石破内閣の主要政策 05/
中長期的に持続可能な経済社会の実現

現役世代が急速に減少し、高齢者数がピークを迎える2040年頃を見据え、年齢に関わりなく、能力に応じて負担し、個性を活かして支え合う「全世代型社会保障」の構築に向け、医療・介護DXやICT、ロボット・デジタルの実装やデータの二次利用、タスクシフト／シェアなど、医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・省力化を実現するほか、経営の協働化・大規模化、経営状況の更なる見える化を進めます。

EBPMによるワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制するとともに、全世代型社会保障の将来的な姿を若者も含め国民に分かりやすく情報提供します。

要介護状態や認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、2040年以降を見据え、中山間地域での柔軟な対応など各地域で地域包括ケアシステムを深化させるための方策を整理しつつ、医療・介護連携や介護予防の推進、多職種間の連携、介護テクノロジーの実装、事業者間の連携・協働化や大規模化など中長期的な介護サービス提供体制の確保のための方向性を2025年中にまとめます。

介護保険制度の給付と負担の見直しに関する課題について、2025年末までに結論が得られるよう検討します。

医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう、かかりつけ医機能の発揮される制度整備、医療の機能分化・連携、適切なオンライン診療の推進、新たな地域医療構想、医師の地域間・診療科間の偏在への対応を進めます。

妊娠・出産・産後の経済的負担の軽減のため、2026年度を目途に標準的な出産費用の自己負担の無償化に向けた対応を進めます。小児周産期医療体制の確保や安全で質の高い無痛分娩を選択できる環境の整備を進めます。

医療保険制度について、給付と負担の見直し等の総合的な検討を進めます。高額療養費制度について、長期療養患者等の関係者の意見を丁寧に聴いた上で2025年秋までに方針を検討し、決定します。また、リフィル処方箋の普及や多剤重複投薬・重複検査の適正化を進めます。

公的年金について、働き方に中立的な制度を構築する観点から、更なる被用者保険の適用拡大や在職老齢年金制度の見直しを進めるとともに、いわゆる「年収の壁」への対応を進めます。

がん、循環器病、慢性腎臓病等の疾患に応じた対策や難病対策、移植医療対策、感染症対策を着実に進めるほか、更年期障害対応や乳がん検診などの女性の健康支援、栄養や睡眠、受動喫煙への対応、歯科保健医療対策などに取り組みます。

健康寿命を延伸し、性別や年齢に関わらず生涯活躍できる社会を実現します。データヘルス計画に基づく保険者と事業主の連携した取組（コラボヘルス）やPHR、健康経営と共働した効果的な取組を支援するほか、働き盛り世代の職域でのがん検診やエビデンスに基づくヘルスケアサービスを普及させます。糖尿病性腎症の重症化予防を進めるとともに、効果的な介護予防やリハビリテーションを充実させます。

「健康・医療戦略」 に基づき、創薬エコシステムの発展やヘルスケア市場の拡大、創薬力の基盤強化に向け、国際水準の治験・臨床試験の体制整備、ヘルスケアスタートアップの支援を進めます。国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する薬価上の適切な評価や承認審査体制の強化により、ドラッグラグ／ロスの解消等を進めます。大学、ナショナルセンターと医療機関が連携し、海外展開に向けた研究開発支援を強化します。

医薬品の安定供給に向けて、後発医薬品業界再編の推進、バイオシミラーの使用促進、セルフケア・セルフメディケーションの推進、地域フォーミュラリの普及に取り組みます。

WHOや世界銀行と連携し、低・中所得国の保険財政の強化に向け、UHC（ユニバーサルヘルスカバレッジ）の実現に向けた取組を加速するなど、インド太平洋地域等での国際保健に戦略的に取り組みます。「グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ（トリプル・アイ）」を通じた日本企業の国際展開を後押しすることにより、国際保健課題に貢献します。

こどもを生み、育てたいという希望が叶う社会、こどもたちが健やかに育まれる社会の実現と少子化トレンドの反転を目指し、保育士・幼稚園教諭等の処遇改善やこども誰でも通園制度の全国展開、放課後児童クラブ等への支援など、「こども未来戦略」に基づく加速化プラン等に基づく施策を本格実施し、施策全般について効果検証も徹底します。子ども・子育て支援金制度の円滑な導入準備を進めるとともに、社会全体でこども・子育て世帯を支える意識を醸成します。

こども・若者シェルターなど、虐待等により困難に直面するこどもや若者の支援を強化するなど、「こども大綱」等に沿って関連施策を進めます。

幼児期までの育ちの質向上やこどもの居場所づくり、保育現場の負担軽減や保育人材の確保、母子保健対策やプレコンセプションケアなどの取組を進めます。こども食堂など、こどもの貧困解消を進めるとともに、ひとり親家庭の支援や児童虐待予防、養育費の確保、児童養護施設の機能向上や児童相談所の体制強化のほか、ヤングケアラーを支援します。また、いじめ・不登校に直面するこどもやその保護者への支援、こども・若者の自殺対策を強力に推進します。

多様なこどもたちの特性や地域の実情を踏まえ、より質の高い、深い学びを実現すると同時に、一人一人の可能性が輝く柔軟な教育課程を編成できるよう、質の高い公教育の再生を通じて我が国の学校教育の更なる高みを目指します。いわゆる高校無償化、給食無償化及び0～2歳を含む幼児教育・保育の支援については、令和８年度予算の編成過程において成案を得て実現します。

教師の働き方改革の更なる加速化や処遇改善等の推進、外部人材の拡充により、学校の望ましい教育環境や指導体制を構築します。多様な児童生徒の教育機会を保障するための取組や、不登校・重大ないじめ・自殺予防対策等により誰もが安心して学べる魅力ある学校づくりを推進します。

我が国の基礎研究力を抜本的に強化するため、EBPMの強化や教育・研究・ガバナンスの一体改革を推進します。官民連携による、先端大型研究施設の戦略的な整備、高度専門人材の育成・確保、博士課程学生や若手研究者の処遇向上等による研究環境の確保により、我が国の研究力を維持・強化します。次期「科学技術・イノベーション基本計画」を2025年度内に策定し、進捗状況の把握・評価を実施し、その成果を生かしつつ、科学技術・イノベーション政策を推進します。

埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえ、進行するインフラ老朽化に対して、緊急性や経済的・社会的影響等を勘案し、優先順位を明らかにして対策を進めるとともに、対策の効果の見える化を進めます。また、災害に強い国土・地域づくりの観点も踏まえて広域的な都市圏のコンパクト化を進めるとともに、不動産IDと3Dモデル（建築BIM、PLATEAU）などの連携により、建築・都市のDXを進展させます。

引き続きi-Construction 2.0の推進により建設現場の自動化・省人化を進めるとともに、女性・外国人を始め多様な人材の活躍を推進し、建設業の担い手の確保・育成に取り組みます。また、社会資本が将来にわたって機能を発揮するとともに、民間事業者が安心して設備投資や人材育成を行うことができるよう、中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進しつつ、戦略的・計画的な取組を進めます。その際、適切な価格転嫁を促した上で、今後も必要な事業量を確保しながら社会資本整備を着実に進めます。

公共サービスを効率的・効果的に提供するPPP/PFIについて、改定アクションプランに掲げる目標の着実な達成に向け、ウォーターPPP等の重点分野における伴走支援体制の構築等を推進します。民間企業の努力や創意工夫により適正な利益を得られる環境の構築、分野横断型・広域型の案件形成の促進、空き家等の既存ストックを活用するスモールコンセッション、地域プラットフォームを活用した官民の連携強化に取り組みます。

非宅地化を含む土地利用の円滑な転換に取り組むとともに、改修・流通促進などの総合的な空き家対策と所有者不明土地等対策とを一体的に推進します。また、マンションの管理適正化・再生円滑化に取り組みます。

健全な水循環の維持・回復や流域の水資源の有効利用を進めるとともに、流域治水に加え、発電等の水利用や流域環境の保全・創出に関係者が協働して取り組む流域総合水管理などを推進します。

地方公共団体間の垂直補完や水平連携、多様な主体との連携、デジタル技術の活用といった取組を推進し、国・都道府県・市町村の役割の見直しを含め、地方公共団体の事務執行上の課題解決に向けた議論を促進します。

フロントヤード・バックヤード改革の一体的な取組や都道府県と市区町村が連携したDX推進体制における人材プール機能の確保など、自治体DXを引き続き推進します。

東京一極集中が続き行政サービスの地域間格差が顕在化する中、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に取り組むとともに、地方の一般財源の総額を確保して、地方行財政基盤の持続性を確保・強化します。

①物価上昇が継続していることを踏まえ、予算、税制における長年据え置かれたままの様々な公的制度に係る基準額や閾値について、省庁横断的・網羅的に点検し、見直しを進めます。

②医療・介護・保育・福祉等の分野における公定価格を引上げます。

③「官公需における価格転嫁のための施策パッケージ」に基づき、低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の導入拡大・活用等を進め、働き手の賃上げ原資を確保できる、官公需における価格転嫁を徹底します。