石破内閣の主要政策 02/
地方創生2.0の推進

政府は令和7年6月に、今後10年間を見据えた「地方創生2.0」の方向性を提示する「地方創生2.0基本構想」を取りまとめました。基本構想では、これまで10年間の地方創生の成果と反省を踏まえ、施策の推進に当たって持つべき基本姿勢・視点として、当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていくことや、若者や女性にも選ばれる地域づくりを行うことなどを掲げています。また、10年後に目指す姿(社会像)として定量的なものを示すとともに、以下の政策の5本柱に沿って政府全体で「地方創生2.0」に向けた取組を進めていきます。

若者や女性にも選ばれる地方の実現に向け、地域の働き方・職場改革を起点とした社会変革や地域に愛着を持ち地域で活躍する人材の育成を行い、地方の魅力を高め、地方への転入希望を増やす環境整備を進めます。

安心して暮らせる地方の実現に向け、将来を見据えた持続可能な地域のサービス拠点づくり、地域医療提供体制の維持・確保、意欲と能力のある「民」の力を活かした官民共創のまちづくり、全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)2.0、地域交通のリ・デザインの全面展開に取り組みます。

一人一人が活躍できる社会の実現に向け、地方公共団体や地域金融機関、JA等において、希望する職員の副業・兼業が可能となるよう、許可基準の弾力化や就業規則の改定を促進することを含め必要な環境整備を進めます。また、地方を守る防災力の強化、地方公共団体における国家資格を持つ等専門分野に従事する者を含め会計年度任用職員の処遇改善や能力実証を経た常勤化など在り方の見直しを進めます。

地域資源を活用した高付加価値型の地方経済の実現に向け、様々な「新結合」(注1)を全国各地で生み出すことにより、地方経済に活力を創出し、我が国の潜在的な成長力を引き出していく「地方イノベーション創生構想」として、①関係府省庁が連携した支援により地域資源を最大限活用した高付加価値化を図る「施策の新結合」、②若者や女性、産官学金労言士(注2)など、地域内外の様々な関係者の連携・協働、地域外の新たな人材を呼び込む「人材の新結合」、③イノベーションの果実であるAI・デジタル技術等の新しい技術を組み合わせる「技術の新結合」に取り組みます。

(注1)異なる分野や領域に属する要素同士を従来にはなかった形で組み合わせること。
(注2)産は産業界、官は地方公共団体や国の関係機関、学は大学等の教育機関、金は金融機関、労は労働団体等、言は報道機関、士は士業等をそれぞれ指す。

政府関係機関の地方移転や企業・大学の地方分散に加え、都市と地方の新たな結び付き、人材の交流・循環・結び付きを促進し、地方への新たな人の流れの創出に向け、関係人口の量的拡大・質的向上を目指し、ふるさと住民登録制度を創設し、関係人口を可視化します。地域との関わり方等に応じて関係人口の類型化を行い、それぞれの類型に応じて、二地域居住等の推進や若者や女性の地域交流の促進、ふるさと納税の活用といった施策を展開します。

GX・DXが進展する新時代に、地域経済や地域社会を適応させていくことが重要であることから、GX・DXを進展させ経済成長させる産業立地(GX産業立地)の推進に向けたインフラ整備として、ワット・ビット連携を推進します。

自動運転・ドローン・AI技術といった新技術の社会実装を地方でこそ加速すべく、デジタルライフラインの全国整備を進めます。

地域における経済活動や人々の生活は、都道府県域、市町村域に限定されるものではなく、地域経済の成長につながる施策が面的に展開されていく状態を創出できるよう、地方公共団体と企業や大学、研究機関などの多様な主体が広域的に連携しながら地方創生2.0に取り組む「広域リージョン連携」を推進します。

持続可能な国土形成に向け、地域生活圏を基本として、各種サービス機能の集約拠点の形成と国土全体の連結強化を進め、コンパクト・プラス・ネットワークの取組を深化・発展させます。

2027年までの集中対策期間において、これまでを上回る国の総合的支援の下、「交通空白」の解消に取り組むとともに、省力化推進や担い手確保、自動運転の普及・拡大等、地域交通のリ・デザインを全面展開します。

ローカル鉄道の再構築等の議論の深化、幹線鉄道の地域の実情に応じた高機能化に向けた取組を進めるとともに、我が国の国際競争力強化のため、物流・人流ネットワークの早期整備・活用を進めます。

2030年訪日外国人旅行者数6,000万人・消費額15兆円を目指し、多様な観光コンテンツ造成と収益性改善などインバウンド拡大に関する取組を展開します。

持続可能な観光地域づくりに向け、施設改修、廃屋撤去を含めた観光地の面的な受入環境整備、観光地域づくり法人(DMO)のマネジメント体制強化による広域的な取組等を促進するとともに、オーバーツーリズムの未然防止・抑制や、ユニバーサルツーリズムの促進を含む国内交流市場拡大に係る取組を進めます。

電力と通信の効果的な連携(ワット・ビット連携)により、オール光ネットワーク技術の実装を進めつつ、電力インフラから見て望ましい地域（脱炭素電力が豊富な地域を含む）や大規模災害時のデジタルサービスの維持に資する地域へのデータセンターの誘導を含め、光ファイバや5Gの全国展開とともに、電力と通信基盤を整合的・計画的に整備し、データセンターの地方分散を推進します。

地方移住を促す取組を強化するとともに、税制の活用も含めた環境整備による企業の地方移転や拠点拡充、産官学金労言士の連携による地域密着型企業の立ち上げ、地域おこし協力隊など人材確保の取組を進めます。また、ふるさと住民登録制度の創設や交流・基盤施設の整備など、関係人口の拡大や二地域居住の促進に向けた取組を進めます。

個性を活かした地域づくりに向け、沖縄振興・北海道開発、過疎地域や半島、離島、奄美、小笠原、豪雪地帯等の条件不利地域対策に取り組みます。

コストの徹底的低減に向けた農地の大区画化や共同利用施設の再編・集約化等による収益力の向上、輸出・食品産業の海外進出・インバウンドの好循環による海外からの稼ぐ力の強化を図ります。また、スマート林業や国産材転換・木材利用拡大を進めるとともに、経営体・人の確保等による漁業の強靱化、養殖業の成長産業化、海業の全国展開を進めます。

現下の急激に上昇した米価格を落ち着かせ、消費者への米の安定的な供給を確保するため、政府備蓄米を始めとする米の流通の円滑化や消費者への丁寧な情報発信を含めた総合的対応を進めます。

農業者が意欲を持って営農でき、生産性の向上を通じた食料の安定供給を確保するため、水田政策の見直しの具体化を進め、麦・大豆・国産飼料の生産性向上、地域計画に基づく農地の集約化の支援に関する制度の見直し・強化に取り組みます。

官民投資を拡大し、経済成長と文化芸術振興の好循環を創出することで、ソフトパワーによる文化芸術立国を目指します。コンテンツ分野の高度専門人材等の育成や海外展開の加速化、文化施設の再整備・機能強化、舞台芸術や日本映画の振興やアート市場の活性化を進めます。

文化財の保存・活用、生活文化の継承、こどもや障害者の鑑賞機会充実、書店活性化やデジタルアーカイブ化にも取り組みます。「昭和100年」関連施策や国立公文書館の機能強化も推進します。

スポーツが持つ力を地域・経済の活性化につなげ、「新しい日本・楽しい日本」を実現します。武道やスポーツツーリズム、「eスポーツ」の活用を含むDXや海外展開、他産業との連携による事業創出、地域スポーツコミッションの多角的な事業展開等を推進します。

2025年世界陸上・デフリンピック、2026年アジア・アジアパラ競技大会、ワールドマスターズゲームズ2027関西等の大規模国際大会の意義等を踏まえた各般の開催支援や国際競技力向上にも取り組みます。