被ばくした住民、特に子どもの甲状腺被ばく線量データの評価を行う。
  6. (6) 2011年6月、福島県(住民200万人)は、飯館村、浪江町、川俣町の山木屋地区の住民を対象に被ばく状況の調査を開始した。この調査は、事故当時に県内に居住していた人の被ばくレベルを評価するために行われており、他の地域に住む住民にも対象が拡大されつつある。
  7. (7) 2011年3月以降、食品の放射性物質濃度についてのデータベースが作られてきている。この作業はFAOとIAEAの指導と、農水省などの協力によって行われている。2012年5月23日の段階で、食品モニタリングの記録が165,000あり、47都道府県で抽出された500種類以上の食品についてのデータが含まれている。(UNSCEARは、このデータベースが一般住民の食品消費による被ばくの推定に使用できるかどうか分析を行う)

※ここでご紹介したのは、あくまで2012年5月に開催されたUNSCEAR第59回会合時の予備的報告書の内容をまとめたものであり、それ以降の評価内容は含まれておりません。

<参考資料>
○UNSCEARホームページ(UNSCEARについての各種情報あり)
 http://www.unscear.org/ (英語)


<脚注:UNSCEAR加盟国について>
 2012年9月5日付の本コラムで、UNSCEAR加盟国が、今年から6か国増えて27か国になったことが表されました。これまでのオブザーバー国から、新たに正式な加盟国になったのは、ベラルーシ (Belarus)、フィンランド (Finland)、パキスタン (Pakistan)、韓国 (Republic of Korea)、スペイン (Spain)とウクライナ (Ukraine)でした。
 なお、以前からの加盟国21か国は、以下のとおりです。アルゼンチン (Argentina)、オーストラリア (Australia)、ベルギー (Belgium)、ブラジル (Brazil)、カナダ (Canada)、中国 (China)、エジプト (Egypt)、フランス (France)、ドイツ (Germany)、インド (India)、インドネシア (Indonesia)、日本 (Japan)、メキシコ (Mexico)、ペルー (Peru)、ポーランド (Poland)、ロシア (Russian Federation)、スロバキア (Slovakia)、スーダン (Sudan)、スエーデン (Sweden)、英国 (United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)、米国 (United States of America)


児玉 和紀
UNSCEAR・国内対応委員会委員長

佐々木康人
UNSCEAR・元議長

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